オピニオン叢書46硬派 教育力の復権と強化学校機能復活への直言

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著者の現場人としての38年間の実践をふまえ、今までのタブーとされてきた教育現場の諸々の現象、事件に教師としてやるべきことを直言する。


復刊時予価: 2,442円(税込)

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電子書籍版: なし

ISBN:
4-18-167608-0
ジャンル:
教育学一般
刊行:
6刷
対象:
小・中・他
仕様:
B6判 144頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

目次

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まえがき
I 子どもは荒れて告発する
1 少年犯罪は学校教育への告発だ
(1) すべては教育の責任だ/ (2) 黒磯の女教師には何の非もない/ (3) 権威と秩序を軽んずる風潮が元凶/ (4) 小事の尊重と凡事徹底/ (5) 甘やかされた子どもの不幸
2 「少年法」への甘えを許すな ―甘やかすから不幸になる―
(1) 「少年法」の目的/ (2) 対教師暴力にも無抵抗/ (3) 二十未満は「少年」か/ (4) 「少年法」にかかわって
3 社会規範の回復が急務だ ―規範が人心を安らかにする―
(1) 戦前教育には、「国民規範」があった/ (2) 戦後は「規範破壊」の弊を犯した/ (3) 筋を通した「規範」の復権を
4 「個性の尊重と重視」は正論か ―個性は自分で築くものだ―
(1) 気になる身近な三つのこと/ (2) 真の「個性尊重」の姿/ (3) 「個」と「性」/ (4) 「個性重視」にブレーキを!
U 困難に正対する教育を
1 この世はままならぬものなのだ ―その中で生きる力を―
(1) 当然の「生きる力」が欠如した弱さ/ (2) 厳しいこの世の「実像」/ (3) 「実像」の中の幸せと「虚像」の中の幸せ/ (4) 「実像」への正対と「克服快感」
2 困難に正対させ、克服させよ ―逃げるな、避けるな、受けて立て―
(1) 「避けさせる」から弱くなる/ (2) 「避けるのではなく 正対せよ!」/ (3) 「克服快感」に目覚めさせよ
3 不平等の娑婆を這しく生きよ ―耐えてこそ花ひらく―
(1) 平等即善という短絡思考/ (2) 「父親参観日」と言うな/ (3) お弁当を持ってきてもらえない子/ (4) 遠足の小づかいを同じにする
4 自分と向き合える強さを ―それが真の勇気―
(1) 取り調べをすることの問題点/ (2) 大切なことは、自己との正対/ (3) 取り調べは「自己」との正対を阻む/ (4) トラブル・リポートは自己対品帳
V いじめの教育・これが本物だ
1 いじめなんかに負けるなよ ―それをはねのける術を持て―
(1) いじめ問題がブームになっている/ (2) 立ち止まり、腰を据えて、冷静に/ (3) いじめる側だけの問題か/ (4) いじめられた側の責任と義務の教育/ (5) 全校朝会での私の校長講話
2 悪に負けない強さの教育を ―観念論のひよわさを見ぬけ―
(1) いじめ多発は世代の訴状だ/ (2) 「いじめはなくならない」  (3) 「いじめ多発」の真相/ (4) 「いじめ」への本当の教育
3 「道徳」の授業「いじめに負けるな」 ―力には力で報復する論理―
(1) 道徳指導案「いじめ」/ (2) 授業の実際/ (3) 肚の底からの批判を期待する
4 直言する勇気を持とう ―それが学校を変えるのだ―
(1) 言ってよかった、書いてよかった/ (2) 現場を勇気づけ、励ます言葉/ (3) 教育不在・目先の優しさ/ (4) 思いがけない援軍に勇気/ (5) やっぱり教育次第だ/ (6) それぞれの立場での責任
W 判断力と責任感の強化を
1 自分の人生の最高責任者は自分だ ―他人に頼るな、甘えるな―
(1) 学校に来るのが楽しみではない/ (2) 登校が楽しみでない理由の調査/ (3) 楽しみでないことの本当の理由は/ (4) 真に子どもの未来を思うなら
2 禁止を減らし、指示を控えよ ―指示待ち人間改造法―
(1) 学区外へ一人で行かせる/ (2) 自転車にも自由に乗せよう
3 つまらぬ言葉にくじけるな ―負ければますます弱くなる―
(1) アイマイ言葉にめげることなく/ (2) 人の心を傷つける言葉は口にするな/ (3) 現実のこの世を体力を/ (4) いじめられた側の取るべき責務/ (5) 立ち上がり、自ら解決する体力を
X 子どもに豊かな人生を
1「自分さがしの旅」への助言 ―「人生」と「他者の幸福」を考えさせる―
(1) 「自分さがしの旅」とは何か/ (2) 私たちは「自分さがし」を扶けてきた/ (3) 強化したい新しい実践
2 人生を豊かに生きるために ―万人具有の宗教心を育てる―
(1) 法的根拠と用語の確認/ (2) 万人に欲しい宗教心/ (3) 宗教心を持つことの意義/ (4) 宗教教育への小さな人口/ (5) 祈るということの大切さ/ (6) 心の危機を救うために
あとがき

