向山型算数教え方教室 2003年10月号
向山型で考える「発展教材」と「補充学習」

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向山型算数教え方教室 2003年10月号向山型で考える「発展教材」と「補充学習」

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ジャンル:
算数・数学
刊行:
2003年9月
対象:
小学校
仕様:
B5判 92頁
状態:
絶版
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目次

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特集 向山型で考える「発展教材」と「補充学習」
教科書からつくる「発展教材」「補充教材」
河田 孝文
教科書チェックとミス発見システムを使う
田村 治男
補充指導に必要なものは向山型のシステムである
八和田 清秀
向山実践 忠実にやればできる発展教材の応用
小松 裕明
助走問題・補充問題・発展問題,そして難問!
有村 紅穂子
授業時間内に視覚情報と聴覚情報を補充せよ
雨宮 久
巻き戻しスモールステップで補充学習
岩本 友子
ミニ特集 子どもに学力をつける「シンプルな補助計算」
仮説 究極のシンプルな基本型は補助計算を内包して消してしまう
木村 重夫
補助計算をどこに書かせるか
山口 正仁
「補助計算5原則」で子どもの計算力を伸ばす
太田 健二
ひき算の補助計算で,わり算ができた
横崎 邦子
「分数のかけ算・わり算」で向山式約分表記
小貫 義智
平均点90点!口癖になった補助計算
春川 あゆみ
グラビア
授業は視覚情報、聴覚情報、両方を使って行う
村田 斎
向山型算数キーワード
百マス計算の害悪
木村 重夫
論文ランキング
7月号
木村 重夫
巻頭論文 算数授業へのこだわり
「あこがれの授業」を一度はライブ体験せよ。それが、授業の判断基準になる。
向山 洋一
学年別10月教材こう授業する
1年
たしざん(2)
五十嵐 いつ子
ひきざん(2)
東原 希代子
2年
かけ算(1)
阿部 力
かけ算のしき
佐藤 敏博
3年
あまりのあるわり算
前島 哲治
大きな数
赤塚 邦彦
4年
はしたの大きさの表し方を考えよう
若林 直美
わり算の筆算(2)
前田 あかね
5年
倍とかけ算,わり算
仲川 日頼
面積
勝田 秀樹
6年
分数と整数のかけ算,わり算
大沼 靖治
単位量あたりの大きさ
塩沢 博之
向山型算数に挑戦/論文審査 (第47回)
「勉強が分からない子」ともっと正対して工夫せよ
向山 洋一
向山型算数実力急増講座 (第49回)
答えが分かっているから安心して式を考えられる
木村 重夫
向山型算数の原理原則と応用 (第49回)
向山実践から学ぶ「子どもをわしづかみにする導入の原理原則」
大野木 一雄
向山型算数と出会ってTT授業・少人数授業が変わる (第18回)
できない子をできるようにさせたい
安達 覚
向山型算数WEBサロン (第43回)
教科書の粗い部分の目に見えない情報を補うから、分かる
赤石 賢司
中学校からの発信!「向山型数学」実践講座 (第43回)
全国一斉算数基礎学力診断テストの結果報告
井上 好文
「親と子の証言!」向山型算数は公文を超える! (第7回)
子どもを凛々しく、たくましく成長させる向山型算数
松崎 力
『教え方大事典』を活用した算数授業体験
低学年/1時間で「直線」の定義がわかる
中田 昭大
中学年/どの子もきれいな円が描けました!
佐藤 いつみ
高学年/楽しく通分をマスターできるゲーム
柳橋 学
中学/図形の公式問題は図と言葉の式で
橋本 芳治
もう一つの向山型算数 難問良問1問選択システム (第49回)
低学年
石橋 剛
中学年
勇 眞
高学年
青木 勝隆
衝撃のライブ体験「向山洋一の介入模擬授業」を受けて
子どもの都合で考えよ!
桑原 和彦
介入されることで,悩み抜かなかった自分に気づく
宮崎 京子
向山型算数セミナー
向山氏の講座持ち時間が変わります
板倉 弘幸
腹の底からの実感!向山型算数を知る前と後
夢の黒板デビュー!!
千葉 真理
教師自身の意識が変わる!!
間嶋 祐樹
私をどん底から生還させてくれた向山型算数!
両部 桂一
学級懇談で話題ノートの変容!
溝端 達也
子どもに,分かる・できる喜びを!
小野 公美子
もっと子どもの笑顔が見たい
岡田 純
出来ない子どもにこそ優しさを
山口 佳子
自由投稿フリーページ
木村 重夫藤野 美紀
実物ノートと指導のポイント
小学1年生ノート指導第一時の実況中継
柴田 泰士
読者のページ
絶対オススメのこの本!この教材!
編集後記
木村 重夫赤石 賢司
TOSS最新情報
向山型算数に挑戦/指定教材 (第49回)

