- まえがき
- 第1章 いじめに強いクラスをつくる いじめに強い教師になる いじめ指導理論編
- 1 教え子からのメール
- 2 いじめ防止対策推進法と基本方針の策定作業から見る対策の穴
- 3 いじめの現状から見える対策の要
- 4 子ども集団を組織する
- 「いじめに強いクラスづくり 予防と治療マニュアル」の使い方
- ※第2章の実践編は,下記の項目を中心にまとめています。
- (1)いじめ予防編
- ▲いじめを起こさないために,普段から実践している日常指導をまとめています。いじめ早期発見のための手立て,教科指導,道徳,特別活動など授業との連携,いじめ予防のための「鉄板活動」「鉄板授業」「鉄板指導言」などを,追実践できる情報を豊富に入れてまとめました。
- (2)いじめ治療編
- ▲いじめの具体例を挙げて,具体的な指導事例をまとめました。子どもたちに投げかけた言葉,子どもたちの反応などを再現ドラマのようにありありとまとめました。
- (3)いじめ指導の極意
- ▲これまでの取り組みから導き出された指導の原理原則をまとめました。失敗事例なども踏まえて,陥りがちなミスなども入れてまとめています。
- 第2章 いじめに強いクラスづくり 予防と治療マニュアル いじめ指導実践編
- 1 子どもが主役となるいじめ予防〜子どもたちのかかわりを変える二つの支援策〜
- 1 いじめ予防編 友だちの“ステキな行動”に目を向ける子どもを育む
- (1) ポジティブなかかわりの大切さ
- (2) 授業実践:“ステキな行動”をみんなで認め合っていこう!
- 2 いじめ治療編 もめごとを仲間づくりのチャンスに変える
- (1) 実録,クラスで始まった「いじめ」
- (2) 授業実践:友だちのもめごとを解決しよう!
- 3 いじめ指導の極意 予防・治療に共通する指導の原則
- (1) 教師が子どもにとってのモデルとなる
- (2) 子どもたちのニーズに合った取り組みをする
- (3) 子どもが主役となる取り組みをする
- 2 「クラス」というチームVSいじめ
- 1 いじめ予防編 まずは「予防指導」を重視!いじめを未然に防ごう!
- (1) 「クラスの目標」と「みんなの約束」を決め,効果的に活用しよう!
- (2) 「友だちのいいところ探し」を通して,一人一人のよさを認め合おう!
- (3) 「ホメホメタイム」を通して,友だちのよさを直接伝え合おう!
- (4) 「学級だより」を出し,効果的に活用しよう!
- (5) 子どもたち一人一人と個人面談を行おう!
- 2 いじめ治療編 もしいじめが起こってしまったら,「治療指導」! クラスみんなでの解決を目指そう!
- (1) 状況把握
- (2) Dさんへの対応
- (3) 事実確認
- (4) 保護者対応(その1)
- (5) クラスみんなでの話し合い
- (6) 保護者対応(その2)
- 3 いじめ指導の極意 自分たちの力でいじめに対応できる子ども集団に
- 3 クラスへの誇り,愛着こそがいじめを寄せ付けない
- 1 いじめ予防編 つながる,つなげる,つなげ続ける
- (1) 教師と子どもがつながる
- (2) 子どもと子どもをつなげる
- (3) 全員をつなげ続ける
- 2 いじめ治療編 つながりを切らない
- (1) 教師と子どものつながりを切らない
- (2) 子どもと子どものつながりを切らない
- (3) 全体の中でのつながりを切らない
- 3 いじめ指導の極意 紡ぎ続けたからこそ愛着と誇りがもてる
- 4 絶対に見たい子どもの「顔」がそこにはある!
- 1 はじめに
- 2 「顔」
- 3 いじめ予防編 見えない顔を見に行く
- 4 いじめ治療編 協同性を利用する
- 5 いじめ指導の極意 日常的に目を向け,つながりを見る
- (1) 予防の極意:見えない顔を見に行く
- (2) 治療の極意:協同性の利用
- 6 予防か治療か
- 5 個を信じ,集団を疑う
- 1 いじめ予防編 あの手この手で臨む
- (1) いじめ予防に特効薬なし
- (2) いじめについて教える
- (3) 子どもとつながる
- (4) いじめ予防,子どもの視点から
- (5) ネット上のいじめ予防
- (6) 劇薬
- 2 いじめ治療編 信じる
- (1) 私がした「いじめ」
- (2) 無条件に信じる
- (3) 信じなかった経験から
- 3 いじめ指導の極意 「先生は自分のことを信じている」
- 6 予防にコストを 治療にはケアと集団の力を
- 1 いじめ予防編 早期発見に努める
- (1) 子どもの変化に気付く
- (2) 授業で教え育てる
- 2 いじめ治療編 初期対応こそすべて
- (1) 何も気付かなかった私 保護者が突然やってきた!