まえがき

 子どもが弱くなってしまった。心身ともにである。体格は伸びたが、体力には欠ける。ちょっと歩くとすぐ疲れる。ちょっと長く立っていると倒れる子がたくさんいる。心の方はもっと弱くなっている。不登校、いじめ、キレる、小児成人病、高校中退者の増加、どれをとってもこの世の中の荒波に抗しきれない子どもの敗残の姿である。

 子どもというものは、本来もっと強かった。「子どもは風の子、元気な子」と、ずっと言われてきた。それは、理想を述べたものではなく子どもの現実をありのままに述べたものだった。本来の子どもは家の中なんかにじっとしているのではなく、どんな寒さの中でも外に出て元気いっぱい飛び廻って遊んでいたものだ。昔だっていじめはあったし、子どもなりの悩みだってあったのだが、それらを自分の力で解決していく智恵と力を持っていた。

 どうして今はこうも子どもが弱くなってしまったのか。いろいろの原因があろうけれど、私はずばりと「学校教育の責任だ」と言っている。それは、私自身が長く学校の一教師として学校教育に携わってきたからだ。教師である私は子どもを弱くした責任を感ずるべきである。社会の故だ、親の故だ、家庭の故だ、政治の故だと責任を他に転嫁すべきではない。責任を他になすりつけること自体が自らの実践と正対しない教師自身の弱さの露呈に他ならないからだ。

 我々教師は、これまでの実践のどこに問題があって今日の教育の荒廃を招いたのかを、深く静かに、かつ謙虚に省みるべきである。

 そうして、その深い反省に立って、目前に迫った二十一世紀の日本の教育を正常に復さねばならぬ。このままではいけない。このままでは日本の将来は危うい。子どもの荒廃は民族の荒廃の予兆であり、民族の荒廃は国家の荒廃を意味する。国家が荒廃した時に国民がどれほど苦しい辛酸を舐めることになるかは、世界の歴史が極めて過酷に、そしてさまざまと見せてくれている。

 本書は、一現場人として小学校だけでの三十八年間の教師生活を貫いてきた私が考え、私が実践してきたことをベースに、今後の教育界の実践のために贈る渾身の直言メッセージである。読者の皆さんは、本書の直言に触れることによって今までタブーとされて口を噤んできたことがらにきっと、気づくに違いない。そして、教師として、何をこそ今やらなければならないかということを考えるにちがいない。さらに、そのことによって新たな勇気と希望を胸の内に生み出すことだろう。

 今教師は、様々の心なきマスコミや、一部の我がままな親や、したり顔に屁理屈をこねる一部のオエライ学者や、保身のみに汲々とする役人などによって、誹誇され、糾弾され、責められ、いささか元気を失っているように見える。それではいけない。子どもと直接最も深くかかわって日々を苦闘している現場の同志諸賢こそは、目を輝かせ、生き生きとした表情で、元気いっぱい、胸を張って実践に挺身して貰わなければならない。少なくとも私はそういう教師人生を送ってきたと自負している。本書は、読む者に、必ずや勇気を与え、実践の質を高めることに役立つに違いないと信じている。

 著者の思いが叶い、現場で体を張って実践の日々を送っている教師の皆さんに、生きる力と元気と希望を与えることに本書が役立つならば、著者の本懐、これに勝るものはない。現場の心ある同志諸賢の力いっぱいのご活躍と、教師人生を存分に楽しまれることを心から祈り、期待している。本書をオピニオン叢書の一冊に加えて刊行をおすすめ下さった江部満編集長に心からの感謝を捧げることを、末筆ながら心をこめて付記させて戴こう。


  平成十年五月十一日 函館の晩春、晴朗の朝記す   /野口 芳宏

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