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教員免許が「国家資格」へ?
教育zine編集部杉浦
2011/10/28 掲載

 文部科学省は、現在都道府県が発行している教員免許について、医師などのように国家試験を経て取得する「国家資格」へ見直す検討を始めるという。
 10月21日の毎日新聞の記事によると、教員免許の国家資格化には、教員の資質と能力の最低基準を国が保証し、信用を高める狙いがあるとのこと。同省は中央教育審議会の特別部会に設置する有識者のワーキンググループ(WG)で実現の可能性を探り、今年度中に方向性をまとめる。

 同記事によると、

教職の単位認定は各校に任されているため、教育内容や履修の実態が見えにくい。さらに、08年度に小中高の教員免許を取得した学生らは計13万4470人(文科省調べ)に上ったが、09年度に教員に採用された新卒者は1万1951人(同)にとどまり、免許状の形骸化も進んでいる。

ことが、教員免許国家資格化の要因として挙げられている。
 確かに、「教職の単位認定は各校に任されているため、教育内容や履修の実態が見えにくい」ことは、問題の一つとして改善すべき部分だろう。
 一方で、「08年度に小中高の教員免許を取得した学生らは計13万4470人(文科省調べ)に上ったが、09年度に教員に採用された新卒者は1万1951人(同)にとどまり、免許状の形骸化も進んでいる」ことについてはどうだろうか。

 文部科学省が公表している平成22年度公立学校教員採用選考試験の実施状況についてによると、平成21年に公立学校教員採用試験を受験した新卒者は4万5224人、採用者は7828人(採用率17.3%)となっている。対して、既卒者の受験者は11万1350人、採用者は1万7234人(採用率15.5%)である。この既卒者の職業別内訳は公表されていないものの、各自治体・学校で臨時採用や非常勤の講師として教職に就いている人数が一定数含まれていると見ると、「教員免許を取得した学生に対して教員に採用された新卒者が少ないため、免許状の形骸化が進んでいる」とする見方には疑問を抱かざるを得ない。また、平成21年4月より導入された「教員免許更新制」で、更新講習の受講対象者が現職教員や教員経験者に限られていることから、今後ある程度の免許状の形骸化は防げるのではないかとも感じる。

 確かに、同記事でWG座長の横須賀薫・十文字学園女子大学長が述べているように、「教員の資質と能力の基準がよく見えるようになる」ことは、非常に重要である。
 しかし、少子化で子どもの数もこれから大人になっていく人口も減少していく日本において、教職を国家資格化して入り口を狭めることは、教育現場の人材不足にもつながるのではないだろうか。教員免許を国家資格化して「権威付け」すればよいという問題ではなく、実際に教職に立っている先生方、そしてこれから教員になろうとする学生が、教育現場で実際に子どもと向き合いながら教員としての資質や能力を高めていくための仕組みや手だてについても考えてくことが必要なのではないだろうか。

教員免許制度
 現在、教員免許は小学校や中学校など学校種別に区分されている。学生が教育の基礎理論や教育実習の教職課程(一種免許状は59単位以上)を履修すると、都道府県教委から免許状が授与される。免許を取得しても自動的に教員になるというわけではなく、各自治体の採用試験を受験し、筆記や面接などの試験に合格する必要がある。

コメントの一覧
1件あります。
    • 1
    • ティディ
    • 2011/11/18 17:32:56
    国家資格にするのはどうだろうか?教員を目指す人はたくさんいるし、国家資格にしたら希望者が少なくなるのではないだろうか?
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