- まえがき
- 第1章 算数授業力を高める
- 第1節 算数の授業力とは何か
- 第2節 子どもが躍動する本物の算数授業づくり
- 第2章 教材把握力を高める
- 第1節 算数の教科書の読み方
- 第2節 算数科教材開発の方法
- 楽しく練習できる算数練習課題の開発
- 第3節 算数的活動の意味と教材例──数理を生み出す算数的活動をしよう──
- 第3章 子ども把握力を高める
- 第1節 子どもの算数観を変える授業づくり
- 第2節 子どもの言葉で算数の授業を作ろう
- 第4章 授業技術力を高める
- 第1節 1時間のマニュアル
- 第2節 基本原則のまとめ
- 第3節 板書の力を高める
- ある授業へのこだわりから学ぶ
- 佐々木祥子先生のお手紙より
- 第5章 私の示範授業より学ぶ
- 第4学年「べつべつに,いっしょに」の示範授業より──平成10年6月18日 青森県十和田市立ちとせ小学校にて──
- 第6章 精神エネルギーを高める
- あとがき
まえがき
「算数嫌い」が言われている。本当にそうだろうか。
世界的な調査では日本の算数の学力は世界第3位である。1位が韓国,2位がシンガポール,そして日本である。これは素晴らしい記録である。教師は自信を持ってよい。全国の先生に感謝申しあげたい。
ではなぜ,算数嫌いが声高々に叫ばれるのだろう?
実は,その調査で「算数が好きですか」という項目があり,そこでは,27か国の中で,下から2番目である。つまり,嫌いが多いという結果がでた。しかし,よくデータを見ると,「好きですか」という項目に対して小学生では70%の人が「好き」だと答えているのである。この数値はなかなかのものである。世界第3位で70%が好きというのは,それほど悲観的な数値ではない。まず,事実を正確にとらえれば悲観論は生まれないはずである。
その上で,算数好きな子どもを増やしたい。子どもは「もっと算数が分かりたい,できるようになりたい」と思っている。
ただ単に,機械的に計算ができても,また,教師から一方的に説明されても知的な満足度では弱い。やはり,算数の問題を子ども自らの手で解きたいのである。そして,その結果,算数の問題にひそむ「発想」や「わけ」を明らかにしたいのである。そうなれば,子どもは真に算数の喜びを知ることになる。
そのためには,教師は算数の授業力をつける必要がある。今よりももっと力をつける必要がある。
私は,年間100ぐらいの算数の授業を参観し,コンサルタントしてきている。私自身も示範授業をしている。講義の合間をぬっての参観である。
どういうわけか,こんなにたくさんの授業を参観することが毎年続いている。他の人がどれほど見ているか分からないが,でも100は多いことは事実である。仕事はハードである。でも,楽しい。いつの頃からか,どうも私の役割は,たくさんの授業を見て教師に活力を与えることらしいと思うようになってきた。さらに,それらの授業の中から,算数の授業理論を構成することらしいとも思うようになったきた。だから,しんどくても参観するのである。
いやしんどいと言っては授業者に申し訳ない。授業は,ワクワクドキドキするからである。というのは,授業の一つひとつに教師のアイディアがつまっているし,子どもの思考も面白いからである。
教師のアイディアに触れると嬉しくなる。それを他の先生に紹介したくなる。子どもは本当に正直で素直である。素晴らしい考えや予想外の考えに感心する。時には,つまずきもでる。それらから学ぶことが多い。
ところが,自信なさそうに授業をしている人も見る。その人に少しアドバイスすると授業が変容する。変容があれば私自身もやりがいがある。
この本は,算数の授業力に対して総合的に解説していこうと思って書いた。即ち,下の公式にもとづいて述べていこうというわけである。
授業力={教材把握力×子ども把握力×授業技術力}×精神エネルギー
単著としては,2年ぶりの執筆である。したがって,この本に,できるだけ最近の研究成果を盛り込むようにした。精魂こめて書いた。
「教材把握力」一つとっても1冊の単行本ができるのであるが,この本はそのダイジェスト版と思ってほしい。さらに,詳細を知りたい人には,私のこれまでの単著を見てほしい。
この本によって,あなたの算数の授業が明日から変わることを期待している。そして,教師も子どもも算数を好きになろう!
2000年1月1日 愛知教育大学 /志水 廣
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