- 発刊にあたり
- はじめに
- 第1章 挑戦:学級経営を定義する
- 1 定義することが何の役に立つ?
- @ 定義しなくても何ら支障がない日常
- A 定義は必要ないのか
- 2 学級経営を定義するということ
- @ 定義されてこなかった学級経営
- A 学級経営を定義する意味
- 第2章 学級経営の「定義」
- 1 「学級」とは
- @ 学級経営とは何かを考える前に
- A 等級制の始まり
- B 学級制の始まり
- C 学級という仕組み
- D 学級に求められているもの
- 2 「経営」とは
- @ 経営の意味
- A 学級を「経営」するということ
- 3 学級経営の定義をめぐる議論
- @ 学級経営の定義は難しい!?
- A 学級経営の定義を巡る対立
- 〈寄り道〉学級経営はRPG?
- B 似ている用語との区別
- 第3章 学級経営と社会
- 1 学級経営のはじまり
- @ 学級経営という言葉が生まれた背景
- A 学級経営の「あいまいさ」はいつから?
- B 学級経営の意味は変わる?
- 2 学級経営に求められるもの
- @ 社会と学級
- A 学習指導要領から考える,学級経営に求められるもの
- B 学級経営を行う上で
- 第4章 学級経営を理解する五つの窓
- 1 学級経営の視点の提案
- ○ 学級経営を理解するための五つの窓
- 2 一の窓:目的・その向かう先
- @ あいまいな目的
- A 学級経営の目的とは
- 〈寄り道〉解釈すること
- 3 二の窓:機能・その役割
- @ 学級経営は機能か
- A 学級が機能する,とは
- B 学級の機能とは何か
- C 学級経営の機能とは何か
- 4 三の窓:領域・その対象
- @ 学級の領域の捉えもそれぞれ
- A 学級経営に授業は入るか
- B 学級経営の領域=全てでいいのか
- C 学級経営の領域の切り取り方
- D 学級経営は担任のものなのか?
- 5 四の窓:哲学・その考え方
- @ 学級経営の主体としての教師の哲学
- A 外的・内的な理想
- B 学級経営の方向性
- C 教育哲学は自分だけのものではない
- D 教師の「観」
- 6 五の窓:技術・その為し方
- @ 技術としての学級経営
- A 学級経営には哲学も必要
- 7 まとめ:五つの窓から学級経営を再定義する
- @ 学級経営の定義
- A 「あいまいさ」を超えて
- 第5章 五つの窓から実践を構想する
- 背景となる哲学
- @ 背景を述べる必要性
- A 理想の学級像
- B 五つの窓から考える私の学級経営
- 第6章 集団づくり
- 1 学級経営における集団づくり
- ○ 集団づくりの位置づけ
- 2 コミュニケーションの量の保証
- @ 量と質どちらが優先か
- A コミュニケーションの量の確保をどうやってする?
- B 量の確保は授業から!
- 3 コミュニケーションの質の向上
- @ コミュニケーションで必要なスキルとその習得のために
- A コミュニケーションにおける態度の重要性
- 4 学級ゲームを軸に
- @ 学級ゲームの位置づけ
- A 学級ゲームの目的・目標は
- B 学級ゲームのすすめ
- C 学級ゲームを子どもたちはどう見る?
- D 学級ゲームへの迷いも
- E おすすめ学級ゲーム
- 5 相互評価を活かして
- @ 相互評価の位置づけ
- A 相互評価をいつ,どうやって行うか?
