- まえがき
- 第1章 「話す力」を育てる
- <朝の会・帰りの会で>
- 1 朝の会を「みんなの歌」ではじめる
- 朝の会で歌をうたって声をだす/ 「習うより慣れよ」がじょうずに話す近道/ 子どもも今週の歌を選曲する
- 2 朝の会・帰りの会で「司会」をする
- 日直の司会をして話すことに慣れる/ 担任との打ち合わせも話す力を育てる/ 言葉の力を育てる朝の会・帰りの会
- 3 「委員・係・当番」になってみんなに話す
- 委員,係,当番として友だちに話しかける/ 給食,飼育,掃除などについて連絡する/ 授業のはじめに教科係の出番をつくる
- 4 「今日のニュース」を発表する
- みんなに今日のニュースを発表する/ 社会や国語の授業,給食の時間にニュースをいう/ 今日のニュースを発表させるときのコツ
- 5 「1分間スピーチ」をする
- 自由なテーマで話してスピーチに慣れる/ 「みんなが聞いて楽しい」をテーマにする/ 学級活動,道徳,給食の時間などに話す
- 6 友だちの「よかったさがし」をする
- 友だちの「よかったさがし」は心を育てる/ 人のよいところは言いやすく言葉の力も育つ/ 人格を認める言い方もたいせつな言語力
- <学級活動で>
- 7 新しい学級で「自己紹介」をする
- 定番の「自己紹介」に教師が味つけをする/ 自分のよいところ1つ,よくないところ1つ/ 「自分が生まれかわったら」などのヒントをだす
- 8 「わたしの大失敗」をスピーチする
- 「わたしの大失敗」はスピーチしやすいテーマ/ 言葉を手がかりにして自分を見つめる/ 人間関係が深まると失敗について話せる
- 9 わたしの「好きな動物」を話す
- 「好きな○○」はテーマを見つけやすい/ 「家族が好きな○○」のように発展させる/ 学級のマスコットにふさわしい動物を考える
- 10 わたしの「宝物」について話す
- 外国では「ショウ&テル」のスピーチが盛ん/ 日本の英語授業でも「ショウ&テル」をしている/ 宝物は高価なものでないほうが面白い
- 11 「わたしの夢」をスピーチする
- 「わたしの夢」は枠にはめないで想像させる/ 「20年後のわたし」をイメージして話す/ 小さい夢と大きい夢に分けて話す
- <ゲーム・クイズで>
- 12 先生につけたい「ニックネーム」を話す
- ゲーム・クイズの手法を取り入れて話をさせる/ 先生につけたいニックネームを交換する/ ニックネームの理由について意見をたたかわせる
- 13 ○○さんの「宝さがしゲーム」をする
- 支持的な教室が子どもの話す力を育てる/ ○○さんの「宝さがし」は「良いところさがし」/ チャンピオンシートにすわり「宝」を言ってもらう
- 14 「ジェスチャーゲーム」をする
- 話す力を育てるためのジェスチャーゲーム/ ジェスチャーを見て遊びながら言葉をいう/ グループ対抗,座席対抗のゲームに仕立てる
- 15 「どっちがいいゲーム」をする
- 2つを比べて「どっちがいいか」を争う/ ディベートと似ているが勝ち負けをきめない/ ハンバーガーとサンドイッチはどっちがいい
- 16 絵を見せて「ここだけのお話」をする
- みんなに見せるためのお話の絵をかく/ 絵を見せながら「ここだけのお話」をする/ 友だちの絵を話したり,リレー式に話したり
- 17 「紙芝居」をつくってみんなに話す
- 紙芝居は班で話し合ってつくる/ 紙芝居の絵ができたらセリフを考える/ ほかのクラスと「紙芝居」の交換会をする
- 18 「エプロンシアター」でお話をする
- エプロンシアターは幼稚園の子どもが大喜び/ 子どもがエプロンシアターを演じる/ 黒板をつかえばパネルシアターもできる
- 19 教室で「ロールプレイ」を演じる
- ロールプレイで役割を演じて遊ぶ/ 子どもに合ったテーマで役割を演じる/ みんなといっしょでもグループごとでも楽しめる
- <授業で>
- 20 「教科係」になってみんなに話す
- 教科係としてみんなに連絡事項を話す/ 授業のはじめに教科係の出番をつくる/ 授業中に教科係の子どもの発言を求める
- 21 授業のはじめに「5分間学習」をする
- 子どもの5分間学習で授業をはじめる/ 先生役を演じることで言葉の力を育てる/ だれもが5分間学習のリーダーをする
- <全校・学年活動で>
- 22 「スピーチコンテスト」をする
- パブリックスピーキングが言葉の力を育てる/ 全校,学年,学級でスピーチコンテストをする/ 学級のグループでスピーチの練習をする
- 23 卒業のときに「旅立ちの言葉」をいう
- 卒業文集があるなら卒業スピーチがあってもよい/ かけ合いのスピーチもいいが個人を輝かせたい/ 決まりきったことではなく自分の言葉で話す
- 第2章 「聞く力」を育てる
