- T 村を育てる学力
- 一 村の教師はどう生きるか
- 1 子らのうた
- 2 つばくろのうた
- 3 私たちは問題のまん中にいる
- 4 村の教師の生きる道
- 二 生きているということのすばらしさの中で
- 三 村の子らに力を――村を育てる「学力」と「構え」
- 1 感傷はゆるされない
- 2 子どもはどう太るか
- 3 学力の普遍性と地域性
- 4 生活を育てる道
- 5 学習帳――このよいもの
- 6 村の学校の教科経営
- 7 木々は芽をふく
- あとがき
- U 教育論
- 一 私の「いのち」の思想について
- 二 教育実践と国民文化
- 三 教師は学者に何を期待するか
- 四 教育実践の一般化・科学化
- 五 教師の指導性と学習形態
- 六 教科の論理と生活の論理
- 七 実践記録を書くこと読むことの意義と実践の高めあい
- 著作集「第一巻」解題
刊行にあたって
今日ここに東井義雄著作集全七巻を刊行することになった。
この著作集には、著者の教師生活四十年を生きがいあらしめた教育実践の記録がテーマ別に収録されている。
著者は、戦後の処女作であり、不朽の名著といわれている「村を育てる学力」(第一巻所収)のなかで、
「百姓、ことに、谷間の百姓にとって田んぼはいのちに次ぐ大じなものである。……それほど大じなた田んぼをつぶして、私の学校はじめ、村々の学校が建っている。……だがしかし、その学校が今まで行なってきたしごと、これから行なおうとしていること……が、はたして、百姓たちの大きい犠牲に値するものであるかどうか」
という問題設定をして、足もとをみつめることから教育の在り方を究めようとした。
このような発想からする現実の矛盾との対決は、人間の生き方をそもそもの根源から問い直して行くことをきびしく迫る七十年代の課題との対決に示唆を与えるものである。
また著者は、教育の主人公は文部大臣でもなければ、校長でも、教師でもない。今、自分のすぐ前にいる子どもらこそが主人公であるといい、この子らの生命体の躍動の炎のなかにこそ真理があり、この真理に点火することが教育であるという、とらえ方をした。
かつて、ペスタロッチは、「真理への入り口は、私の本性の内部にある。我々の存在の奥深いところから純粋に汲みとられた真理は普遍の人類の真理である。それはうすっぺらな真理をめぐって争いひしめく論争者たちの間を統一する真理となるであろう」と教えたが、私は著者から、これと同じ教えを学ぶ。
戦後二十有七年、日本はたしかに経済的に発展した。しかし人間生活になくてはならない大じなものを失なってきたように思う。それを、この著作集は掘りあてようとしている。
一九七二年二月 東井義雄著作集責任編集者 /木田 尚武
特に、若い教師への手紙1〜3は教師をめざす方におすすめ。ただし、絶版検索しても、『若い教師への手紙3 いま、教師が問われていること』がヒットしないのが残念。ぜひ、絶版リストに入れてほしい。
「村を捨て」立身出世・競争社会に勝ち抜く生き方・あり方ではなく、美しい山川草木、田や畑、森林や海・河川・湖沼といった自然とともに調和しながら共存し共栄する(協調・協力する)「村を育てる」本当の生き方・あり方に、みながいつ気づき・目覚めるのだろうか?
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