巻頭論文

算数授業へのこだわり

「あこがれの授業」を一度はライブ体験せよ。それが,授業の判断基準になる。

向山洋一


 東京都のほとんどの問題教師(落ちこぼれ教師)のカウンセラーを担当した教育心理学者は,問題教師に共通したこととして「一つの現象」を示した。

 それは,問題教師は,20 年,30 年の長い教師生活において,「目標とする授業や教師」「あこがれの授業や教師」を,自分の心に持ったことが一度もないということである。

 それは,「勉強をしなかった」ということでもあろう。

 身銭を切ってセミナーなどに出かけたことは一度もないということだろう。

 あるいは,自己満足にひたり,いつしか感性もうすれ,謙虚さもなくしてしまったのだろう。

 授業の技量をあげるための第1の方法は,サークルで模擬授業をすることである。

 第2の方法は,セミナーなど身銭を切ってライブで学ぶことである。

 第3の方法は,校内での研究授業を何十回となくやることである。

 第4の方法は,自分が心から納得する教育書を読み尽くすことである。

 第5の方法は,クラスで一番できない子が,できるようになる努力,工夫を毎日,毎日,毎日,続けることである。

 教師の向上は,以上のこと以外にはない。

 できれば,1から5までのすべてをやることが望ましい。

 百マス計算をやった教師は多くいるだろうが,評価は簡単だ。

 「できない子ができるようになった」という子どもの事実が生まれただろうか。とりわけ,テストで5点,10 点をとっていた子が90点,100 点をとったことがあっただろうか。

