- 監修のことば・一人ひとりの個性・特性を伸ばす評価観に基づく国語科教育 /瀬川 榮志
- まえがき /向田 宏男
- T 生きて働く基礎・基本の評価規準と絶対評価の方法
- 一 国語科の授業における評価規準の明確化と段階的指導
- 二 国語科授業における絶対評価の必要性
- 三 言語技術を向上させる評価の内容・方法
- U 授業改革を目指す絶対評価規準と方法
- 一 基礎・基本・統合発信力の評価活動
- 二 児童が生きる絶対評価規準と方法で授業を改革
- 三 学習過程に位置付けた絶対評価と評価方法
- V 基礎的技能が定着する絶対評価
- ――学習活動と評価の工夫――
- 一 はっきりした発音で話そう
- 二 カタカナを文の中で正しく使おう
- 三 漢字を文の中で正しく使おう
- 四 かぎ(「 」)をじょうずに文の中で使おう
- 五 主語と述語の照応に気を付け絵をもとに文を作ろう
- W 基本的能力を養う絶対評価
- ――単元指導から 学習のねらいと連続的な評価の工夫――
- 一 相手に分かるように興味をもって話そう(自分の見つけた本を紹介しよう)
- 二 大事なことを落とさずに聞こう(あさごはんは おおさわぎ)
- 三 話題に沿って話し合おう(わたしのたからもの)
- 四 相手や目的に合わせて書こう(てがみをかこう)
- 五 必要な事柄を集めて書こう(わたしがつくったカレンダー)
- 六 組み立てを考えて書こう(おみせやさんごっこをしよう)
- 七 語や文の続き方に注意して書こう(じどうしゃくらべ)
- 八 順序を考えながら読んだり書いたりしよう(はたらくじどう車)
- 九 想像をふくらませながら読もう(たぬきの糸車)
- 十 声に出して言葉の響きのおもしろさを読もう(雨つぶ)
- X 統合発信力が育つ絶対評価
- ――伝え合う力と情報発信力を統合――
- 一 きいて、わたしのかぞくのこと
- 二 今年一番うれしかったことをお手紙で伝え合おう
- 三 おはなし動物園を作ってたくさんの本を読もう
- あとがき /向田 宏男
監修のことば
一人ひとりの個性・特性を伸ばす評価観に基づく国語科教育
―「絶対評価」の基準の設定と評価法の開拓―
中京女子大学名誉教授 /瀬川 榮志
教育の究極のねらいは、「一人ひとりの子どもの可能性を最大限に伸ばし、生涯にわたっての幸せを保証する」ことであると思います。個人のよさをひき出すために、その長所・短所を熟知することを前提としなければなりません。したがって「評価なき指導は成立しない」ということを念頭におくことが大切です。
教育課程審議会答申(平成一二年二月)に「観点別学習状況及び評定に『目標に準拠した絶対評価』」が提示されたのも、「一人一人の特性・個性を伸ばす」という基本理念が根底にあるからだと考えます。
今回の教育課程の評価についての考えは、これまでの評価観の主流であった、集団に準拠した五段階評価などの「相対評価」から、目標に準拠した評価観へと転換したわけです。これからは、通知表や指導要録の記録は「絶対評価」の基準や方法の結果が記述されることになります。
また、学力低下が社会問題となっている今、日々の授業での真の学力とは何かを究明し、「絶対評価」の基準や方法を明確にして常時評価活動を行い、授業に生かしていくことが重要な課題となります。
国語科における学力とは何か―それは学習指導要領に示された目標が、国語科で習得すべき学力であり、それが絶対評価の基準に連動します。つまり、これが国語科で培う学力です。本シリーズ〔国語学力向上アクションプラン〕は、学習指導要領の目標を的確におさえ「基本的技能」「基本的能力」「統合発信力」の三技能・能力を段階的・螺旋的に統計化し、児童・生徒の言語能力の実態に即して基準を設定しました。すなわち、新教育課程に示された評価観に基づき、学習指導要領の学力観に即し、さらには、現場の実情、子どもの実態、教師の要望に応じて本書を企画したのです。
国語科で指導すべき基礎・基本、つまり、真の学力は、「学習者が価値ある目標や必要に応じて、あるいは相手・場面・状況に即して的確に対応できる言語駆使力である」と解釈しています。この真の学力は、「生きる力」に連動する「生きて働く真の国語力」であり、「日本語駆使・運用力」でもあります。
学習指導要領は、「言語で思考し、表現・行動する」子どもの育成を提示しています。つまり、「価値ある言語行動」ができる子ども像を描いている―ということもできます。このように基本理念に基づく国語化の授業は、「いきいきと言語行動を展開する過程で、確実に国語力を獲得し学習者主体の言語行動ができる」ことが必須条件です。そのためには「絶対評価」の基準を「知識・技能」「思考・判断」「理解・表現」「関心・意欲・態度」等について吟味することも必要です。また「伝え合う力」の評価は、各単元の全学習過程に即して行い、「人間関係力」を高める評価も軽視してはならないことだと思います。
加えて、生きて働く国語力は教科書教材を中心に活用すると共に、教材を開発しなければなりません。言語技術は教材の内容や構成で規定され定義づけられることも原則の一つです。また、評価は抽象的な表現ではなく、論理性・具体性に富み、数量的に処理活用することも重要なことです。単なるスキルの評価ではなく、変化する二一世紀に生き抜く心優しく逞しく生きる人間「美しい日本語で国際社会に伍していく、世界の中の日本人の育成」につながる「教育観・評価観」の確立と、授業に活用できる効果的な評価法を開拓したいものです。
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