- はじめに
- プロローグ 保護者とのよりよい関係の築き方
- 1 なぜ,保護者対応は難しくなってきたのか
- 2 「保護者対応の難しさ」の構造を理解しよう
- 3 保護者対応の大原則…信頼関係を築こう
- 4 保護者対応の原則…チームとして関わろう
- 5 信頼関係では対応できないケース
- 6 保護者の本音を探ろう
- 7 保護者のクレーム=期待とうまく付き合おう
- 第1章 保護者との信頼関係を築くための10の原則
- 原則1 「子どもの前で担任の批判をしないでください」とお願いする
- 原則2 保護者の悪口は,絶対に言わない
- 原則3 かげ口には,決して同調しない
- 原則4 学級委員さんと「子どもの成長」という観点で連携する
- 原則5 子どもの様子について,いつでも語れるようにしておく
- 原則6 いつでも授業を公開できるようにしておく
- 原則7 保護者との対応は,こまめにメモしておく
- 原則8 必ず学校という組織で動く
- 原則9 苦情には即対応,現地主義
- 原則10 よりよい保護者になることを考える
- コラム 手紙や葉書は効果的!
- 第2章 保護者の信頼を勝ち取る「保護者対応」
- 子どもとの関わり
- 事例1 男の子,女の子に平等に関われない
- 事例2 給食の好き嫌いへの指導に差が出てしまう
- 学校生活の約束
- 事例3 学習に必要でないものを学校に持ってくる
- 事例4 水泳カードの忘れ物
- 事例5 服装に関する禁止事項
- 事例6 自転車の乗り方が悪い
- 学習内容・指導方法
- 事例7 宿題が解けない
- 事例8 宿題に時間がかかりすぎる
- 事例9 教育課程への要望
- 事例10 テスト直しをきちんとさせてほしい
- 事例11 学習指導要領を逸脱したものの扱い
- 事例12 実際の社会でも意見の分かれる問題の扱い
- コラム 身だしなみ・教室環境は教師の心がけしだい!
- 配布プリント・連絡帳・学級通信
- 事例13 プリントを持って帰るよう指導してほしい
- 事例14 連絡帳の指導をしてほしい
- 事例15 日課や宿題,持ち物を保護者にも伝えてほしい
- 事例16 連絡帳が保護者に届いていない
- 事例17 学級通信を発行してほしい
- 事例18 学級通信に特定の子どもの日記ばかりが掲載される
- コラム 学級通信の第1号で,担任の思いを伝える
- 授業参観
- 事例19 兄弟姉妹で参観日が重なって困っている
- 事例20 子どもの学習について,家でフォローをしたい
- 事例21 授業中の個別指導にかたよりがある
- 事例22 学級目標と実際の学級の様子にギャップが大きい
- 事例23 保護者による授業評価アンケート
- 事例24 小学校生活最後の授業参観
- 事例25 保護者参加型の授業参観
- コラム 授業と家庭をつなぐ教科と教材
- 保護者会
- 事例26 授業参観後の保護者会の参加率を高めたい
- 事例27 兄弟姉妹で保護者会が重なる
- 事例28 転入生の保護者への対応
- コラム 「親が子どもに言ってはいけない五箇条」
- 家庭訪問
- 事例29 家庭訪問で何を話したらよいかわからない
- 事例30 家庭訪問で何を話したらよいかは保護者もわからない
- 事例31 家庭訪問の予定訪問時刻が守れない
- 事例32 保護者の話にどう答えたらよいかが不安
- 事例33 個人的な情報にどこまで踏み込んでよいのかわからない
- コラム 保護者への思い―灰谷健次郎氏の場合
- コラム 実践!家庭訪問のマナー
- 個人面談
- 事例34 保護者個人懇談に向けての準備
- 事例35 通知表の渡し方ととらえ方
- 事例36 進学についての三者面談
- 事例37 時間外の懇談の要望
- コラム 通知表の重み
- 学校行事
- 事例38 学習発表会で子どもたちの出番にかたよりがある
- 事例39 学習発表会の内容が他の学年と比べて見劣りする
- 事例40 運動会で子どもの出場種目を知りたい
- 事例41 リレーの選手の決め方に納得がいかない
- 事例42 運動会に保護者が参加できない
- 事例43 遠足をどのように進めてよいかわからない
- 事例44 行事の持ち物の連絡が遅い
- 事例45 校外学習で保護者に協力を求めたい
- PTA活動
- 事例46 PTA役員の仕事がわからない
- 事例47 学級PTAの内容についてアドバイスがほしい
- 事例48 PTA奉仕作業への父親参加
- 事例49 PTA役員の新旧引き継ぎ懇親会
- コラム 藤本学級PTA活動
- 事務処理
- 事例50 卒業証書の文字の間違い
- 事例51 インフルエンザによる出席停止
- 事例52 忌引きの取り扱い
- コラム 身のまわりの整理整頓は仕事術の基本!
