生活指導 2005年4月号
四月・子どもと出会う―指導方針をたてる

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生活指導 2005年4月号四月・子どもと出会う―指導方針をたてる

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ジャンル:
生活・生徒・進路指導
刊行:
2005年3月9日
対象:
小・中
仕様:
A5判 124頁
状態:
絶版
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目次

もくじの詳細表示

特集 四月・子どもと出会う―指導方針をたてる
四月・子どもと出会う―指導方針をたてる
大和久 勝
小学校実践
「ないないづくし」からの出発
稲葉 浩子
立ちつくした事実からの指導方針(小三)
橋元 義文
中学校実践
二〇〇四年版・出会いのとき
佐藤 くみ子
マイナスからの出発を楽しいものに
猪俣 修
分析
「意識的」に出会うこと―そのねらいと方法
福田 敦志
仮説を立て、問い直し、修正していく
篠崎 純子
第2特集 若い教師の学級びらき
実践報告
みんなちがって、みんないい
山口 幸紀
どんな大人・教師として
河野 清人
方針を探りながら、合意を得やすい時期のうちにしかける
野島 渡
「楽しいな」の中で学ぶ・伝える
山本 ゆり
ココロの出会いをコーディネート
加藤 明子
子どもたちと前向きなトーンを作り出したい
堀川 学
今月のメッセージ
子どもたちの苦悩や喜びへの共感と共有から
大和久 勝
初めての人のために やさしく解説する集団づくり入門 Q&A・小学校 (第1回)
班をつくる/トラブルをどうする?
今関 和子
初めての人のために やさしく解説する集団づくり入門 Q&A・中学校 (第1回)
四月・子どもと楽しい出会いを
中川 晋輔
実践の広場
私の教室
一年二組 おたのしみクリスマス会
船越 涼子
すぐ使える遊び
楽しい雰囲気の中で!
手島 淳
授業のアイデア
「十五年戦争」のまとめは討論で!
飯塚 守
楽しいイベント
生徒の力は∞!『大枝フレンドシップキャンペーン』
狩野 寛子
学校は今
荒廃からの再生!
沖田 晴美
通信・ノートの工夫
子どもの何気ない学校生活を!
加藤 元康
手をつなぐ
子ども・父母・教師でつくる学校―ひまわり学校
丸山 泰弘
今子どもたちは
不登校の子の両親と
小座野 喜子
私のオフタイム
本物の味を求めて―ハムづくり
内田 光俊
案内板 集会・学習会のお知らせ
北から南から
地域・サークルからの発信 新潟県
田村 祥
〜「今日、サークルがあってよかった…」〜
教育情報
NPO/ワークショップと生活指導実践
浅野 誠
読書案内
『安心のファシズム―支配されたがる人びと』(斎藤貴男著)
鈴木 和夫
読者の声
2月号を読んで
投稿 実践記録
川柳から見た子どもたちの心
高波 勉
全生研の窓
編集室だより
編集後記
大和久 勝

今月のメッセージ

子どもたちの苦悩や喜びへの共感と共有から

全生研常任委員 大和久 勝


 子どもが殺される。子どもが人を殺す。どちらも悲しいことです。あってはならないことです。少年による殺害事件や虐待で死に至る事件などが報じられると胸が痛みます。そして怒りを感じます。しかし、そんな時、政治家や教育行政をつかさどる大人の人たちは、子どもへの不信と嘆きと新たな締め付けを考えるということの繰り返しです。

 佐世保の事件もそうでした。「心の闇」と嘆き、「心の教育」のいっそうの推進を叫んでいました。私は、こうした事件があるたびに、思い出すことがあります。


 一九九八年、中学校の女教師が教室で刺され死んだ事件のあとでした。当時の町村文部大臣が出した「ナイフを持ち込むな」の緊急アピールです。文部広報に掲載されたものを印刷して家庭数配布しました。

「君たちにもう一度言おう。悩みや不安は、遠慮なく友達やお父さん、お母さん、先生など大人たちに相談しよう。私たちは、君たちの言葉を素直に受け止めたい。」

 わずか十八行の短い文章の最後にそう書かれていました。書いてあることは間違ったことではないのですが、十八行の文章の中で、子どもの生きるつらさや悩みに共感する言葉はありませんでした。何度読み返しても子どもの心に寄り添うと言う姿勢を感じ取ることはできませんでした。

 そして同じ三月、「オレだけ楽なみちをえらんで」という見出しの新聞記事を目にして子どもの現実と文部大臣の意識との落差をひしひしと感じました。中学校二年生が学校での喫煙を注意された後に自殺した事件でしたが、手紙の中で友人たちに語りかけている言葉が印象的でした。

「ほんとに自分勝手でゴメン。オレが死ぬ理由は、みんなに悪いから、そして人生から逃げたくなったから。どれもオレが悪い、そしてオレのわがままだけどまじでそう思ったから。みんなこれからチョー大変なのにオレだけ楽なみちえらんで本当にみんなに悪いと思っている。ゆるしてください。」

『オレだけ楽なみちをえらんで……悪い……ゆるしてください』と言って死んで行く中学生にとって、人生とは、世界とは、いったい何だったのでしょうか。子どもたちが直面している人生の生きづらさを、私たち大人はどれだけ感じ取っているのでしょうか。私は今でも、この少年の手紙を繰り返し繰り返し読んでいます。子どもの生きづらさと向きあうために。

 今、子どもたちの「荒れ」「暴力」や「問題行動」の中に、生きづらさの叫び、大人への訴えが聞こえてきます。今ある現実の学校や家庭、社会に対しての鋭い「異議申し立て」を感じとることができます。それは同時に、私たち大人や教師にとっても共通した「現実」です。

 たとえば、教師が生きづらい学校現場というものは、子どもたちにとっても生きづらく子どもを不幸せにするものです。大人たちが人間らしく豊かに生きていくことのできない社会のなかに生きる子どもたちは生きづらさを感じて苦悩するのは当たり前です。不幸な子どもたちが増えてきたというのは、私たち大人が不幸に追いやられているということです。

 ですから、今ある「現実」を見つめ、感じとり、認識を深めていくことが重要です。それは、大人子どもの違いはあっても、同時代を生きる者同士の「連帯」や「共闘」を育てるものとなります。そこに、「子どもと教師のつながり」が見えてくるのです。「子どもと子どもがつながる」「大人と大人がつながる」のもまったく同じことからです。今ある現実への認識と共感が裏づけとなって、人と人とはつながれるのです。共感は、生きる苦悩だけでなく、生きている喜びを知ることも大事です。

 子どもたちの苦悩や喜びへの「共感」と現実認識の「共有」が、明日への希望と勇気を育てる実践を拓きます。

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