- 特集 向山型算数授業で学級崩壊から生還した!
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巻頭論文
算数授業へのこだわり
学級崩壊を建て直した実例からの「回復ケース」
向山 洋一
5月19日,新聞は一斉に「学級崩壊150クラス分析」という,学級経営研究会の報告を大々的に報じた。
今回の目玉は,学級崩壊からの生還である。 「崩壊状態から回復した代表的な事例を分析した」という。
明らかに,TOSSが出版した『学級崩壊からの生還』(扶桑社)が,影響している。
崩壊を回復した事例を示せないのであれば「何のための研究か」ということになる。
そこで,大々的に「回復」を報じたのだ。
「研究会では,5つの例からヒントを得たという。「5つの事例」これがすべてだ。
文部省の委嘱を受けた学級経営研究会は,どんな分析をしたのか,とりあげよう。
▲ ケース1
六年生を受け持った四十代の男性教師。子どもたちの落ち着きのなさを高圧的な指導で解決しようとしたが「てめー,それでも教師か」と反発。教師は体罰を行ったが,クラスのほぼ全員が六月の授業参観をボイコット。親から不満が噴き出し,担任は休職に。
新担任になった四十代の女性教師は「一方的にしからない」「丁寧な授業」を心がけ放課後,教室で雑談した。二学期の終わりには子どもが「先生の通信簿」という寄せ書きをつくり,協力するようになった。
ヒント
力で押さえつけることは事態をより深刻にする。学校を「安心できるところ」という感覚を子どもが呼び戻せるとき解決への道が開ける。
〈向山〉何だ? これは!? 「学級担任を変えた」ということだ。学級担任を変えて建て直した例なら,法則化には山ほどある。担任を変えれば,「3日で変わる」こともまれではない。
私が見た3年生のクラスは,授業中半分以上の子どもが脱走するほど荒れていた。
子どもたちの目がつりあがっていた。授業どころか,席にさえついていなかった。
教師は,「こんなにひどい子どもたちは初めてだ」と言っていた。とびっきりの悪が,十数人いるというのである。
そんなクラスを,法則化の若い教師が担任として受け持つこととなった。
私でさえ,「ものすごい崩壊状態」と思っていたクラスが,3日できちんとなった。
担任が変われば「3日で回復する」など,いくらでもある。
当然,問題点は前の担任にあった。
崩壊させた前の担任が,クラスを建て直せるようになることが重要なのである。
この研究は,核心をはずれ,そっぽを向いている。
何度でも言うが,法則化には,崩壊したクラスの後を担任して,建て直した例なら山ほどある。6年連続して6年生担任をしている教師もいるのだ。
ケース2
いじめや暴力が目立つ学級を担任した五十代の男性教師は力で押さえつけることで何とか持ちこたえた。五年で担任が女性教師になると授業が成立せず,いじめで不登
校になる子も。
六年生で担任となった五十代の男性教師は,毎朝十五分,口で言いにくいことを紙に書かせ,討論を始めた。次第にいじめの経験などつらいことも書くようになり,クラスに反省の機運が高まってきた。
ヒント
書く「討論」のような方法で,子どもの心に「語れない恐怖」をため込ませず,子ども自身で問題を解決するための仕掛けをつくることが大切。
〈向山〉何だ? これは!? これも,学級担任の交代だ。
交代した教師と前の教師の違いを,イージーに比べている。
私から言うと,全くデタラメの分析だ。
荒らさせてしまった教師が,クラスを建て直す。その時,教師は何かを反省して何かを変化させているのだ。
それこそが,学ぶべき点なのである。
しかし,この「ヒント」は,レベルが低いねぇー。あきれるほど,分析ができてない。
▲ ケース3
三十代の女性教師が担任した三年生の学級では一人の男子が授業を妨害。持ち物の紛失などが多発した。
二学期から他の教師による応援態勢を取り,算数では学年全体の四十四人の合同授業とし,担任二人と教頭の三人で指導。教育委員会からの指導員も授業に加わり,一人一人のペースに合わせた指導を行い,女性担任も気持ちのゆとりを取り戻した。
ヒント
学年合同授業は担任の精神的負担をやわらげた。一方,教員免許を条件としない指導員が学級に入ることにより,子どもは教師以外の大人とのかかわりで変化していった。
〈向山〉これは何だ!?
