確かなことばの力を育てる
個に応じた評価がわかる・できる国語科授業の展開

確かなことばの力を育てる個に応じた評価がわかる・できる国語科授業の展開

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「個」に応じた学力保障、「個」に応じた説明責任を明確にする。

本校の目指す「確かなことばの力」とは、「主体的に伝え合う力」であり、全ての領域の力により偏りなく支えられるものである。各領域における課題から、つけたい力を焦点化し、国語科を中心にあらゆる生活の場で具体的に教育実践に結びつけるようにした。


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ISBN:
4-18-690004-3
ジャンル:
国語
刊行:
4刷
対象:
小学校
仕様:
B5判 136頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

目次

もくじの詳細表示

はじめに /小森 茂
序 確かな国語力を育てる国語科の授業を目指して /山本 名嘉子
T 確かなことばの力を育てる基本的な考え
1 確かなことばの力を支える「かたやまの3本柱」
(1) 「めざす子どもの姿」の設定
(2) 言語活動を位置付けた国語科年間指導計画の作成
(3) 6年間の見通しをもった「言語活動の具体化」
2 確かなことばの力を育てる「かたやまの3本柱」
(1) ことばの力を確実につけるかたやまの国語科授業づくり
(2) ことばの力を生かし,広げるかたやまの生活づくり
(3) ことばの力を支え,高める研修態勢の工夫
U 確かなことばの力を育てる授業の実際
1 「話すこと・聞くこと」の授業実践
第1学年:楽しいこといっぱい,わたしの片山小学校
1単元・教材 /2単元について /3単元の目標 /4単元の評価規準 /5単元の指導計画 /6本時の目標 /7本時の学習展開
第2学年:きらら!話して聞いて作ってあそんでなかよくなろう
1単元・教材 /2単元について /3単元の目標 /4単元の評価規準 /5単元の指導計画 /6本時の目標 /7本時の学習展開 /8単元の学習展開 /9「めざす子どもの姿」についての評価と改善 /10こんな力がついたよ
2 「書くこと」の授業実践
第3学年:伝えたいことをえらんで
1単元・教材 /2単元について /3単元の目標 /4単元の評価規準 /5単元の指導計画 /6本時の目標 /7本時の学習展開 /8単元の学習展開 /9「めざす子どもの姿」についての評価と改善 /10こんな力がついたよ
第4学年:「もっと地球環境はよくしたい(隊)」からの発言
1単元・教材 /2単元について /3単元の目標 /4単元の評価規準 /5単元の指導計画 /6本時の目標 /7本時の学習展開 /8単元の学習展開 /9「めざす子どもの姿」についての評価と改善 /10こんな力がついたよ
3 「読むこと」の授業実践
第5学年:本のつばさに乗って
1単元・教材 /2単元について /3単元の目標 /4単元の評価規準 /5単元の指導計画 /6本時の目標 /7本時の学習展開
第6学年:自分さがしの読書 パートU
1単元・教材 /2単元について /3単元の目標 /4単元の評価規準 /5単元の指導計画 /6本時の目標 /7本時の学習展開 /8単元の学習展開 /9「めざす子どもの姿」についての評価と改善 /10こんな力がついたよ
資料編
1 国語科年間指導計画・観点別評価表
2 「めざす子どもの姿」
3 言語活動の具体化

はじめに

 1 広島県呉市立片山小学校・山本捷子校長の「学校教育」と「国語科授業」


 山本捷子先生は,広島県教育委員会に勤務された後,学校長としての指導力を発揮しながら,確かな国語の力を育てる国語科授業の実現に取り組まれてきた。山本捷子先生は,その職歴を生かし,全国的な視野から学校教育の本質的な在り方を見据え,家庭・地域の良さを生かし,一人一人の子供たち(学び手)の確かな学力を保障する「学校教育」の創造を展開された。

 さて,山本捷子校長の目指す「学校教育」と「国語科授業」とは,どのようなものか。それは,一つ,「各学校」が家庭・地域と連携を図りながら,一人一人の子供たち(学び手)の確かな国語の力を育てることである。その実現には,二つ,個に応じた評価がわかる・できる国語科授業を構想し展開する必要がある。その具体化には,三つ,「評価規準」を位置付けた「本時の学習指導案」等の学習指導案等の創意工夫である。四つは,これらの全体の枠組みを,本著の資料編に示したように,@「国語科年間指導計画」,A「めざす子供の姿」,B「言語活動の具体化」一覧表の三本柱に集約したことである。


例えば,@「国語科年間指導計画」では,国語科の各学年,各学期,各領域ごとに,言語活動例と「観点別学習状況の評価」が系統的に作成されている。このような「国語科年間指導計画」無くして,確かな国語の力を螺旋的に高めることはできない。

A「めざす子供の姿」は,基礎・基本としての学習指導要領・国語の文言が,子供たち(学び手)の姿として捉え直されている。この子供たちの姿無くして,確かな国語の力を育てることも個に応じた評価もできない。

