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- 赤羽(あかばね)三部作
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- 巻頭論文 算数授業へのこだわり
- 授業行為は教師自身の絶えざる変革を要求する
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- 大きい かず
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- かたち
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- 2年
- 形に名前をつけよう
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- 九九の表
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- 3年
- 2けたをかけるかけ算の筆算
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- 2けたのかけ算
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- 4年
- がい数の表し方
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- およその数で表そう
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- 5年
- 比べ方を考えよう
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- くらべ方を考えよう(割合)
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- 6年
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- 比を使った問題
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- 中学難教材こう授業する
- 1年/対称な図形
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- 3年/子どもの事実が示す、優れた教材
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- 4年/できる子もできない子も満足!
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- 5年/先生がいなくても「楽しい算数の授業」ができる
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- 6年/熱中!集中!『TOSS算数ワーク』
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巻頭論文
算数授業へのこだわり
授業行為は教師自身の絶えざる変革を要求する
向山洋一
教師の仕事は,あることがらを伝えるだけの「メッセンジャー」では務まらない。
教室は生きているのであり,常に新しい問題が生じるからだ。
新しい状況,新しい困難との出会いこそ,教師の仕事の宿命であり,新しい状況,新しい困難をのりこえていく努力が不断に求められるのである。
新卒教師には新卒教師の問題が,十年選手には十年選手の問題がおそいかかる。
授業という行為は「静止的」にとらえてはならない。
常に子どもを成長させる教師の努力とそれに反する逆作用の力との「せめぎあい」になる。
逆作用の力が「算数の問題解決学習」のような「権力的な作用」のときもあれば,「子どもの反抗」のような成長のための「通り道」の場合もある。
いかなる困難にも理由がある。
まずは,その困難の「真の原因」をつかまねばならない。
いかなる困難にも解決法がある。
解決方法を二策,三策と考えねばならない。
いかなる困難も突破はできる。
しかし,「困難に直面した自分」から「困難を突破できる自分」へ,変革しなければならない。
かつての自分の「ある部分の否定」と新しい自分の「技量向上」によってこそ,「突破」は可能だ。
だから,「自己否定できない教師」「新しい技量向上に挑戦しない教師」は,永久に困難を突破できない。
学年を変わろうが,新しい学校へ行こうが同じような問題に直面するのである。
どの学校に行っても,同じような問題を起こす教師が,身近にいくらでもいる。
授業は「静止的」に行ってはならない。
授業は「格闘技」なのである。
不規則行動をする子どもとの「格闘」だけではない。
「おとなしく,静かに何もしない子」「自分はダメだと投げてしまっている子」「もうどうしようもないんじゃないかと教師が思ってしまう子」の内側から,生命の炎を燃やし,勇気を与え,「ないもの」からでも「何か」を「引っ張り出す」ような闘いなのだ。
「何もないところ」から「ダメだと思うところ」から,「絶望しているところ」からでも,成長と前進とやる気と勇気と行動を引っ張り出す行為,それが授業だ。
それは,教師の自分自身の弱さとの闘いによってこそ成し遂げられることなのである。
授業は格闘技だ。
教師は内面の弱さを,絶えず見つめ直視しなくてはならない。
教育という営為は,教師自身の連続革命の中でこそ前進するのである。
そのために,教師は「メッセンジャー」であってはならない。
教室の現実に,子どもの事実に,常に「対応」していかなければならない。
「どう対応したらいいのか」それはまず,自分自身が考えるのである。
失敗してよい。失敗するからこそ,「正しいやり方」を理解できるのである。
体育通信の中に,とても印象的な文があった。向山型跳び箱指導のことである。
この方法は,100人の教師がいれば98人はうまくいく。しかし,残りの1人2人がうまくいかない。なぜなのか?
