- はじめに
- 本書の利用法について
- 第T部 子どもの素朴概念をどう把握するか
- 第1章 授業前の子どもの素朴概念を知ることの意味
- 第1節 子どもの素朴概念とは何か
- 第2節 授業前の子どもの素朴概念を知ることの重要性
- 第3節 授業前の子どもの素朴概念を知る方法
- 第4節 これまでの素朴概念を把握する方法との相違
- 第2章 「生物とその環境」に関わる素朴概念:調査項目/調査結果/考察
- 第1節 「生物:植物を愛する心情」をどう考えているか(対象学年…小3以上)
- 第2節 「生物:昆虫のからだのつくり」をどう考えているか(対象学年…小3以上)
- 第3節 「生物:植物の生命の連続性」をどう考えているか(対象学年…小4以上)
- 第4節 「生物:成長に伴う植物体の重量変化」をどう考えているか(対象学年…小5以上)
- 第5節 「生物:植物の成長に伴う土の重量変化」をどう考えているか(対象学年…小5以上)
- 第6節 「生物:植物の成長に伴う鉢植え全体の重量変化」をどう考えているか(対象学年…小5以上)
- 第7節 「生物:人間と環境」をどう考えているか(対象学年…小6以上)
- 第8節 「人の発生と成長(1):胎児の栄養摂取」をどう考えているか(対象学年…小5以上)
- 第9節 「人の発生と成長(2):胎児の様子」をどう考えているか(対象学年…小5以上)
- 第10節 「メダカの発生と成長:卵の発生」をどう考えているか(対象学年…小5以上)
- 第11節 「人のからだ:呼吸」をどう考えているか(対象学年…小6以上)
- 第3章 「物質とエネルギー(物理的領域)」に関わる素朴概念:調査項目/調査結果/考察
- 第1節 「乾電池と豆電球:閉回路」をどう考えているか(対象学年…小3以上)
- 第2節 「電気回路:電気とその流れ」をどう考えているか(対象学年…小3以上)
- 第3節 「磁石:残留磁化」をどう考えているか(対象学年…小3以上)
- 第4節 「音の伝わり方:空気中の音の伝播」をどう考えているか(対象学年…小3以上)
- 第5節 「物の性質:空気の体積」をどう考えているか(対象学年…小3以上)
- 第6節 「物の温度と体積(1):空気の膨脹」をどう考えているか(対象学年…小4以上)
- 第7節 「物の温度と体積(2):空気の収縮」をどう考えているか(対象学年…小4以上)
- 第8節 「物の温度と体積(3):空気の膨脹」をどう考えているか(対象学年…小4以上)
- 第9節 「物の重さ(1):上皿てんびん」をどう考えているか(対象学年…小4以上)
- 第10節 「物の重さ(2):重さの日常的な認識」をどう考えているか(対象学年…小4以上)
- 第11節 「物の重さ(3):重さの保存」をどう考えているか(対象学年…小5以上)
- 第12節 「てこの働き:釣り合い」をどう考えているか(対象学年…小5以上)
- 第13節 「振り子:糸の長さ・おもりの重さ」をどう考えているか(対象学年…小5以上)
- 第14節 「おもりの働き:衝突球の移動距離」をどう考えているか(対象学年…小5以上)
- 第15節 「電流の働き:電熱線と電流の働き」をう考えているか(対象学年…小6以上)
- 第4章 「物質とエネルギー(化学的領域)」に関わる素朴概念:調査項目/調査結果/考察
- 第1節 「水溶液の性質(1):水溶液のろ過」をどう考えているか(対象学年…小5以上)
- 第2節 「水溶液の性質(2):水柄液の均一性」をどう考えているか(対象学年…小5以上)
- 第3節 「水溶液の性質(3):溶解現象の日常性」をどう考えているか(対象学年…小5以上)
- 第4節 「水溶液の性質(4):水溶液の濃さ」をどう考えているか(対象学年…小5以上)
- 第5節 「化学変化:鉄くぎと食酢の反応」をどう考えているか(対象学年…小6以上)
- 第5章 「地球と宇宙」に関わる素朴概念:調査項目/調査結果/考察
- 第1節 「地球:地球の形状と重力」をどう考えているか(対象学年…小3以上)
- 第2節 「天体:空の形状」をどう考えているか(対象学年…小3以上)
- 第3節 「天気:文化の違い」をどう考えているか(対象学年…小3以上)
- 第4節 「天体:四方位」をどう考えているか(対象学年…小3以上)
- 第5節 「流水の働き:河床の形状」をどう考えているか(対象学年…小4以上)
- 第6節 「天体:月の満ち欠け」をどう考えているか(対象学年…小4以上)
