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巻頭論文
算数授業へのこだわり
「百マス計算」は体験すると駄目なことが分かる
向山洋一
百マス計算の宣伝がすごい。
陰山先生の本には「学力は家庭でつける」とある。
陰山先生は,公立小学校の校長先生だ。ということは,「学校で学力をつける」ことに,全責任を負っている立場だ。
公立小学校校長の立場の人が「学力は家庭でつける」と大々的に宣伝する本や教材を世に出していいのだろうか。
この一点で,私とは立場が全く違う。
これだけではない。百マス計算教材の宣伝コマーシャルにも登場した。
20 年以上昔,民教連(日本作文の会『ひと』)の遠藤豊吉氏が,小学校教師現職の身で,
「机」のテレビコマーシャルに登場したことがある。
集中的な批判を浴びて,すぐにそのコマーシャルは中止になった。当然のことである。
それ以来の珍事だ。
ところで「百マス計算」の商標登録を,大手出版社が申請した。陰山先生の百マス計算を大々的に売り出している大手出版社だ。
ところで,「百マス計算」の学習方法は,30年昔,朝日新聞連載に紹介され,出版されたものである。
著者は,大阪算数教育研究所の先生方だ。
これは,「かけ算九九」の1つの練習方法として,教育界で紹介されてきた。
岸本先生たちが,後に大々的にとりあげたが,当時の実践記録には,「できない子への配慮」が,それなりにされていた。
陰山先生は,ストップウォッチを強調した。テレビの画面,公開発表では,ストップウォッチ片手の陰山先生しかうつらない。
これでは,一部の子のタイムは早くなるが,できない子は,大量に落ちこぼれる。
勉強のできない子ができるようにならないからだ。
それだけじゃない。子どもたちのかなりの部分が,反発するようになるからだ。
それにしても,教育界の知恵として生まれた「百マス計算」の練習方法が,大手出版社の商標登録として申請される――これを許せるだろうか。
もし,「百マス計算」という名付け親は,私たちだと証明できるなら,それは「落ち研」がとるべきなのだ。
自分たちが研究開発したと多くの人に納得させられるなら,その方法もある。
しかし,「百マス計算」の受理は,かなり難しい。すでに,朝日新聞出版物で出されていることだからだ。
研究会が申請するなら,それは,「知的財産」への防御ともいえる。
しかし,「百マス計算」は,大手出版社の商標登録申請だ。陰山先生と一緒に大々的に宣伝している出版社だ。
このことに納得する教師は,どれくらいいるのだろう。多くの教師は,嫌悪感をもって,拒否の感情をもつだろう。
百マス計算では,できるようにならない。もし,できるようになったのなら「他の手だて」をしていたはずだ。
少し前,陰山先生のインターネットサイトを見れば,答えがあった。
できない子の手だてに,陰山先生は,「向山型算数」をやっていたのだ。向山型とは書いてないが,分かる人が見れば,すぐ「あっ,向山型だ」となる内容である。
「百マス計算」が有名になっていくと同時に,陰山先生は,そのサイトを消してしまった。
こうした態度は,尊敬できることではな
い。「デタラメとウソの陰山実践」と,向山が考え出したのは,この「陰山サイトの消去」があってからのことである。
「百マス計算」をやると,有名一流大学に入るという宣伝も,おかしい。
少し考えれば,分かることである。
一位数同士の計算が,いくら早くなったとしても,大学に合格する学力とは,ほとんど関係ないからだ。
ソロバンを考えれば,すぐ分かるだろう。
昔,ソロバン塾が日本中にあった。
私も通っていた。
クラスの中の大半の子が,ソロバン塾に通ったものだった。
毎日,30 分程度の練習がある。
その効果はすごいもので,1年もすると三位数のたし算が暗算でできるようになる。
スピードも,すごくアップする。
ソロバン塾では,級別に分かれていたから先生はできない子もフォローしてくれた。
「百マス計算」のスピードより,比較にならないくらい計算スピードがアップした。
わずか1年で,1級になる子もいた。
ソロバン塾で,上位クラスに入った子は,有名中学,有名大学に入っただろうか。
全く関係がなかった。
私の小学校の同級生は,麻布,慶應に3名合格したが,計算は遅かった。ソロバン塾に行ってなかったからだ。
小学生のとき,計算が一番早かった子は,中学の成績は中以下だった。
「自分の場合もそうだった」という人も多いだろう。
もちろん,ソロバンは,すぐれた教材であり,ソロバンによって育つ面は大きい。
「百マス計算」の比ではない。
月とスッポンの違いがある。
そのすぐれた教材,ソロバンにしても,計算が早くできるようになれば,一流大学に入学できるなどという馬鹿げた主張をする人は誰一人いなかったのだ。
広島県の私立中学校の教師が,百マス計算について注目すべきレポートを報告している。
中学への新入生41 名のうち,31 名が百マス計算を経験していた。
百マス計算で伸びたと思う 20%
百マス計算で伸びたと思わない 80%
ここで大切なのは,私立中学の子だということだ。小学校のときは,クラスで上位にいた子である。その子でさえ,伸びたと思わない子が80%もいるのだ。
この先生は,自分も実践してみた。そしてマイナス面を次のようにまとめた。
1 混乱する子がいる
単純な計算に取り組みやすいと感じ意欲をわかせた子がいるのに対し,何回取り組ませても,集中力が続かず,記録も伸びず,やる気をなくし「百マスいやだー」と叫ぶ子が出てきた。まず,この百マスのやり方に混乱を覚えている子がいるように感じる。間違って書いて消したり,何度も確かめながら一生懸命枠の中に書こうとしているが,それではタイムが伸びない。
2 答え合わせの方法が難しい
実は,答えを適当に書いたり,タイムを気にしすぎて無茶苦茶を書いてしまう子も多い。しかしそれらをなくすための手だてによい方法が見られない。教師から正解を言い,自己採点させているが,間違いを直せるような速さで言えば,だれてしまったり,非常に時間がかかったりする。その上,自己採点なので適当に丸をつけている子もいる。それらをいちいち確認し,全員分見るのは非常に大変な仕事であり,これに時間をかける意義薄い。
3 終わった子への手だてが難しい
早い子は1分半で済む。遅い子は5分以上かかる。私のやり方で5分で制限時間を設けているが,問題が残ってしまう子も数名いる。そのような中で,全員に満足させてやりたいが,よい手だてが見つからない。特に気になるのが,早く終わった子である。見直しをするように言っているが,すぐにもう済んだとばかりに止めてしまう。その子たちが暇をもてあましてしまう。
4 たし算,ひき算とかけ算では性質が全く異なるのではないか
かけ算は丸暗記で良い。しかし,たし算やひき算には原理があり,その種類もいくつかに分けられる。例えば,くり上がり・くり下がりのあるなし,答えが10になるもの,答えが0になるもの,等だ。それらが混在する百マス計算。難なくできる子は良いかもしれないが,学力不振児がいつまでたってもできるようにならなかった。
どれも,もっともなことである。
「勉強ができない子が混乱をする」ということは,やった人なら分かるだろう。
しかも,ストップウォッチで尻を叩くから,よけい混乱は深まる。
字も雑になる。すごく汚い字になる。
デタラメに書く子も出てくる。
それを防ぐには,答え合わせをするしかない。
しかし,答え合わせが,時間がかかりすぎるのだ。
「できない子をいじめる百マス計算」――それなのに商標登録までして商売しようとする人々がいるのだ。
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