- 刊行のことば
- まえがき
- T 美術の教育/美術による教育
- 1 美術教育(図画工作科・美術科)の目的・目標
- [1] 美術の教育・美術による教育
- [2] 我が国の先達の知見
- [3] 諸外国の先達の知見
- [4] 学習指導要領にみる目的観
- [5] 図画工作科の目標
- [6] 美術科の目標
- [7] 3H美術教育
- 2 美術教育の意義(校種等別)
- [8] 就学前の美術教育
- [9] 小学校の美術教育
- [10] 中学校の美術教育
- [11] 高等学校の美術教育(美術)
- [12] 高等学校の美術教育(工芸)
- [13] 障害児教育における美術教育
- [14] 生涯学習における美術教育
- U 表現の教育/表現による教育(内容・方法・材料・用具・技術・技法)
- 1 表現とは
- [1] 心象表現・目的表現
- [2] 平面表現・立体表現
- 2 就学前の表現
- [3] 幼稚園教育要領:領域「表現」
- [4] スクリブル
- [5] 頭足人的表現形式
- [6] 幼児画の特徴
- [7] 児童画の発達段階の諸説
- 3 造形遊びの教育/造形遊びによる教育(意義・材料・用具・技術・技法)
- [8] 「造形遊び」の意義
- [9] 「造形遊び」の場
- [10] 自然物
- [11] 廃材
- [12] 段ボール・新聞紙
- [13] 砂・土
- [14] 切る用具
- [15] 接着する用具
- [16] ほる用具
- [17] ぬる・のばす・ころがす
- [18] 折る・切る・曲げる
- [19] 並べる・積む・つなげる
- [20] 丸める・ちぎる・にぎる
- [21] とかす・かためる・くずす
- [22] うかべる・ながす
- [23] ぶらさげる・のせる
- [24] おす・うつす・こする
- 4 絵の教育/絵による教育(意義・材料・用具・技術・技法)
- [25] 図画工作科「絵に表す」の意義
- [26] 美術科「絵画」の意義
- [27] 再現的表現・非再現的表現
- [28] 具象表現・抽象表現
- [29] 粉絵の具
- [30] クレヨン・パス
- [31] 鉛筆・色鉛筆
- [32] 水彩絵の具
- [33] アクリル絵の具・グワッシュ
- [34] 油絵の具
- [35] 版画用絵の具
- [36] 版画材と紙
- [37] 筆の活用
- [38] パレット,筆洗の活用
- [39] 版画用具
- [40] 彫刻刀の扱い方
- [41] ローラー,ばれん,タンポの活用
- [42] 模写
- [43] 構図
- [44] 遠近法
- [45] 透視図法
- [46] 凸版(紙版・木版)
- [47] 凹版(ドライポイント)
- [48] 平版
- [49] 孔版
- [50] バルール
- [51] 混色
- [52] ボディ・ペインティング
- [53] アクション・ペインティング
- 5 彫刻の教育/彫刻による教育(意義・材料・用具・技術・技法)
- [54] 図画工作科「立体に表す」の意義
- [55] 美術科「彫刻」の意義
- [56] 再現的表現・非再現的表現
- [57] 具象表現・抽象表現
- [58] 粘土
- [59] 木
- [60] 石
- [61] 金属
- [62] 新しい材料1(樹脂など)
- [63] 新しい材料2(発泡スチロールなど)
- [64] モデリング・カービング
- [65] 型取り(石膏取り)
- [66] 焼成(テラコッタ)
- [67] 彫刻と色
- [68] 人物(頭像,動きのある人物像)
- [69] 動物・生物
- [70] 想像による表現
- [71] 抽象彫刻
- [72] 立体造形,オブジェ
- [73] 野外彫刻(環境と彫刻)
- 6 デザインの教育/デザインによる教育(意義・材料・用具・技術・技法)
- [74] 図画工作科「つくりたいものをつくる」の意義
- [75] 美術科「デザイン」の意義
- [76] 平面構成・立体構成
- [77] 造形要素
- [78] 明度・彩度・色相
