向山型算数教え方教室 2005年7月号
「向山型算数ノート」が育てる本当の学力

V073

«前号へ

次号へ»

向山型算数教え方教室 2005年7月号「向山型算数ノート」が育てる本当の学力

紙版価格: 964円(税込)

送料無料

電子版価格: 867円(税込)

Off: ¥97-

ポイント還元20%

ファイル形式

PDF
ジャンル:
算数・数学
刊行:
2005年6月8日
対象:
小学校
仕様:
B5判 92頁
状態:
絶版
出荷:
ダウンロード
定期購読

目次

もくじの詳細表示

特集 「向山型算数ノート」が育てる本当の学力
向山型算数ノート指導の過程で学力がつく
松藤 司
荒れていたM男のノートが変わった
小林 幸雄
算数の学力を上げるためには、ノート指導は不可欠である
松崎 力
本物の学力に必要な「忍耐力」はノート指導で育てる
白瀬 嗣大
うっとりするようなノートがやる気を起こさせる
奥 清二郎
習った通り、繰り返し、ノートに解き方を残すこと
奥田 純子
イチローが教える「向山型算数ノート」の実力
小田原 誠一
ミニ特集 “できない子”が挑戦したくなる向山型「補充指導」
1年生にした補充と気づかれない指導
末冨 奈津子
楽しく力をつけることができる補充指導
石原 卓
やる気を引き出す『TOSS算数ワーク』
齋藤 一子
「できる」「分かる」+「楽しい」の3条件が必要不可欠
木村 孝康
補充指導は『TOSS算数ワーク』で決まり!
馬場 慶典
たった1人でも算数嫌いをなくす
大前 暁政
グラビア
研究発表は子どもの事実から発表する
村田 斎
若葉印教師のための向山型算数基礎基本イラスト事典
3つのパーツ
小倉 郁美
向山型算数キーワード
保護者会でメモしたくなる話
木村 重夫
巻頭論文 算数授業へのこだわり
数字操作の「かけ算九九表」から、量と対応する「TOSSかけ算九九計算尺」へ
向山 洋一
学年別7月教材こう授業する
1年
のこりはいくつ ちがいはいくつ
柳田 真弓
ちがいはいくつ
井上 朋子
2年
形づくり
許 鍾萬
たし算のひっ算
大野木 一雄
3年
長い長さをしらべよう
近藤 裕重
長さをはかろう
田中 裕美
4年
角のはかり方
満石 大輔
整理のしかた
細井 俊久
5年
四角形をつくろう
野ア 隆
四角形の角
橋本 豊
6年
計算の見積もり
多田 圭孝
計算の見積もり
衣笠 めぐみ
中学難教材こう授業する
2年/連立方程式とグラフ
越智 鈴穂
中学校からの発信!「向山型数学」実践講座 (第64回)
授業技量を向上させたければ、向山型算数・数学に学べ
井上 好文
向山型算数に挑戦/論文審査 (第68回)
同じ問題を出した4年前より実力は大きく向上した
向山 洋一
向山型算数実力急増講座 (第70回)
「2+2の真相」神は底部にあった
木村 重夫
向山型算数WEBサロン (第64回)
スマートボードを使った授業で、テンポを落とさない授業を実現する
赤石 賢司
“若葉印”教師が向山型算数でダッシュするとき (第4回)
向山型算数の授業作りで留意してきたこと
徳永 一哉
“問題解決学習”隣の教室の実態ルポ
本当に全ての子どもに考える力がつくの?
加藤 菊江
怒りを覚えた1問も解けない授業
今井 豊
〈教室の障害児と向山型算数〉特に気になる『あの子』への向山型アプローチ
「見て分かる」授業で、言葉をギリギリまで削る
五十嵐 勝義
もう一つの向山型算数 難問良問1問選択システム (第70回)
低学年
楠 康司
中学年
杉谷 英広
高学年
中谷 康博
【学年別】『TOSS算数ワーク』活用事例集 (第4回)
1年/使い方いろいろ、『TOSS算数ワーク』
遠藤 真理子
2年/使って分かるワークの魅力
斉藤 維人
3年/楽しく復習できるすぐれもの
西山 喜一郎
4年/算数が苦手な子も大喜び!
篠崎 弘敬
5年/頭がからまりそうだけど楽しい!
渡辺 佳起
6年/赤鉛筆指導を目立たせない工夫
伊藤 壮一
向山型算数セミナー
6月北海道セミナーは新しいレポート提案が期待!
板倉 弘幸
腹の底からの実感!向山型算数を知る前と後
教師も子どもも激変する!
関口 葉子
私を変えてくれた子どもの涙
石富 敦子
向山型算数との出会いに感謝
古市 和臣
進むべき道を照らす向山型算数
磯部 智義
教科書開く力も奪う問題解決型
後藤 圭一
向山型算数で悩みが一気に解決
藤原 章
今年こそ向山型の授業をしたい
松垣 和年
論文ランキング
4月号
木村 重夫
実物ノートと指導のポイント
かすかな変化を見逃さず
山本 昇吾
読者のページ
父親からの「問題解決学習」批判の手紙
編集後記
木村 重夫赤石 賢司
TOSS最新情報
赤石 賢司
向山型算数に挑戦/指定教材 (第70回)
向山 洋一