そこに「基本を学ぶ」「原則を正しく学ぶ」ことの意味が隠されている。
渡辺喜男氏の文を引用する。
■向山式跳び箱指導の勘どころ
新しく私のサークルに入った若い先生が「渡辺先生,向山式跳び箱指導をやってみたんですけど,跳べるようにならなかった子がいるんです」と授業のビデオを見せてくれた。
見ると,「これじゃあ,跳べるわけがない」という授業だった。
「若い先生方は,どんな誤った指導をするのか」という視点をもっていなかったからである。おそらく,他の方々も同様な誤った指導をするのだと思った。
その若い先生の向山式跳び箱指導A式の誤った指導は,跳び箱にまたがる位置が,跳び箱の先端ではなく,前の方にまたがらせていたのだ。
正確に言うと,跳び箱にまたがる位置を指示していなかったのだ。
だから,それぞれの子が,跳び箱の真ん中にまたがったり,前の方にまたがったりしていた。そして,最後まで跳べなかった子は,跳び箱の前の方にまたがっていたのだ。
その子は,わずかな動作で,跳び箱からずり落ちるようにして,着地していた。体重移動を体感していないのだ。これでは,跳べるようにならない。
なぜ,こんなことになったのだろう。
それは,教師が,A式の指導の際に,跳べる原理の「腕を支点とした体重移動」の意味を確認していないからだ。向山先生の本には,はっきり書いてある。
もし,確認していたら,「少しずつまたがる位置を跳び箱の後ろにしなさい」という指示を出したはずである。
1 跳び箱の真ん中に座らせてA式を行う
2 跳び箱の後ろから1/3の所に座らせてA式を行う
3 跳び箱の後ろに座らせてA式を行う
4 着地点を遠くにするようにして,A式を行う
このようなステップで,せかせて勢いよくやらせるのではなく,「ゆっくりと」行い,じっくりと「体重移動を体感」させることが大切
なのだ。
その上で,B式を行う。が,ここでも若い先生は誤ったB式を行っていた。
その先生は,お尻だけを支えて補助していたのである。もう片方の手は,腕(肩)をつかんでいないのだ。だから,B式で跳べない子が続出した。B式の補助を行ったら,100%跳ばせなくてはならない,これが,私の体験を通しての実感である。
そうでなくては,子どもは安心して教師の補助を受け入れることはない。
(向山)この先生は,跳び箱指導の向山の文章を読んでないのだと思える。
大切な文章は,わずか3ページである。それをきちんと読めば,間違いようがない。若い先生がやったのは,「向山式跳び箱指導」ではない。似ているが,全く別だ。
「指導場面が違う」のであり,「指導原理をふまえてない」のだから,「何もしてない」のと同じである。
実は「向山型で指導している」と思っている人の中に,このような人が結構いると思う。向山型算数でも同じである。
教師自身が「きちんと学ぶ」ことは,どういうことかを理解する必要がある。
「大ざっぱな学び」は「学び」ではないのだ。
さて,先月号の向山型算数への挑戦で福井の田畑先生から次のような便りをいただいた。
■「一つ一つていねいに,全部教えるのが向山型ではありません」といわれる,とは思いながら,今回の論文を書きました。
まず,絵の中に,考える材料がある,ということを言葉でいっただけではわからない子がいる,と考えました。また,絵という具体的なものを利用すれば,何算か,考えられる,ということも二年生ではわからない子がいる,と考えました。そして,二年生に,ノートに問題の絵をかかせるのは至難の技であることから,教科書の絵を使うことにしました。
私のクラスに軽度発達障害と予想される男児Mがおります。席はいつも一番前の私がすぐいける場所にしてあります。百玉そろばんでの十の合成と分解で,やっとデタラメにいわなくなってきました。計算は数えたしです。計算スキルでそばにいて「そうだね」とOKを出しても,書く欄をまちがえることはしょっ中です。
そんなMがたし算とひき算のひっ算のテストは自力で70点とれました。うれしくて,お絵かき帳にまでひっ算をして見せにきます。○をあげると,少し得意そうです。
Mが最もにがてとするのは文章題です。文章が読めないからです。「できない」と思うと机の上につっぷします。だから,Mが最後までついて来られるように考えてみました。
向山先生の論文審査で,Mのような児童についての個別な対応のヒントをいただけるととてもうれしいです。
二十四名と少なくて楽な学年ですが,次々と対応力を求められる毎日です。Mの授業態度が私の力量のバロメーターだと思っております。先日も,友達のいやがることをしてあやまらせた後,「先生はMがかしこくていい子になってほしい」とだきしめてしまいました。(向山)田畑先生のこうした行為こそ教師の仕事なのである。「個別な対応のヒント」は,田畑実践の中にこそある。それを見つけられるのは田畑先生しかいない―というのが,私のヒントである。
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- 明治図書