- 刊行のことば
- T バズ学習をどう組み立てるか
- 1 バズ学習の研究モデル
- (1) 学習課題の作成と提示
- (2) 課題への取り組みの援助と指導
- (3) 学習効果の判定と目標達成状況の評価
- 2 グループの編成など
- (1) グループの人数
- (2) メンバーの組み合せ
- (3) グループの組み替え
- (4) バズ長とその指導
- 3 その他の問題
- (1) 学習技能の訓練
- (2) 教師の出番は授業の始めと終り
- (3) 児童生徒とともに授業をつくる
- (4) 教師は意思決定者
- (5) 小型の教師はつくらない
- U バズ学習によって授業はどう改善されるか
- 1 バズ学習研究による授業改善の目的と意義
- 2 単元単位のバズ学習指導の一般的モデルの設定
- (1) 学習課題ならびにプリ、ポスト・テストの作成
- (2) プリ・テストの実施と学習課題ならびに指導計画の修正
- (3) 学習課題の一括提示と児童生徒との共同学習計画
- (4) 学習計画にもとづく学習活動とその指導
- (5) 最終時限の指導
- (6) ポスト・テストの実施と学習効果の評価
- (7) 補充時間の指導
- V 学習態度をどう育成するか
- 1 態度とは何か
- 2 態度のもつ特徴
- 3 態度の学習と同一視の過程
- (1) 模倣行動
- (2) 同一視の過程
- (3) 同一視人物
- 4 態度の学習とグループの影響
- (1) 成員集団と準拠集団
- (2) 個人とグループの相互作用
- 5 学級集団と児童生徒
- 6 学習集団としての学級指導のポイント
- (1) 教師のリーダーシップ
- (2) 準拠集団への成長の目安
- 7 説得法と態度変容
- (1) 折伏
- (2) 洗脳
- 8 カウンセリングと態度変容
- 9 内観法と態度変容
- 10 態度的目標をどのように立てるか
- 11 認知的技能と態度的技能
- 12 態度的技能の訓練
- W バズ学習とは何か―理論的背景―
- 1 バズ学習研究の起こり
- (1) バズ学習は教育現場の実践から生まれた教育方法
- (2) 復習バズ学習の発想
- (3) 全員参加の授業をめざす教育方法
- 2 バズ学習研究の三つの特徴
- (1) バズ学習研究は科学性を重視する
- (2) バズ学習研究は一貫性を重視する
- (3) バズ学習研究は統合性を重視する
- 3 バズ学習研究を支える基本的仮定と原理
- (1) 教育の基盤は人間関係にある
- (2) 人間は個人的存在であると同時に社会的存在である
- (3) 教育は児童生徒の自己発見、自己統合、自己実現を援助する活動である
- (4) 組織的な教育は通常集団状況でおこなわれる
- (5) 児童生徒は教師から学ぶと同時に仲間からも多くのことを学ぶ
- (6) 学校での教育ではとくに同時学習の原理を重視しなければならない
- (7) 学習は学習者の自己活動の過程である
- (8) 課題のないところに学習は存在しない
- (9) 学習活動は、認知的―態度的価値的な全体的過程である
- (10) 教育活動には@指導(学習)目標の設定と具体化、A指導方法の選択、B効果の判定、という三つの要件が含まれなければならない
- (11) 評価の本質は目標達成行動におけるフィードバック機能(自己調整機能)である
- 参考/全国バズ学習研究会案内・バズ学習研究資料案内
刊行のことば
バズ学習という言葉には聞き慣れない先生方もあるかも知れない。しかし、「バズ学習」は、わが国の教育関係の辞典には、必ずと言ってもいいほど載っているなじみの深い言葉なのである。しかも、ハチがブンブン音をたてるという意味のバズ(buzz)は英単語には違いないが、紛れもなく日本で生まれ、育てられた教育理論である。その生みの親、育ての親が、本書の著者、故塩田芳久(名古屋大学名誉教授)先生である。
わが国の学校に限らず、学校は世界のどこへ行っても、子どもや先生からなる「社会」である。社会である学校や学級は、人と人とのかかわりや相互作用が何よりも大切である。それが学習や指導の基本をなさねばならないことは当然ではないだろうか。ところがこの現実の上に立って造られている教育理論は決して多いとは言えない。
バズ学習は、人間の社会的まじわりを中心にすえた学習と指導の理論である。そして、共同学習(コーポラティブ・ラーニング)の国際学会において、これほど洗練された社会的教育理論はない、とまで外国の研究者にいわしめたほどである。日本では今でもしばしば、欧米の理論を翻訳輸入しているが、日本人の創造した理論が地道に実践されていることについて、教育関係者はもう少し注目してよいのではないだろうか。
本書は、痛恨の極みではあるが、昨年の七月七日に急逝された先生が、書斎に残された原稿によって刊行されたものである。この原稿は明治図書編集部との約束で進めておられたとのことである。本書の活字は、ほとんどがオリジナルの原稿であり、これが先生の絶筆となってしまった。もっとお書きになりたいことが山ほどあったのではないか、と思うにつけ、悲しみも新たになってくる。とはいえ、先生は、自らの教育実践と研究の体験をたえず書きとめながら、こうして伝えて下さっているのである。この著書の中に含まれる叡智が、二十一世紀を迎える教育の中で活かされることを切に願ってやまない。
平成元年 五月 名古屋大学教育学部教授 /梶田 正巳
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- 明治図書