B「言語活動の具体化」一覧表は,一学期→二学期→三学期の「単元・教材」の言語活動例に応じた「評価規準」とその「方法」が位置付けられている。この「評価規準」を位置付けた「本時の学習指導案」等の学習指導案なしに,個に応じた確かな国語の力を育成する国語科授業は展開できない。


 最後に,五つは,広島県や呉市教育委員会等の教育行政との連携や山本名嘉子先生・安田女子大学等の外部講師(私・青山学院大学もその一人?)の計画的な活用である。第三者の評価や支援も,「本人」,「保護者」等への説明には大切な情報である。


 2 片山小学校・山本捷子校長の目指したこと ―学校教育の原点を再確認しよう


 私の課題意識は,我が国の学校教育においては,「個」を尊重する実践理論が成立していない。つまり,「個」に応じた学力保障,「個」に応じた説明責任・結果責任という実践理論が成立していない(又は,成熟していない)のではないか,ということである。

 学校教育の原点は,例えば,個別学習や集団学習,コース別学習や習熟度別学習等の学習形態や学習方法は種々様々でも,とどのつまりは,一人一人の子供たちの良さや可能性を共感的に理解し,その学習状況や学習成果を評価し,個に応じた指導方法を工夫し,学校教育全体として,「個」に応じた学力保障,「個」に応じた説明責任・結果責任を明確にすることではないか。

 片山小学校・山本捷子校長の目指したことは,国語科授業として,子供たち(学び手)の学習状況や学習成果を評価し,個に応じた指導方法を工夫し,学校教育全体として,「個」に応じた学力保障,「個」に応じた説明責任・結果責任を実現することである。

 その際,この「個」に応じた学力保障,「個」に応じた説明責任・結果責任を明確にする「要」が「絶対評価」であり,「評価規準」を位置付けた「本時の学習指導案」等の学習指導案等の創意工夫である。

 とすると,重要な実践課題は,何をもって・どのように,一人一人の子供たちの学習状況を判断し評価するのか。その代表は,子供たちの言語活動例の具体化の学習過程に沿って生まれる学習成果ではないか。具体的には,次のようなものである。


○各教科の学習活動の特質,評価の場面や評価規準,児童生徒の発達段階に応じて,ペーパーテスト,ワークシート,学習カード,観察,面接,質問紙,作品,ノート,レポートなどの様々な評価方法の中から,その場面における児童生徒の学習の状況を的確に評価できる方法を選択していくことが必要である。(註1)


 つまり,確かな国語の力を育てるためには,「ペーパーテスト」の他に,学習成果としての「ワークシート,学習カード,作品,ノート,レポート」を評価の拠点に活用したい。さらに,「観察,面接,質問紙」等を活用しつつ,目標に照らして一人一人の子供たちの学習状況を共感的に理解しながら,学習意欲やねらい,学習方法等を支援することである。場合によって,継続的に「家庭」との連携を図り,「本人」「保護者」と相談しながら,その子供の(学び手)学習計画を創意工夫する国語科授業の創造である。

・(註1)「評価規準の作成,評価方法の工夫改善のための参考資料(小学校及び中学校)」(国立教育政策研究所教育課程研究センター,平成14年2月)に拠る。


 3 「評価規準」を位置付けた国語科授業が目指すもの


 総じて,私は,「評価規準」を位置付けた国語科授業を構想し展開する理由や必然性を次のように考える。

(1)評価規準を作成することは,教材研究を改善する。それは,従来の総花的な教材研究を改め,目標に照らして,学習内容を重点化・系統化することである。

(2)評価規準を作成することは,授業を改善する。それは,(1)を踏まえ,基礎・基本を具体的に示すとともに,個に応じた多様な授業展開することである。

(3)評価規準を作成することは,例えば,「C 努力を要すると判断されるもの」を,「B おおむね満足できると判断されるもの」へ,さらに,「A 十分満足できると判断されるもの」へと資質・能力を螺旋的に高めることである。それは,子供たちの学力を保障するとともに,一人一人の教師が子供一人一人に具体的で合理的な説明ができることである。

(4)評価規準を作成することは,一人一人の教師が評価能力という実践能力の「要」を獲得することである。それは,他の教師,保護者,本人にも説明し納得・満足される的確な評価能力を向上させることである。

(5)評価規準を作成することは,学力保障ができる学校教育を構築する。それは,保護者との連携を図り,個に応じた評価→指導方法と教材開発(カリキュラム開発)→学力保障という教育機能を具備した新しい学校教育を実現することである。


 まさに,本書『確かなことばの力を育てる』の内容は,片山小学校の一人一人の教師が,山本校長とともに,評価能力という実践能力の「要」を獲得し,説明責任,学力保障という教育機能を具備した新しい学校教育の展開である。


   青山学院大学教授 /小森 茂

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