- はじめに
- 第1章 国語授業でもっと思考ツールを活用しよう!
- 思考ツールの可能性
- 思考ツールの分類
- 思考ツールを活用した単元・授業づくり
- 第2章 国語授業で使える40の思考ツールとその活用法
- 1 ピラミッドチャート
- 2 ウェビングマップ
- 3 クラゲチャート
- 4 フィッシュボーン
- 5 マトリクス
- 6 ダイヤモンドランキング
- 7 仮説検証チャート
- 8 トゥールミンモデル
- 9 心情曲線
- 10 人物関係図
- 11 因果チャート
- 12 帰納チャート
- 13 比較チャート
- 14 具体化チャート
- 15 抽象化チャート
- 16 分類チャート
- 17 定義チャート
- 18 類推チャート
- 19 サークルチャート
- 20 付箋
- 21 構造曲線
- 22 文章構成図
- 23 ロジックチャート
- 24 レーダーチャート
- 25 吹き出し
- 26 帯グラフ
- 27 ルートマップ
- 28 クリティカルチャート
- 29 棒グラフ
- 30 イラスト
- 31 Xチャート
- 32 聞き取りチャート
- 33 質問カード
- 34 小論文チャート
- 35 ベン図
- 36 対立チャート
- 37 てんびんチャート
- 38 おだんごチャート
- 39 ぐるぐるチャート
- 40 ジグザグチャート
- 第3章 40の思考ツールを活用した授業実践例
- [ピラミッドチャート]「最後の晩餐」のかっこよさのもとを探ろう
- 「君は『最後の晩餐』を知っているか/「『最後の晩餐』の新しさ」
- [ウェビングマップ]資料を読み取り考えを書こう
- 「根拠を明確にして書こう」
- [クラゲチャート]「ぐうちゃん」の人物設定を読み取ろう
- 「アイスプラネット」
- [フィッシュボーン]広告を多角的に分析しよう
- 「考えを効果的に伝えよう 多角的に分析して批評文を書く」
- [マトリクス]2つの事例を比較しよう
- 「受け取る『利他』」
- [ダイヤモンドランキング]話したい順番を決めよう
- 「説得力のある構成を考えよう」
- [仮説検証チャート]仮説と検証結果を整理しよう
- 「クマゼミ増加の原因を探る」
- [トゥールミンモデル]意見文を書くための材料を集めよう
- 「適切な根拠を選んで書こう」
- [心情曲線]芭蕉の旅を追体験しよう
- 「夏草―『おくのほそ道』から」
- [人物関係図]登場人物の変化を読み取ろう
- 「故郷」
- [因果チャート]気持ちの変化や行動の原因を読み取ろう
- 「私たちの未来」
- [帰納チャート]筆者の考えを要約しよう
- 「『不便』の価値を見つめ直す」
- [比較チャート]反復表現を比較し、心情を解釈しよう
- 「はじまりの風」
- [具体化チャート]本当のドラミングの意味は何だろう
- 「作られた『物語』を超えて」
- [抽象化チャート]「言葉」に対する筆者の見方や考えをつかもう
- 「それでも、言葉を」
- [分類チャート]グループで話し合い、考えを広げよう
- 「話題や展開を捉えて話し合おう」
- [定義チャート]筆者の論の展開をつかもう
- 「『言葉』をもつ鳥、シジュウカラ」
- [類推チャート]出来事に対するレンの心情の理由を読み取ろう
- 「はじまりの風」
- [サークルチャート]根拠と理由をもった感想を書こう
- 「字のない葉書」
- [付箋]伝えたいことを見つけ話の構成を考えよう
- 「話の構成を工夫しよう」
- [構造曲線]物語の展開をつかもう
- 「大人になれなかった弟たちに……」
- [文章構成図]段落のつながりを整理しよう
- 「ダイコンは大きな根?」
- [ロジックチャート]論理展開を整理しよう
- 「モアイは語る―地球の未来」
- [レーダーチャート]メロスとディオニスの設定を考えよう
- 「走れメロス」