- <朝の会・帰りの会で>
- 24 朝の学活で「詩の朗読」を聞く
- 聞く力は聞く技術と聞く習慣によってつくられる/ 朝一番は説教ではなく子どもが聞きたい話をする/ 詩の朗読は子どもの心を落ち着かせる
- 25 聞いたことを「連絡帳」に書く
- 聞いたことをノートできるのはたいせつな能力/ 聞き取ったことを連絡帳でたしかめる/ よく聞き取れた連絡帳に一言そえて返す
- 26 聞いたとおりを「聴写」する
- 聴写は心を落ち着けて聞くためのプロローグ/ 先生や友だちが話したことを聞いて書く/ 聴写はごく簡単なものから長いものまで
- 27 お話の「聞き取りクイズ」をする
- 子どもはクイズ形式の練習が大好き/ 教師がだすクイズ,子どもがだすクイズ/ やる気がでる聞き取りクイズのコツ
- 第3章 「聞いて話す力」を育てる
- <学級活動で>
- 28 「話し方・聞き方の約束」をつくる
- 「話す力」+「聞く力」≠「聞いて話す力」/ 聞いて話すためには話すルール聞くルールがいる/ 「話し方・聞き方の約束」はどの教室にも掲示する
- 29 「話し方・聞き方週間」をつくる
- 「聞いて話す力」は訓練して育てることも必要/ 「話し方・聞き方週間」は全校・学年いっせいにする/ 「聞いて話す力」を育てる練習の実際
- 30 話す声の大きさを「数字や動物」であらわす
- その場に合った声の大きさとだし方を教える/ 声の大きさを1・2・3・4・5の数字であらわす/ 低学年では動物の声で大きさをあらわす
- <グループ活動で>
- 31 「班の話し合い」のなかで話す
- 班の話し合いは聞いて話す力を育てる/ 班の話し合いで子どもに教えたいこと/ みんなが交代して司会をする仕組みにする
- 32 話しやすい「班の編成」の仕方
- 聞いて話す力を育てるための班の編成/ 班で話し合うときの座席をきめておく/ 話すテーマと話し合いの時間をきめる
- 33 「班の話し合い」の基本型
- 「1:3式」など3つの基本型を知る/ 「リレー式」では順々に意見や感想をだす/ 「タッチ式」では指名した人の意見を聞く
- 34 「班の意見」をまとめていう
- メンバーの意見をまとめるとき多くの能力が育つ/ すべての子どもにリーダーを経験させる/ 班の意見をまとめる経験が言葉の力を育てる
- <1対1の活動で>
- 35 「友だち」から聞いたことを話す
- 友だちに聞いて話すことで聞く力が伸びる/ 将来の夢,わたしの大失敗,うれしかったことなど/ 1対1のペア活動を班・学級の活動につなぐ
- 36 「家の人・地域の人」から聞いて話す
- あらたまって家の人に取材をすることの効果/ 目上の人・年上の人から話を聞く体験もたいせつ/ 家の人・地域の人の取材で意外な事実を知る
- <学年・学級活動で>
- 37 「パネルディスカッション」をする
- パネルディスカッションは聞いて話す力を育てる/ 保護者と子どもが話し合う親子シンポジウム/ 子どもと先生が意見を交換する学校シンポジウム
- 第4章 「読む力」を育てる
- <学級活動で>
- 38 朝の「10分間読書」をする
- 読む力を育てる最良の方法はやはり読書/ 学校全体で朝の10分間読書をする/ 10分間読書を成功させる2つの道筋
- 39 物語の「読み聞かせ」をする
- 物語の読み聞かせは読む力を育てる第一歩/ 教室での読み聞かせは時間をきめて少しずつ/ 希望する子どもがいれば読み役をさせる
- 40 みんなで物語の「群読」をする
- 群読でいっしょに声をだして詩や物語を読む/ 群読で子ども同士のコミュニケーションが生まれる/ 国語の活動としての群読,学級活動としての群読
- 41 子どもによる「読書テスト」をする
- みんなで本の読みを楽しめる読書テストをする/ 読書テストは一種の読書ゲームと割り切る/ 出題は登場人物,話のすじ,面白かったところなど
- 42 学級で「読書感想文コンクール」をする
- 学級オリジナルの読書感想文コンクールをする/ 子どもは読書感想文の審査員になったことがない/ 優秀な感想文には手づくりの表彰状をだす
- <学年・学級活動で>
- 43 学級・学年で「親子読書会」をする
- PTAとの共催で親子読書会をする/ 同じ本を読んで感想をかわす面白さを体験する/ 本のことを話題にできる家庭や学校をつくる
- 第5章 「書く力」を育てる
- <学級活動で>
- 44 子どもの「あのね帳」をつくる
- 低学年では「せんせい,あのね」と「あのね」帳に書く/ 書くことを快感にさせる教師の手助け/ 書くことは思いだすこと考えること
- 45 帰りの学活で「1行日記」を書く
- 1日をふり返って自分の経験を結晶させる/ 教師はすぐにたくさん書かせようとする/ 1行日記を書くのに慣れたら3行日記にする