これも,半ば担任をはずした例だ。担任が何も反省せず,変化もしていない。という。44人を3人で教えたのだ。 「一人一人のペースに合わせた指導」というから「問題解決学習」だろう。
私は断言するが,この授業では,子どもは満足していない。
できない子も,できるようになっていない。
平均点も低いだろう。
しかし,教頭も含めて3人で授業をし,教育委員会からの指導員も加われば,とりあえずさわぎはおさまる。まだ3年生なのだ。 「向山型算数」を体験した教師なら,こんな授業で,子どもは満足しないということが分かるだろう。
私は「ケース3」の例を,ぜひ参観したい。
できたら,この荒れたクラスで,「向山型算数」をしてみたい。
知的で魅力ある授業こそがポイントなのである。
「ケース3」に至るまで,「崩壊させた教師が持っている原因」の分析がない。だから「教師が変わって,子どもが変わる」という視点がない。更に「授業こそ大切だ」という視点が弱い。
私は,「ケース3」は,かなりあぶない例だと思う。これでは,何も,問題は解決してないからだ。
子どもをまとめて,倍の数の教師で押さえ込んでいるのが本質だ。
ケース4
特定の幼稚園の卒園者が入学する一年生の学級で勝手におしゃべりするなどの「荒れ」が目立ってきた。
幼稚園,小学校間の教育内容の「段差」が荒れの原因では――。こんな問題意識から幼稚園は地域の小中学校と連携し,合同の教育研究会を設け情報交換した。幼稚園の教諭が小学校を授業参観し教育内容を見直す一方,小学校の音楽教師が園児の指導をして社会性の芽をはぐくんだ。
ヒント
異なる校種の教師が学び合い子どもの変化に対応。異年齢の子どもの触れ合いを広げることも有効。
〈向山〉何だ? これは!? これも「崩壊」を建て直すことの本質からズレている。問題外だ。
ただし,幼稚園がこの10年間,「自由保育」という名のもとに「自分放任教育」をして,そのため小学校に入学してくる子の中に,基本的なルールを守れない子が激増したことは注目に値する。
幼稚園の自由保育の方針は,日本の教育の屋台骨をゆるがすほどの愚劣で最悪の方針であった。そう思っている教師は多いと思う。
▲ ケース5
子どもから信頼されていた女性担任が産休になり,荒れが目立ち始めた学級を五年生で引き継いだ男性教師。毎週,読書感想文を宿題に課したところ,子どもの心は離れていった。
ある母親が教師に反発する子を自宅に招き,悩みを聞いてあげた。母親は保護者会で「教師を非難するだけでなく,どうしたら生き生きした学級にできるか考えよう」と提案。共感する保護者が出始めた。
ヒント
保護者が学級にかかわることで教室での行き詰まった人間関係が変わるきっかけになる。
〈向山〉これも? 何だ!? 「産休になったクラス」を,産休補助の教師が少々荒らしたというのだろう。
それを,5年生になって別の担任が持って回復させたという。
何を馬鹿なこと言ってるんだ。日本の教師はナメられている。
こんなこと,当たり前のことだ。どの学校でもあることだ。
産休補助の先生のクラスは少々大変,次の担任はそれをきちんとする――こんなの当たり前のことだっていうの!(つい,力が入った。)
以上5つのケースを見てきたが,学級崩壊をした教師が,立ち直り,自分を成長させ,クラスを回復させた例が一例もない。
担任が変わって,直ったという話ばかりだ。
しかも,「問題解決学習」と思われる,マユツバもののケースも入っている。
向山型算数をやった人なら,学級崩壊の原因の多くは,教師の授業の未熟さにあったことを理解できよう。
なぜ未熟かといえば,授業について教えてくれる人が大学にも職場にもいなかったからだ。
まして,「自分の授業体験を通して実感させてくれる」ことなど,なかったからだ。
向山型をやると,授業中の子どもが激変する。
熱中するようになり,ノートが美しくなり,算数が好きになる。しかも,時間は短くていい。プリントなどいらない。
そして,平均点は上がり,保護者に感謝されるのである。このようなことが,学級崩壊を回復させていくのである。
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- 明治図書