詩の授業で「人間」を教える
西郷竹彦実験授業

詩の授業で「人間」を教える西郷竹彦実験授業

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詩のわかり方が、そのまま人間、世界のわかり方になる。

本書は詩の授業記録として、詩の授業のあり方を示しながら、文芸とは何か、教育とは何か、国語科教育の本来の姿を明らかにする。さらに、ひとつの問いをめぐって子どもたちと語り合うことを通して、「人間とは何か」に迫る授業を展開している。


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ISBN:
4-18-313826-4
ジャンル:
国語
刊行:
対象:
小・中
仕様:
A5判 212頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

目次

もくじの詳細表示

はじめに /西郷 竹彦
T 「人間」を教える詩の授業
/足立 悦男
1 国語教育で、今もとめられているもの
2 文芸とは何か、教育とは何か
3 この詩の授業記録から何を読むか
U 詩の授業で「人間」を教える
/西郷 竹彦(授業者)
工藤直子「はきはき」の授業
1 「みのむしせつこさんって、どんな人?―」
2 「はきはき」の授業
高田敏子「白い馬」の授業
1 「天人合一」の世界にふれる
2 「白い馬」の授業二六
原田直友「村の人口」の授業
1 「五万二千七百九十四 命」にたどりつく
2 「村の人口」の授業
3 「村の人口」の授業をめぐって
佐野美津男「なんておもったら」の授業
1 作者と読者が向かい合って詩を作る
2 「なんておもったら」の授業
まど・みちお「キリン」の授業
1 詩の表記から人間の姿に迫る
2 「キリン」の授業
まど・みちお「根」の授業
1 題を隠す授業の仕掛が見えないものを見せる
2 「根」の授業
近藤東「きかんしゃ」の授業
1 労働はものを価値あるものに変えること
2 「きかんしゃ」の授業
3 「きかんしゃ」の授業で育てたいもの
村野四郎「鉄棒」の授業
1 〈ぼく〉の変身が鉄棒を〈地平線〉に変えた
2 「鉄棒」の授業
V 西郷実験授業から学ぶもの
/藤井 和壽
1 ユーモアあふれる授業から学ぶ
2 人間観を教えることから学ぶ
3 典型化の指導から学ぶ
4 おもしろさ(美)を味わうために学ぶ
5 表現方法を内容とつなぐことから学ぶ
6 ねらいが一貫した授業から学ぶ
7 おわりに

はじめに

   ――「人間のわかる人間」を育てる詩の授業


 文芸(詩)は人間を描く芸術です。その詩を相手どって、なぜ私は授業をするのか。一言で言うと、「人間のわかる人間」を育てたいということです。「人間がわかる」ということは、人間の生きるこの現実世界がわかるということでもあるのです。

 だから、詩のわかり方が、そのまま人間のわかり方になる。世界のわかり方になる。そんな授業をしたいのが私の切実な願いです。たとえば、「条件的にみる」という「ものの見方・考え方」(認識の方法)で具体的に詩を読み解くというなかで、自分と自分をとりまく現実の世界を、「条件的」にみることのできる、また「条件的」に変革することのできる主体を育てたいと願っています。もちろん、「条件的」にみるというだけではありません。「相関的に」とか「関連的に」とか、小学校段階であれば、十種類ぐらいの「ものの見方・考え方」を、教え学ばせたいと考えております。

 ですから、私はそこに教材があるから、その教材をどう授業するか、という考え方はしません。目の前の子どもたちにどんな力を育てたいか、育てるべきか、そのために、では、どの詩がその目的に相応しいかと考えるのです。そこに教材があるから授業するのではありません。目的があり、その目的を果たすために、その目的に最も相応しいと思われる詩を教材として選ぶのです。そうして、その目的に向かって、ひたすら問いを進めるのです。目的を明確にして、その目的に向かって、必要にして十分と考えるかたちで授業を進めます。その目的に添わないものは切り捨てます。あれもこれもと持ち込む授業は「ねらい」がぼけてしまいます。「教材を教えるのではありません」。「教材で認識の力を育てたいのです」。「うまい授業ではなく、いい授業をしたい」。それが、私の念願です。もちろん「いい授業」とは、先に述べた目的の明確な、そして、実際に、認識の力のつく授業ということです。

 ところで、これは私の願いであり、理想です。はたして私の一つ一つの授業が、この目的をどう実現しているか、批判的に検討し、もし至らないと思われるところがあれば読者の皆さん自身、その原因を明らかにし、自分ならどうするかを勘案してみてください。

 私の授業の「見所」について、足立悦男・藤井和壽両君が、懇切な「解説」をつけてくれました。

 最後になりましたが、企画から刊行まで、明治図書出版編集部の庄司進氏には大変お世話になりました。


 追記・最近刊の左の拙著を紹介致します。

   『西郷竹彦・名詩の世界・西郷文芸学入門講座』(全七巻)光村図書出版刊


  二〇〇六年一月   文芸教育研究協議会会長 /西郷 竹彦

著者紹介

西郷 竹彦(さいごう たけひこ)著書を検索»

文芸教育研究協議会会長・文芸学者

※この情報は、本書が刊行された当時の奥付の記載内容に基づいて作成されています。
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      明治図書

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