生活指導 2005年3月号
「軽度発達障害」の子どもと集団づくり

L614

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生活指導 2005年3月号「軽度発達障害」の子どもと集団づくり

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ジャンル:
生活・生徒・進路指導
刊行:
2005年2月8日
対象:
小・中
仕様:
A5判 124頁
状態:
絶版
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目次

もくじの詳細表示

特集 「軽度発達障害」の子どもと集団づくり
「軽度発達障害」の子どもと集団づくり
大和久 勝
実践記録
ほんとうのなかま
新谷 学
Aと一緒にあやまることからはじめよう
藤原 祐輝
ともに気持ちよく生きることができる集団づくりを求めて
竹藤 惠一
分析
「特別な支援」を必要とする子を包む集団づくり
白桃 敏司
軽度発達障害の子どもたちと特別支援教育
平井 威
第2特集 一年間のまとめ
小学校/ごぞんじ「うらしま太郎」文化をみんなで育てた
志賀 廣夫
小学校/子どもたちと共有したいもの
原田 真知子
中学校/耕しの記録を
上木 洋一
中学校/一年間のまとめをしよう
安子島 宏
今月のメッセージ
子ども観・教育観を豊かに
今関 和子
今月の集団づくり・小学校 (第12回)
4年1組物語
井本 傳枝
〜エピローグ青空の校庭で〜
今月の集団づくり・中学校 (第12回)
瀧田中学校物語
柏木 修
〜卒業生を送る会に向けて〜
実践の広場
私の教室
明日への拍手、未来への活動
山口 俊一
すぐ使える遊び
簡単かつのりのり、知的要求も満足?!
竹沢 清美
授業のアイデア
遊び心で楽しく取り組もう・漢字大ずもう・計算ボーリング
阿部 聡
楽しいイベント
成長した姿をみんなで喜び合う学習発表会!
松田 圭一
学校は今
二期制の渦中で!
暘谷 賢
通信・ノートの工夫
クラスの子どもたちが積み上げていくケルンの一石
永田 眞裕
手をつなぐ
「和」から「結」へ・父母と結ぶということ
竹野 昌美
今子どもたちは
いまどきの「生徒会活動」
中島 一英
私のオフタイム
「そば」の縁
瓜屋 譲
案内版 集会・学習会のお知らせ
北から南から
地域・サークルからの発信 埼玉県
笠原 昭男
〜埼玉全国大会に向けて―ある日の大会事務局会議より〜
教育情報
「千春さん」が教えてくれたこと―若者たちを貪り食う社会
まみ
読書案内
『衣食住・家族の学びのリニューアル』(日本家庭科教育学会著)
子安 潤
読者の声
1月号を読んで
投稿論文
生活指導と子ども集団づくり
照本 祥敬
2004年既刊目次
編集後記
大和久 勝

今月のメッセージ

子ども観、教育観を豊かに―光太郎は、今26歳―

全生研常任委員 今関 和子


 光太郎は今年26歳になった。彼がゆっくりと、自分を見つけながら歩いていることを、今年も母親からの年賀状で知ることができた。


 光太郎は今思えば「軽度発達障害」の子だった。

 しかし、当時そんなことはわかるはずもなく、五年生で担任したときには、教室は飛び出す、席には着かない、座っていても漫画ばかり描いている、突然騒ぎ出す、キレるなどなど、どう指導したものかと戸惑った。漫画を取り上げようとして、私は光太郎と小競り合いまで起こしたことがあった。

 しかし次第に私は光太郎と分かり合えるようになっていった。

 教室を飛び出し、廊下にある給食のワゴンの中に隠れているのを見つけた時、「おや、ワゴンが動いているぞ。何かいるのかな」とおどけて言ってみると、なんと「ワンワン」と光太郎はないてみせたのだ。私は光太郎の無邪気さにすっかり嬉しくなってしまって、ワゴンの外側と、中側でごっこ遊びを始めていた。

 その頃、クラスの中にはいじめがあり、その標的にされていたサトルが不登校を起こしてしまった。サトルがいじめが原因で不登校になっていることだけは、子どもたちには知らせておきたかった私は、子どもたちに「サトルは学校に来たくないと言っているんだけど、誰かその原因わからないかな」と聞いた。もちろん、何の返事もないことを予想していた。

 すると、光太郎が真剣な顔で「もしかすると僕かもしれない。昨日の帰り際に、サトルのことを…」と言い始めた。光太郎がサトルをいじめているのではなかった。しかし、光太郎は「自分のせいかもしれない」と思い、自分の行動を振りかえってみたのだろう。私は思わず「君は何て正直な子なの!」と言った。その言葉に光太郎の頬が紅潮するのを見た。

 光太郎の無邪気さ、純真さに触れ、私は彼を次第に理解していった。いや正確に言えば、光太郎の魅力を発見し、その魅力に私が惹きつけられ、光太郎を好きになったと言ったほうがいい。それが「共感」というものなのだろう。

 そうは言っても、光太郎への指導は二年間大変なエネルギーを使った。しかし光太郎にとっても私にとっても充実した二年間だった。卒業間近、私は光太郎との別れが辛くてならなかった。


 あれから「軽度発達障害」の子どもたちに何度か出会っている。そのたびに私は光太郎を思い出す。そして指導に苦慮しながらも、彼らの魅力と再び出会っている。

「口に出しにくい本当の事を、まわりを気にすることなく言ってしまう」彼らは、私の「常識」への捕らわれに気づかせてくれるし、彼らの「物事に素直に感動する純真さ」に触れると、心洗われる思いになる。「びっくりするようなユニークな思いつき」は新しい発想のヒントをくれるし、「こだわりの強さや、自分を押さえられない行動」は、クラスの本音の討論や教訓を引き出す。

 私は彼らから大切なことを教えられている気がする。と同時に、その言動故に、生き辛さや苦しさを抱えている彼らに、人間というものの切なさや、愛おしさをたまらなく感じる。

 彼らは私たちに、子ども観、教育観、そして人間観を豊かにしていくヒントを示している、そんな気がしてならない。

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