生活指導 2005年5月号
子どもがつながる授業の創造

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生活指導 2005年5月号子どもがつながる授業の創造

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ジャンル:
生活・生徒・進路指導
刊行:
2005年4月7日
対象:
小・中
仕様:
A5判 124頁
状態:
絶版
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目次

もくじの詳細表示

特集 子どもがつながる―授業の創造
子どもがつながる―授業の創造
大和久 勝
小学校実践
楽しいクラスに
高野 恵
「本当のこと」はどこにある?
原田 真知子
中学校実践
「読み」を通して世界を広げる
小倉 泰子
頑張れドビュッシー!頑張れ私たち!
向 美由紀
分析
子どもがつながる授業をどう創造するか
高橋 廉
学力調査と学びのアンラーン
子安 潤
第2特集 春の行事・文化活動の指導
実践 小学校
運動会「ナルトdeヒップホップ」
岸田 久恵
全校リズムを子どもたちの手で
深川 一樹
実践 中学校
宿泊研修・キャンプで明るく前向きな学年・学級の雰囲気をつくる
近藤 賢司
くるくるまわるアドバイザー
広井 護
実践 障害児
和太鼓と障害児
白桃 敏司
論文
文化活動と中学校の現状
本田 広行
今月のメッセージ
認識の獲得と世論の形成を
宮ア 久雄
初めての人のために やさしく解説する集団づくり入門 Q&A・小学校 (第2回)
子どもの世界をつなぐリーダーの指導を
浅見 慎一
初めての人のために やさしく解説する集団づくり入門 Q&A・中学校 (第2回)
学習旅行の班編成を考える
村越 規雄
実践の広場
私の教室
『気もち』を『かたち』にする
前澤 昌克
すぐ使える遊び
いろいろなもので班会議
柚木 清知
授業のアイデア
手作り天秤で重さをくらべよう
瓜生 浩司
楽しいイベント
夏休みの「星の観察」大イベント!
山中 由里子
学校は今
教師と保護者が信頼のキャッチボールを!
近藤 恭司
通信・ノートの工夫
「私」から。みんなへ。
笠原 舞子
手をつなぐ
子育ての悩みは分けあって
久保田 道子
今子どもたちは
父のリストラ そして離婚?
石田 一夫
私のオフタイム
小さなスケッチ
佐藤 くみ子
案内板 集会・学習会のお知らせ
北から南から
地域・サークルからの発信 群馬県
丸橋 伸弘
〜誰でも書けるレポートづくりとひまわり学校の今後の展望は〜
教育情報
「土佐の教育改革」の八年―第二期土佐の教育改革のなかで―
高尾 和伸
読者の声
3月号を読んで
投稿 実践記録
荒れ(!?)の裏側にあるもの
白千山 聡信
編集室だより
全生研第47回全国大会案内
編集後記
大和久 勝

今月のメッセージ

認識の獲得と世論の形成を

全生研常任委員 宮ア 久雄 


 仲良しの世界は時にいじめの世界でもあるという。なぜだろうか。仲の良い関係がいじめを生み出す温床になっているなんて、考えただけでも辛くなる。

 鈴木実践を読んでいたとき、限りなく親密な二者関係を追い求め、そのしつこさで嫌われパニックを起こす男子と、仲良しの関係をわずらわしく感じ一人でいる女子が紹介されていた。

 そんな時、ふと思い出したのが数年前に受け持った四年生の三人の女の子のことだった。三人はいつも一緒に行動していた。家も近所で仲良しであった。ところが、「どうも、うちの子がいじめられているようなんです」と一人のお母さんが訴えてくる。そんなことはないと思いながら話を聞いてみると、二人が先に連れ立って帰り自分だけが取り残されて一人で帰ってきたというのである。また、ある休み時間のこと、二人で虫取りに行き、娘一人が残されてしまったというのである。もちろんこれらの情報は娘さんがお母さんに語っていることである。

 翌日、話を聞いてみると、「見つけたけど、見当たらないので先に帰ったのだと思って、二人で帰った」と言うのだ。以前にも同じようなことがあったので、という話も付け加えられた。虫取りのことも、同じような経過で、二人で行動したという。

 時々、この二人の組み合わせが変わっていた。

 私は、この子たちに、二つのものが欠けていると感じた。一つは、一緒にいることで一体感を持つが、ちょっと離れただけでもう友情も何もかもなくなってしまう。いえ、嫌われ、いじめられてしまっている、という気持ちになってしまう。一緒か排除かという二者択一の世界に住み、友情なんて一緒に行動しているときだけのものという、なんともさびしい世界に生きている。欠けているのは友達を信じるちからである。

 なぜ、「なぜ、二人で帰っちゃったの」と問えないのか、なぜ「わたしも一緒に虫取りにいきたかった」と言えないのか、いえいえ、虫取りに行っていることが分かっているのだから追いかけていって「私も入れて」と、なぜ言えないのか。こう問い返してみると、言葉によるコミュニケーションが行えないことが二つ目の欠けているものとして浮かび上がってくる。

 言葉で問えないのは、もう嫌われちゃったと思い込んでいるからであり、言葉で問えないから、思い込みの世界から抜け出られないのである。だから、二つの欠けていることと考えたものは実は表裏一体の一つのものであった。

 実践では、ここで友情についての学習を一時間設定した。子どもたちみんなで考え合い思い込みの世界から言葉の世界へ、一緒にいなくても離れていても友情は消えないという世界があることを学びあった。学習の翌日、一人で廊下を歩いてくる女の子がいた。

「先生、たまに離れていたって友達は友達だよね」

「もちろんそうさ」

にっこり笑ってスキップで離れていった。教室では、もう一人の子が本を読んでいた。

「おや、今日は一人ですか」

「うん、今日は本が読みたいから」

平和な世界が心の中に生まれている。それは言葉(認識)で分かったことであり、さらに、学級の共通の認識(世論)として学んだことが生きているからであった。

 今、多くの子どもたちが豊かな感性を身につけているが、逆にその感性に苦しめられている。だからこそ、豊かな認識の獲得と世論の形成が求められている。 

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