- 第3章 保護者も納得するトラブル対応
- けんか・怪我
- 事例53 休み時間のトラブル
- 事例54 上級生とのけんか
- 事例55 けんかをすぐにしてしまう子
- 事例56 登下校中のけんか
- 事例57 体育の授業中の怪我
- 事例58 運動会での怪我
- コラム 「子どものために苦労をしてみたい」
- 不登校
- 事例59 前の学年に引き続き不登校
- 事例60 不登校になりかかったとき
- 事例61 不登校で勉強が遅れがち
- 事例62 不登校の子どもの居場所
- お金に絡む問題
- 事例63 集金袋のお金が足りない
- 事例64 子どもが学級費を使い込んだ
- 事例65 修学旅行に行けない
- 事例66 給食費の未納
- いじめ
- 事例67 進級後の配慮
- 事例68 高学年女子のいじめ
- 事例69 落書き事件
- 事例70 保護者人権参観日後の学級懇談会
- 子どもの問題行動
- 事例71 学級文庫への落書き
- 事例72 ゲームカセットがなくなった
- 事例73 万引きをした
- 事例74 田んぼのあぜを壊した
- 事例75 よその家からお金を盗んだ
- 事例76 壁に泥を投げたことへの弁償
- 第4章 もしも保護者とトラブルになってしまったら
- 1 上司,先輩に相談しよう
- 2 子どもとの関係を最優先にしよう
- 3 保護者対応に関する法律ミニ情報
- 4 もしもに備える「公務員損害賠償保険」
- 5 保護者とともに学校を変える
- おわりに
はじめに
私は初任の頃,家庭訪問や保護者会などがある度に,はやく齢を取りたいと思っていました。自分より年上で,実際に子育てをされていらっしゃる保護者の方と話をすることが苦手でした。学級への苦情や子どもの問題行動について話をするときにはなおさらでした。
「きっと人生経験を積めば,もっと上手に保護者との人間関係を築くことができるだろう」
こんなことを先輩の先生に話したところ,
「年齢を重ねても,保護者からは何かと注文をつけられるものだよ」
という返答が印象に残っています。
実際には,保護者から何の注文もなく,教師のやりたいようにやっていくことの方が恐ろしいような気がします。保護者と上手にコミュニケーションをとり,保護者や地域の方からの意見を学校教育の中に反映していくことが大切です。
保護者対応は,経験年数を積めば自ずと上手になるというわけにはいかず,意図的に努力していく必要があります。私は長年,自分自身が様々な保護者に接してきた経験や,職場や教員仲間から(間接的ではありますが)見聞きしたことから学んできました。うまくいかなかったことや効果のあったことから一つ一つ保護者対応の仕方を身につけてきました。このような努力は,これからも続けていかなければなりません。
そもそも,学校生活では,教師と子どもとの関係で物事が進むように思われがちですが,決してそのようなことはありません。日々当たり前のように授業ができるのも,保護者の理解と協力のおかげです。経験年数を積むごとに,保護者との信頼関係がいかに大切であるかは,身にしみてわかってきます。
新卒間もない先生方は,保護者対応に関して,かつての私のように不安を抱えているのではないかと思います。繰り返し言います。保護者から要望や苦情がまったくないことは,あり得ません。一見,クレームや苦情とも思えるものをバネにして,これからの教職人生へのエネルギーに変えていこうではありませんか。しっかりとした教育信念のもとに,一つ一つの経験を積み重ねていけば,必ず自信になっていきます。
教師は専門職として,保護者にはどのような人がいて,どのような考えをもっているかをあらかじめ予測し,トラブルにならない方法を選択したり,事前に対策を練ったりしておくことが大切です。拙著は単なるハウツー本ではありません。事例から,「自分だったら…」と考えるヒントにしてほしいと思います。一人ひとりの子どもを伸ばすために,しっかりと子どもたちと向かい合い,日々の授業や学校生活の中で誠実に教育実践をしていけば,きっと保護者と信頼関係を築くことができます。
教育現場にいる者は,日々,様々な事例に接して経験的に解決はできるものの,果たしてそれがどのような意味をもったり,教育理論に基づいたりするものなのか意識しないことが多いものです。そこで,知人で研究者の栗原慎二先生に,拙著への解説をお願いすることにしました。栗原先生は教育相談を専門に研究され,学校現場にも積極的に出向いていらっしゃる方です。「広島子どもの心支援ネットワーク」という研究会を主宰され,現場の先生方とよりよい教育実践を求めていらっしゃいます。私も実践を発表したことがあります。
栗原先生は,拙著を丁寧に読んでくださり,「『保護者からの匿名の苦情を聞き入れた』と書いてあるが,都会の学校では学校自体が崩壊するようなとんでもないことになりかねない」などとアドバイスをくださいました。拙著へのガイダンス的な役割として,価値あるページとなっていますので,プロローグとして,取り上げることになりました。ありがとうございました。
教師志望の学生の皆様は,保護者対応について,ある程度の知識をもってから教育現場に出られるとよいと思います。学生の皆さんにも,活用していただければ幸いです。
拙著誕生の経緯は,明治図書出版の若き編集者の杉浦美南氏が,『新任教師はじめ一歩』(さくら社)を読んでくださったことです。提示された綿密なプロット案や,例示された実践例に触発されて,堰を切ったように一気に書き上げたものです。本当にありがたいことです。感謝申し上げます。
2012年10月 /藤本 浩行
原則を2回読んでから事例を読み進めています。一つ一つ丁寧に、失敗談もそして成功談も。読んでいて「よし やってみよう」「あすから頑張ろう」そう思える本です
所々にある コラム も読みごたえがあります。実践例が豊富で目の前に著者がいるようです。