- [79] 色相環
- [80] 色彩指導
- [81] シンボルマーク
- [82] 公共ポスター
- [83] ポスターカラー
- [84] スクリーントーン
- [85] デザイン用糊
- [86] 線を引く道具
- [87] カッター
- [88] レタリング
- [89] レンダリング
- [90] イラストレーション
- [91] モダンテクニックT
- [92] モダンテクニックU
- [93] アナモルフォーシス
- [94] 水張りの方法と用紙
- [95] エアブラシ
- 7 工作・工芸の教育/工作・工芸による教育(意義・材料・用具・技術・技法)
- [96] 図画工作科「つくりたいものをつくる」の意義
- [97] 美術科「工芸」の意義
- [98] 自然物
- [99] 廃棄物
- [100] 紙
- [101] 木
- [102] 竹
- [103] 布
- [104] プラスチック
- [105] 金属
- [106] ガラス
- [107] 皮革
- [108] 土
- [109] 接着・接合の材料と用具
- [110] 塗装の材料と用具
- [111] 紙の活用
- [112] 木の活用
- [113] 竹の活用
- [114] プラスチックの活用
- [115] 金属の活用
- [116] ガラスの活用
- [117] 皮革の活用
- [118] 土の活用
- [119] 複合素材の活用
- [120] 布を染める
- [121] あそぶ
- [122] つかう
- [123] かざる
- 8 映像メディア等の教育/映像メディア等による教育(意義・材料・用具・技術・技法)
- [124] 「映像メディア表現」の意義
- [125] 「映像メディア表現」の材料・用具
- [126] 「映像メディア表現」の技術・技法
- V 鑑賞の教育/鑑賞による教育(内容と方法)
- 1 鑑賞
- [1] 「鑑賞」とは
- 2 図画工作科における「鑑賞」
- [2] 「鑑賞の指導」の意義
- [3] 「鑑賞の指導」の課題と展望
- [4] 地域の鑑賞教材
- [5] 学校の鑑賞教材
- 3 美術科における「鑑賞」
- [6] 「鑑賞の指導」の意義
- [7] 「鑑賞の指導」の課題と展望
- [8] 地域の鑑賞教材
- [9] 学校の鑑賞教材
- 4 美術教育における作品
- [10] 作品展示の意味
- [11] 作品展示の方法
- [12] 作品展示の内容
- [13] 作品保管
- 5 美術館
- [14] 美術館
- [15] 美術教育と美術館
- [16] 美術館の教育的イベント
- [17] 美術館教育
- [18] 学芸員とは
- [19] ギャラリートーク
- [20] ワークショップ1
- [21] ワークショップ2
- [22] ワークシート
- [23] ビジュアル・シンキング・カリキュラム
- [24] 鑑賞における実物・複製
- W 美術教育構築の視点
- 1 指導計画について
- [1] 教育課程(カリキュラム)
- [2] 指導計画作成の基本
- [3] 指導計画作成上の配慮事項
- [4] 年間指導計画作成の手順
- [5] 他教科との関連
- [6] 学習指導案の作成手順
- 2 題材について
- [7] 題材とは
- [8] 題材開発の視点
- 3 学習指導のあり方
- [9] 学級づくりと造形活動
- [10] 個に応じた指導
- [11] 共同制作の指導
- [12] 特別活動と造形指導
- [13] 校外活動と造形指導
- [14] 教材研究
- [15] 教科書・副読本の活用
- [16] 安全指導
- [17] 学習課題
- [18] 学習形態
- [19] 視聴覚機器等の活用
- [20] マニュアル化された指導法の功罪
- [21] 参考作品の功罪
- 4 美術教育における造形環境
- [22] 造形環境
- [23] 場の環境
- [24] 材料環境
- [25] 用具環境
- [26] 人的環境
- [27] 時間環境
- [28] 情報環境
