調べる力を高める64のアイディアと授業
教科を貫く課題探究力の育成

調べる力を高める64のアイディアと授業教科を貫く課題探究力の育成

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国語力の中核である調べる力をぐんぐん伸ばす授業アイデア。

調べる力の本質を体系性や系統性の面から明確にし、各教科等を通じて調べる力を高めるための64のアイディアと実際に行った授業を編集したもの。特に多様な表現様式のメディアテキストと、それを活用し課題探究していくプロセスの実現に重きを置いた。


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ISBN:
4-18-357826-4
ジャンル:
国語
刊行:
対象:
小・中・他
仕様:
B5判 160頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

目次

もくじの詳細表示

序  教科を貫く「調べる力」の育成と学習指導
1 教科を貫く「調べる力」の育成
2 調べる力を高める学習指導のアイディア作り
第T章 メディアテクストを読む
1.1 メディアテクストを意識して「読む」
1.2 明日の朝刊はこれだ!
アイディア1〜4
アイディア1 今月のピュリッツァー賞はこれだ!
アイディア2 明日の朝刊はこれだ!
アイディア3 読者投稿欄を追え
アイディア4 新聞の歴史
1.3 テレビ番組から黄金のパターンを探せ
アイディア5〜8
アイディア5 ウルトラマンに会ってみたい
アイディア6 “衝撃の事実”は本当か?
アイディア7 黄金のパターンを探せ
アイディア8 ドラマの中の職業を考える
1.4 この雑誌は誰の手に
アイディア9〜12
アイディア9 フォント調査隊が行く
アイディア10 外国の子どもに日本の漫画を薦めてみよう
アイディア11 この雑誌は誰の手に?
アイディア12 雑誌を集めてみよう
第U章 メディアミックスの時代を生きる
2.1 メディアミックスと子どもたち
2.2 ラジオ番組新発見
アイディア13〜16
アイディア13 身の回りのメディア再発見
アイディア14 お気に入りの広告を探そう
アイディア15 博物館長へ提言
アイディア16 ラジオ番組新発見
2.3 テレビで新聞を読む
アイディア17〜20
アイディア17 テレビで新聞を読む
アイディア18 ポケモンの新作映画ってどんな映画?
アイディア19 児童雑誌のホームページ徹底比較
アイディア20 見えるラジオって何だ
2.4 文字おこしにトライ
アイディア21〜24
アイディア21 プロVSアマ シナリオ対決
アイディア22 文字おこしにトライ
アイディア23 相撲の実況中継に挑戦
アイディア24 絵本を紹介するリーフレットを作ろう
第V章 編集者になろう
3.1 誰でも編集者になる時代
3.2 テレビCMを企画する
アイディア25〜28
アイディア25 テレビCMを企画する
アイディア26 人気の清涼飲料水,販売企画を探る
アイディア27 人気マンガ雑誌の企画を探る
アイディア28 校内放送,特集番組を企画する
3.3 1週間をファイルしよう
アイディア29〜32
アイディア29 1週間をファイルしよう
アイディア30 自分で作る分類表
アイディア31 この人に聞く
アイディア32 1ヶ月をフォルダを作って整理しよう
3.4 テレビの番組編成を考える
アイディア33〜36
アイディア33 テレビの番組編成を考える
アイディア34 ニュース番組の内容を比較しよう
アイディア35 魅力的に人物を紹介する
アイディア36 小説とテレビドラマと映画の構成を比較しよう
3.5 その情報誰のもの
アイディア37〜40
アイディア37 その情報誰のもの
アイディア38 ネットワーク社会の正しい歩き方
アイディア39 クイズで学ぼう著作権
アイディア40 私たちのインターネット利用のマナー集を作ろう
第W章 コミュニケーションとコミュニティ
4.1 ポスターの効果的な貼り方について考え,情報の伝え方をまとめよう
アイディア41〜44
アイディア41 これがbP学級通信だ
アイディア42 電話でのコミュニケーション
アイディア43 発表者の思いを探る
アイディア44 ポスターの効果的な貼り方について考え,情報の伝え方をまとめよう  109
4.2 コミュニティ広場から何が生まれる?
アイディア45〜48
アイディア45 コミュニティ広場に投稿しよう
アイディア46 何を使って連絡するの?
アイディア47 手紙で伝えよう
アイディア48 嬉しいときや困ったときは,誰に話すの?
4.3 魅力的なプレゼンターになろう
アイディア49〜52
アイディア49 校長先生のスマイルは何回?
アイディア50 1分間で何文字読むの?
アイディア51 プレゼンテーションで何を使うの?
アイディア52 私たちのお薦め,魅力的なプレゼンターはこの人だ!
4.4 討論会を分析しよう
アイディア53〜56
アイディア53 パネルディスカッションのパネリストになろう
アイディア54 パネリストは誰にする?
アイディア55 座談会と討論の違い
アイディア56 座談会の続きを考えて,座談会をしよう
4.5 インターネットでコミュニケーション
アイディア57〜60
アイディア57 お薦め小学校のホームページリンク集を作ろう
アイディア58 夏休みの自由研究紹介のホームページを作ろう
アイディア59 子ども環境テレビ会議を開こう
アイディア60 私たちの校区に住む名人さんを探せ!
4.6 本にはさまれているハガキは何のため?
アイディア61〜64
アイディア61 何がいい? どうする? どうだった? 聞かずに1日過ごしてみよう
アイディア62 本にはさまれているハガキは何のため?
アイディア63 アンケートとインタビューとどっちがいい?
アイディア64 番組モニターになろう

