- 特集 発達障がい児に教える!定型発達者がキレる言葉遣い28
- 特集のねらい
- 「思い込み」をしているのは誰か? を考えることで本質が見えてくる
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- 1 相手のよくないことを指摘する
- @自分もしゃべっているのに,友だちに「うるさい」と指摘する
- 状況理解とうまくできている時を見逃さずほめる指導が大切である
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- A絵や作品を見て「ここ失敗してるね」と言う
- 望ましい行動を身につけるには、叱るよりほめる
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- B「あんまり笑顔が似合わないね」などと欠点を指摘する
- その子の立場を悪くしない。具体的なかっこいい行動を知らせていくことが大事である
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- C自分を守るために相手のよくない小さなところをつつく
- 話すだけ話させて、話を目に見える形で整理して、最後の行動を決めさせる
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- 2 がんばっている相手がイヤな気持ちになる言葉
- @練習しているときに「そんなことして何の意味があるの?」と言う
- なぜそのような発言をしたのかの背景を理解し、その上で正しい行動を教える
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- A友だちが質問したときに「そんなことも知らないの?」と言う
- 状況を説明し、適切な言葉遣いを子どもと一緒に考える
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- Bうまくいかなくて困ってる子に「え,このぐらい,何でできないの?」と言う
- 特別支援教育に即効性をもつ対応はない。「教えてほめる」で何度も何度も正しい方法を入力し続けなければならない
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- C教師の指示や友だちのお願いに対して「エ〜!!」と言う
- 同じ意味でも言葉をかえることで気持ちが反転する「魔法の言葉」
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- 3 自分がしてもらっているのに言ってしまう言葉
- @教えてもらってできたのに「初めから知っていた」「自分だけでもできた」と言う
- 「自分でできる」ということは否定せず、正しい対応の仕方を教える
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- A手伝ってもらっているのに「早くして」と言う
- 状況を理解させ、言ってよい範囲を限定する
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- Bもらったおやつを食べて「あまりおいしくないね」と言う
- Aくんの反応から対応を考える
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- Cはさみなどを借りたのに「これ使いにくい」と言う
- アスペルガー症候群・高機能自閉症の子どもは「共感」というものが何か、理解できない。「話をするには順序がある」ということを繰り返し繰り返し教える必要がある
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- 4 周りの空気を読めない言葉
- @上手だよねと言われて「このぐらい普通」と言う
- 「普通」の言葉が誤解の原因だとコミックマンガで教え、次回に生きるスキルを練習!
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- A人を傷つけることを平気で言ってしまう
- 出会いの場面での人間関係づくりが勝負 どんな子に対してもきちんと人間関係づくりをして、教えてほめることを繰り返す
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- B相手がいやがっているのに,しつこく何度も言い続ける
- 粘り強く「教えてほめる」 1つ1つを具体的に教え、できたらほめることを繰り返す
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- C失敗している人がいるのに自分ができたことを自慢する
- できた喜びを表現する気持ちを受け止め、自慢が嫌味に聞こえない言い方で教える!
