確かな国語力をつける授業モデル 第2巻 「読むこと」編

確かな国語力をつける授業モデル 第2巻 「読むこと」編

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「確かな」国語力をつけるための詳細な指導事例集。

@「確かさ」をどのように求め、A新しい学力としての「国語力」をどのようにつけ、B新学習指導要領の「授業モデル」はどのようになるか、この三つの課題に応えるために、「話すこと・聞くこと」「書くこと」編、「読むこと」編の2巻で構成。


復刊時予価: 2,585円(税込)

送料・代引手数料無料

電子書籍版: なし

ISBN:
4-18-683803-8
ジャンル:
国語
刊行:
4刷
対象:
小学校
仕様:
B5判 164頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

もくじ

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まえがき
序章 国語力の確定と育成
一 低学年:「読むこと」の授業実践
1,単元観/ 2,単元の指導目標/ 3,単元の評価規準/ 4,単元の授業過程/ 5,学習活動の実際と解説
1 ファンタジーの世界を探ろう
2 ストーリーテラーになろう
3 自分と動物の成長を比べよう
4 のはらのなかまたちのパーティー
二 中学年:「読むこと」の授業実践
1,単元観/ 2,単元の指導目標/ 3,単元の評価規準/ 4,単元の授業過程/ 5,学習活動の実際と解説
5 音読発表と感想の交流を通して考えを深めよう
6 主人公の人柄を感じよう
7 読書報告会をしよう
8 「問いかけ」への問いかけ
三 高学年:「読むこと」の授業実践
1,単元観/ 2,単元の指導目標/ 3,単元の評価規準/ 4,単元の授業過程/ 5,学習活動の実際と解説
9 情景を味わおう
10 読書の感動を伝えよう
11 「青い鳥」をさがしにでかけよう
12 調べたことを生かして交流しよう!
13 『学校歳時記』を編集しよう

まえがき

 本シリーズ『確かな国語力をつける授業モデル』は,タイトルに示したように,(1)「確かさ」をどのように求めるか,(2)新しい学力としての「国語力」をどのようにつけるか,(3)新学習指導要領国語科の3領域1事項の「授業モデル」はどのようになるか,という三つの課題に応えたものである。

 第一の課題である「確かさ」が求められる理由の一つに,能力定着への不安が,教師にも保護者にも広がっているということが指摘されよう。社会背景として批判が起きていることも事実である。だが,そのような不安や批判は,外部から生じるだけでなく,国語科という教科がもつ特質に由来する面も多いことに留意する必要があろう。単元構想時において具体化すべき事項が,他教科などに比べて一層国語科教師に委ねられているからである。

 例えば,3領域1事項の内容の具体化,2学年のまとまりで示されたものを担当学年に応じて具体化するとともに相互関係を付けること,多様な言語活動の中から各学校の実態に応じて定着すべき言語活動を確定すること,国語科年間指導計画において系統化すること,単元に応じた教材開発(作品やワークシート,ビデオ,インターネット資料など),など多くの具体化が委任されているのだ。これらの上に新しい評価規準を設定し,適切な評価方法によって評価する作業が待ち受けている。「確かな」国語力をつけるとあるから,何か特別な国語力が求められるというのではなく,「確かに」国語力をつけるという決意と具体化の授業力が求められていると考える必要がある。

 第二の課題である「国語力」が今求められるのは,国語科で得た学力が,他教科等や総合的な学習の時間にも深く関連し,また,関連しなければならない責務を負っており,それらの要請に応えるような内容と実際の言語生活場面に運用できる能力が求められているからである。例えば,話す時のポイントをいくら知識として知っていても,人の前に立って話し始めたら上がってしまって上手に話せないというのでは困ってしまうようなものである。

 第三の課題である「授業モデル」の提案は,平成10年告示の学習指導要領を受けて,新しい授業はどのようになるべきか,実際のイメージを構築しなければならないからである。国語科も含めた「自ら課題を発見し,自ら学び,自ら解決する」ような授業,「基礎基本を身に付けながら個性化を図る」授業,といった授業イメージは,少なくとも今教壇に立っている多くの教師は,具体的には描けないのではないだろうか。「考えは理解できるが,実際にはどのようになっていれば自己学習による授業になっているんですか」と質問を受けたり,ため息混じりの本音を聞くことも多い。それだけ教師主導が深く染みつき,その呪縛から解き放されずにいるのが現状ではなかろうか。

 このような課題に応えるために,本シリーズは,次のような点に留意して編集することにした。


(1) 学習指導要領を踏まえた新しい教育課程における指導事例集とする。

(2) 3領域1事項を具体化し,第1巻「話すこと・聞くこと」「書くこと」編,第2巻「読むこと」編の2巻構成にし,領域別に考えられるようにする。言語事項は,それらに含める。

