- まえがき
- 1部 基本用語選択の考え方と内容構成
- T 改訂の基本方針
- U 改訂と学習指導要領の方向
- V 図画工作科学習指導の展開のために
- 2部 基本用語指定付 新学習指導要領図画工作科
- 第1 目標
- 第2 各学年の目標及び内容
- 第3 指導計画の作成と各学年にわたる内容の取扱い
- 3部 小学校新図画工作科授業の基本用語解説
- T 目標の基本用語解説
- 1 表現及び鑑賞
- 2 つくりだす喜び
- 3 造形的な創造活動の基礎的な能力
- 4 情操
- 5 自分の表現方法
- 6 体全体の感覚や技能
- 7 創造的な技能
- 8 デザインの能力
- 9 創造的な工作の能力
- 10 感性
- U 表現の基本用語解説
- 1 材料をもとにして,楽しい造形活動
- 2 身近な自然物や人工の材料
- 3 扱いやすい材料
- 4 選んだり
- 5 扱いやすい用具
- 6 材料や場所
- 7 その形から発想してつくりだす造形遊び
- 8 美しさや用途
- 9 計画を立てる
- 10 工夫して使い
- 11 総合的に働かせて
- 12 周囲の様子を考え合わせて
- 13 伝え合いたいこと
- 14 構成の美しさ
- 15 表現に適した方法などを組み合わせながら
- V 鑑賞の基本用語解説
- 1 身近な材料に触れ
- 2 作品のよさや面白さ
- 3 親しみのある美術作品
- 4 製作の過程など
- 5 話し合う
- 6 作品など
- 7 表現の意図や特徴
- 8 美術
- 9 暮らしの中の作品
- 10 関心をもって鑑賞
- W 取扱いの基本用語解説
- 1 学習活動の程度
- 2 独立して行う
- 3 共同してつくりだす活動
- 4 題材等に幅をもたせる
- 5 工夫して楽しめる程度の
- 6 地域の美術館などを利用すること
まえがき
芭蕉の門下生にという人がいまして「名人は危うきところに遊ぶ…」という言葉を残しています。豪快でなかなかよく考えられた言葉です。この文言と師匠である芭蕉の「不易流行」という言葉は彼の中でどのような整合性を持っているのかと考えさせられてしまいます。
教育改革を語るとき「不易流行」がしばしば語られます。不易とは不変の物事,流行は時代の流れにあるものという意味で語られていることが多いのですが,そんなに簡単に不易を語っていいものでしょうか,もっと厳しいがけっぷちで不易も流行も考えるべきではないでしょうか。
教育をとりまく状況は必ずしも好ましいとは思われません。この原因がすべて学校現場の問題であるとはいえませんが,やはり責任の一部は教育に直接携わる人に起因しているのでしょう。大きな教育革命が動き始めています。しかし同時に新しい試みに対して教育界全体に不安があります。漠然とした不安の中ではともすると昨日と同じことを繰り返しているほうがいいという誘惑に屈しがちになります。おかしいとは気づいているのですが新しいところに踏み出すこともできないという萎縮した状況が感じられます。
不易は昨日と同じことを繰り返すことではない。つねに子どものことに立ち返るという姿勢をいっていると解釈すべきです。現実の子どもは流行の中にいるのです。教師も学校も流行の中にいます。不変のものがあると考えるのではなく,さまざまな場面で子どもが生きていくことを応援するためには何が望まれているのかと問いつづけることが不易流行ということになろうかと思います。教育はこのような緊張の中で成立するような営みです。勇気をもって踏み出すことが必要です。
「危うきところに遊ぶ…」は芸術家許六の誠実さの吐露ではないでしょうか。図画工作科の学習指導要領に則して教育総体を照射することができたかどうか心配ですが,本書にはこれからの論争になろうとする芽が含まれています。ぜひ本書を活用して欲しいと思っています。
学習指導要領は教育指導の方向を示しただけで実践は先生と児童の間のすばらしい出来事であってほしいのです。
平成11年11月 /藤澤 英昭
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- 明治図書