- 第7節 「気象:1日の気温の変化」をどう考えているか(対象学年…小5以上)
- 第8節 「地質:地層の成因」をどう考えているか(対象学年…小5以上)
- 第9節 「天体:星の動き」をどう考えているか(対象学年…小6以上)
- 第6章 子どもの科学的概念の形成における特徴
- 第1節 子どもの素朴概念と科学的概念の形成
- 第2節 子どもの科学的概念の形成の過程で考慮すべき主な要因
- 付 今後の課題
- 第U部 子どもの素朴概念を理科授業にどう活かすか
- 第1章 子どもの素朴概念と理科授業および学習の関わり
- 第1節 理科授業や学習を規定する諸要因と子どもの素朴概念
- 第2節 「子どもの素朴概念」から理科を捉え直すことの意味
- 第3節 授業における子どもの素朴概念の活用の方法
- 第2章 子どもの科学的概念の形成における問題点
- 第1節 「活きて働かない学力」の実態はいかに
- 第2節 「活きて働く学力」の育成には何が重要か
- 第3章 子どもの素朴概念と授業における課題意識の喚起
- 第1節 レディネスと子どもの素朴概念
- 第2節 最近接発達の領域と子どもの素朴概念
- 第3節 子どもの素朴概念と理科嫌い・理科離れの問題
- 第4節 子どもの素朴概念と課題意識の喚起
- 第4章 子どもの素朴概念を克服する方法の解明
- 第1節 これまでの子どもの素朴概念の克服の方法
- 第2節 子どもの素朴概念克服の手だてを授業前に想定
- 第3節 子どもの素朴概念を克服するための一般的な方法
- 第4節 子どもの素朴概念を克服するための具体的な方法
- 第5章 子どもの素朴概念の授業における討論への利用
- 第1節 討論におけるルールの重要性
- 第2節 討論の方法の提示
- 第3節 子どもの素朴概念を討論に取り入れた授業の展開
- 第6章 子どもの素朴概念を取り入れた学習指導案の構築
- 第1節 子どもの素朴概念と学習指導案の構成
- 第2節 子どもの素朴概念を取り入れた学習指導案の構成および授業の展開
- 第3節 授業における子どもの素朴概念の克服
- 第7章 子どもの素朴概念とその変容および授業評価
- 第1節 学習前・後の子どもの素朴概念の変容と授業評価
- 第2節 子どもの素朴概念の変容からみた授業評価
- 第8章 子どもの素朴概念を活かした認知的方略の育成
- 第1節 メタ認知と認知的方略および自己評価の関係
- 第2節 認知的方略を育成する自己評価の重要性
- 第3節 認知的方略を育成する自己評価の方法
- 第4節 自己評価を取り入れた授業
- 第5節 授業の結果と認知的方略の実態
- 第6節 認知的方略育成のために
- 付 今後の課題
- おわりに
まえがき
子どもは,教師の意図と関係なしに,授業に自分なりの考え方を持ち込んでくるようです。先生方の中には,日々の授業で、突拍子もない(しかし,いかにも子どもらしく,ほほえましい)考えの表出に驚かされたり戸惑いを憶えたりした経験をお持ちの方も少なくないことでしょう。そんな時、教師は「こんな考えをもっているはずはない」,「どこで子どもはこんなことを知ったのだろう?」,「授業でやったのに,どうしてこんな考えをするのだろう?」などと感じて,できれば何とかして授業前の子どもの考えを知りたいというような衝動に駆られることと思います。
教師なら誰でも,このような不測の事態を避けるために,授業の前に子どもの素朴概念を詳しく知りたいと思うことでしょう。それをあらかじめ知っていれば,授業の構成に一工夫こらすこともできるわけです。しかしながら,周知の如く「時間との戦い」ともいえる教育現場に身を置く先生方には,毎時間の授業前の子どもの考えを把握する余裕など無きに等しく,「経験を積み重ねることが最良の解決の道である」と思いがちになるのではないでしょうか。
そこで本書は,このような先生方のために,授業前の子どもの素朴概念を知ることができる簡便な方法およびその授業への活用法を提案したいと思います。前者は,授業前(または授業開始時)に子どもがすでに持っている知識や考えを調査用紙によって把握する方法です。本書には,その調査問題の実施結果も例示して,以後の授業との延長線上に立って考察も加えてあります。それは,子どもの主体性を活かした理科授業の追求,およびそれを研究として意識する諸先生方の即戦力となることを願っているからであります。
