- まえがき
- 第T章 実用的な文章表現技術の獲得
- 一 「生きる力」に連動する実用作文
- 二 子供の可能性と文章技術の指導
- 三 文種別作文指導のメリットと学習法
- 第U章 意見文で思考力・表現力を磨く
- 一 意見文指導の今日的必要性
- 二 意見文とは何か
- 三 意見文をどう書かせるか
- 第V章 意見文の「型」を使いこなす
- 一 二部構成で書く1 「ゆめをふくらませて書く」
- 二 二部構成で書く2 「遊びの中で、相手を説得する書き方がわかる」
- 三 三部構成で書く1 「三つの文でいけん文を書こう」
- 四 三部構成で書く2 「意見の足場で書ける」
- 五 四部構成で書く1 「起承転結で書ける」
- 六 四部構成で書く2 「二つの立場を見つめ、展望を述べる」
- 第V章における指導・支援のポイント
- 第W章 「書き方が分かる」教科書教材の意見文の指導
- 一 「わたしのたからもの」
- 二 「体によいおやつ」
- 三 「自分の考えを明らかに」
- 四 「わたしのすすめるこの一さつ」
- 五 「生活をふり返って」
- 六 「変えたい! このきまり」
- 第W章における指導・支援のポイント
- 第X章 「こうすれば書ける」新しい意見文指導
- 一 「生活科の体験を生かして」
- 二 学級活動で話し合ったことをもとに
- 三 環境学習でのディベートをもとにした『一枚論文』 〈第六学年〉『社会科との総合的な扱い』
- 第X章における指導・支援のポイント
- 第Y章 ぐんぐん上達する意見文ステップ学習
- 一 「こんなあそびをしってるよ!」
- 二 「あなたはだあれ」一三一
- 三 「レッツ! 意見交流発表会」
- 第Y章における指導・支援のポイント
- 第Z章 優れた意見文の分析と指導のポイント
- 一 低学年の意見文 「五感のフル活用で共感させる!」――生活文からの発展――
- 二 中学年の意見文 「七夕集会では、楽しいゲームを!」
- 三 高学年の意見文 「情報を集め、使いこなす」
- あとがき
まえがき
激しく変化する社会に対応する「実用作文教育」の必要性
――子供の可能性を引き出し、文章力を高めるジャンル別の作文指導法――
国語科の授業で習得した力が、他教科の学習で応用されなかったり、日常生活で必要に応じて役に立たないとしたら、それは生きて働く言語技術ではないと考えます。ある学校で、全教科を対象に「基礎・基本の定着」を研究テーマに設定して充実した研究活動を展開していました。その学校の学習指導案の本時の展開図には「要点をおさえて聞く話す読む書く」欄が設けられていたのです。つまり、理科や社会科・生活科等の全教科の学習で、国語の要点力・要約力が働かないと、それぞれの教科の学力は獲得されないということを前提とした研究でした。
「萬学の基礎」とも言われている国語科の授業で獲得した言語技術は、他教科の学習においては勿論のこと、日常の生活においても波及・応用されなければならないということを実証した研究だったのです。
特に作文の授業で得た文章技術が、日々の言語生活で実際に駆使されているかについては明確な解答が出ない状況にあると思います。応用されるどころか、作文嫌いの子供も多く、目的や必要に即して、内容・形式の整った文章を書く技術が習得されていないのではないでしょうか。
何となく役立っている――という考え方ではなく、どんな文章技術がどのような場面で、組織的・体系的に役立っているかということが的確に把握できないようでは、確実に言語技術が獲得される作文指導とはいえないはずです。
このような見解は極端である――という声もあるかもしれません。勿論、作文の基礎的技術を耕しそれを生きて働く力として基本的能力に応用・波及するような意図的・体系的な指導をしている学校で学ぶ子供たちは、自力で作文力を獲得・創造することができます。しかし、意図的・計画的な作文指導体制のなかった学校で学んだ子供たちは、中学校・高等学校まで作文嫌いが続き、的確な文章を書く技術が身についていないことが多いようです。この現象は大学生にも見られると言われています。即ち研究論文を作成しても、それが生活文や感想文あるいは説明文であるかの弁別もつかないような文章しか書けない学生もいるということです。
激しく変化していく社会においては、目的や必要に即して、意見文・説明文・解説文・感想文・手紙文・論説文等々の実用的なジャンルの文章技術が重要になってきます。
現在の小学校における作文指導は、文種に応じた的確な指導法が確立されていないようです。例えば、事柄や事象を正確に相手に分かるように文章表現するためには、感想文や生活文的な発想でなく、論理的で説得力のある説明文で読み手に知的理解を図る必要があります。
これまでは、低学年では生活文を中心に書く、中学生では説明文を中心に書く、高学年では意見文・感想文を中心に書く指導を――という考え方もありましたが、一年生でも興味のある事柄については意欲的に説明する場面も見かけます。二年生でも長文の感想文をまとめる子供もいます。このような実情を踏まえ、文章力を高めるためにも、新しい視点に立って授業改革をする必要に迫られています。子供たちには無限の可能性があります。既成の概念や方法にとらわれず二一世紀を拓く教育における実用作文の指導法を開拓しなければなりません。
本書はこのような画期的な理念・理論・方法で企画しました。
出版に際して、明治図書出版企画開発室代表江部満様に、企画から発行まで温かいご配慮と力強いご支援を賜りました。厚くお礼申し上げます。
中京女子大学教授 /瀬川 榮志
-
- 明治図書