- 序 文 中京女子大学名誉教授 /瀬川 榮志
- はじめに 熊本21世紀の国語教育を創る会代表 /吉本 清久
- 本書の特色 熊本21世紀の国語教育を創る会代表 /吉本 清久
- T 伝え合う力を育てる5年生の基礎的技能ワーク
- @ 相手にはっきり聞こえる声で話そう
- A 場面の様子が分かるように工夫して読もう
- B 敬語の上手な使い方を考えよう
- C 送り仮名・仮名づかいの達人になろう
- D 方言と共通語
- ■ワーク解答例
- U 伝え合う力を育てる5年生の基本的能力ワーク
- @ インタビューで友だちの良さを知ろう
- A スピーチの大事なところを落とさず聞き取ろう
- B 自分のおすすめの本の場面を伝え合おう
- C パネルディベートをしよう
- D メールで質問しよう
- E 話の組み立てを考えながら聞き取ろう
- F 心に残ったこの一言
- G 「写真」を見せながら分かりやすく話そう
- H 事実と感想・意見を区別して書こう
- I 事実・感想・意見を区別して読もう
- ■ワーク解答例
- V 伝え合う力を育てる5年生の統合発信力ワーク
- @ 漢字の不思議大発見!
- A 手紙っていいね
- B 声に出して読むと美しい詩を伝え合おう
- ■ワーク解答例
- あとがき 佐賀21世紀の国語教育を創る会代表 /宮原 久直
序文
「伝え合う力」を行動学習で鍛え「人間関係力」を育成
――双方交流の「言語行動」を通して「伝え合う心と技」を磨く――
中京女子大学名誉教授 /瀬川 榮志
学習指導要領(国語科)の目標に「伝え合う力」という用語が加わりました。お互いの考えや立場を尊重し合って自分の言葉で伝え合う技能・能力・態度・行動を育成することが重視されたのです。
「伝え合う力」は、何のために(目的)だれに(相手)いつ、どこで(情況・場面)どのように(方法)を意識し、言語を駆使・運用する行動で一貫することが欠かせない条件です。つまり、双方向的交流をするために必要な知識や技能だけでは「伝え合う力」は獲得されません。
具体的な「言語行動」の展開によって「生きて働く『伝え合う力』」が確実に育ちます。言語行動観に立つ国語科教育の実践理論に基づく「言語行動」の重視は新学習指導要領の「自ら考え正しく思考・判断し『表現・行動』する人間の育成」に連動します。
子供が自力で展開する「言語行動」重視の国語学習は、言語行動主体・学習者主体の「行動学習法」によって価値的内容と技能・能力を「言語行動」で統一して確実に身につけます。例えば「スピーチ」するという活動が展開される場合は、話題・主題に対する興味や関心と、そこで必然的に作動する順序・要点・要約・段落・中心・心情・想像力が組み込まれていなければならないのです。しかも、この活動は相互に協力・協調し人間関係を温め深め、心優しく逞しく実践する子供の育成に直結する目的的な価値ある言語行動で終始一貫することが求められます。
このような学ぶ行為としての「行動学習法」の具体化がワークシートによる学習です。
ワークシートによる「行動学習法」は、子供自ら創り出す言語行動力を軸にした学習方法です。この特色ある学習法は言語機能による学び方を最大限に発揮することができます。それは、易しい学習から難しい学習へと階段をのぼっていくようなステップを設定することです。学習をステップアップすることによって子供たちは「伝え合う力」が驚異的に向上していくことを意識することができるので成就感や達成感を満喫します。
ステップワークによる「行動学習法」は、「活動あって学習事項なしの国語学習」〜と批判されているような、無計画・無秩序に活動するものではありません。ステップアップする各段階で学習方法を厳しくチェックし的確に自己評価します。成功しないときはもう一度挑戦したり、前の学習に戻ったりします。つまり、フィードバックとアタックを繰り返していく学習システムですから「行動学習法」で自分を鍛え心と技を錬磨することになります。
このように考えていくとレベルアップの「行動学習法」は人間関係に深く関わっていることがわかります。
価値ある「言語行動」を通して相手の立場を尊重し、助け合い、励まし合い、磨き合い、高め合って、向上的変容を確認して自己変革を図っていく過程で新世紀を生き抜くために必要な「人間関係力」が育っていきます。
「伝え合う力」の指導は、人と人との望ましい関係で知的・情的交流を通して「生きる力」に連動する「生きて働く『人間関係力』」の育成を目指すことが大切です。にぎにぎしく騒然とした雰囲気の中で自制・自律・自立の姿が見えない活動に流れていくような軽薄な学習は許されないのです。
「伝え合う力」は、「話す・聞く」音声言語による指導が最適です。しかし、「書く」「読む」文字言語による指導にも力を傾倒する必要があります。例えば、手紙文の読み書きを通して心の教育が徹底されます。文章力・表現力も定着します。しかも、手紙を書く額投函する額返信を読む額手紙を書く〜の価値ある言語行動の連続で、友愛・親子の愛・師弟愛が芽生え、海外の友達との文通では国際協調の精神を高め人類愛の涵養にも及んでいきます。
本書は以上のような高い教育理念と確かな国語科教育の理論を基に、子供たちが「生き生きとステップアップワークによる『行動学習』で確実に国語科で身につける「基礎的技能」・「基本的能力」・「統合発信力」を定着・習得・獲得する」具体的な学習法を提示しています。
全六巻の統括責任者としての吉本清久先生は、終始精力的に対応し、実践研究者に必要な企画・調整・推進力を十二分に発揮し見事にその大任を果たされました。吉本先生は、全国国語科教育研究会東京大会で国語科指導の原理原則に基づくユニークな授業を度々公開し、大きな反響が全国的に広がりました。例えば「言語感覚を磨く」ことをねらいとした授業で熊本から一人一人の子供に車エビやウナギを運び、具体的な体験を通して学習者主体、言語行動主体の授業を確立し紹介しています。21世紀を拓く国語教育を創造していくためには、このように価値ある課題に積極的に取り組む研究実践者が求められます。すばらしい吉本先生との出会いを嬉しく思います。
最近、学校現場は忙しくなったといわれています。実践的研究は余計なものであり教科書通りに教えておけばよいという風潮があるとしたら子供たちの学力は低下します。教師が授業力、研究力を付けることの重要性を認識する必要があります。
編著者並びに指導・助言者の向田宏男・野口久雄・佐久間裕之・倉光浄晃・宮原久直・和田耕一・吉本清久の諸先生方には各巻ごとの研究グループで学力向上のための国語科教育の在り方を追究し「理論と実践を統一」したステップワークを完成していただき感謝しています。
明治図書の「明治図書出版企画開発室代表」の江部満様には、全六巻の企画から編集・出版に至るまで温かいご指導と力強いお励ましを頂戴しました。厚くお礼を申し上げます。本書が子供たちの人間関係力を高め学力が向上することを心から祈念しています。
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