そのためには,教育における提言(理論と言ってもよい)は,何よりもまずシンプルなものでなくてはなりません。それに加えて実践の場で強力な武器となるものであることが求められます。さらに,誰にでも使えるものであることも忘れてはならないことだと思います。これまで,教育の世界では,ややもするとこの逆のもの,あるいは言葉遊びに終始する印象の強いものがもてはやされてきたように思っているのは,おそらくわれわれだけではないと考えていますがいかがでしょうか。
ところで,一見して,本書に集録した問題は,これまでに行われてきた一般のテストと何ら変わりないものとして目に映るかもしれません。しかし,何はともあれ,ますはご一読頂き,試しにご自分の学級で本書の問題を実施して頂きたいと思います。そうすれば,必ずその違いがはっきりしてくるだろうし,その作成にいかにわれわれが苦しんだのかもお分かり頂けるのではないかと思われます。いわゆる普通に行われているテストとの速いは本書の中で詳述したので,そちらをお読み下さればと思います。
なお,本書の成立の経緯について一言ふれておきたいと思います。本書の子どもの素朴概念を知る調査問題についての基本的構想は,堀がここ数年来あたため続けていたものでした。理科のどの内容についても定式化された調査問題を使えば,授業前の子どもの素朴的概念を明らかにできる事典のようなものを作りたいと考えていたのです。子どもの素朴概念を調査問題の形に定式化し,いくつかは実用化してきたのですが,それはどちらかと言えば,内容的に物理・化学分野に偏ったものとなっていました。そこで,生物・地学分野にもその考えを活かすために,松森氏が生物・地学分野を担当することになりました。
しかし,それだけでもまだなかなか遅々として研究は進みませんでした。なぜならば,一つは学習前の子どもの素朴概念を対象にしているため,問題の形に定式化することがきわめて難しかったこと,さらにもう一つは一学年最低およそ100名以上の子どもに,しかも異なった地域で調査を実施すること等々,新しい研究の分野を切り開く意味での難題がいくつもいくつもありました。
そんな中で,きわめて強力な研究の推進役を果たしてくれたのが明治図書の『楽しい理科授業』の二年間にわたる連載(1995年4月〜1997年3月)でした。もし連載の話がなかったならば,この研究は依然として計画の域を出ていなかったことに何の疑いの余地もありません。その意味で,『楽しい理科授業』誌の樋口雅子編集長には,深く感謝したいと思います。編集長には,本書の企画および出版に際しても,終始適切なご助言を頂きました。ありがとうございました。
また,調査にご協力下さった各校の校長先生はじめ実施を担当して下さった多くの先生方に深く感謝いたします。それに加えて,本書には,予備調査を含めて,驚くべきことに6000余名の子どもたちの真剣に取り組んでくれた素朴で真撃な考えが凝縮されております。さらに,授業を実施してくださった先生方のご尽力につきましても,特筆しておかなければなりません。本書の性格上,こうした多くの人たちのどの協力が欠けても,出版までこぎつけるのはきわめて難しかったといえるでしょう。あらためて心からお礼を申し上げたいとは思います。
ところで,本書は理科の教科書の内容をすべて網羅しているとはいえません。また,その活用についても限られた事例しかあげられていません。したがって,まだ事典というにはほど遠いとは思っています。どのような内容についても,授業前の子どもの考えを知ることができる調査問題の定式化を今後も追求していきたいと思いますし,その授業への活用についても新たな方途を追求したいと思っております。
こんな問題はどうか,こんな活用はどうかというご意見がありましたら,お知らせ下されば幸いです。それは,われわれが誰もが共有できるものについては時間をかけずにすみ,教師としてのプロフェッショナルな部分に時間をかけることができる,そんな授業論をこれからも追求したいと考えているからなのです。是非,ご協力を願いいたします。
1997年10月31日 編著者 /堀 哲夫
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明治図書- 理科の素朴概念について、まとまっています。例えば理科の校内研究の診断的評価として児童の実態を捉えるのにはには必要だと思います。現在手に入らないので復刊希望します。2021/9/25ひさしっくす















