- まえがき
- T 基礎編
- 一 知的に動かすための原則
- 二 “善さ”を引き出したひとこと
- 三 いくつ渡る?
- 四 わずか数秒間で
- 五 “誰の言葉”か?
- 六 緊張の中の遊び心
- 七 知的表情を求めて
- 八 すべてが「AさせたいならB」に
- 九 生理的反応
- 一〇 反響
- 一一 「うそ」の表現
- 一二 通俗性の打破
- 一三 マクロからミクロまで
- 一四 レトリックとしての「AさせたいならB」
- 一五 技術の発見、人間の発見
- 一六 紙一重の違い
- U 探索編
- 一 Bの言葉を求めて
- 二 子どもを動かす言葉づくりの原則
- 三 物
- 1 文脈でなく「物」
- 2 「安倍川餅」と「火災」
- 3 小さな特異点
- 4 「図と地」
- 四 人
- 1 ゆれのないモノとしての「先生」
- 2 ゆれのないモノとしての「友だち」
- 3 「人」を示して考えさせる
- 五 場所
- 1 ここに残った「場所」
- 2 「場所」の意識化
- 3 「場所」を問う
- 六 数
- 1 「数」が思考を促す
- 2 「数」で物事のイメージが
- 七 音
- 1 「音」がしないように
- 2 「音」がするように
- 3 「音」を聞きなさい
- 4 「音」にみる「図と地」
- 5 オノマトペ
- 八 色
- 1 けやきの「緑」
- 2 「色」の効果
- 3 「色」で授業する
- 九 結語
- あとがき
まえがき
AさせたいならBと言え
これが、「子どもの心を動かす」言葉の原則である。
この原則を念頭において、子どもに言葉を投げかけてみよう。
あなたは、知的な言葉の遣い手になる。
子どもも、知的に動くようになる。
たった一つの原則で、人間が、内側から変わり始める。
なぜか?
本書において、私は、精一杯その謎解きをしてみた。
第T章「基礎編」では、
「AさせたいならBと言え」の典型例
を紹介した。
本章により、「AさせたいならB」の原則とは何かが、おわかりいただけよう。この原則が、いかに魅力的な力を有しているかも理解していただけると思う。
また、
「AさせたいならBと言え」の原則がなぜ有効か
も探ってみた。
「AさせたいならB」に対する反響の大きさには驚いた。この原則が、なぜ、急速に広まるのか、その理由を考えた。
ひとつの言葉が、子どもを変え、教師をも変える道すじを示してみた。教育において、いかに「技術」が必要かについてもご理解いただけることであろう。
第U章「探索編」は、
「AさせたいならBと言え」を作り出す手だて
を知りたいという要望に答えようとした。
〈「B」の言葉の中に「ゆれのないモノ」の提示をせよ〉という仮説を設けた。
「ゆれのないモノ」として、「物・人・場所・数・音・色」を考え、具体例を集めた。
この結果、日常の生活や授業で使える指示や発問を新たに作ることもできた。
第T章、第U章とも、具体的事例は枠をつけて示した。子どもに発する言葉をそのまま示したので、この部分だけご覧いただいても、即戦力として、ご利用いただけると思う。
書店へ行くと、「言葉」「話し方」に関する書物が大量に並べてある。毎日のように新刊書が出る。
その中に、素人の私が書いたものが出ていくのである。考えただけで、めまいがおこりそうである。
元来、私は、「言葉」に弱点を持つ教師である。だからこそ、「理屈だ」「仮説だ」「発見だ」と恥知らずに書き進めることができたのだろう。
本書が、私のような「言葉」に苦しむ方々のために、少しでもお役に立つことができたら、幸いである。
「言葉」のプロの方々には、ぜひとも厳しい御批判をいただければと思う。
一九八八年八月十七日 /岩下 修
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