- はじめに
- Chapter1 理論編 「学び合い」のある国語授業づくりのポイント
- 1 アクティブ・ラーニングと21世紀型能力
- 1 アクティブ・ラーニングと新学習指導要領
- 2 21世紀型能力(コンピテンシー)
- 2 学び合いの環境づくり
- 1 「ひと・もの・こと」の視点で考えた学習環境デザイン
- 2 「ひと」デザインの視点による学び合いの環境づくり
- 3 学び合いの授業づくり
- 1 学び合いの授業のねらい
- 2 国語科における学び合いの種類
- 3 「もの・ひと」デザインの視点による学び合いの授業づくり
- 4 効果的な学び合いになるツール・関係づくり・時間設定
- 4 学び合いの評価
- 1 何で評価するのか
- 2 何を評価するのか
- Chapter2 準備編 人数・構成・タイプ別 学び合いの特徴と指導のポイント
- 1 [人数別]学び合いの特徴と指導のポイント
- 1 ペアでの学び合い
- 2 3人のグループでの学び合い
- 3 4,5人のグループでの学び合い
- 4 クラス全体での学び合い
- 5 人数を教師が決めないグループでの学び合い
- 6 ペア・小グループとクラス全体を組み合わせた学び合い
- 2 [構成別]学び合いの特徴と指導のポイント
- 1 同じ意見,興味・関心をもつ子ども同士の学び合い
- 2 違う意見,興味・関心をもつ子ども同士の学び合い
- 3 子どもが自分で相手を探して決める学び合い
- 4 クラス外の同学年の子どもとの学び合い
- 5 異年齢の人との学び合い
- 6 同じ意見同士の学び合いと,違う意見同士の学び合いの組み合わせ
- 3 [タイプ別]学び合いの特徴と指導のポイント
- 1 協働的問題解決1・問題を発見する学び合い
- 2 協働的問題解決2・考えを広げる学び合い
- 3 協働的問題解決3・考えをまとめる学び合い
- 4 交流での学び合い
- 5 話合い自体が目的の学び合い
- Chapter3 実践編 主体的・協働的な学び合いのある学年別・国語授業プラン
- 1 [第1学年]書くこと
- 多様な考えに触れる低学年のグループ学習
- 言語活動 おすすめの本を紹介する文章を書く
- 2 [第1学年]読むこと
- 子ども一人一人が役割意識をもてるマトリックス型グループ交流
- 言語活動 音読劇
- 3 [第2学年]読むこと,書くこと
- 読み書き関連単元での学び合い
- 効果的なペア学習
- 言語活動 説明書を書く
- 4 [第2学年]書くこと
- 交流して相談し,お話を作るペア活動
- 言語活動 お話づくり
- 5 [第3学年]書くこと
- 小グループで内容面に着目した推敲
- 言語活動 紹介文を書く
- 6 [第3学年]書くこと
- 同じ興味・関心をもった子どもたちの小グループでの学び合い
- 言語活動 こん虫図かんを作ろう
- 7 [第4学年]話すこと・聞くこと
- グルーピングや「見える化」で全員参加を促す小グループ
- 言語活動 グループでの話合い
- 8 [第4学年]書くこと
- 子どもが自然に学び合う環境づくり
- 言語活動 新聞作り
- 9 [第5学年]話すこと・聞くこと
- 全員参加を促す話合いボード
- 目的に沿って意見を出し合いまとめる話合い活動
- 言語活動 グループでの話合い
- 10 [第5学年]書くこと
- 必要感のあるグループ学習
- 言語活動 俳句の創作と作品の鑑賞
- 11 [第6学年]話すこと・聞くこと
- 過程を重視した話合い
- 言語活動 グループでの話合い
- 12 [第6学年]読むこと,書くこと
- 「ジグソー法」を使って読みを深める
- 言語活動 絵画を見て鑑賞文を書く
- おわりに
はじめに
編者は12年間小学校の教師をしてきた。その中で編者の授業観は以下のように変わってきた。最初は一斉授業で教師がよい切り返しをして,子どもの素晴らしい意見を引き出すという授業観である。しかし,それでは子どもの本当の主体的な学び合いになっていないのではないか,という指摘を受けた。そのため教師が引っ張るのではなく,子どもたち自身で学び合うように,授業の司会を子どもに任せた一斉授業をするようになった。その結果子どもたちが主体的に学んでいるように見えるようになった。
しかし,本当に全員に有意義な学びがあったかという指摘を受けた。一生懸命考えている子どももいれば,そう見えているだけの子どももいる。授業中発言するのは多くても2,3回であり,全く発言しない子どもも出てきてしまう。確かにしっかり聞いて考えているという見方もできる。しかし国語科の授業なのに多く表現できない,というのは体育の授業なのに体を動かさないのと同じではないだろうか。
そこで筆者はまた授業観を変え,全員が活動し,発言し,学習できる授業を考えるようになった。それが後で説明するような学習環境デザイン的な授業である。全体での学び合いだけではデメリットもあるので,一斉授業とペア学習や少人数グループを組み合わせて全員が活動できるようにした。
しかしそのような授業は本当に難しい。一斉授業であれば教師が発問や切り返しで簡単にコントロールできる。しかしペアやグループでは,多くのペアやグループができるので,机間指導をいくら一生懸命しても,全てのグループを見ることはできない。また机間指導でもずっと同じ子どもを見ているわけにはいかず,子どもを少しだけ見て指導しなければならない。
そのために子どもをコントロールしようという発想を捨てることにした。子どもが夢中になって活動できる単元を考え,後は子どもを信じ,子どもが学びやすいように学習環境を整えるようにしたのである。その結果子どもたちは大きく変わり,教師から指示されたことをするのではなく,自分たちで何をしたいか考えて学び合うようになってきた。クラス全体の話合いだけの時よりも一人一人の発言や活動が増えたので,子どもが多くのことを学び,そして何よりも自分の学習に自信をもち,意欲的になってきたのである。
このようにそれぞれの授業形態には長所と短所があり,それを場面によって使い分けたり,組み合わせたりすることによって子どもの主体的な学び合いを生み出し,効果的な学習にすることができると考える。
本書は,学び合いの授業をどうデザインしていくのかを提案するものである。Chapter1では,理論編として学び合いの授業がどうして今,必要なのか,そしてどのように考えればよいのかについてアクティブ・ラーニングや21世紀型能力の視点から説明する。Chapter2では,準備編としてそれぞれの学び合いの形態の特徴と留意点について具体的に述べる。Chapter3では,実践編として各学年2つずつ12本の実践事例を紹介する。どれも効果的な学び合いになった事例であり,読者の先生方の参考になることが間違いないであろう。
本書が子どもの主体的な学び合いを目指している読者の先生方に,少しでもお役に立てたら幸いである。
2016年5月 編著者 /細川 太輔
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- 明治図書
- どのようにペア学習できるかわかりやすい。すぐに使えるのが良かった2023/3/3140代 小学校
- 具体的で、わかりやすかった。2020/4/2240代・小学校教員
- いろんな実践が載っているので、とても参考になりました。2019/6/820代・小学校教員
- 交流活動に焦点化されているために大変よい。2016/6/2550台 指導主事