特別支援教育教え方教室 2009年8月号
22号 発達障害児がいる学級の“授業の入り方”―成功例と失敗例

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特別支援教育教え方教室 2009年8月号22号 発達障害児がいる学級の“授業の入り方”―成功例と失敗例

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ジャンル:
特別支援教育
刊行:
2009年7月10日
対象:
小・中・他
仕様:
B5判 112頁
状態:
絶版
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目次

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特集 発達障害児がいる学級の“授業の入り方”―成功例と失敗例
エラーレス・ラーニングで決める学級の授業の入り方
先が見通せ,失敗しない教材で安定した生活を確保する
松崎 力
典型は「向山氏のそろばん指導にあり」! 日々の実践を変える具体的3つの心得を提案する
椿原 正和
絶対に失敗しない「エラーレス」の導入。それが毎日繰り返されることが大切だ
谷 和樹
年間を通じた固定した入り,自尊感情を高め,子どもの情緒を安定させる
川原 雅樹
エラーレス・ラーニングの教材でテンポよく進めるのが,授業導入の最大のポイントである
五十嵐 勝義
うつしまるくん
小嶋 悠紀
「エラーレス英会話」にするための3つのポイント
井戸 砂織
エラーレス・ラーニングは,優れた授業行為である。
大関 貴之
漢字スキル・視写スキル
長谷川 博之
わくわく図鑑・暗唱詩文集
吉原 尚寛
朝一番,落ち着かないときの授業の入り方
低学年
〈算数〉「できた!」が連続して得られる成功体験のある導入で,A君が変わった!
荻野 珠美
〈国語〉だれでもできる簡単なことから入り,授業に一気に引き込む
水野 彰子
〈国語〉「にっこり笑顔」と「心地よいリズムテンポ」を意識する
手塚 美和
中学年
〈国語〉朝のメニューに欠かせない暗唱 暗唱でしか味わえない心地よさがある
小野 隆行
〈算数〉学習に取り組む仕掛けをする
間嶋 祐樹
〈国語〉いつものパターンで全体をまきこむ
山下 理恵
高学年
〈国語/算数〉力のある教材と組み立てで集中させられる
木村 重夫
〈国語〉情報収集からその子へのかかわりを具体的な方針を立てて,チームで実行せよ
溝端 達也
朝の日課
放課後の孤独な作業を続け即対応,布石を打つ
熊田 賢人
友達とトラブル,こだわりでパニック その後の授業の入り方
低学年
ネチネチせずにスカッと授業に入る
伴 一孝
〈図工・道徳・体育・生活〉「楽しい! いつの間にかやってる!」を創る
小松 裕明
〈体育・生活〉受容して教える
桑原 和彦
中学年
「読み聞かせ」を教育の現場に導入しよう。パニックの子の対応は,「先」が必要
甲本 卓司
〈音楽〉授業をはじめろ 個別評定で集中させよ
根本 直樹
〈社会科〉まず全体へ網をかける
塩谷 直大
高学年
クールダウンを素早く効果的に行ってすっと授業に入る
新牧 賢三郎