教科を貫く「調べる力」の育成と学習指導


   1 教科を貫く「調べる力」の育成


 「調べる力」の育成が強く求められている。各教科等を貫く能力となる国語力,課題探究力,情報活用能力,メディアリテラシーなどの育成が要請され,その中核に位置付く調べる力が重視されるからである。各教科等を貫く能力となる国語力,課題探究力,情報活用力,メディアリテラシーなどは,現代という時代や社会への変化に応じる必要から生まれたものであると同時に,人間の内面にかかわる本質的な要請にも基づいていると言えよう。人間の生を価値あるものに高め,最もそれを実感させる瞬間は,自らの創造や生産に対する情熱を具現したときに訪れるものだからである。

 その一瞬に立ち会うためには,文化的または芸術的な創造や社会的な生産を具現するという自らの課題を探究し解決しなければならず,調べる力なくしては実現不可能である。自分の内面から湧き起こるものだけでは相手を感動させたり,説得したりすることはできない。現実に氾濫する多様な知識や情報から自分の思いと符合するものを探し出し,それらを活用しながら思考と試行を重ね解決へと導いていく。多くの知識や情報を得るとともに,自分の考えを広げたり,高めたりするために調べ続けることが不可欠となるのである。

 このように時代や社会の要請においても,人間の本質的な面においても,要請は高まるばかりだが,現状は十分定着していないというのが共通した認識であろう。各教科等において必ずしも調べる力を丁寧に指導しているわけではないのだから無理はないかもしれない。国語科では,「話すこと・聞くこと」「書くこと」「読むこと」の言語活動を中軸に展開する。調べて文章をまとめることはあっても,言語活動全体の中の一部になっている。一方,社会科や理科などの各教科等でも,それぞれの系統的な知識・技能を定着させることが優先されるので,調べる力を育成することに十分な時間を割きにくい。調べる力が直接的に問われる総合的な学習の時間は,各教科等の総合体として機能するようになっているのに,各教科等において十分育まれておらず前提そのものが不安定であるから,調べる力を高められないまま単元が展開して終わるのが実情だ。

 なぜ,このようなことになるのだろうか。問題は二つある。第一に,調べる力は,各教科を貫く基盤となる能力であることに特徴があるが,従来そのようなカリキュラムは構想されなかった。調べる力の体系性や系統性に関する共通理解とともに,各教科等を通して育成するカリキュラムが構想されなかったのである。各教科等で取り立てて行う学習指導法をどのように行えばよいのかも具体的なイメージを共有していない。カリキュラム論から見れば,どの教科等で重点化するのか。調べる力は,課題探究力,情報活用能力,メディアリテラシーなどの中核となると同様に,国語力の中核でもある。特に,調べる力の最も中心活動となる多様なテキストを読み,表現に生かしていく活用能力は,国語科において着実に育成しなければならない。たとえ,学習指導要領等において改訂され,各教科等での連携が進んでも調べる力を取り立てて指導することの重要性は変わることはない。

 第二の問題は,改めて調べる力とは何かと考えると,それほど容易に回答できないところにある。そもそも調べる力とは何か不分明だ。プロセスで考えると,一連の調べる活動のどの部分に焦点化すればよいのかはっきりしない。調べ方を知っていて活用できることか。課題設定する力も含めるか。取り上げるテキストは含めるか。検索する力なのか。調べた資料の記録や活用の仕方か。調べたことをまとめた発表原稿や作品も含めるか。

 本書は,このような調べる力の本質を体系性や系統性の面から明確にし,各教科等を通じて調べる力を高めるための64のアイディアと実際に行った授業を編集したものである。特に多様な表現様式のメディアテキストと,それを活用し課題探究していくプロセスの実現に重きを置いた。


