- 特集 四月・子どもと出会う―指導方針をたてる
- 四月・子どもと出会う―指導方針をたてる
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- 子どもたちの苦悩や喜びへの共感と共有から
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今月のメッセージ
子どもたちの苦悩や喜びへの共感と共有から
全生研常任委員 大和久 勝
子どもが殺される。子どもが人を殺す。どちらも悲しいことです。あってはならないことです。少年による殺害事件や虐待で死に至る事件などが報じられると胸が痛みます。そして怒りを感じます。しかし、そんな時、政治家や教育行政をつかさどる大人の人たちは、子どもへの不信と嘆きと新たな締め付けを考えるということの繰り返しです。
佐世保の事件もそうでした。「心の闇」と嘆き、「心の教育」のいっそうの推進を叫んでいました。私は、こうした事件があるたびに、思い出すことがあります。
一九九八年、中学校の女教師が教室で刺され死んだ事件のあとでした。当時の町村文部大臣が出した「ナイフを持ち込むな」の緊急アピールです。文部広報に掲載されたものを印刷して家庭数配布しました。
「君たちにもう一度言おう。悩みや不安は、遠慮なく友達やお父さん、お母さん、先生など大人たちに相談しよう。私たちは、君たちの言葉を素直に受け止めたい。」
わずか十八行の短い文章の最後にそう書かれていました。書いてあることは間違ったことではないのですが、十八行の文章の中で、子どもの生きるつらさや悩みに共感する言葉はありませんでした。何度読み返しても子どもの心に寄り添うと言う姿勢を感じ取ることはできませんでした。
そして同じ三月、「オレだけ楽なみちをえらんで」という見出しの新聞記事を目にして子どもの現実と文部大臣の意識との落差をひしひしと感じました。中学校二年生が学校での喫煙を注意された後に自殺した事件でしたが、手紙の中で友人たちに語りかけている言葉が印象的でした。
「ほんとに自分勝手でゴメン。オレが死ぬ理由は、みんなに悪いから、そして人生から逃げたくなったから。どれもオレが悪い、そしてオレのわがままだけどまじでそう思ったから。みんなこれからチョー大変なのにオレだけ楽なみちえらんで本当にみんなに悪いと思っている。ゆるしてください。」
『オレだけ楽なみちをえらんで……悪い……ゆるしてください』と言って死んで行く中学生にとって、人生とは、世界とは、いったい何だったのでしょうか。子どもたちが直面している人生の生きづらさを、私たち大人はどれだけ感じ取っているのでしょうか。私は今でも、この少年の手紙を繰り返し繰り返し読んでいます。子どもの生きづらさと向きあうために。
今、子どもたちの「荒れ」「暴力」や「問題行動」の中に、生きづらさの叫び、大人への訴えが聞こえてきます。今ある現実の学校や家庭、社会に対しての鋭い「異議申し立て」を感じとることができます。それは同時に、私たち大人や教師にとっても共通した「現実」です。
たとえば、教師が生きづらい学校現場というものは、子どもたちにとっても生きづらく子どもを不幸せにするものです。大人たちが人間らしく豊かに生きていくことのできない社会のなかに生きる子どもたちは生きづらさを感じて苦悩するのは当たり前です。不幸な子どもたちが増えてきたというのは、私たち大人が不幸に追いやられているということです。
ですから、今ある「現実」を見つめ、感じとり、認識を深めていくことが重要です。それは、大人子どもの違いはあっても、同時代を生きる者同士の「連帯」や「共闘」を育てるものとなります。そこに、「子どもと教師のつながり」が見えてくるのです。「子どもと子どもがつながる」「大人と大人がつながる」のもまったく同じことからです。今ある現実への認識と共感が裏づけとなって、人と人とはつながれるのです。共感は、生きる苦悩だけでなく、生きている喜びを知ることも大事です。
子どもたちの苦悩や喜びへの「共感」と現実認識の「共有」が、明日への希望と勇気を育てる実践を拓きます。
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- 明治図書