 第2に,教えている自分の心の底までズシーンとひびくような手ごたえがあっただろうか。本物の指導法なら,必ずそのようなドラマが,次々と起こるはずなのである。

 夏のセミナーは,会場に1100 名余の人々が入り,満席であった。来年の先行予約も,700名を越えているという。

 向山一門の模擬授業も,会場を魅了した。「これまでの日本の教師たちの中で,五指に入る授業のうまさである」という向山の解説にほとんどの参加者は納得した。

 わずか13 分で授業を完結させ,しかも新しい問題提起のある授業であり,1冊の本にできる奥行きのある内容だった。

 「授業のうまさ」は,見た者でなくては分からない。高段の芸であった。

 「俺の方がうまい」という人がいたら,いつでも「立ち合い授業」に応ずる。

 かつて,「文芸研」「問題解決学習」は,TOSSとの立ち合い授業を逃げたが,私たちは,いつでもお相手をする。

 1000 名の参加者の前で授業をすれば,比較的正しい評価が出るだろう。

 セミナーの前日,算数セミナーがあった。定員300 名は,募集とほぼ同時にうまってしまい,200 名ものキャンセル待ちとなった。

 算数セミナーでは,「各学年の研究発表」「各学年の実技・演習」「介入模擬授業」などが行われる。

 「ライブでしか分からないというのは本当だった」と参加者はアンケートに書く。

 どんなことを学んだのか,少しくわしく紹介してみよう。

 向山は,分数のかけ算の授業で介入した。小学校算数で,最もむずかしいところである。普通教室では,グチャグチャになる。

 授業者に木村重夫先生が介入し,その介入に向山が介入した。参加者は言う。

兵庫県の隈下先生

 介入の介入を待っていました。

 木村先生の介入も,ゆったりとしていて簡潔でわかりやすいものでした。しかし,向山先生の介入は超越していました。

 問題を読む,立式する。たった2つのことですら大きな違いがありました。

 私が理解しただけでも,立式の際,スモールステップをかけ,情報量を限定し,必要な情報だけ見せるため,ゆったりと読むという技術と技能がありました。

 それぞれの技術・技能は知っています。しかし,それらを子どもたちのつまずきに応じて,予想して選択するという視点は,私には不足していました。

 向山先生の介入授業を受け,はっとしました。すうっーと頭に入ったからです。

(向山)「問題文を読む」「立式する」たった二つの授業行為なのだが,3人は全く違っていたのである。ライブとは,このような実感を持つことなのだ。

北海道の小林先生

 向山先生の介入授業は,誰よりもわかりやすいです。スーと頭に入って,ストンと落ちる。納得する。それがここちよいのです。まさに快感です。

 模擬授業,研究発表の先生方の語り口が,回を追うごとにゆったりと,やさしくなってきました。

 それでも,向山先生の語り口は,さらに上をいっています。心から納得できる,聞いていて落ちつけるのは向山先生だからこそです。

 それが聞きたくて毎回参加している,とあらためて感じました。

(向山)向山の語り口を聞きたくて,わざわざ北海道から毎回十数万円もかけて参加しているのである。「どのような語り口をするのか」が気になれば,プロへの入口である。

札幌市の酒井先生

 「向山がやるとわかりやすいでしょ?」

 その言葉通り,向山先生の介入授業は,とてもわかりやすいものでした。問題文の下の段をかくし,先生が問題をだす。こんな方法,初めて知りました。

 教科書どおりなんだけれど,できない子がわかるように工夫されている。これが向山型算数の本当の姿なんですよね。

 私は,いつも教科書を流すだけになっていて,工夫やできない子への配慮が欠けていることに,あらためて気づきました。

(向山)教科書を流すのは,向山型算数で言う「教科書通り」とは全く違うことを実感して,初めて「向山型算数」が見えてくる。

   教科書通り教えられる先生は,1万人に1人もいないと言う向山の言葉が分かってくる。

石川県の下出先生

 向山先生の介入が見られてほんとうによかったです。情報の限定から始まり,易から難へと先生問題を出していく,テンポがよいというよりも流れるようでした。

 自分だと,ここでもノートにかかせるのか迷い,量はどうかと迷い,ゴテゴテとしてしまいます。

 向山先生の場合は,あっという間に言葉の式にたどりつき,ストンと心に落ち着きます。芸術です。

(向山)教科書のどこを,どのように扱っていくのかという迷いは,正しい迷いです。

   そうした迷いを,毎日,毎日,毎日,くぐりぬけてこそ,はじめて技量は身につくのです。

   そのとき,「目標とする授業」を目にしたことは,大切な判断の基準になります。「ものさし」を持つことになるのです。だから,ライブは大切なのです。

山形県の西長先生

 いつも力をいただいて帰らせていただいてます。

 高学年の介入授業の時に,向山先生から「ぐちゃぐちゃになるところをどう教えるか。これを工夫すること。これが教師の仕事である。毎日,毎日,毎日,続けることだ。正しければ,スーっと流れるし,間違っていればぐちゃぐちゃになる。子どもが教えてくれます」というお話がありました。

 夏休み空け,また毎日,毎日,毎日,工夫を続けていこうと思います。

(向山)毎日,毎日,毎日,工夫し努力するのだ。「良さ」も「悪さ」も,子どもが教えてくれる。

   子どもの反応に,謙虚でなければならない。

   もちろん「悪ければ」,子どもはさわぐ。

   さわぐ子を注意するのは大切だ。しか

し,心の中で,「先生は努力が足りなくてすまない」という謙虚さを持たねばならない。

   その謙虚さが,腕を向上させるのだ。


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