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- 5 相手の欠点を指摘する
- @「○○ちゃんは,いつもすぐに怒るよね」などと,言われたくないことを言う
- 友だちとの望ましいかかわり方を1つ1つ具体的に、繰り返し教え、思いっきりほめる
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- A「おしゃべりばかりしていると嫌われるよ」などと指摘する
- 行動を分析し、教師の言葉や態度を改め、他の行動を教えてほめる
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- B代表して書いてもらっているのに「あまり字がうまくないね」などと言う
- 叱らないで済む対応を瞬間で考えることが教師に求められる
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- C「そういう性格は嫌われるよ」などと大きな声で言う
- 「相手の立場」「言葉の伝わり方」を教え、「よい言い方」を教える。言えたらほめる
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- 6 相手の失敗に対する言葉かけ
- @失敗した子に「ぼくはできたよ」などと言う
- 常識がわからない・理解できない
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- Aみんなの前で「失敗したの?」などとわざわざ聞く
- なぜ聞いたのかを理解して、教えてほめる
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- B計算ミスした子に「注意がたりない」などと言う
- 叱るだけでは何も変わらない。自己肯定感を高めることが基本だ
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- C「そのぐらいできないと将来困るよ」などとわざわざ言う
- 「宣言」「事実」「個別」「繰り返し」を貫いて指導する
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- 7 自分のことだけを考えた発言
- @人が話をしているのに,首をつっこんで自分のことばかり話す
- 低学年、中〜高学年、中学生の発達段階に分けた指導〜話の割り込み方を「教えて→ほめる」〜
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- Aまだ終わっていない人がいるのに,自分が終わったので「終わろう」と発言する
- 自立に向けて @見通しをもたせる A自分の特性を自己認知させる〜先手を打てば、不適切な言葉が減る。その後、適時を見計らって特性の自己認知を促し、自己コントロールができるようにする〜
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- Bゲームの最中に「あー面白くない」などと言う
- 熱くなっている時は指導せず、冷めた瞬間に全体に指導する
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- C他の子が企画したイベントで「面倒くさい」「やりたくない」と言う
- その子への対応は周りの子の理解があるから生きる
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- ミニ特集 医療のプロはここを見る 良い教材・悪い教材の見分け方
- 自己肯定感を高める教材と教え方
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- 認知機能の観点から教材を考える
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- 良い教材を選ぶ力と活用する力が授業効果を左右する!
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- 一斉指導の中で全ての子どもたちに役立つ教材
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- ユニバーサルな視点からの教材の選び方
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- 負担が少なく自信を育てる教材
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- 『あかねこ名文スキル』子どもがシーンとなる理由
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- グラビア
- 第10回 新生TOSS特別支援教育セミナーin東京 ほか
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- 特別支援教育に必要な親学 (第1回)
- 障がいをもつ子どもを改善する「親心」
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- 写真で早分かり 子どもの特性に合わせた“情報伝達の構造化” (第11回)
- 「時間制限」という枠があるから安定した行動が保証できる
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- 〜タイムタイマーを使った視覚支援とそのコツ〜
- 教育の新課題と特別支援教育
- 算数ができなくなった子に個別指導をする
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- 巻頭言
- 今までの「常識」では通用しない時代になっている。学校の体制づくりを推進し対応の基本を学ばなければならない
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- 『教育』と『医療』の連携で特別支援教育を強化する (第10回)
- TOSS教材の有用性―コ・エデュケイショナルの視点から
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- 『龍馬くんの訴え』から学ぶ発達障がい指導原則 (第6回)
- 発達障がいの子どもたちを教える原則6
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- 〜一般的な特徴とその子の特性、実態を理解し、自己肯定感を高める指導が自立へとつながる〜
- 子どもに力をつけるTOSS教材教具
- 〈計算スキル〉満足感・安心感・緊張感が子どものやる気に火をつけ、子どもに力をつける
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- 〈直写くん〉直写ノートとお手本くんで前年度荒れた学級が変化した!