巻頭論文

算数授業へのこだわり

数字操作の「かけ算九九表」から,量と対応する「TOSSかけ算九九計算尺」へ

向山洋一


 かけ算九九の指導は,つまり「かけ算九九表」で教える。

 子どもたちは,「九九表」を見ながら,口唱,し,暗唱できるまで続ける。

 私の小学校時代から変わらぬ指導法である。

 最近は,「百マス計算」で,ストップウォッチで急がせる教師も出てきた。

 百マス計算は,何十年も昔に大阪の先生方が開発し,朝日新聞で紹介された方法である。

 開発した先生は,「かけ算九九の練習」の「1つの方法」として紹介した。

 これなら,少しは意味もある。

 ところが,「かけ算九九ができない子」が何人もいるのに,クラスで「ストップウォッチ競争」をする,とんでもない指導がもてはやされた。

 これは,できない子を追いつめる。

 もちろん,できない子ができるようになることはない。

 できるようになるには,やはり「かけ算九九表」を覚えるしかなかったのである。

 害が大きいたいめ,各地の小学校では「止めた!」という所が続出した。

 当然の結果である。

 私は,長い間「かけ算九九」も満足にできない子には,「表を持たせて指導する」ことをすすめてきた。

 「それで大丈夫ですか」と心配する人も多かったが,「向山が体験ずみだ」ということですすめてきた。

 「かけ算九九」ができないと,「わり算」はもちろんできない。

 その子たちは,「わり算以後」は,教室でお客様になっている。

 ところが,「かけ算九九表」があれば,「わり算」の学習に参加できる。

 「わり算のやり方」も身につけられる。

 「かけ算九九」ができない子に,何もせずに「わり算」に参加させ,お客様にすればいいのか?

 それとも,「かけ算九九の表」を持たせ,「わり算のしくみ」を身につけさせた方がいいのか?

 どちらがいいのか,当然のことだろう。

 「かけ算九九表」を持たせて学習しているうちに,半年,1年もたつと,自然に暗記してしまうのである。

 多くの教師が,体験してきたことだ。

 向山型算数では,次のように主張する。

 かけ算九九を覚えてない子には,かけ算九九表を持たせよ!