〈総合的な学習〉すぐに授業に入る 個別に構いすぎないのがポイント!
赤木 雅美
〈理科〉モノで引きつけ,楽しそうに,面白そうに授業をする
千葉 雄二
ミニ特集 就学指導・進路指導のポイント
最大のポイントは「保護者と親しくなる」と,もうひとつ「……」
槇田 健
一筆,取っておく
舘野 健三
保護者と共に考えていく
根本 正雄
学校はあらゆる状況を想定して対応せよ
吉永 順一
「生きていく気力」を傷つけない選択かどうか
水野 正司
まず支援を要する子を発見する!
伊藤 雅亮
生徒の障害を理解・支援できる学校か?
久後 絹代
普通学級,普通高校が本人のためになるとは限らない
小森 栄治
A君の進路が決まり,卒業していくまで
山田 高広
中学校では「将来,その選択で自立できるのか?」がポイントになる
染谷 幸二
小学校と中学校の連携を図るために特別支援コーディネーターとして何ができるか
井上 好文
連携は早く,資料は具体的に
高橋 正和
その先を見据えた選択を
河村 要和
小さいうちから一定時間座っていられることが第一歩
石塚 慶人
「学力・資格・技能」よりも「よりよい人間関係をつくる力」
中村 朋彦
学校が学ぶべき障害児通園施設の就学指導
大場 龍男
グラビア
第7回 TOSS全国1000会場一斉セミナー
小野 隆行
イラストで学ぶ特別支援教育のキーワード (第7回)
ワーキングメモリーを鍛える
小嶋 悠紀田畑 玲子
向山一門が見た向山先生の特別支援教育の思想 (第7回)
小松 裕明
教育の新課題と特別支援教育
基本問題8問に答えられない教師は,教え子と家族を地獄の道に追いやってしまう ―我流は悪だ!―
向山 洋一
巻頭言
特別支援が必要な子どもにとって安心できる居場所を
神谷 祐子
特別支援教育で学校は変わる (第7回)
ここが分かっていないと 就学指導はできない
小嶋 瑞紀
大森修の一刀両断 教育再生にもの申す (第7回)
現場が求めているソーシャル・スキルの育成
大森 修
吉田教頭からみた特別支援教育 (第8回)
素直さが安定した就業につながる
吉田 高志
自閉症圏の子どもたちの対人関係能力を伸ばす試み (第3回)
対人関係能力を伸ばすためのポイント
森 俊夫
教育は格闘技だ―フリースクールの実践 (第12回)
知的な共感を生む暗唱指導
伊藤 寛晃
コーディネーターのお仕事拝見 (第1回)
子どもを観察する視点を示す
伊藤 雅亮
ママがする自閉症児の家庭療育HACプログラム (第7回)
HACプログラムってどんな効果があるの?
海野 健
誌上QAコーナー こんな時どうしますか
発達障害児に対する一時一事の原則を応用するにはどうしたらいいですか
大場 寿子
特別支援学校・特別支援学級コーナー
コーナー担当
五十嵐 勝義
特別支援学校の実践
柏田 良男
〜一つ一つの指導を細分化して考える〜
特別支援学級の実践
本間 尚子
〜会話力をつける〜情緒障害学級の実践〜〜
論文ランキング
21号/21号はどの論文も接戦! どれも見応え十分!
小野 隆行
読者のページ
小野 隆行
編集後記
大場 龍男
TOSS特別支援教育イベント情報
五十嵐 勝義
酒井式描画法で授業する!
酒井式奥行きのある風景を描く『体育館』
高橋 正和

