- はじめに
- 第1章 新学習指導要領に基づく国語科授業の改善と板書
- 1 学習指導要領改訂の10ポイント
- ポイント1 国語科目標における「能力」と「態度」の明確化
- ポイント2 言語活動を行う能力の明確化
- ポイント3 指導事項の系統性の明確化
- ポイント4 言語による問題解決の能力の育成を図る指導事項の配列
- ポイント5 三つの領域と一つの事項の関連の明確化
- ポイント6 説明的文章と文学的文章の読む能力の明確化
- ポイント7 伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項の新設
- ポイント8 ローマ字の早期習得
- ポイント9 読書における図書資料の選書能力の明確化
- ポイント10 音読・朗読・暗唱の能力の明確化
- 2 国語科授業改善の2ポイント
- ポイント1 「教える中身」をはっきりさせる
- (1)言語活動を確実に位置付けて、教える中身をはっきりさせる
- (2)相手や目的、意図を、子供にしっかり意識させて、教える中身をはっきりさせる
- (3)挿絵や動作化などと言語をつなぐことによって、教える中身をはっきりさせる
- ポイント2 課題解決的な学習を考える
- (1)解決すべき課題をもつ
- (2)課題解決的な学習プロセスを意識する
- (3)学習の見通しと振り返りを重視する
- 3 板書の5機能
- 機能1 知識・思考・技術等の操作
- (1)個々の子供の言語操作の明確化
- (2)個々の子供の知識・思考・技術等の一般化、共有化
- (3)多様な子供の知識・思考・技術等の整理、収束化
- (4)抽象度の高い知識・思考・技術等の明確化、様式化
- 機能2 学習の流れのコントロール
- (1)思考過程のコントロール
- (2)学習プロセスのコントロール
- (3)既習の内容や活動の変容、螺旋化
- 機能3 学習への参加意識の確認・高揚
- (1)子供の学習への参加意識や充足感・満足感の高揚
- (2)子供の学習への参加意識の自己確認
- 機能4 単元における教材や学習内容・活動の可視化
- (1)教材の全文と場面の表示、及び、文章同士の関係の明確化
- (2)学習内容・活動の全体と部分の表示、及び、関係の明確化
- 機能5 機器や掲示との連携
- (1)教室内掲示物との連携
- (2)大型ディスプレイ&実物投影機・デジタル教材との連携
- 4 新たな板書を考える3ポイント
- ポイント1 黒板の子供への開放
- ポイント2 教師は子供にとって最大の言語環境である
- ポイント3 板書のユニバーサルデザイン
- 第2章 発問付でよくわかる!授業に役立つ板書のアイディア53
- 1年
- 1 とっておきの おたからを ともだちに しょうかいしよう
- 「おはなし きいて」
- 2 おうちのひとに がっこうのいきものを しらせよう
- 「しらせたいな、見せたいな」
- 3 一年生のおもいでを、あたらしい一年生に つたえよう
- 「いい こと いっぱい、一年生」
- 4 いきものはっけんカードをつくろう
- 「みいつけた」
- 5 おおきなかぶの げきを おうちの ひとに みせて あげよう
- 「おおきな かぶ」
- 6 ふゆのことばで かるたをつくろう
- 「あつまれ、ふゆの ことば」
- 2年
- 1 名たんていがゾロリ「図書館たんていだんほうこく会」をひらこう
- 「きみたちは、『図書館たんていだん』」
- 2 大はっ見を記録して、かんさつブックをつくろう
- 「かんさつ名人に なろう」
- 3 ようこそ! ここは手作りおもちゃワールド
- 「おもちゃの作り方」
- 4 わたしの「すごい・びっくり」を教え合おう
- 「どうぶつ園のじゅうい」
- 5 親愛なるすみれちゃんへ 自分だったらこう思うよ
- 「わたしはおねえさん」
- 6 むかし話を読もう
- 「いなばの 白うさぎ」
- 3年
- 1 「聞き方大改造 ビフォー、アフター」―めざせ、聞き方の匠
- 「よい聞き手になろう」*「きちんとつたえるために」
- 2 「みんな読んでね。わたしのとっておきのお話」
- 「物語を書こう」*「お話を作ろう」
- 3 調べて分かったことを報告文に書こう
- 「気になる記号」*「研究レポートを書こう」*「調べたことをほうこくしよう」
- 4 「ありの行列パンフレット」を作ろう
- 「イルカのねむり方」*「ありの行列」
- 5 物語を読んでしょうかいしよう
- 「モチモチの木」
- 6 俳句・短歌に親しもう
- 「声に出して楽しもう」*「俳句に親しもう」*「俳句に親しむ」
- 4年
- 1 まとめる 深める 高める 話し合い名人になろう
- 「よりよい学級会をしよう」
- 2 わたしの町のスマイルニュースを作ろう
- 「新聞を作ろう」
- 3 好きなことわざを集めて 四年二組「ことわざ辞典」を作ろう