- X 美術教育における評価(生きる力につながる評価)
- 1 美術教育における評価の意味
- [1] 学習評価
- [2] 評価・評定(観点別)
- [3] 評価・評定の視点
- 2 美術教育における評価の内容・方法
- [4] 過程重視の評価
- [5] 自己評価と他者評価
- [6] 相対評価と絶対評価
- [7] 到達度評価と形成的評価
- [8] 総合的評価と分析的評価
- 3 美術教育における評価の課題
- [9] 「生きる力」への評価
- [10] 児童画コンクールの功罪
- [11] 苦手意識の発生
- Y 美術教育史(美術教育のこれまでとこれから)
- 1 我が国の美術教育のあゆみと先達
- [1] 図画教育概観
- [2] 工作教育概観
- [3] 西洋模倣・鉛筆臨画時代
- [4] 国粋保存・毛筆臨画時代
- [5] 毛筆画・鉛筆画優劣論争時代
- [6] 大正デモクラシーから昭和初期の時代
- [7] 戦時体制下の時代
- [8] 戦後教育改革の時代
- [9] 基準性強化の時代から現在
- 2 諸外国の美術教育
- [10] 韓国の美術教育(美術科教育課程)
- [11] 韓国の美術教育(オープンエデュケーション)
- [12] 韓国の美術教育(鑑賞教育プログラム)
- [13] 韓国の美術教育(プロジェクト接近法)
- [14] 東南アジアの美術教育
- [15] イギリスの美術教育
- [16] アメリカの美術教育
- [17] DBAE
- [18] ドイツの美術教育
- [19] スロイド教育・ネースシステム
- [20] ロシア・システム
- 3 諸外国の美術教育の先達
- [21] 芸術教育の始源
- [22] 18世紀から19世紀後半の先達
- [23] 19世紀後半から20世紀前半の先達
- [24] 創造主義の系譜
- [25] 近代学校システムへの疑義・警鐘
- [26] 児童画研究・発達段階研究
- 4 民間美術教育運動
- [27] 民間美術教育運動概観
- 5 美術教育史年表
- [28] 美術教育史年表
- Z 美術理論(美術教育の基盤)
- 1 美術理論
- [1] 美とは
- [2] 芸術とは
- [3] 美術・造形とは
- [4] 美術と人間
- [5] 美術と美術教育
- [6] 美学と美術教育
- [7] 造形芸術学と美術教育
- 2 美術の変遷(教科書の中の人名・事柄)
- [8] 縄文・弥生・古墳
- [9] 飛鳥・奈良
- [10] 平安
- [11] 鎌倉・南北朝・室町
- [12] 桃山・江戸前期
- [13] 江戸中期・後期
- [14] 明治・大正・昭和
- [15] 工芸(日本)
- [16] 原始・古代(西洋の美術)
- [17] 中世(西洋の美術)
- [18] ルネサンス(西洋の美術)
- [19] 17,18世紀の美術(西洋の美術)
- [20] 近代美術T(西洋の美術)
- [21] 近代美術U(西洋の美術)
- [22] 現代美術T(第二次世界大戦以前の西洋の美術)
- [23] 現代美術U(第二次大戦以後の西洋の美術@)
- [24] 現代美術U(第二次大戦以後の西洋の美術A)
- [25] 現代美術U(第二次大戦以後の西洋の美術B)
- [26] 彫刻(西洋の美術)
- [ 教師の資質
- 1 望ましい教師像と理念
- [1] よい美術教師七箇条
- [2] 指導・支援
- [3] バランス図工(美術)
- [4] アナーキー図工(美術)
- [5] フレキシブル図工(美術)
- [6] レスポンス図工(美術)
- [7] ルックルック図工(美術)
- 2 美術教育実践の研究
- [8] 教育実践研究の意味
- [9] 教育実践研究の内容・方法
- 3 教育実習・教育実地研究
- [10] 教育実習の意味
- [11] 教育実習の内容・方法
- 4 教員養成の現状と課題
- [12] 教員養成の現状
- [13] 教員養成の課題
- \ 美術教育の展開
- 1 美術教育の課題と展望
- [1] 就学前の美術教育
- [2] 小学校の美術教育
