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巻頭論文
算数授業へのこだわり
赤えんぴつ指導はなぜ効果があるのか
萩本氏は言った「舞台でやる芸を客席から見てもね、絶対に覚えられないの!」
向山洋一
勉強ができない子に,赤えんぴつで援助するときがある。
できない問題の答を,ノートにうすく書いてあげるのだ。子どもは,それをなぞってくる。小学生なら,ほぼ全員が,こうした教師の援助を喜んで受け入れる。
「こんなことで,本当の学力はつかない」という教師もいる。頭でっかちの,口先だけの人間だ。実力が極端に低いのも共通している。「人様がいい」ということに,疑問をはさみ文句をつけるのが大好きなのだ。
はっきり言って,幸運の神様が,まっ先に見離すタイプだ。
こんな人と一緒にいると自分の運も逃げてしまうので,私は昔から「けがれるから」と言って,ほとんどかかわりを持たないできた。
その人の名前さえ覚えない。わずか30 人ぐらいの教員室で,3年一緒にいても,名前を覚えないのだ。フレームカットで,その人のことは,素通りする。
(でも,子どもの名前は一日で覚える)
野球でも,将棋でも,プロまで上達する人間の見分け方は同じだ。
第一にそのことが大好きなこと。
第二に素直な性格であること。
教師も同じだ。疑い深い教師は,ジャージを着て授業をし,人の言うことに文句をつけ,研究会で無内容で無知な話を声高にする人と決っている。
「赤えんぴつの指導で,できない子が伸びた」ということを聞けば,素直にやってみればいいのである。
教師が使うのは,赤えんぴつであって,赤ペンではない。プロの教師なら必ず赤えんぴつを使う。赤えんぴつだからこそ,うすく書いてあげて,なぞらせることができるのだ。
赤ペンで書いてやると,子どもは「プイッ」と怒って,そっぽを向く。ノートを汚されたと思うのだ。
「なぞってごらん」という事も,小さく,ささやくように言う。
これを,大きな声で言う無神経な教師がいてあきれる。仏を作って魂入れずだ。
本当は,赤えんぴつで全部を書くのではなく,最初の所ぐらい自分でやらせるのがいい。
そんなときは,「ここは,自分でやるんだぞ」と大きな声で言ってやる。みんなに聞かせるためだ。
「できました」と持ってきたら,「よくやった」,「ここは自分でやったんだよな」と,更赤えんぴつ指導はなぜ効果があるのか萩本欽一氏は言った「舞台でやる芸を客席から見てもね,絶対に覚えられないの!」に大きな声で言ってほめるのである。
赤えんぴつを使いこなすのだって,ことほどさように,いろいろな場面があるのだ。
勉強好きで,素直な人間が,学んでいけるのである。
「赤えんぴつ指導は効果がある」のは「なぞる」からだろうか。
それもある。
しかし,もっと,大きな原理が作用している。これまで,教育界ではあまり,言及されてこなかった。
関連することを,思いつくままに列挙してみよう。
30 年前,京浜教育サークルは,自然地理の系統案を作っていた。
低学年の子に,空間認識の力を育てたいと思っていた。
下駄箱を使って,「ここから上」とか「ここから左」とかを授業してみた。
しかし,予想を越えて困難だった。
雪ヶ谷小で,3年生に,校門から百メートルまっすぐにのびる道路の主な店を地図に記入させたことがある。
白地図を渡してである。しかし「白地図」と「実際の建物」は,一致しなかった。
一本の道路でさえ困難だった。
(それなのに,白地図に学区域の店調べを記入させる教師がいる。ムチャだ)
黒板にかいた図をノートに書かせるとき,一年生などでかけない子がいる。
黒板とノートは離れており,一致しないのである。
インターネットを使った授業の時,「教師」と「画面」の位置が大きく離れているときがある。横山浩之ドクターは,「子どもの視線が分離してしまい大問題だ」と言われたが,私も全くその通りだと思う。
インターネット活用の授業は,教師が子どもに見える位置で授業するのが前提だ。
