- はじめに
- 第1章 今、求められる学びのハイブリッドデザイン
- 1 デジタル×アナログでつくる授業
- 2 New草津型アクティブ・ラーニングによるハイブリッドな学び
- 3 「個別最適な学び」「協働的な学び」とハイブリッドな学び
- 第1章 まとめ
- 第2章 ハイブリッドデザインに必要な環境づくり
- 1 GIGAスクール時代の新しい学習環境
- GIGAスクール時代に目指すべき環境整備の方向性
- 教室環境とネットワーク環境
- 端末・アカウント設定
- 2 ハイブリッドデザインを推進する体制づくり
- 体制づくりの4つのポイント
- 教育委員会事務局の支援・助言体制
- ICT支援員等の配置による支援体制
- 教育委員会の研修による各校のリーダー教員の育成
- 各校の校内体制
- 第2章 まとめ
- 第3章 ハイブリッドデザインを実現するポイント
- 1 共通事項・基本スキルの指導
- 2 ツール別・場面別 ハイブリッドのポイント
- 教科書―デジタル教科書×紙の教科書・アナログツール
- 提示―大型提示装置(電子黒板・プロジェクター)×黒板・ホワイトボード
- 交流―対面による交流×端末上での意見交換
- 家庭―オンライン授業×デジタルドリル&アナログプリント
- 第4章 学びのハイブリッドデザイン 実践編
- 1 ハイブリッドデザインのための6つのステージ+1
- 1つの授業における活用から、単元を通した活用へ
- 6つのステージとは
- 【+1】家庭で学びを深める
- 2 ハイブリッドデザインの活用・授業・単元モデル
- ◆初級 授業の中の1場面での「活用モデル」
- @「撮影」「記録」を使いこなそう
- Aアンケートフォームを使いこなそう
- Bデジタル教科書を使いこなそう
- ◆中級 1つの授業の中で行う「授業モデル」
- @「個別」と「協働」を組み合わせよう
- A振り返りで表現の質を高めよう
- B子どもたちの考えを集約して展開を考えよう
- ◆上級 単元全体を通しておこなう「単元モデル」
- @子どもたちに選択肢を与え自立を促そう
- A習熟度と学び方の関係を可視化しよう
- B主体的な協働学習を実現しよう
- 3 授業者のチェックポイント
- 第5章 働き方改革の視点で見るハイブリッド
- 1 授業準備におけるデジタル×アナログ
- 2 評価におけるデジタル×アナログ
- 3 保護者との連絡手段のデジタル化
- 第6章 ハイブリッド推進のために今、何をするべきか
- 1 教育委員会事務局が担うべきこと ―環境整備と具体化
- 「GIGAスクール元年」の振り返り
- 環境整備 「GIGAスクール構想」前後の重点の変化
- つけたい力を明確にした「学び」の具体化
- 研修会を年間に組み込む
- 2 管理職に求められること ―ハイブリッド実現のためのマネジメント
- 明確な方向性の提示とICT推進チームの組織化
- 教育委員会事務局へ要求・要望
- 3 ICT推進チームのリーダーが実践すること ―校内組織固めと連携強化
- 年間活動計画の作成・校内研究・定例組織会議との関連付け
- チーム運営とキーとなる教員の育成
- ICT支援員との連携、管理職への要求・要望
- 4 保護者との協力体制をつくるために
- 保護者のメリットになることから始める
- 既存システムを応用してできることから始める
- ICT活用を直接アピールできる機会を逃さない
- おわりに
はじめに
令和元年12月に「GIGAスクール構想」の実現に向けた国の方向性が示されてから、全国の教育現場で、教育のICT化が加速度的に進むこととなりました。
これは、教育のICT化で後塵を拝してきた日本が、国家プロジェクトとして、国費を投じて1人1台の学習者用コンピュータを整備するという、世界でも類を見ない取り組みだと言われています。
私が草津市教育委員会事務局で勤務するようになった平成29年度は、国の「第2期教育振興基本計画」により、「教育のIT化に向けた環境整備4か年計画(平成26年度〜平成29年度)」に基づいて地方財政措置が行われる最後の年度でした。