- 「『ことわざブック』を作ろう」*「故事成語」
- 4 新美南吉の世界を友達にコラージュで紹介しよう
- 「ごんぎつね」
- 5 写真と文章で学校の「すてき」を伝えよう
- 「アップとルーズで伝える」*「『仕事リーフレット』を作ろう」
- 6 クラスのみんなで百人一首大会をしよう
- 「声に出して楽しもう 一茶・蕪村など」*「『百人一首』を声に出して読んでみよう」*「短歌の世界」
- 5年
- 1 学校のキャッチコピーをすいせんします
- 「すいせんします」*「ゲストティーチャーをすいせんしよう」
- 2 次の活動へ 委員会活動を報告文にまとめよう
- 「次への一歩―活動報告書」*「伝えよう、委員会活動」
- 3 自分を中心人物にして「五年三組〇〇物語」を作ろう
- 「物語を作ろう」*「ふしぎな世界へ出かけよう」*「自分を中心人物にして物語を書こう」
- 4 新聞の編集のしかたや記事の書き方に目を向けて、新聞を読もう
- 「新聞記事を読み比べよう」*「新聞を読もう」
- 5 椋鳩十作品の魅力をリーフレットで紹介しよう
- 「大造じいさんとガン」
- 6 声に出して楽しもう「竹取物語」「枕草子」「平家物語」
- 「声に出して楽しもう」*「古文を声に出して読んでみよう」
- 6年
- 1 身近な環境問題について学級討論会をしよう
- 「学級討論会をしよう」*「伝えにくいことを伝える」
- 2 町のよさを伝えるパンフレットを作ろう
- 「ようこそ、わたしたちの町へ」
- 3 伝えたい! 平和のために、今わたしができること
- 「『平和』について考える」
- 4 書き手の工夫を考えながら新聞の投書を読もう
- 「新聞の投書を読み比べよう」
- 5 命について考えよう
- 〜立松和平の作品から「命のメッセージ」を読み取り、命に対する自分の考えをまとめる〜 「海の命」
- 6 伝統文化を楽しもう
- 「狂言 柿山伏」*「伝えられてきたもの」*「柿山伏について」
はじめに
「国語科の授業って、いったい何を教えればいいの?」「今日の国語科の授業は、うまくいったの?それとも、うまくいかなかったの?」「今回の国語科の授業で、子供は何が分かったの?どんな力が身に付いたの?」
これは、筆者が初めて小学校の教師になったときに、周りからいっぱい聞いた疑問であり、自分自身でも、そう思っていたことでした。それから、現在まで、昭和52年、平成元年、平成10年、平成20年と、実に4回の学習指導要領の改訂がなされました。しかし、今でも、同じような疑問や嘆きが、様々な学校の、多くの学級から聞こえてきます。国語科教育法の授業で、文字が一つも書かれていない絵だけの小学校1年生の国語科の教科書のページを見せて、「これを使って、何をどのように教えるか?」と問われて、絶句している学生ならいざ知らず、担任経験豊かな教師からもです。
これは、昭和22年と26年の学習指導要領一般編・教科編(試案)から、どんどんスリム化してきた我が国の国語科の学習指導要領が、そのたびに指導事項がどんどん抽象度を増していき、現在では、他教科等に比して、最も抽象度が高い教科の一つとなったと言っても過言ではありません。ここに最大の原因があると考えています。
何を教えるかがはっきりしなければ、分かりやすい授業も的確な評価もできません。ましてや、実生活・実社会に生きる確かな国語力を、子供の身に付けることもできないのです。
本書は、このような国語科の授業を巡る現状の改善に、少しでも役に立ちたいと願って生み出されたものです。
そのため、授業の内容が分かりやすい「板書」に焦点を当てることにしました。
まず、第1章では、新学習指導要領の完全実施を受けて、学習指導要領改訂のポイントと、それに基づいた国語科の授業改善のポイントを記して、今後の国語科授業の在り方を示すとともに、板書の機能を説明し、新たな板書を考えるポイントを具体的に示すことで、第2章の「板書」の具体的な単元実践のページを見るときの参考となるようにしました。
次に、第2章では、具体的な板書の実践例に、教師の指導の中核を成す「発問」を中心とした1単位時間の流れを加えて、授業の全容を最も見えやすくすることに腐心しました。
国語科は、授業時数が最も多く、担任全員が必ず授業しなければならない教科です。しかも、全ての人間的な活動や全ての教科等の基盤になっている教科でもあります。この教科の授業がつまらなかったら、子供も教師も不幸です。楽しくて分かりやすい国語科の授業づくりを目指して、本書が活用されれば、国語科教育に永年携わってきた者として、望外の喜びです。
鎌倉女子大学准教授 /松永 立志
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- 明治図書
- 板書がイメージしやすい。2015/7/2540代・小学校管理職