- [3] 中学校の美術教育
- [4] 高等学校の美術教育(美術)
- [5] 高等学校の美術教育(工芸)
- [6] 障害児教育における美術教育
- [7] 生涯学習における美術教育
- 2 美術教育の拡大
- [8] 国際理解教育と美術教育
- [9] 情報教育と美術教育
- [10] 環境教育と美術教育
- [11] 保護者と美術教育
- [12] 地域社会と美術教育
- [13] 障害者と美術教育
- [14] 民間における美術教育
- 3 美術教育の潜在力
- [15] 生きる力
- [16] コミュニケーション
- [17] 自己表現と伝達
- [18] 地域と結ぶ美術教育
- [19] 関心・意欲・態度
- [20] 感覚・感受性・感情・感性・情操
- [21] 創造力・想像力・発想力
- [22] 技能
- [23] 教材としての絵本
- [24] 素材
- [25] みたて
- [26] 視覚リテラシー
- [27] アート・セラピー(美術療法)
- [28] 脳と美術教育
- ] 美術教育関係文献
- [1] 美術教育を考える10冊
- [2] 美術教育関係雑誌
まえがき
類書がないわけではない。否,むしろより優れたものは多々ある。ゆえに本書が存在意味を持つにはそれなりの独自性が要求される。本末転倒とは思いつつ,だがらこそ大胆かつ個性的な主張を含ませたものにしなければならない。また,その際,本流を見失うことなく時流に流されないようにしよう。そしてなによりも実践者の要求に応えられるものにつくりあげよう。等々の確認に基づき,たとえば,今次改訂(平成10年)で中学校の表現の内容が「絵や彫刻などに表現する活動」及び「デザインや工芸などに表現する活動」の大枠でくくられた見識は認めつつも,あえて各々の活動の個別的意味や包含する問題を鮮明化するため,従来の領域・分野を踏襲することとした。
ところで,こうした立脚点を持つに至った背景には,美術教育の実態だけでなく,近年の教育界全体の動向もある。美術教育においては,「子どもの絵の見方が分からない」「“造形遊び”にどれだけの意味がある」「学校における美術教育の意味は何か」等々の声が未だ皆無ではない事実をあげることができる。このことは確かな“美術”観及び“美術教育”観が未確立であることの証左でもある。前回(平成元年)の教育課程の改訂の際,生活科の新設に伴い低学年図画工作科の存廃についての議論があったという仄聞とも符合する。また今回の教育課程の改訂における中学校のそれは言うまでもなく,小学校の中・高学年の図画工作科の授業時数が削減された事実とも整合する。しかし,一方で,幼稚園等において「遊びを通しての指導」が強調され,図画工作科高学年に造形遊び,そしてなによりも,小・中・高等学校に“総合的な学習の時間”の新設などの展開もあった。こうした,いわば混沌の中にあって,美術教育における「本質的目的と現代(時代)的目的」や「不易の課題と流行の課題」等々の再検討・再確認は最優先の課題となっている。
「自分流 みる・かく・つくるを 遊ぶこと」及び「表現と 鑑賞通し 人つくる」とは,30年近く美術教育にかかわってきた編者の美術観及び美術教育観である。やや我田引水になるかもしれないが本書の執筆者のおおかたはこうした美術観及び美術教育観を持つ同志と考えている。各々の執筆者は,「自分流」「みる」「かく」「つくる」「遊ぶ」「通して」「人つくる」などをキーワードに用語解説をおこなったはずである。
もとより十全と言えるものではないだろう。しかし,教科としての美術教育の存続が懸念される昨今,本書が美術教育における“美術の教育”と“美術による教育”の原点に思いを馳せ,今後の美術教育のあり方を模索するきっかけになるとするならそれは望外の幸せである。
なお,本書の出版にあたって,明治図書出版株式会社編集部の江部満氏・樋口雅子氏・鈴木嗣子氏に大きなご支援をいただいた。本紙面をかりて感謝の誠を捧げる。
/若元 澄男
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