続く平成30年度から、新たに「教育のICT化に向けた環境整備5か年計画(2018年度〜2022年度)」によって引き続き地方財政措置が行われることとなり、今思えば、「GIGAスクール構想」前夜から、一大国家プロジェクトの準備が着々と進められていたように感じます。
実際に「GIGAスクール構想」の実現に向けた国による予算措置が次々と打ち出されると、全国の自治体がその対応に追われました。
特に、これまでのノウハウがない自治体や、小中学校が10校未満の自治体および何十・何百という小中学校を所管する自治体では、国庫補助を取り込み、何とか学習者用コンピュータおよび校内通信ネットワークの整備を行うというところまでで、担当組織の業務が目一杯になってしまっているという現状だったかと思います。
私自身、平成30年度から現在まで、文部科学省のICT活用教育アドバイザーを務めていますが、令和2年度から、アドバイザー事務局への支援依頼が激増しました。
多かった支援内容は、令和2年度は学習者用コンピュータの導入や構内通信ネットワーク整備の進め方に関すること、令和3年度は学習者用コンピュータやクラウドの設定、アカウントの管理や年次更新等が挙げられます。
令和3年度は「GIGAスクール元年」とされた1年間でしたが、初めての大がかりな年次更新作業も含め、「令和4年度からの本格的な運用に向けた準備がおおむね整った」という進捗の自治体も多かったのではないでしょうか。
さて、「GIGAスクール構想」が示されて以降、ICT教育関連の実践事例や書籍が多く見られるようになりました。
最近では、Webページ経由で届く情報も飛躍的に多くなったので、参考となる先行事例が豊富で手に入りやすく、私も参考にして毎日学ばせていただいています。
そんな現状がありがたいのですが、一方で、教育委員会事務局のICT教育担当者として、また、教師として、得たい情報がなかなか手に入らないこともありました。得たい情報とは、「実際のところ」と「理論と実践をつなぐ」部分です。
例えば、「実際のところ」については、実際に端末を整備する際のノウハウや、実際に子どもが使うにあたって適切な端末やクラウドの設定、実際に活用が始まった時のトラブル内容等を知りたかったところです。
また、「理論と実践をつなぐ」部分も、なかなか参考となる先行事例がありませんでした。
たとえば、国が示す「GIGAスクール構想」を、どのように授業で具体化するかという課題があります。「GIGAスクール構想」の内容は、各種資料が公開されていますので、教育委員会事務局のICT教育担当者や現場の教員でも知ることができます。また、学習者用コンピュータやソフトウェアの活用については、現場の教員の真骨頂です。
しかし、「そもそも、1人1台の学習者用コンピュータを活用することでどのような効果があるのか」「どのような実践を行うことが『GIGAスクール構想』の実現につながるのか」等理論と実践をつなぐことに重点を置いてつくられた資料はなかなかありません。
「GIGAスクール構想」の実現に向けたICT環境整備や実践を行うのは、教育委員会事務局のICT教育担当者と現場の教員です。「Society5.0」を生きる子どもたちに相応しい教育を行うためには、「GIGAスクール構想」を中心とした教育の情報化の具体的なイメージを、すべての教員に届ける必要があります。
このように、本書は、「実際のところ」と「理論と実践をつなぐ」ことを目的に、全国の教員と教育委員会事務局のICT教育担当者に向けて、草津市の実践をもとにして、できるだけ具体的に記しました。
令和4年度は、1人1台の学習者用コンピュータの活用が、いよいよ全国の自治体・学校でスタートする年だと考えています。本書が、「Society5.0」を生きる子どもたちのために、より良い実践が全国で行われる一助になることを願います。
/西村 陽介
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- 明治図書