- [吹き出し]書かれていない「私」の思いを捉えよう
- 「星の花が降るころに」
- [帯グラフ]「僕」とエーミールの価値観の違いを探ろう
- 「少年の日の思い出」
- [ルートマップ]わかりやすい説明の仕方を身に付けよう
- 「情報を整理して説明しよう」
- [クリティカルチャート]3人の意見に対し考えをもとう
- 「複数の意見を読んで、考えよう」
- [棒グラフ]「僕」とタクジの設定をつかもう
- 「ヒューマノイド」
- [イラスト]蓬莱山をイラストに表そう
- 「蓬来の玉の枝」
- [Xチャート]ルロイ修道士と「わたし」の人物像をつかもう
- 「握手」
- [聞き取りチャート]インタビューをして職業のやりがいをつかもう
- 「情報を整理して伝えよう」
- [質問カード]物語の内容をつかもう
- 「扇の的」
- [小論文チャート]資料を読み取り立論しよう
- 「論理の展開を意識して書こう」
- [ベン図]作品のはじめと終わりを比べてみよう
- 「星の花が降るころに」
- [対立チャート]メロスの人物像を読み取ろう
- 「走れメロス」
- [てんびんチャート]登場人物の設定をつかもう
- 「足跡」
- [おだんごチャート]文章を序論・本論・結論に分けて要約しよう
- 「ネコだって推理できる」
- [ぐるぐるチャート]20歳になった日の体験で私はどう変わっただろう
- 「二十歳になった日」
- [ジグザグチャート]物語で描かれていることはいつのことか整理しよう
- 「握手」
- 引用・参考文献
はじめに
生徒一人ひとりが見通しを立て、小説や論説文を自分の力で読み取ったり、意見文・小論文を書き上げたり、スピーチを述べたり、話し合いをしたりする姿を私たちは願います。けれども、現実は課題解決のための方略を生徒自らが働かせていくより、教師の指示で活動が進む授業となることは少なくありません。このことは、登場人物の心情はどのように読み取ればよいのか、意見文の構成はどのようにしたらよいのかといった課題解決のための方略指導の困難さの表れだと思います。
ところで、国語科で課題解決のための方略と言えば、どんなものがあるでしょう。例えば、文学的文章において「登場人物の設定の仕方を捉える」際の方略の1つに「ある観点に基づいて、その観点に該当する言動を集め、共通点をまとめて意見をつくる」があります。メロスの設定を捉える際、冒頭でのメロスの言動に目をつけます。老爺からディオニス王の振る舞いを聞いたメロスは買い物を背負ったまま王城に入っていきます。妹の結婚を決め、セリヌンティウスを人質として差し出すことを約束します。このような箇所からメロスは直情径行型の人物の側面をもつ設定が見えてきます。ここで働かせた「ある観点に基づいて、その観点に該当する言動を集め、共通点をまとめて意見をつくる」方略は、文字言語として頭の中にとどめることは難しいものです。方略を文字言語にしたときの難解さは、方略を獲得し、蓄積する困難さの大きな要因です。
では、課題解決の方略を文字言語としてではなく、図にしたらどうでしょうか。先ほど示した帰納的思考も、図にすることで根拠を集め束ねるイメージができ、文字言語として記憶するよりも、保持しやすいのではないでしょうか。そこで本書では、課題解決を行う際の様々な方略を思考ツールとして視覚化することにより、解決のためのイメージをもちやすく、蓄積しやすくすることを意図しました。各思考ツールの基本的な性格を解説したうえで、各領域での具体的な活用モデルを示しました。
本書が、課題解決のための方略を獲得していくための一助になれば幸いです。
最後になりましたが、本書を上梓するにあたりご尽力くださった明治図書出版教育書編集部の矢口郁雄氏に心より感謝申し上げます。
2025年5月 /小林 康宏
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- 明治図書