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- 〈かけ算九九尺〉説明なしで量感をつかむことができる
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- 〈ペーパーチャレラン〉ペーパーチャレランは子どもの自己肯定感を高め、心を成長させる教材である
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- ポイントを外さない〜特別支援の子の保護者への対応術 (第4回)
- 「予告―経過報告―見通し」の3つの対応で保護者の不安を払拭する
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- 保護者との関係づくりの一番のポイントは「子どもの事実」である
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- 私は,この本をこう読んだ (第4回)
- 『教え方のプロ・向山洋一全集100 ノーベル賞級? 特別支援教育の実践提案』向山洋一著(明治図書)
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- 〜全ての教師はこの本で特別支援教育の指導法を学ぶべきである〜
- 『発達障害のいま』杉山登志郎著(講談社現代新書)
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- 〜発達の凸凹に気づかない教師・発達の凸凹に対応できない教師〜
- 特別支援教育を視野に入れた学校づくり (第3回)
- 特別支援教育のチェック項目指針(学校用・担任用)と正対し向上を図る
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- “あの有名人”も実は〜 教室で読み聞かせ:元気が出る実話シリーズ (第10回)
- 「スティーブ・ジョブズ」世界を変える! 夢に向かって突き進もう
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- 学級担任に必要な「特別支援教育の基本スキル」 (第8回)
- 授業にWISC−Vを活用しよう
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- 教育は格闘技だ―フリースクールの実践 (第25回)
- たった1日の「ふれあい囲碁」で負けを受け入れたT君
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- 〜自ら伸びる子どもの力に依拠し、伸びる力をさらに伸ばした安田泰敏九段からの学び〜
- 中学校を改革する特別支援教育で中学校が変わる (第4回)
- 二次的障がいを生じさせないための教師の仕事
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- 眼科医療と発達障がい支援の関連 (第1回)
- 学校検診の視力はAなのに見えていないのはなぜ?
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- 〜視機能について@ 視力と屈折異常〜
- 発達障がい児への指導法/支援法 (第4回)
- QAレッスンシート イギリス自閉症児協会・SPELLの法則
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- 特別支援教育の制度/障がいの用語理解/障がい観・支援システム (第4回)
- 支援のシステム その1 個別の教育支援計画
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- コーディネーターのお仕事拝見 (第14回)
- 年度当初のトラブル除去要領
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- 誌上QAコーナー こんな時どうしますか
- おしゃべるする子への対応 ポイントは「脳を改善し、おしゃべり以外のものにエネルギーを使わせる」
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- 特別支援学校・特別支援学級コーナー
- コーナー担当
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- 特別支援学校の実践
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- 〜「上靴」を洗うことを通して自立を目指す〜
- 特別支援学級の実践
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- 〜数を認識できないAくんが数えられるようになった自作教具「A−BOX」〜
- 論文ランキング
- 34号/親学、保護者との連携の論文に大きな反響
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- 読者のページ
- 34号の学びや感想
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- 編集後記
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- TOSS特別支援教育イベント情報
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- どんな子でも熱中する教材はこれだ!!
- 『鉄棒くるりんベルト』は、いつの間にか逆上がりができるようになる、魔法のような教具です。「NHKおはよう日本 まちかど情報局」の番組で取り上げられました。
