- はじめに
- 第1部 描くことの楽しさを理解するために
- 1 子どもの絵は遊びから始まる
- a 目の前が変わっていくおもしろさ
- b 見立てて遊ぶおもしろさ
- c 色で遊ぶおもしろさ
- d 「〜の感じ」で描くおもしろさ
- e 空想するおもしろさ
- f コミュニケーションのおもしろさ
- g 偶然の出会いのおもしろさ
- 2 友だちがいるから描きたくなる
- a 見えない世界を楽しむ子どもたち
- b 遊びの中で広がる絵のイメージ
- c 友だちがいるから描きたくなる
- 3 「描きたい!」思いはどこにある
- a 関わる楽しさからイメージの楽しさへ
- b 笑った口が描けないよ
- c 憧れや夢を描きたい
- d 本物らしく描きたい
- e 生活から生まれるイメージ
- 第2部 描画過程を楽しむ教科アイデア
- つくって遊んで描いてみよう
- @ おさんぽ人形
- A かたつむりの散歩
- B つなげてみよう
- C しゅっぱつしんこう
- D トントントン,誰のお家
- E どこでもルーム
- F いい湯だな
- G 滑り台ですべりたい
- H お手紙まだかな
- 色や形を楽しもう
- @ かたちあつめ
- A いろいろ虫
- B いろいろジュース
- C にじみの木
- D ちぎり絵・はり絵
- E 色の部屋
- F 垂らし模様
- G 雨が降る絵
- H ふっくらの形から
- I おもしろ万華鏡
- J 墨を使って描こう
- 空想の世界でお絵描きしよう
- @ はしごを使って
- A 動く絵本
- B お手紙の絵本
- C ポケットのある絵
- D とびらのある絵
- E おしゃれ人間
- F 気になる木
- G ミニかみしばい
- H 影のある絵
- 制作過程を体ごと楽しもう!
- @ ホッとペイント
- A 色のフリカケ
- B どろどろアート
- C でこぼこアート
- D 色の小包
- E キャンバスからつくろう
- F かんたん色版画
- G でざわり紙版画
- H 足や両手を使って
- I 破って描こう
- J 紙作りから始めよう
- 自然の物に目を向けてみよう
- @ 雨の日に描いてみよう
- A 春の色を集めよう
- B 食材・木の実と使って
- C 葉っぱを飾ろう
- D 石ころアート
はじめに
この本は,子どもたちが,絵を描くことを楽しみ,描画活動に親しむためにはどうしたらよいのかという観点から,地域の造形絵画教室や幼稚園などで日頃取り組まれた実践を教材例としてまとめたものです。
この中では,子どもが絵を描く過程での様々なコミュニケーションの要素を大切にしています。つまり,友達とのコミュニケーション,子どもと大人との対話,子どもと素材との新鮮な出会いやそこに生まれる,色,形との対話というコミュニケーションです。そうしたコミュニケーションの要素を,普段の子どもの描画活動の中に,きっかけとして,または遊びとして効果的に取り入れることによって,子どもたちは表現したい,関わりたいという気持ちを高めます。それを「描画」活動に結び付けていきました。
もう一つこの本が大切にしたところは,子どもが描画過程の一連の流れを「自分自身の時間として楽しむ」ことができたかどうかという観点です。何でも形にすることを急がされる風潮の中で,現代の子どもたちはじっくりと楽しみながら物事に関わる体験が希薄になっているようです。過程を十分楽しむことよりも,結果を出すことを急がされているのです。しかし本来,子どもたちは,ゆったりした遊びの過程の中で,いろいろなことを感じながら試したり,繰り返したり,発見して,様々なことを認識していき,またその中で感性やイメージを豊かにし,人とつながっていきます。それは自分自身の時間をゆったりと楽しむ中で可能となるのです。
子どもたちが目を輝かせて取り組んでいる描画の時間は,まさにその子どもにとって自分を豊かにしていく時間であり,自分自身にもどれるかけがえのない体験の時間です。この本を参考にして下さる皆様が,実際に子どもとのやり取りの中で,そうしたことを実感して下さることを願ってやみません。
この本の出版にあたり,富山大学助教授の竹井史先生から多くの協力と助言をいただき感謝申し上げます。また実践,研究活動を共にした幼稚園,造形絵画教室の多くの先生方に心から感謝いたします。そして何よりも,この実践を通して感動を分かち合えた多くの子どもたちに深く感謝いたしております。
2002年1月 著 者
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- 明治図書