- 特集 向山型で考える「発展教材」と「補充学習」
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- 巻頭論文 算数授業へのこだわり
- 「あこがれの授業」を一度はライブ体験せよ。それが、授業の判断基準になる。
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巻頭論文
算数授業へのこだわり
「あこがれの授業」を一度はライブ体験せよ。それが,授業の判断基準になる。
向山洋一
東京都のほとんどの問題教師(落ちこぼれ教師)のカウンセラーを担当した教育心理学者は,問題教師に共通したこととして「一つの現象」を示した。
それは,問題教師は,20 年,30 年の長い教師生活において,「目標とする授業や教師」「あこがれの授業や教師」を,自分の心に持ったことが一度もないということである。
それは,「勉強をしなかった」ということでもあろう。
身銭を切ってセミナーなどに出かけたことは一度もないということだろう。
あるいは,自己満足にひたり,いつしか感性もうすれ,謙虚さもなくしてしまったのだろう。
授業の技量をあげるための第1の方法は,サークルで模擬授業をすることである。
第2の方法は,セミナーなど身銭を切ってライブで学ぶことである。
第3の方法は,校内での研究授業を何十回となくやることである。
第4の方法は,自分が心から納得する教育書を読み尽くすことである。
第5の方法は,クラスで一番できない子が,できるようになる努力,工夫を毎日,毎日,毎日,続けることである。
教師の向上は,以上のこと以外にはない。
できれば,1から5までのすべてをやることが望ましい。
百マス計算をやった教師は多くいるだろうが,評価は簡単だ。
「できない子ができるようになった」という子どもの事実が生まれただろうか。とりわけ,テストで5点,10 点をとっていた子が90点,100 点をとったことがあっただろうか。
第2に,教えている自分の心の底までズシーンとひびくような手ごたえがあっただろうか。本物の指導法なら,必ずそのようなドラマが,次々と起こるはずなのである。
夏のセミナーは,会場に1100 名余の人々が入り,満席であった。来年の先行予約も,700名を越えているという。
向山一門の模擬授業も,会場を魅了した。「これまでの日本の教師たちの中で,五指に入る授業のうまさである」という向山の解説にほとんどの参加者は納得した。
わずか13 分で授業を完結させ,しかも新しい問題提起のある授業であり,1冊の本にできる奥行きのある内容だった。
「授業のうまさ」は,見た者でなくては分からない。高段の芸であった。
「俺の方がうまい」という人がいたら,いつでも「立ち合い授業」に応ずる。
かつて,「文芸研」「問題解決学習」は,TOSSとの立ち合い授業を逃げたが,私たちは,いつでもお相手をする。
1000 名の参加者の前で授業をすれば,比較的正しい評価が出るだろう。
セミナーの前日,算数セミナーがあった。定員300 名は,募集とほぼ同時にうまってしまい,200 名ものキャンセル待ちとなった。
算数セミナーでは,「各学年の研究発表」「各学年の実技・演習」「介入模擬授業」などが行われる。
「ライブでしか分からないというのは本当だった」と参加者はアンケートに書く。
どんなことを学んだのか,少しくわしく紹介してみよう。
向山は,分数のかけ算の授業で介入した。小学校算数で,最もむずかしいところである。普通教室では,グチャグチャになる。
授業者に木村重夫先生が介入し,その介入に向山が介入した。参加者は言う。
兵庫県の隈下先生
介入の介入を待っていました。
木村先生の介入も,ゆったりとしていて簡潔でわかりやすいものでした。しかし,向山先生の介入は超越していました。
問題を読む,立式する。たった2つのことですら大きな違いがありました。
私が理解しただけでも,立式の際,スモールステップをかけ,情報量を限定し,必要な情報だけ見せるため,ゆったりと読むという技術と技能がありました。
それぞれの技術・技能は知っています。しかし,それらを子どもたちのつまずきに応じて,予想して選択するという視点は,私には不足していました。
向山先生の介入授業を受け,はっとしました。すうっーと頭に入ったからです。
(向山)「問題文を読む」「立式する」たった二つの授業行為なのだが,3人は全く違っていたのである。ライブとは,このような実感を持つことなのだ。
北海道の小林先生
向山先生の介入授業は,誰よりもわかりやすいです。スーと頭に入って,ストンと落ちる。納得する。それがここちよいのです。まさに快感です。
模擬授業,研究発表の先生方の語り口が,回を追うごとにゆったりと,やさしくなってきました。
それでも,向山先生の語り口は,さらに上をいっています。心から納得できる,聞いていて落ちつけるのは向山先生だからこそです。
それが聞きたくて毎回参加している,とあらためて感じました。
(向山)向山の語り口を聞きたくて,わざわざ北海道から毎回十数万円もかけて参加しているのである。「どのような語り口をするのか」が気になれば,プロへの入口である。
札幌市の酒井先生
「向山がやるとわかりやすいでしょ?」
その言葉通り,向山先生の介入授業は,とてもわかりやすいものでした。問題文の下の段をかくし,先生が問題をだす。こんな方法,初めて知りました。
教科書どおりなんだけれど,できない子がわかるように工夫されている。これが向山型算数の本当の姿なんですよね。
私は,いつも教科書を流すだけになっていて,工夫やできない子への配慮が欠けていることに,あらためて気づきました。
(向山)教科書を流すのは,向山型算数で言う「教科書通り」とは全く違うことを実感して,初めて「向山型算数」が見えてくる。
教科書通り教えられる先生は,1万人に1人もいないと言う向山の言葉が分かってくる。
石川県の下出先生
向山先生の介入が見られてほんとうによかったです。情報の限定から始まり,易から難へと先生問題を出していく,テンポがよいというよりも流れるようでした。
自分だと,ここでもノートにかかせるのか迷い,量はどうかと迷い,ゴテゴテとしてしまいます。
向山先生の場合は,あっという間に言葉の式にたどりつき,ストンと心に落ち着きます。芸術です。
(向山)教科書のどこを,どのように扱っていくのかという迷いは,正しい迷いです。
そうした迷いを,毎日,毎日,毎日,くぐりぬけてこそ,はじめて技量は身につくのです。
そのとき,「目標とする授業」を目にしたことは,大切な判断の基準になります。「ものさし」を持つことになるのです。だから,ライブは大切なのです。
山形県の西長先生
いつも力をいただいて帰らせていただいてます。
高学年の介入授業の時に,向山先生から「ぐちゃぐちゃになるところをどう教えるか。これを工夫すること。これが教師の仕事である。毎日,毎日,毎日,続けることだ。正しければ,スーっと流れるし,間違っていればぐちゃぐちゃになる。子どもが教えてくれます」というお話がありました。
夏休み空け,また毎日,毎日,毎日,工夫を続けていこうと思います。
(向山)毎日,毎日,毎日,工夫し努力するのだ。「良さ」も「悪さ」も,子どもが教えてくれる。
子どもの反応に,謙虚でなければならない。
もちろん「悪ければ」,子どもはさわぐ。
さわぐ子を注意するのは大切だ。しか
し,心の中で,「先生は努力が足りなくてすまない」という謙虚さを持たねばならない。
その謙虚さが,腕を向上させるのだ。
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- 明治図書