   2 調べる力を高める学習指導のアイディア作り


 本書にかかわる研究は,佐賀県・福岡県を中心とする九州北部国語教育カンファランスの研究会員によって進められた。研究は,1999年(平成11年)の夏,研究対象をメディアリテラシーの育成に定めたところから始まった。国語科の能力育成を追究していくと,文章のみならず多様なテキストの活用に至る。特に,インターネットなどを広く活用し始めた頃であり,従来のような活字メディアの「文章」だけでは,不十分であることに気が付いた。実際,インターネットなどを活用し始めると,それをコピーアンドペーストするような発表原稿が増え,自己表現ではなくなってしまうという大きな課題があることも分かってきた。調べ学習が盛んになると,情報を鵜呑みにした丸写しと,実質は原稿の音読という発表が行われていた。これでは駄目であると考え,メディアリテラシーの研究に入ったのである。カナダを初め,各国のメディアリテラシー研究とその育成について研究することで,調べる力をどのように高めればよいのかの大きな示唆を得た。

 @ メディアテキストが多様化しており,それに対応する力がいる。特に,メディアをそのまま鵜呑みにするのではなく,批判的に受け取る力,すなわち評価しながら読む力が問題になる。

 A 一つのメディアではなく,メディアテキストがミックスして活用されている。

 B 最初は,批判的な受容が研究の中心であったが,その後は表現者・創造者という立場を重視したメディアリテラシーへと発展している。

 C 一つの表現様式のみならず編集する能力を育成するエディターシップが重要である。

 D 多様なメディアとその活用は,そのメディアが生きるコミュニティを深く自覚したコミュニケーションによってこそ実生活に密着した活動が可能となる。

 E 多様なメディアが社会に与える影響,そのような社会が個人に与える影響などを考慮してメディアリテラシーは育成される。

 このようなことを踏まえ,2000年(平成12年)に課題探究過程に応じたメディアリテラシーに関する「能力一覧表」を作成した。その後,これらの能力一覧表の中から,実践可能な授業を構想するとともに,多様なアイディアを試案化し,本書の核となる内容を固めていった。第T章では,調べる対象となる多彩なメディアテキスト,すなわち,子どもたちを取り巻く新聞やテレビ,雑誌などについての見方を取り上げた。第U章では,多彩なメディアがミックスしたときにどのようなことに留意して調べればよいのかを取り上げた。第V章では,編集力を高めることを中核において調べる力を育成する方法,さらには著作権の問題などを取り上げた。第W章では,コミュニティを強く自覚しながら,調べて完成したものを実際にコミュニケーションすることを基軸に調べる力を育成するようにした。

 それぞれの実践とアイディアが,各教科等で一つの大きな単元または,取り立ての小単元として扱われてもよい。また大きな単元の一部として,必要に応じて挿入する形でもよい。調べる力が着実になることは,教科を貫く課題探究力を高め,それは,各教科等の指導内容の着実な定着を保障することにつながるはずである。本書が多くの方に活用されることを願ってやまない。関連するカリキュラム作りや単元構想のポイント等については,筆者が刊行している他の文献を参照してほしい。


 本書は,小学校と中学校の教師が一緒になって研究する特質を生かした研究会から生まれた著作であることに特色がある。相互の発想や児童生徒の実態を十分踏まえて実践及びアイディアを構想してきた。長きにわたり研究と実践を積み重ねてきた九州北部国語教育カンファランスの研究会員の努力に深い敬意を表したい。新しい研究であるがゆえに,前提となるメディアリテラシーや調べる力の理論研究が長かったこと,月例ごとに繰り返す構想から実践後の原稿の書き直し。本当にお疲れさまでしたと,ねぎらいの言葉をこの序論を閉じるときに贈ることをお許しいただきたいと思う。

 本書の刊行に当たっては,明治図書の石塚嘉典氏、松本幸子氏にお世話になった。多くの著書の刊行の支援をいただいてきたことに深く感謝したい。


  2006年4月

   文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官 /井上 一郎

著者紹介

井上 一郎(いのうえ いちろう)著書を検索»

文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官・国立教育政策研究所教育課程研究センター研究開発部教育課程調査官。国語教育学者。随筆家(ペンネーム・高橋信一)。奈良教育大学助教授・神戸大学教授を経て,2001年から現職。子どもの視座を拠点とする国語教育学研究を継続する。現在は,自己表現力の育成を基軸に教科を貫く総合的な視野に立った言語能力の体系化を目指す。各種の作文・読書感想文コンクールの審査委員を務める。研究会「国語教育カンファランス」や自主的な公開セミナーを各地で主宰。文学や絵画の原風景の探訪のために,イギリス・フランス・イタリア・ベルギー・スイスなど欧米を歴訪。

※この情報は、本書が刊行された当時の奥付の記載内容に基づいて作成されています。
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