だから「パソコン操作」は,授業に向かない。「タッチパネル型」が絶対に必要だ。
その上で「スクリーン」と「教師の位置」を常に考える必要がある。
ここまで書いたが,まだ問題の入口だ。
さて,ずっと昔「NHKクイズ面白ゼミナール」で,問題を出していた頃,不思議な指導を見た。
習字である。
子どもの前に先生がすわって,子どもの筆に手をそえて「さかさま」に書くのである。
これは,「子どものうしろ」から「手をそえて一緒に書いてやる」ことから発展したものだ。
学習する文字が,教師と子どもで,同じ方向になっている。
昔,習字の師匠の中には,このようなことができた人がいた。今や極めて少ない。
ちなみに,TOSS関西中央事務局の神谷先生は,これができる。
ここでのポイントは「教材」の「向き」なのだ。
教師が持っている「教材」と子どもが使っている「教材」の向きなのだ。
普通は,教師と子どもの教材は,反対方向になっている。
教師は自分向き,子どもも自分向きになっているので,結果として,反対方向になる。
それが,何だと思う人もいるだろう。
「考えたこともない」という人がほとんどだろう。
しかし「学ぶ」ときに,これは大問題なのだ。現在絶版だが『言葉の達人たち』(阿久悠編扶桑社,1993 年)の中で,萩本欽一氏は,実に分りやすく次のように語っている。逆の動きでは覚えられない
僕は,芸を浅草で覚えてきたわけですよ。で,一つ気づいたことがあるんですね。
僕,浅草で芸を覚える前に,映画を見ていたり舞台を見てたりしてたんですよ。でもうまくならないんですよね。いい役者さんやコメディアンを見ればうまくなると思うじゃないですか。ところが,いくら見てもうまくならないんですよ。
どうしてうまくならないか知っています?舞台でやっているのは,全部逆側を見せてるんです。客席のみなさんは,舞台と向かい合ってるわけだから,全部実際とは逆の動きを見てるんですよ。
逆をいくら見ても覚えられないんです。だからわれわれは,芸を見るときには,舞台の袖で同じように動いて覚えるんですよ。横からじゃないと覚えられないんですよ。
となるとさ,面白いでしょ。踊りのお師匠さん,どうやって教えてます?
正面で,生徒に向き合って教えてますよ。「はい,そうじゃないの。もっとこういう感じで,チントンシャンでしょ」って。逆の動きを見てるわけだから,生徒はなかなか覚えられない。だから月謝を長ーく払うの(笑い)。
学校もそうでしょ。先生と生徒が向き合ってるから,逆で教えてる。だからずーっと覚えられない。逆ってね,人間,気持ちが悪いんですよ。だから逆らうヤツが出てくるの。本当は,先生が生徒の横へ行って,同じ向きで教えてあげるといいんじゃないかと思うんですけどね。
僕たち,芸を本気で教えるときには横で教えるの。するとすぐに覚えちゃう。で,教えたくないヤツには前で教える。「こうやるんだよー,お前」
いくらやっても覚えませんから,そりゃそうですよねえ。逆に動いてますから,絶対に覚えられない。
これを読んだ時(もう10 年も昔であるが),赤えんぴつと同じだと思った。
教師が,赤えんぴつをかいてやる時,授業中全員が練習問題にとりかかった時だ。
うしろから,そっと近より,子どもの横によりそって,ノートにうすくかいてやるのだ。
子どもは目の前で「同じ方向」にかいてくれる教師の赤えんぴつを見ているのだ。「なぞる」ようにうすくかくことも大切だ。
身体をよりそうようにしているのも大切だ。
そして「文字」「教材」の方向が,先生と子どもが同じ方向というのもとっても大切なことなのだ。
教師の行為は,このように一つ一つが意味があり奥が深い。
それを考えると百マス計算をストップウォッチで尻を叩くという方法は,いかにひどい方法かが分かる。
教師のやるべきことを,全くやってないのが百マス計算だ。
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- 明治図書