- 6 笑いのある学級に
- @ 笑いの位置づけ
- A 笑いは学級の文化だ
- 7 教師と子どもの関係づくり
- @ 集団づくりの前提
- A 私の関係づくり
- B 関わりをつくる上で大切にすること
- 〈寄り道〉 私のリーダーシップ研究
- 第7章 生活集団としての学級
- 1 課題解決のサイクル
- @ 課題解決のサイクルの位置づけ
- A 具体的な流れ
- 2 係活動
- @ 係活動の位置づけ
- A 係と当番を分ける
- B 係活動におけるちょっとした工夫
- 3 当番活動
- @ 当番活動の位置づけ
- A 当番活動への様々な意見
- B 当番活動におけるちょっとした工夫
- C 当番活動が絶対ではない
- 4 掲示物
- @ 掲示物の位置づけ
- A 掲示物作成のポイント
- B 学級クエスト
- C こんな工夫も
- D 学級の最後の日に
- E 子どもとつくる掲示物
- 第8章 学習集団としての学級
- 1 ゆるやかな関係性を活かして
- @ 学習集団の育成に向けて
- A 1時間の流れの例
- B 学び方を共有する
- C 私の理想
- 2 理想の学習集団との出会い
- @ 指導案検討に驚き
- A 実際の授業に驚き
- B 掲示物に驚き
- C S先生の学級を思い返して
- おわりに
発刊にあたり
全国津々浦々,教育現場を訪れ,多くの学校の先生方と語り合ってきました。そこで私が痛感したのは,多くの方々が「学級経営のやり方」に困っているというよりも,そもそも「学級経営とは何か」がわからず,途方に暮れているという現実でした。
「どのようにすれば良いクラスになるのか?」「どうすれば生徒のやる気を引き出せるのか?」という問いの答えを探し,多くの教師は研修会に参加し,指導書を読み,実践事例を熱心に学びます。しかし,具体的なノウハウをいくら手に入れても,根本にある「学級経営の定義」が曖昧なままだと,その知識は断片的な情報として漂うだけで,確固たる信念へと結びつきません。
そうした混乱は,全国各地で様々な形で現れています。ある教室では,教師が一生懸命に子どもたちにルールを守らせようと奮闘するも,なぜそのルールが必要なのかが子どもたちに伝わらず,反発や無関心を生んでいます。また別の教室では,子どもたちの自主性を尊重しようと教師が指導の主導権を手放した結果,無秩序な状態に陥り,学びが成立しなくなっています。これらは全て,「学級経営とは何か」という共通の認識がないことから生じる悲劇と考えられます。
多くの教師は,学級経営について体系的に学ぶ機会がありません。先輩の背中を見て学び,実践の中で試行錯誤を繰り返すことが一般的です。しかし,教育現場が複雑化し,多様なバックグラウンドをもつ子どもたちと向き合う現代において,そのような属人的なノウハウだけでは限界があります。共通の「羅針盤」がなければ,教師は迷路の中にいるような不安を抱え,結果として自身の教育観を見失ってしまう危険性があります。
本書は,この根深い問題に立ち向かい,「学級経営とは何か」を定義することを試みた一冊です。これは単なる理想論や美辞麗句の羅列ではありません。本書を担当したもう一人の著者,高橋宇ひさし氏は,この問いに答えるために,2年間にわたり,教育学,心理学,社会学など多岐にわたる分野の文献,論文,資料を300以上読み漁りました。それらを読み解き,既存の概念を統合し,再構築することで,学級経営の核となる普遍的な原理を探究しました。
さらに,この研究知に加えて,彼が長年にわたり学級崩壊の立て直しに身を投じてきた実践知を融合させました。机上の空論ではない,現場で実際に機能する定義でなければ,教師の皆さんに貢献することはできません。本書に記された定義は,荒れたクラスを立て直し,子どもたちが再び学びに向き合う力を取り戻す過程で,幾度となく試され,磨き上げられてきたものです。
本書を手に取った皆さんは,学級経営に対する漠然とした不安から解放され,確固たる指針を得られることでしょう。そして,この定義を羅針盤として,それぞれの教室で子どもたちと共に歩む旅を,より確信をもって進められるようになると信じています。
本書が,教師の皆さんの日々の実践に貢献し,一人でも多くの子どもたちが安心して学び,成長できる教室を創り出す一助となることを心から願っています。
/赤坂 真二
-
明治図書

















