- はじめに
- T 授業の腕を上げる指導案とは
- 一 発問・指示を明示した指導案
- 1 発問・指示を授業の骨格に置く
- 2 「枠」の威力
- 3 教師の活動・児童の活動を二分化して明示
- 4 「ごんぎつね」二の場面の指導案
- 5 漢詩授業の指導案
- 二 技術・原則を明示した指導案をつくる
- 1 「わたしは見た」の指導案づくり
- 2 技術・原則を明記した「大造じいさんとガン」の指導案
- 三 研究授業用指導案をつくる
- 1 「川とノリオ」の研究授業指導案
- 2 新出漢字と漢詩授業の指導案
- U 指導案の応用の技術
- 1 「ごんぎつね」の授業に向けて
- 2 指導案を捨て知覚全開
- 3 全員が「色」をノート記入
- 4 「全員起立」を止める
- 5 指示の変更――「列発表」を止める
- 6 類比的・対比的展開
- 7 イメージ喚起のすじ道
- 8 教科書を見させる
- 9 「色」を媒介として
- 10 脱 線
- 11 「技術・原則」の応用で
- 12 初歩的ミス
- 13 重要色
- 14 ごんの心の検討へと
- 15 発表は背の順?
- 16 山 場
- 17 指導案で見えた「指導の原則」
- あとがき
はじめに
授業は構造である。
どうしたら構造的な授業をすることができるか。
構造が見える指導案をつくることである。
中心になる発問・指示を用意する。それらを、授業のどのあたりで提示するかを考える。
発問・指示に枠をつけ、指導過程の真ん中に書くのである。こうすることにより、一目見ただけで授業の構造が分かる。
教師の活動を左側、教師の活動に対する児童の活動予想を右側に書く。これで、すっきりと美しくまとまる。
これを、
A 発問・指示明記型指導案
とする。
ときには、技術・原則を明記した指導案をつくるとよい。Aの「日常型」に加えて、教師が、なぜその手だてや働きかけをしたか、その理由を明記するのである。技法を書いたり、原則を書くことになる。これを、
B 技術・原則明記型指導案
とする。技法や原則を、時と場の中で、発揮していくかを検討することになる。授業の腕を上げるための教師にとって、最高の「自学」となるであろう。
研究授業のときにお薦めしたいのは、指導案の冒頭に「授業で見てほしいこと」を明記した指導案である。この指導案では、自分の仮説について、参観者に検討してもらうことになる。これを、
C 研究授業型指導案
と呼ぶことにする。研究主任をしていた二十数年間、ずっとこの形の指導案を使い、研究を進めてきた。
二十年前に、授業の腕が上がる指導案を提案した。向山洋一氏は、私の指導案を見て、
試作品時代を終えて一号機の誕生
と称して下さった。
齋藤勉氏も、言って下さった。
この指導案は、指導案研究に新しい一ページを開くものである
その後、現場の指導案は、大きく改善された。しかし、相変わらず、今でも、授業の様子がまったく分からない指導案を見かける。指導案づくりで、授業の腕を鍛えるという構えが見られないのである。これは、もったいない。
上達と伝達の機能をもった指導案が必要なのである
低学力問題が、ますます深刻化している。今こそ、低学力を克服させる強力な指導が求められている。教師の強力な指導を重視した指導案づくりこそ、今の状況の中で、必要であると考える。
ところが、今、現場では、授業づくり、指導案づくりに熱心であるようには見えない。低学力問題に右往左往し、練習学習に力が注がれたりする。教師の授業の腕を高める方策よりも、ドリル的な練習の量が優先されたりする。
その結果、「学びからの逃避」「低学力」の問題は、さらに悪化していると思われる。教師も、子どもも「教えがい」、「学びがい」をなくしているように見える。
今、本当に必要なのは、
発見的かつ体験的な授業を教室に創る
ことである。そのために必要になってくるのは、授業の腕である。発見的かつ体験的な授業が生まれる教室の子どもたちは、
「学びへの参加意欲」と同時に、「学力」をものにする
ことになるのである。
指導案づくりで腕を鍛える。地味な作業である。だが、日本の教育を変えるには、一人一人の教師が、この地味な仕事をやっていくことをするしかない。
指導案づくりが、教師を救う。子どもを救う。
なお、本書で紹介した国語指導案は、すべて、実際に、私が授業したものである。指導案通りに授業していただきたい。発問・指示の大切さ、さまざまな技術や原則の発揮の仕方を学ぶことになろう。追試結果を岩下まで報告していただけるとうれしい。
/岩下 修
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- 明治図書
- 指導案の様式を考える際の参考になる本。ここまで細かい指導案が何年も前に提案されているとは、驚きである。2016/4/2550代・小学校管理職