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巻頭言 今までの「常識」では通用しない時代になっている。学校の体制づくりを推進し対応の基本を学ばなければならない
北海道別海町立野付小学校/青坂 信司
1精神疾患による休職者が増加している
近年,教員の精神疾患による病気休職者が増加している。10年前の約3倍である。児童生徒との関係ばかりでなく,保護者・同僚・管理職との関係によるストレスを抱えることで休職に至るケースが多い。また,ストレスを抱えていても職場内で相談できる管理職や同僚もおらず,孤立した中で精神疾患に陥っているのが教員の病気休職者の特徴だと言われている。
A君は,幼稚園時代から友だちとよくトラブルを起こしていた。友だちとトラブルを起こす子はA君以外にもおり,ただ単に「たくさんいるやんちゃな子の1人」と思われていた。知能的には問題はなく,小学校に入学して通常学級に在籍してきた。休み時間,友だちと一緒に遊ぶが,トラブルは絶えなかった。ただし,対人関係に消極的ではなく,むしろ積極的であった。
勉強時間は,自分の興味があることには一生懸命取り組めるが,自分の嫌いなこと,例えば人前で発表することなどは決してやろうとはしなかった。時には,授業時間,立ち歩いたり,教室から出ていくこともあった。担任教師は,授業を中断してA君の後を追って教室を不在にすることもあった。他の保護者から,「学習が遅れている」「落ち着いて勉強ができないと我が子が言っている」等とクレームが入るようになっていった。問題が起きると,担任教師がA君を個別に呼んで,話して聞かせると反省をし,しばらくは問題を起こさなかった。個別的対応をとるとなんとかなるが,子ども集団の中にいると様々なトラブルが生じる。それがA君だった。
A君は,担任教師からすると指示に従えない「わがまま」で「自分勝手」な子であった。また,担任教師の対応は,他の子から「なぜA君だけ許されるの?」と聞かれることもあり,学級集団の規律を優先させるためには,どうしても注意・叱責が多くなっていた。通常学級の担任教師はA君だけを担当しているのではなく,他にも問題を抱えている子は何人もいた。
「何らかの障がいを抱えているのではないか」と思うこともあった。しかし,身近な教師にそれとなく話すと,「個別にきちんと話してあげると何とかなるのでしょ」という感じで,まともな相談相手とはなってくれなかった。担任教師は,孤立感を深め,日々心労が積み重なっていった。
担任教師が変わっても似たような状況は続いていた。年度によっては「学級崩壊」一歩手前ということもあった。A君が6年生になる頃「あの学級を担任したくない」と言う教師が多くなっていた。
2今までの「常識」では対応できなくなっている
このケースは,決して特殊なケースではない。今日,多くの学校で生じていることだろうと思われる。問題の根本は,今までの「常識」で子どもを理解し,対応しようとしていることだ。言えば何とかなる。注意すれば何とかなる。叱責すれば何とかなる。そう思っている。しかし,現実は何ともならない。一層悪化することの方が多い。
特別支援教育の重要性を知っている管理職ですら,教師の指示に従わない子どもを目の当たりにすると,ただ単なる「わがままな子」「自分勝手な子」として映り,厳しい注意・叱責でどうにかなると思っている方もいるくらいである。
杉山登志郎氏は,本誌2011年12月号(第31号)で次のようにいう。
わが国の教育は,今後,発達障がいと共に進むことが大きな課題である。
これは,発達障がいの理解抜きにこれからの学校教育を成立させることは困難なことを意味している。まず発達障がいを理解することだ。それも担当する教師だけではなく,学校全体で障がいを理解するということが必要になる。
3校長が方針を示すことから始める
特別支援教育に関する対応は,一個人の責任ではなく,組織体としての学校の責任が問われる。すなわちそれは,学校の責任者である校長のあり方が問われているということだ。校長が,特別支援教育にどのように取り組もうとしているのか。
取り組みには,必ずスタートである着手点があり,ゴールである目標を設定することが必要である。特別支援教育に学校として取り組む着手点,それは校長が方針を示すことである。もし各学校において「特別支援教育が重点事項だ」というならば,担当者だけに任せることなく,学校全体で取り組む方針を示し,取り組みの枠組みを示すことである。
特に,通常学級に存在する発達障がいではないかと疑われる子どもたちに対して,どう理解し,どのように対応していくべきなのか,明確な方針を立て学校全体として共通理解しておかなければならない。
4各教師の対応は「教えて,ほめる」
文部科学省が平成22年3月に発行した『生徒指導提要』には,発達障がいを抱えた児童生徒への指導についても書かれてある。
発達障害のある児童生徒の特性に応じた指導の基本的な姿勢は,間違いやできないことに気付かせるだけでなく,正しいこと,できるための方法を具体的に,そして丁寧に教えていくということです。
(同書160ページ)
具体的に丁寧に教えた上で,確実に定着させるためには次のことが必要だとしている。
指導したことを定着させ,確実に身に付けさせていくためには,失敗を指摘して修正させるという対応ではなく,成功により成就感や達成感が得られる経験を積むこと,そしてそれを認めてくれる望ましい人間関係が周囲にあることが重要になります。(同書161ページ)
これはまさしく向山洋一氏が主張している「教えて,ほめる」と同じことだ。
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- 明治図書
- 今号の特集は、教室や学校で「そうそう!」「よく言う」「いつもやっている」といった一般的な言動・行動を取り上げており、それへの対応力も具体的で、大変参考になりました。次号も今から楽しみです。2012/10/30つばさ