巻頭言

「特別支援が必要な子どもにとって安心できる居場所を」

大阪市立島屋小学校 神谷祐子


1 エラーレス・ラーニングの誤解


 2009年4月25日,向山先生が大阪教育大学開学60周年記念の講演会で,「エラーレス・ラーニング」について話をしていた。特別支援教育の子どもたちにとって,どれだけエラーレス・ラーニングが必要であるかを,実例と共に示されていたのであるが,後のシンポジウムにおいて,次のような誤解があることが分かった。

 「子どもたちにとって,間違いに気付かせ,それを正していく教育は必要なのではないか」という内容だ。

 一般論としては,それも正しい意見である。しかし,特別支援教育に限定したとき,この考え方でたくさんの子どもたちが悲しい思いをしていることを,あまりにも知らない人が教育関係者の中にも多くいる。

 特別支援を要する子どもたちにとって,ワーキングメモリが少なかったり,視覚や聴覚などのどこかの感覚がきわめて弱かったりする場合がよくある。他の子どもたちに比べて,情報を認識したり記憶したりするのがたいへんな子どもたちがたくさんいるのだ。

 だから,試行錯誤させながらいろいろな方法を試してみて気付かせていくやり方は,特別支援教育を必要な子どもたちにとっては,どれが正しい方法なのかが分からなくなってしまい,混乱させてしまって分からなくさせてしまう危険性がきわめて高い。だから,エラーレス・ラーニングを進めているわけである。


2 生活面にも顕著に現れる


 すさまじく荒れた学級を担任したときのこと。教師が真剣に叱ったときに,「にたにた笑い」を友達同士で回していく習慣があった。こちらが真剣に叱れば叱るほど,この「にたにた笑い」を続けていく。どうしても,我慢ができなかった。だから,まずはこれを叩き潰すことから闘った。しばらくすると,これも収まってきた。

 彼らにとって「にたにた笑い」の連鎖は,そんなに意味のあるものではなかった。今までの習慣でそうさせていただけのものだった。だから,これをすることによって,より一層叱られることが分かったら,その「にたにた笑い」の連鎖は,どんどん消えていった。

 ただ,哀れだったのは,その「にたにた笑い」が最後まで残っていたのは,明らかにグレーゾーンと思われる子であった。彼らはき っと過去の習慣でそうしていたのだろう。他の子たちは,担任の反応を見て,すぐに方向転換ができた。しかし,その方向転換ができなかったのが,グレーゾーンの子たちである。

 学級が荒れると,巻き込まれるのはいつもこのような子たちだ。本来の中心になって学級を荒らしていた子たちも,自分に大きな不利益になることが分かれば,すぐに方向転換ができる。そして,過去のあやまちなど,何事もなかったように,再出発もできる。

 だが,いったんついてしまった悲しい習性がすぐに抜け切れないのが,グレーゾーンの子たちである。彼らは,よい習慣もなかなか身につかないし,いったんついてしまった悪い習慣もすぐには抜けきれない。

 だから,エラーレス・ラーニングで正しい方法を当初から教えないといけないのである。


3 自分が安心できる居場所


 昨年度,一番手のかかった特別支援を要する1年生の男児。3学期には別人かと思われるほど落ち着いていた。とりわけ,彼が大好きだったのが算数の授業である。

 授業が始まったら,すぐに教科書とノートを広げ,ノートには日付とページ数をきれいに書き込んでいるのだ。

 そして,「できました!」と言いながら,教師がほめてくれるのを待っている様子が,いかにもほほえましかった。

 この男児,算数はきわめて苦手であった。2学期の途中になっても,まだ3以上の数の概念が理解できずに,毎日,個別指導を続けた児童である。

 当初は,自分の席につくこともままならず,すぐに友達にいたずらをして,叱られてはだだをこねて,床に寝転がっていた。

 ところが,そんな子どもたちにとって向山型算数のような型のしっかりとした学習はきわめて安心できたようだ。

 まずは,学習の準備を整えて,教科書の問題をノートに解いていく。すぐに,日付とページ数を記入することになるから,先生が授業を始める前に,ちゃんと書いておけばいっぱいほめてもらえる。

 次に,自分にとって分からない問題があっても,教科書を見たら書いていることが多いし,もし書いていなくても,お友達と相談したらいい。お友達がちゃんと教えてくれるから安心だ。

 また,計算スキルも,初めのうちは先生が回ってきてくれてヒントを出してくれる。あとは,答えを参考にしたらいいから,大丈夫だ。

 特別支援が必要な子どもたちにとって,何よりも求めているものは「自分が安心できる居場所」なのである。授業中だって同様である。教師が授業の初めから訳の分からないことを延々とやっていたら,どうしても不安で仕方なくなってしまう。だから,それを解消するために,つい,ふらっと立ち歩きたくなってしまうのだ。

 授業の初めから,教師が子どもたちにとって安心できる授業での居場所をつくってやれば,どんな子どもたちだって安心してその授業に集中することができる。

 いったん授業に集中して楽しくなれば,あとは大丈夫だ。だから,授業の入り方には,教師は力を注がなければならない。

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