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今月のメッセージ
子どもの声を聞きとる対話と制度を学校に
愛知教育大学 山田 綾
子どもの荒れが、報じられ続けている。おとなに求められていることは……。
三月に、スウェーデンの南部にあるアーレ町を訪れた。
中学生が町議会議員と相談して議案をつくり、町に提案する「子ども会議」の取り組みが始まっていた。子ども会議には提案権しかないが、中学生と議員が議場に集い、町議会と同じ手順で議案について検討する。九年生(中三に相当)のルーモンドは「子ども会議に参加するまで、何事にもやる気がなく、学校でも遅刻したりイライラしていたが、子ども会議の一員になり、やる気と責任感が生まれた」と話してくれた。「議員と直接話ができる」、「大勢の前で話すことができて気持ちいい」、「政治の仕組みがわかった」、「他校の生徒と出会えた」など、子ども会議は中学生に好評だ。
この町にあるアルボ小学校では、子どもが自分で学習活動計画をたてることや、学びの軌跡を記録するポートフォーリオなど、授業への「子ども参加」の取り組みがさまざまに試みられ、児童会活動が熱心に指導されていた。保育/幼稚園では、デモクラシーを再構築していくための重要な視点として、ジェンダー・プロジェクトが始まっていた。
何より、アーレ高校では、九八年に「生徒がマジョリティの評議会」をつくり、校内予算執行などの決議機関とした。この評議会は、生徒会から輩出される高校生四人と、おとな三人(校長、担当教員、町の文化と教育担当部長)から構成されている。
「結局、決定するのはおとなだ」という生徒の不満の声から始まったこの制度により、評議員を輩出する生徒会は、学校と町の運営に大きな影響力を持つようになった。おとなたちが抱いた危惧を裏切り、生徒は自分たちの問題について調査し、改善策を提案し、おとなと議論して的確に判断し、決定してきた。生徒会の要求により、高校生にフリーのバスカードを支給することが決定され、また教職員の採用においても、生徒の面接は、校長や教員の面接より厳しく、適切な教員の選考に貢献してきたという。
生徒会活動について説明してくれた生徒会役員のアンドレアスは、「自然科学コースを専攻しているが、生徒会に参加し、社会に関心をもつようなった。将来は、政治に関わっていきたい」と語った。社会科学コースのエリーンは、「おとなと落ち着いて話すことができるようになり、自信がついた。将来は、男女平等か文化にかかわる仕事をしたい」と話してくれた。
しかし、三七歳の副校長フレデリックは、授業が対話的で探究的に進められなければ、この制度は形骸化するだけだと話す。アーレ高校の教育活動を貫く基本姿勢は、教師と生徒の対話的探究的実践にある。教師たちは、教授学リーダーを核に毎年目的を決めて研修し、学期の初めに生徒と授業の目的・内容・進め方・評価について話し合うなど、授業改善の努力を重ねているようだった。アーレ高校でも、生徒会活動に関わる生徒が一部に留まる傾向があるなど、取り組みは発展途上にある。しかし、何か問題が生じたとき、彼ら/彼女らは教師や周りのおとなたちと対話しながら解決していくに違いない。
アーレ町の取り組みは、スウェーデンが重視しているデモクラシー教育の一つの試みである。スウェーデンでは、現在、学校において、子どもたちが、性別、民族、宗教、性的指向性、ハンディキャップなどにより不当な扱いを受けないための法制定が準備されている最中だと、学校教育の専門家レーナが教えてくれた。彼女は、ストックホルムにある男女平等オンブズマンの機関で働いており、男女平等教育の推進に取り組んでいた。
世界の多くの場所で、子どもたちの声を聞き取り、子どもたちを世界に位置づけ、学校から民主主義を再構築するさまざまな試みが始まっている。そうした試みに、希望を見いだしたい。
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- 明治図書