- 刊行によせて
- /中西 一弘(大阪教育大学名誉教授)・小田 迪夫(大阪教育大学名誉教授)
- 序章 〈よりよい授業実践をおこなうための5つのポイント〉との関係
- 1章 堀江式 国語授業のワザで授業を変えよう!
- 1 なぜ「子どもから引き出した〈言葉の力〉ワザ表」によって授業を変えるのか
- 2 〈言葉の力〉を支える「ワザ表」を活用しよう!
- 3 「ワザ・コツ表」の活用について
- ―さらなる可能性を求めて―
- 4 多様なワザ表の例
- ―「学級文化」としてのワザ表―
- 2章 実例で分かる!堀江式 国語授業のワザ
- T 話すこと・聞くことの授業改善のためのワザ
- 4月の始業日から始める話すこと・聞くことの指導
- ―子どもと一緒に留意点を考える―
- メモ指導で「聞くことの力」を伸ばそう!
- ―〈必然性を感じさせる〉場を活用する―
- 夏休みの宿題が生きる!おススメ言語活動
- ―学習成果を生かしたスピーチ学習で思考力・判断力・表現力を鍛える―
- U 書くことの授業改善のためのワザ
- 本当の漢字の力をつける「漢字ドリル」活用法
- ―習得した漢字を使って子どもが文を生み出す―
- 書くことがない子どものための「日記・作文メニュー表」
- ―子どもから「日記(作文)」のアイディアを引き出す―
- 新聞活用として「はがき新聞」にチャレンジしよう!
- ―「はがき新聞」によって国語と算数の学びをつなぐ―
- 子ども自身が年間を通して身につけた力を見取る工夫をしよう!
- ―月に一度の「成長新聞」によって身につけた力を見取らせる―
- V 読むことの授業改善のためのワザ
- 子どもから引き出し活用する「音読のワザ」
- ―身につけた力を目に見える形に―
- 家庭学習が授業に生きる!「音読・読み取り記録シート」
- ―子どもとおうちの人と教師とをつなぐ“魔法のシート”―
- 文学教材は「心情曲線」を効果的に使おう!
- ―文学教材全体の構造を押さえる―
- 説明文教材の基本的な扱い方をマスターしよう
- ―「筆者」という概念を活用する―
- 「つけた力」と「つけたい力」を見通そう!
- ―初めて本格的物語教材を扱う際のワザ―
- 子どもによるミニブックトーク
- ―多読を生かし,より豊かに読む―
- ここまでやりたい! 読み聞かせ異校種交流
- ―低学年児童による園児への絵本読み聞かせ―
- W 伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項の授業改善のためのワザ
- 「伝統的な言語文化」教材の学習指導を工夫しよう
- ―「言語文化」=「古典文学」ではなく幅広いものとして捉える―
- 自己評価&他者評価で書写指導をレベルアップ!
- ―自分がどのように書いたかについてメタ認知させる―
- 新出漢字・語句の学習を「習得」から「活用」に変えよう!
- ―主語と述語が照応した安定した文を生み出す力をつける―
- X 「単元を貫く言語活動」のためのワザ
- 「単元を貫く言語活動」こうすれば展開できる! その1
- ―「身につけた力」と「身につけたい力」をもとに言語活動を決める―
- 「単元を貫く言語活動」こうすれば展開できる! その2
- ―最初の時間から最後の時間まで核となる言語活動を意識し続ける―
- 「単元を貫く言語活動」こうすれば展開できる! その3
- ―どのような「言葉の力」が身についたかの確認を―
- Y 国語科授業改善のためのワザ
- 〈複合単元〉をうまく活用しよう
- ―複数の単元のつながりを子どもと共有する―
- 「学びのベスト3」シートによる授業びらきをやってみよう!
- ―「身につけた力」シートと「身につけたい力」シートの活用―
- 一年間の集大成!「身につけた言葉の力」スピーチをしよう
- ―〈一年間に身につけた力〉を自覚させる―
- 「ノート・チェンジ」で授業を変えよう!
