- 刊行にあたって /大森 修
- まえがき
- T 到達度を明確にするとはどういうことか
- 一 向山型授業の原理原則に学ぶ
- 1 向山型「問題づくり」の授業は向山型算数と同じである
- 2 詩「春のうた」でリズム・テンポを追試するが
- 3 瞬時の判断は神業である
- 二 「話すこと・聞くこと」で「話し合いのコツ」を提示する
- 1 子どもに伝わらない言語技術
- 2 「話し合いのコツ」を提示する
- 3 教科書教材「道あん内をしよう」を言語技術を入れて改作する
- 三 「書くこと」の授業で言語技術を習得・活用させる
- 1 言語技術の重視
- 2 短作文では特定の言語技術を細分化して
- 3 本格作文では形式に従っていくつかの言語技術を
- 四 到達度を明確にすると「指導案」も変わる
- 1 「カブトガニを守る」の学習指導案
- 2 附属新潟小学校の授業検証システム
- 3 子どもの記録で評価する
- U 到達度を評価するにはどうするか
- 一 短文・詩文の暗唱の前に
- 1 教材の選定『ベートーヴェンの生涯』
- 2 何度も読んで個別評定
- 3 大事な言葉を見つける
- 二 物語の授業では意味論の発問をせよ
- 1 野口芳宏氏の発問「谷川の深さは何センチメートルか」
- 2 「つり橋わたれ」の発問
- 3 子どもの文章で到達度を評価する
- 三 ノートや作文で評価する
- 1 「ちいちゃんのかげおくり」を視写・聴写でまとめる
- 2 ほめて暗示する「ツバメがすむ町」のノート
- 3 ノートや作文を製本して文集を作る
- 四 音読から討論に至るまで
- 1 授業の導入は音読する
- 2 「ごんぎつね」の心の変化を検討する
- 3 授業観を伝える
- V 到達度を明確にした授業とは何か
- 一 「話すこと・聞くこと」の授業をどうするか
- 1 話し方・聞き方を「話し合いのコツ」として提示する
- 2 実践T「理由を考えて話し合おう こんな題名がいいなあ」(光村三下)
- 3 実践U「考えを整理して話し合おう 名前をつけよう」(光村三上)
- 4 結論
- 二 市毛式生活作文ワークで構成の習得
- 1 三枚のワークで「起承束結」を
- 2 第一段階で「承」「束」の整合性を
- 3 第二段階で「承」を書く
- 4 第三段階で全部を書く
- 三 コンピュータで続き物語を打つ
- 1 授業の構想
- 2 ローマ字入力で続き物語を打つ
- 3 授業の結果
- 四 齋藤一子氏「三年とうげ」の授業
- 1 「おじいさんが腰を下ろしたのはどこか」
- 2 「とうげ」とは何か
- 3 いずれにしても教科書の挿絵が間違っている
- 五 「白いぼうし」の道のりを図示する
- 1 甲斐睦朗氏の図
- 2 子どもの図一回目を採点する
- 3 子どもの図二回目は十分よい
- 六 「体を守る仕組み」から「地球を救う微生物EM」へ
- 1 教科書教材から応用教材へと検討する
- 2 教科書教材「体を守る仕組み」(光村四下)を要約する
- 3 応用教材「地球を救う微生物EM」を要約する
- あとがき
まえがき
評価が変わるという。「目標に準拠した評価(いわゆる絶対評価)」をせよという。
学校の教育は、「計画」「実践」「評価」という一連の活動が繰り返される。
評価が変われば、「計画」「実践」も変わらざるを得ない。現場教師の言葉でいえば、「指導案」 「授業」も変わらざるを得ない。
しかし、である。向山洋一代表が進めてきた教育技術の法則化運動(現在のTOSS)で学んできた教師は、何ら恐れることはない。
教育技術の法則化運動の「基本理念」は、次の四つであった。
1. 教育技術はさまざまある。できるだけ多くの方法をとりあげる。(多様性の原則)
2. 完成された技術は存在しない。常に検討・修正の対象とされる。(連続性の原則)
3. 主張は教材・発問・指示・留意点・結果を明示した記録を根拠とする。(実証性の原則)
4. 多くの技術から、自分の学級に適した方法を選択するのは教師自身である。(主体性の原則)
この中でも特筆すべきは、これである。
「3 主張は教材・発問・指示・留意点・結果を明示した記録を根拠とする。(実証性の原則)」(傍線は引用者)
教育技術の法則化運動では、「結果を明示した記録」が求められた。
「目標に準拠した評価(いわゆる絶対評価)」の考え方が求められたのである。
それまでのように、授業の効果がどれだけあったのか不明な論文、「子どもの笑顔」「目の輝き」などという情緒的な言葉を使った実践記録が戒められた。
子どもの学力をきちっと保障したのか。どれだけ子どもに学力をつけたのか。子どもの事実を明示した文章が求められた。
二一世紀を迎え、教育技術の法則化運動は、TOSSとして新たな出発をした。
「目標に準拠した評価(いわゆる絶対評価)」への変革は、TOSSへの追い風である。
「目標に準拠した評価(いわゆる絶対評価)」をするには、「目標」「到達度」を明確にして授業をしなければならない。また、「到達度」「学力」の公開に耐えうる授業をしなければならない。
本書では、小学三〜四年の国語科において、「目標」「到達度」を明確にした授業例を示した。
「話すこと・聞くこと」「書くこと」「読むこと」と、「できるだけ多くの方法をとりあげ」て授業例を示した。
読者諸兄姉の「学級に適した方法を選択」していただければ、そして「検討・修正の対象」としていただければ、これに過ぎる喜びはない。
/浅野 秀之
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- 明治図書