 こんな分かりやすい主張を,かくも全面的に述べてきたのは,向山型算数が初めてであった。

 もちろん,いくつもの配慮は必要だ。

 「かけ算九九」のできない子に,表を持たせると,いやがる子もいよう。

 だから,「かけ算九九を覚えている途中の人,覚えたけど,ちょっと自信のない所がある人はかけ算九九表を見ていいですよ」というぐらいの言い方はしてほしい。

 テストのときだって,もちろん見ていいのだ。

 心配しなくても大丈夫。

 自信をもった子は,見なくなるのである。

 さて,このようなかけ算九九の指導の中でいつもひっかかる点があった。

 それは「かけ算九九表」の暗記は,「数字のみの操作」だということだ。

 「数字のみの操作」と「実体の理解」は別のことなのだ。

 樋口編集長がよく言う。

 「言葉では,初版2000冊を3000冊にしようなどと,簡単に言える。

 言葉では,数字はすぐ変えられるけど,実体は言葉に追いついていかない」と。

 かけ算九九も同じである。

2×2=2+2

2×5=2+2+2+2+2

 このようにすれば,少しはイメージできるが,全部をいちいちやるわけにはいかない。

 このやり方は,量への転換が中途半端なのである。

 次の2つの九九は,言葉上は同じようだ。

2×3=6

7×8=56

 この2つの違いを,一目で分からせる教材こそが,ほしいのである。

 長年考えた末,ついに私は作り出した。

例1

例2

 これなら,違いは一目で分かる。

4 ● ● ● ● ●

4 ● ● ● ● ●

2 ● ● ● ● ●

1 ● ● ● ● ●

   1  2  3  4  5

7 ● ● ● ● ● ● ● ●

6 ● ● ● ● ● ● ● ●

5 ● ● ● ● ● ● ● ●

4 ● ● ● ● ● ● ● ●

3 ● ● ● ● ● ● ● ●

2 ● ● ● ● ● ● ● ●

1 ● ● ● ● ● ● ● ●

   1  2  3  4  5  6  7  8

 たて軸2の所を「曲がり尺」を右へ動かせ

ば,2の段の練習になるのである。

 正方形に数字を入れると,初心者用になる。

 矢印の所に,答えが浮かび上がって見えるのである。

 2×4=8 が,次のようになる。

例3

 あの大森修校長先生が,この教材のとりこになってしまった。

 教師でさえ,のめり込むのである。

 5月末,東京教育技術研究所から,1セット300円で発売したところ,1日半で完売した。

 すぐに再版にかかった。

 TOSSの教材は,このように1つ1つが,考え抜かれたものなのだ。

 最近は,「まねまねスキル」のオンパレードになっている。ところが「まねまねスキル」は,「ユースウェア」がなってない。

 似て非なるものである。

 天然ダイヤと人造ダイヤと,似ていても価値はまったく違うのである。

 「ユースウェア」とは,「授業そのもの」であるから,「教科書は同じでも授業がまったく違う」ということなのである。

 なお,「TOSSかけ算九九セット」は「実用新案を申請」した。知的財産は,自分たちで守らねばならない。

 論文審査に応募した東京の中島先生は,次のようにTOSS教材について書いている。

◆今年度,1〜6年の算数講師で授業をしています。あかねこ計算スキル,S社のテスト,TOSSノートを2年以上の全学年で採用していただけました。私自身,今回全て初めて使用しているのですが,早速計算スキルのすごさを実感しています。

 3年生でADHDの男の子は,2年の途中から親が学校を休ませるという深刻な状況でした。

 3年生になり,学校へ通い始めたのですが,算数の時間は席に着いています。授業を受けず,読書していることもありますが,「計算スキルをします」と言うと,机の上にスキルを出してみんなと一緒に集中して取り組んでいます。

 今日も10問コースで100点です。シールを貼りながら,「10個もシールを貼るのは,時間がかかるよ」と笑顔で話してくれます。計算スキルが,彼の笑顔を作り出したのです。

……………………………………………………

 何かと大変だったADHDの子が「計算スキル」のときには,集中して取り組んでいるという。

 このような便りを,全国からいただく。

 「TOSSかけ算九九セット」も,「かけ算九九が苦手」という子の福音になることを願いたい。

.

.

    • この商品は皆様からのご感想・ご意見を募集中です

      明治図書

ページトップへ