- (2) まずは事実確認
- (3) 事実と指導の経緯を報告
- (4) その後のケア
- (5) 集団の力を活用
- 3 いじめ指導の極意 予防へのコストと治療でのケア
- 7 システムと覚悟,共感と希望を
- 1 いじめ予防編 いじめに対して攻めの姿勢をとる
- (1) いじめを見逃さない
- (2) いじめが起こりづらい学級とは
- (3) いじめ指導に強い教師の特徴
- (4) 仲間づくりの前提を語る
- (5) 道徳の授業でゆさぶる
- (6) いじめる子の暗い部分に共感する〜本当にケアが必要なのは誰か〜
- 2 いじめ治療編 まず,思いは内包し,淡々と進める
- (1) いじめ解決を流れで考える
- (2) いじめ指導の実際
- 3 いじめ指導の極意 最終的には「覚悟」と「執念」が大切
- 8 いじめ問題の分析的予防と臨床的治療〜小学校下学年編〜
- 1 いじめ予防編 いじめ問題の理解と予防
- (1) いじめ問題の捉え方
- (2) いじめ加害に影響する要因
- (3) ストレッサーを緩和させる社会的支援
- (4) いじめ予防の実際
- 2 いじめ治療編 いじめ問題の発生と治療
- (1) 実態把握といじめ治療
- (2) いじめの治療@(実際編)
- (3) いじめの治療A(仮想編)
- 3 いじめ指導の極意 分析的な予防と臨床的な治療を
- あとがき
まえがき
1980年あたりから校内暴力の嵐が全国の中学校を中心に吹き荒れました。卒業式の日には,警察車両が体育館の裏に控えていたような学校もありました。しかし,徹底的な管理教育を強めた結果,暴力,破壊行為などの荒れは収まりました。それと入れ替わるようにして起こってきたのが,いじめの問題です。
第一波は,1986年東京都の中学校で起こった「葬式ごっこ」による被害生徒の自殺がきっかけでした。世間に与えた衝撃は大きく,報道は過熱しました。それにより連鎖的な自殺が起こったと言われます。報道が沈静化するとともに,第一波は去りました。しかし,第二波は,そう時を置かずしてやってきました。1994年の愛知県で起きた中2男子の自殺です。いじめの犯罪行為化が進んだと指摘されました。そして,記憶に新しいところでは,2010年の群馬県の小6女子の事件,2011年の滋賀県の中2男子の事件です。第一波から30年近く経ちますが,いじめによる自殺はなくなっていません。この事件をきっかけにしていじめ防止対策推進法が制定されました。この法律によって,二度と悲劇が繰り返されないことを強く願います。
いじめは,子どもたちの成長に破壊的な影響をもたらします。勿論,子どもたちの生命,身体の安全を危機に晒すことは大問題ですが,そこまでいかなくてもいじめに心を痛めている子どもたちは多いだろうと予想されます。子どもたちの成長は,挑戦の繰り返しによってもたらされます。挑戦のエネルギーは安心感です。私たちは安心が確保された時に挑戦しようとします。いじめは学校生活から安心感を損ね,子どもたちの挑戦へのエネルギーを根こそぎ奪い去ります。挑戦をやめた子どもたちは,成長をする機会を失います。
さらに,いじめは,被害者にクラスメートに対する不信感を植え付けます。そして,そこから救い出してくれなかった大人への不信感も植え付けます。学校生活で植え付けられた不信感は,その子のそれからの社会生活にも暗い影を落とします。つまり,いじめは被害者の人に対する基本的信頼感も奪ってしまうわけです。また,いじめによる破壊的影響は被害者だけにとどまらないことは容易に予想できることでしょう。被害者,加害者,クラスメート,そしてその家族,誰も幸せになることはありません。
もし本気で子どもたちの幸せを考えるならば,優先順位を高めて,いじめへの対応をしなくてはならないのです。今時,いじめを看過している学校などないと信じています。しかし,一方でいじめをなくすことばかりに躍起になり,力ずくの指導や管理を強めることが解決にならないことは,校内暴力への対応で明らかです。
管理や統制に成功した教室ではいじめは起こらないかもしれませんが,それではいじめを止めたことになりません。それ以外の場所で,いじめをしてしまうかもしれません。いじめを本当の意味でなくすには,子どもたちにいじめを解決する力を育てなくてはなりません。いじめを解決する力をもつクラスが,本書で言うところの「いじめに強いクラス」です。
実践を寄せている8人は,いじめ指導に高い意識をもち,いじめに強いクラスを育てている精鋭たちです。中学校編が欲しいという多くの読者のみなさんからの要望に応えて,小学校編と中学校編を用意しました。各執筆者が,「いじめ予防」「いじめ治療」「いじめ指導の極意」の三つの視点で述べています。いじめの指導には,いじめを起こさないための予防的指導と,いじめが起こった時の治療的指導が必要です。その指導法については,読者のみなさんが読んだ時に再現がしやすいように可能な限り具体的に示してもらいました。また,最後にそのエッセンスを「極意」としてまとめてもらいました。二つの指導を支える基本的な考え方になっています。
クラスを育てるプロフェッショナルたちの指導は,説得力のあるものばかりです。みなさんのいじめ指導の力強いヒントとなることでしょう。いじめに強いクラスを育てるために役立てていただければと思います。そして,いじめに対してその抑止のために行動できる子どもたちが一人でも多く育てば,これに勝る幸せはありません。
/赤坂 真二
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- 明治図書
- いじめと学級経営の関連を考えるのに適切な書籍です。2022/11/2360代・研究者
- すぐにクラスで生かせる内容。2016/9/230代・小学校教員