- 特集 学びにくい子の「ワーキングメモリー」を支えて効果的な学習をつくる
- 特集について
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- 提言 ワーキングメモリーを学習・生活に活かすために
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- 【実践】「ワーキングメモリー」を活かした学習指導・生活支援
- 日常生活
- 【着替え】の発達とワーキングメモリー
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- 友達と一緒に行動したい子に寄り添う〜ワーキングメモリーの弱さを支える工夫〜
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- 読み
- 「登場人物の気持ち」の読み取り〜ワーキングメモリーを活かした支援〜
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- 子どもの興味関心を活かした音と文字のマッチング―音韻認識―の指導
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- 書き
- ワーキングメモリー特性を踏まえた空書きと口唱法による漢字の学習
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- 「かたまり」を作り,漢字を覚えやすく〜漢字の口唱法学習〜
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- 算数・数学
- 読み書き障害のある子どもへの算数文章題における絵や図を用いた指導
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- 通常の学級における「見る力が弱い」生徒への授業の工夫
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- 「計算」でワーキングメモリーを使う量を少なくする授業づくりと支援の手立て
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- 体育
- 「ダンス」「跳び箱」新しい運動を身につける際の支援
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- 図画工作
- 「粘土」「描画」イメージを表現する学びの支援
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- 英語
- 英語学習においてワーキングメモリーを活かすための土台づくり
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- 多感覚を用いた英語学習への支援
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- コミュニケーション
- 必要な情報を思い出すために
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- 【解説】実践の読み解き
- 一人一人のワーキングメモリー(WM)の機能をサポートするために
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- ESSAY
- 特別支援教育が必要な子どもとは?
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- わたしの教室紹介★苦手さのある子も過ごしやすい環境づくり (第6回)
- 教室の中心にリビングルーム 安心・安全な居場所づくり
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- 発達障害の子どもに役立つ!ちょこっと支援の教材・教具 (第22回)
- ちょこっと消しゴムで支援
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- 英語教育のユニバーサルデザイン (第2回)
- 音節感覚に慣れ親しみながら,語彙の定着を目指そう!
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- 〜マイ・アルファベット・ブックとリズムボタン〜
- スッキリ解決☆学びにくい子への学習つまずきサポート (第2回)
- 話を聞き逃してしまう子
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- 学びのある校内研修のアイデア (第2回)
- 子どもの見方
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- ケースで学ぶ!子どもを読み解くアセスメント (第2回)
- ゆっくり育つ子どもの発達を読み解く
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- 〜発達検査の活用〜
- 通級指導教室:自立活動の指導アイデア (第2回)
- 計算のつまずきのアセスメントと指導
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- 〜20までの加減のつまずき〜
- 一度は手にしたい本
- 『障害児者の音楽療法 音楽を用いた発達・関係性への支援』(宍戸幽香里著)/『夢見た自分を取り戻す 成人ディスレクシア,50代での大学挑戦』(井上智著)
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- 特別支援教育ステップアップ講座 (第6回)
- 「LD-SKIP」入門
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- 〜あなたは使ってみたいですか?〜
- S.E.N.S支部会紹介 (第6回)
- 秋田支部会
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- 島根支部会
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- SENS for S.E.N.S (第17回)
- S.E.N.Sになって
- 人脈も知識も蓄積されるS.E.N.S
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- 実践と理論とを橋渡しできる関わり手になりたくて
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- 特別支援教育士資格認定協会からのお知らせ
- 編集後記
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学びにくい子の「ワーキングメモリー」を支えて効果的な学習をつくる
札幌学院大学心理学部教授/室橋 春光
「ワーキングメモリ」は,今や広く知られるようになった専門用語ですが,心に関する抽象的な概念であり,具体的にイメージしにくいのではないかと思います。
「脳のメモ帳」(苧阪,2002)ということもできるでしょう。また,役者さんたちが演ずる舞台にたとえられることもあります。様々な役者(情報)が舞台に登ろうとしますが,限りのある広さの舞台に全員立つことはできません。監督(実行機能)が舞台裏にいて,出演の指示をします。照明係は,主役にライト(注意)を当てます(バース,2004)。
さて,ワーキングメモリーを強くするにはどうしたらよいか?といった質問を受けることもありますが,直接的に扱うことは難しいかもしれません。ワーキングメモリーは,それを下支えするたくさんの機能がうまく働いて,初めて最大限に活躍できるような機能であると言えます。
例えば,自動車を運転される方は,自動車学校でハンドルとアクセルやブレーキを操作するやりかたを必死になって習得されたと思います。しかし,免許を取得して運転の経験を積むと,なかば自動的にそれらの操作をしていることに気づきます。
すなわち,ワーキングメモリーは学習の初期に大活躍する機能なのです。習得すべきことが複雑である場合には,その課題に関連する要素が「ユニット」としてまとまっていればいるほど,ワーキングメモリーの負担が減ることになります。「ユニット」になっているということは,要素を結びつけるためのエネルギーが必要ないということで,「自動化」と言い換えることもできます。何がどのくらい「ユニット化」されているか,「自動化」されているかということについては,個人差がとても大きいのです。ワーキングメモリーを一人一人有効に活用するには,習得すべき「材料」の“下ごしらえ”を,それぞれの処理特性に合わせて行うことが大事なのです。
これから14人の先生方に,「材料」の“下ごしらえ”のしかたの例について述べていただきます。料理のしかたには,伝統的,代表的なものもありますが,作る人の個性に応じて限りなくあるといってもよいと思います。大事なことは,一人一人の子どもに合った「料理」の工夫をする,ということです。
【参考文献】
苧阪満里子著(2002)ワーキングメモリ―脳のメモ帳.新曜社.
バーナード・バース(2006)脳と意識のワークスペース.協同出版.
自分の関わっている生徒に対する今後の指導の参考にしたい。