- ―子ども同士の伝え合いが要のノートチェックのワザ―
- Z 教師修業のためのワザ
- 教材研究 はじめの一歩
- ―「教材研究ノート」の作り方―
- 文学教材の学習指導のポイント
- ―文学作品もひとつのテキストである―
- おわりに
- 堀江式 国語授業のワザ一覧
- おすすめ参考文献リスト
刊行によせて
大いなる活用を願って
大阪教育大学名誉教授 /中西 一弘
堀江祐爾さんといえば,すでに“ワザ”の提案で有名です。具体的な事例をともない,すぐに実践にうつせるので,多くの授業者に受け入れられたのでしょう。本書も,その発展として,多数の“ワザ”が示されています。タイトルにも,目次にも,満ちみちていて「テーマ」になっていることは明白です。だれも見誤ることはないでしょう。そこで,今回は,それらの“ワザ”を支えている〈視点〉について,注目していただきたい,とお願いします。
まずは,「序章」と「1章 堀江式 国語授業のワザで授業を変えよう!」をゆっくりと丁寧にお読みください。そこには,これから提案する多数の“ワザ”が,どのようなねらいと計画のもとに示されているか,その視点が述べられています。各“ワザ”には,“ワザ”の本体,いやその証明物,つまり具体例が添えられています。それにしたがって実践すると,それこそ多種多様な実践ができます。それは,もし,紙数に余裕があれば,本書の具体例その2となるものかもしれません。そうなるかどうかは,「序章」と「1章」に述べられている視点に合っているかどうかで判定できます。それは,ある“ワザ”を実践してみる楽しみを生み,手応えを実感する決め手にもなります。
次には,多数の“ワザ”に戸惑わずに,担当している学年のものから目を通してください。それも一つのねらいに焦点化した“ワザ”に注目すると,安心して試みることができます。一つの試みがうまくいけば,あとは,次々と,他学年の“ワザ”にも応用できるようになっています。
いくつもの“ワザ”を活用していくと,受け持ちの児童一人一人の国語学力の個性差がはっきりと出てきます。児童の口頭表現,記述表現を掲げた具体例ですから。一つの学習指示であっても,その結果が多様なことに気づくはずです。その多様さにもとづいて,学習課題,グループ学習や発表活動などを多様に計画していくと,意欲あふれた国語教室が形成されるでしょう。
「ワザ」のメタ認知による授業開発
大阪教育大学名誉教授 /小田 迪夫
本書は,2007年刊行の『国語科授業再生のための5つのポイント』(明治図書)を受け継ぎ,さらに多くの授業実践事例の分析・考察を加えて再構成した労作である。
まず序論から,取り上げた授業事例が膨大な数の授業の実地観察調査の山から選び出されたものであることを知り,その研究エネルギーに圧倒される思いがした。また,自宅に研究メンバーを招いて毎月2回もの研究会を10年以上続けているという熱意からも深い感銘を受けた。堀江氏の明るく親しみやすい人柄が多くの研究同志を呼び寄せ,すぐれた統率力でもって研究討議を導き,メンバーの授業力を錬磨してこられたことがうかがえる。
近年,学習指導に関する著作や論考で「わざ」という言葉が流行語のように使われ,授業づくりに悩む教師を惹きつけるキーワードとなっている。しかし,本書の「ワザ」は,非力な教師が求めたがるような,手軽に使って速効性を発揮する類いのものではない。教師が一方的に伝授して速効的に身につく「わざ」ではなく,既習活動で学んだ「ワザ」の「価値・工夫」を学習者に振り返らせ,これからの学習にも生かせるものを引き出させて,それを「目に見える形」に記述する。教師,学習者ともに記述し,それらを「ワザ」として確認させるというものである。それが後の学習で使えれば,その「ワザ」が身についたといえる。「ワザ」のメタ認知によってそれが可能になる。
そもそも,educateやerziehen(ドイツ語)の語源的意味は「引き出す」である。本書はその教育原理に立ち返って,「ワザ」を〈振り返り→引き出し→「目に見える形」に記述〉して,メタ認知に導くことが新しい授業開発の大道であることを,多くの実践例で示してくれた。
大阪教育大学でゼミ生として接して以来,私の目に浮かぶ堀江氏は,還暦を迎えられてなお学生時代の溌剌としたイメージを保った研究者・教育者である。ライフワークとしての国語科教育実践学の大成を期待したい。
-
- 明治図書
- テーマごとの内容はとてもわかりやすく有益だが、本としてまとめるならもう少しワザが体系化されていると読みやすかったように思う。記事の寄せ集め感が強い。2018/12/1930代・小学校教員
- 堀江氏の書籍は内容が大変充実していて参考になる。2016/3/2050代・教委
- 子どもの主体的な力を育む授業づくりの手だてが具体的に示されています。2015/12/3050代・小学校教員
- 技を定着させる教室掲示という項目があるとよかったと思います。2015/4/2540代・小学校教員
- すぐに授業に使えるアイデアがたくさんあった。コツ・ワザ表を掲示したり、本時でふり返ったりすることにより、確実にことばの力が定着する。また、研究者と実践者が共同で国語授業を研究しており、両者がいい形で融合していると思う。2015/4/21Y.S