(3) 「確かな国語力」とは,1.基礎・基本の国語力と,2.個性的で創造的な豊かな国語力,の育成を同時に保証する学力であり,新学習指導要領に示された言語活動を軸に,子どもの実態に応じた単元構想に基づく授業実践によって「確かに」国語力を定着させることを言う。

(4) 学習指導要領改訂の趣旨に沿った具体化を行う。すなわち,「伝え合う力」を育てる,読者としての子ども・表現者としての子どもといった言語主体を育てる,2学年のまとまりを具体化する,言語活動を多様化するとともに実際に運用する,単元に応じた教材を開発する,新しい考え方に立った評価規準と評価方法を開発する,などを工夫する。

(5) 基本単元と学習指導に関する現代の要請に応じて特色づけた単元によって構成する。

 【基本単元】

  ○大単元(領域統合)にしたり,重点単元(1領域のみ)にしたり,目標に応じて配慮する。

  ○教科書単元に配慮するが,独自に単元名・学習課題・教材開発・授業過程などを構想する。

  ○学習指導要領に示された言語活動例に配慮するが,言語活動例以外のものも取り入れ具体化する。

 【特色ある単元】

  ○特色ある単元とは,少人数別指導など個に応じた指導,コンピュータ活用による指導,学校図書館の利活用による指導,家庭や地域との連携による指導,学校相互の連携による指導などを指す。

(6) 改訂で新たに示された内容や重点化された内容に配慮する。

(7) 評価観が改革されたことを受けて,「評価」の内容を充実させる。子どもの評価力を高めたり,評価規準や評価方法を開発する。「指導上の留意点」は,教師の活動を書くだけではなく,評価規準に照らして言語活動を十分行うような留意点を書く。「努力を要する子ども」に対する配慮をする。

(8) 執筆者は,「国語教育カンファランス」研究会員とし,実践に当たっては,次のような編者の著作及び「国語教育カンファランス」の実践研究を参照して単元構想を図る。

 【先行文献及び参考文献】

 ○『読者としての子どもと読みの形成−個を生かす多様な読みの授業−』明治図書,1993年。

 ○『読者としての子どもを育てる文学の授業−文学の授業研究入門−』明治図書,1995年。

 ○『多様な読みの力を育てる文学の指導法』全3巻,編著,明治図書,1998年。

 ○『総合的な読みの力を育成する国語科の授業』編著,明治図書,2000年。

 ○『語彙力の発達とその育成−国語科学習基本語彙選定の視座から−』明治図書,2001年。

 ○『くどうなおこと子どもたち−詩人の生き方・子どもの読み方』編著,明治図書,2001年。

 ○『文学の授業力をつける−7つの授業と自己学習を進める学習資料40−』明治図書,2002年。

 ○『ことばが生まれる−伝え合う力を高める表現単元の授業の作り方−』明治図書,2002年。

 ○『読書力をつける−読書活動のアイデアと実践例16−』上・下巻,編著,明治図書,2002年。

 ○『読む力の基礎・基本−17の視点による授業作り−』明治図書,2003。

(9) 授業の解説と考察は,学習指導の方法の解説と考察に加え,児童の実態も対象化する。実態を整理したり,分類したりすることによって,児童の実現状況の評価を行ったり,学習指導の方法について評価することに役立てたい。


 本書は,2学年のまとまりを軸に,学年ごとの実践事例を配列して構成した。なお,第1巻,第2巻それぞれの序章として,国語力に関する論考を収めた。論考の初出は,次の通りである。

 第1巻 「国語力の解明と授業力の向上」『初等教育資料』第760号,2002年10月15日

 第2巻 「国語力の確定と育成」『月刊国語教育研究』第372集,2003年4月10日

 両巻の序章を合わせて読んでいただければ,確かな国語力の育成についての意義と学習指導の全体像を把握することに参考となろう。

 最後になったが,本書刊行に当たっては,明治図書の石塚嘉典・松本幸子・真鍋恵美氏にお世話になった。ここに記し,謝意としたい。


  2004年2月

   文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官

   国立教育政策研究所教育課程研究センター研究開発部教育課程調査官

   /井上 一郎

著者紹介

井上 一郎(いのうえ いちろう)著書を検索»

文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官・国立教育政策研究所教育課程研究センター研究開発部教育課程調査官。随筆家。国語教育学者。奈良教育大学助教授・神戸大学教授を経て,2001年から現職。子どもの視座を拠点とする国語教育学研究を継続する。文章表現力の構造と発達の調査研究を発展させ,学習基本語彙を中心に据えた語彙指導論及び言語事項の可能性を模索する。その後,読者論を基盤に,文学・説明文・表現の教材の実践的な理論研究や,実践的試行を重ねた新しい指導法の体系を提唱する。現在は,自己表現力の育成を基軸に教科を貫く総合的な視野に立った言語能力の体系化を目指す。平成10年度版「学習指導要領(国語)の改善に関する調査研究委員」に従事する。

※この情報は、本書が刊行された当時の奥付の記載内容に基づいて作成されています。
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