- 46 「よいところ学級日誌」を書く
- 日本人は自分のよいところをみつけるのが苦手/ 学級日誌によいところを書くコーナーをつくる/ よいところをみつけた学級日誌に点数をつける
- 47 「いい漢字ゲーム」をする
- 帰りの会で「いい漢字ゲーム」をする/ みんなでゲームを楽しめる学級をつくる/ 接続詞や擬音語・擬態語でもゲームができる
- 48 「写真」に説明文をつける
- 写真の場面をもとに説明文をつくる/ 遠足,運動会,発表会,修学旅行の写真をつかう/ みんなでじょうずな説明文を選んで表彰する
- 49 子ども同士の「リレー作文」を書く
- 日本古来の連歌をヒントにリレー作文をつくる/ 作文をつなぐために友だちの文を読む/ 中学生や高校生になればリレー小説もできる
- 50 友だちの「よいところカード」を書く
- よいところカードは人間関係の態度を育てる/ 友だちのよいところをみつけて文で表現する/ 相手の気持ちを考えて文を書く力を身につける
- 51 学習したことを「教科新聞」にする
- 授業の印象的なことを教科の新聞にまとめる/ 国語の読書新聞,社会の地理新聞,理科の実験新聞など/ 事実と意見を区別して書き,人の話を「 」で紹介する
- 52 グループで「班新聞」をつくる
- 学級の班活動に新聞づくりを取り入れる/ 班ごとに新聞をつくって教室に掲示する/ 班新聞コンクールをして文章力を高め合う
- 53 「班ノート」を書いて回し読む
- 班ノートは文字をつかったコミュニケーション/ 教師は班ノートに参加するのかしないのか/ 書くのが楽しみになる班ノートづくり
- 54 総合的学習の自由研究をまとめる
- 興味・関心が生かされて総合的学習が成立する/ 総合的学習だからこそ伸ばせる力がある/ 自由研究で文章にまとめ表現する言語力を育てる
- 55 「学級文集・卒業文集」をつくる
- 手書きでつくるかパソコンで入力するか/ 思い出を書く,将来の夢や希望を書く/ 学級文集・卒業文集では育った言語力があらわれる
- あとがき
まえがき
いま,子どもの言語力を育てることが必要といわれている。
たしかに,マンガや動画の文化になって,言葉の一言一言をたいせつにする気持ちが薄らいでいる。
この現象は,なにも子どもにかぎったことではなく,大人や学生にもみられる。
ただ,日本には,もともと美しい言葉をつかう文化がある。
たとえば,春になってサクラが咲くころ,冬のように寒い日のことを「花冷え」という。
これは,情景と温度感を重ね合わせた美しい日本語である。
また,旅をするとき,「片泊まり」という言い方がある。
これは,旅館やホテルでの一泊二食ではなく,食事をとらない素泊まりでもない。
片泊まりとは,一泊と朝食だけの一泊一食のことをいう。
ここには,美しさだけでなく,日本人がもつ粋さえも感じられる。
このように考えると,日本人の言語力を育てるときには,ゼロからのスタートではなく,これまでに失われてきたものを思いだすという発想がたいせつである。
日本人が弱いのは,おおぜいの人の前で話すパブリック・スピーキングの技術である。
これは,外国人のほうがじょうずで,テーブルスピーチや講演では,かならずといってよいほど,ジョークからはじめる。
そして,聞いている人をなごやかにする。
まさに,日本人のスピーチは「言い訳」からはじまり,外国人のスピーチは「ジョーク」からはじまる。
いまの指導要録では,国語科の評価の観点に「話す・聞く能力」が付け加わったが,これからの日本人は,そんなジョークをあやつる技術も身につけたい。
「若い教師力アップ選書3」は,子どもの言葉の力を育てることを願って,『子どもの言語力を育てる学級と授業』とした。
言葉を育てるのは,本来,国語科の仕事であるが,国語科だけでできるとは思われない。
どの教科も,言葉をつかって授業をしているのだから,言葉の指導は教科を問わない共通課題である。
また,言葉の指導は,教科の授業だけでなく,学級活動でもおこないたい。
本書は,「話す力」「聞く力」「聞いて話す力」「読む力」「書く力」の5章構成で,子どもの言語力を育てる方策を提案した。
これは,国語の授業だけではなく,学級活動や学年活動をふくめた学校教育の提案でもある。
本書を参考にして,先生方が,朝の会・帰りの会,特設の学級活動,またゲームやクイズを活かした活動を工夫してくださればうれしい。
次代をになう子ども達に豊かな言葉が育つよう,若い先生方が,さらにアイデアにとんだ教育実践をしていただくことを願っている。
2009年3月 /長瀬 荘一
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- 明治図書