国語科授業改革双書24子どもとひらく国語科学習材 音声言語編

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音声言語学習機開発の拠点と方法/音声言語の取り立て授業例5編/音声言語と理解領域との関連授業6編など子どもと共に開発した学習材を示す。


復刊時予価: 2,783円(税込)

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電子書籍版: なし

ISBN:
4-18-654617-7
ジャンル:
国語
刊行:
対象:
小学校
仕様:
A5判 192頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

目次

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はじめに
序章 音声言語学習材開発論
音声言語学習材開発の拠点と方法 /中洌 正堯
一 音声言語教育の目標
二 音声言語の領域
三 音声言語教育の内容
四 音声言語の学習材
第一章 音声言語の取り立て指導
〈序〉 プライベート・コミュニケーションのためにできること
──「地域性」の意識化が果たす役割── /難波 博孝
一 パブリック・コミュニケーションとプライベート・コミュニケーション
二 コミュニケーションの機能
三 プライベート・コミュニケーションを支える「風土」
四 「地域性」の回復のために
〈一〉 からだであいうえお(一年) /幸聖 二郎・植田 奈保美
一 授業にあたって
二 単元の目標
三 単元計画(全四時間)
四 授業の実際
五 まとめ
〈二〉 わたしたちの大阪「思い出地図」を作ろう(三年)
──子どもの生活体験と話しことば学習材── /田村 泰宏
一 授業にあたって
二 単元の目標(国語科の目標のみ示す)
三 単元計画(全一一時間・国語科は四時間)
四 授業の実際
五 まとめ
〈三〉 聴いて! 夏休みのとっておきの体験を(四年) /鈴木 万里子
一 授業にあたって
二 単元の目標
三 単元計画(全六時間)
四 授業の実際
五 まとめ
〈四〉 学区に残る昔を伝えよう(五年) /妹尾 政子
一 授業にあたって
二 単元の目標
三 単元計画(全九時間)
四 授業の実際
五 まとめ
第二章 音声言語と理解領域との関連指導
〈序〉 理解領域とのかかわりで音声言語教育を考える
──十分に子どもの思いを耕させる授業を── /棚橋 尚子
一 現実生活に生きる音声言語の育成を目指して
二 音声言語学習と理解領域との関連
三 完璧にやろうという目標設定を捨てることについて
〈一〉 ビデオレターで伝えるわたしたちの遊び(一年)
──「おにごっこ」(学校図書 一年下)── /河野 順子
一 授業にあたって
二 単元の目標
三 単元計画(全一二時間)
四 授業の実際
五 学習を終えて
〈二〉 島ひきおにとお話しをしよう(二年)
──「島ひきおに」(山下明生 文・梶山俊夫 絵・偕成社)── /木村 勝博
一 授業にあたって
二 単元の目標
三 単元計画(全一〇時間)
四 授業の実際
五 まとめ
〈三〉 絵文字でつくる学校案内(三年)
──「くらしと絵文字」(教育出版 三年下)「色や形によるお知らせ」(大阪書籍 三年下)── /中西 康恵・櫻本 明美
一 授業にあたって
二 単元の目標
三 単元計画(全一一時間)
四 授業の実際
五 まとめ──子どもの学びをふりかえって──
〈四〉 校内放送で紹介する兵庫の名作(五年)
──「じろはったん」(森はな・作、アリス館)── /吉川 芳則
一 授業にあたって
二 単元の目標
三 単元計画(全一五時間)
四 授業の実際
五 まとめ
〈五〉 身近な環境問題を考える(六年)
──「生きている土」(教育出版 六年上)── /長崎 伸仁
一 授業にあたって
二 単元の目標
三 単元計画(全七時間)─各時間の略案を併記─
四 授業の実際
五 まとめ
おわりに

はじめに

 “内容(なかみ)がなくては話せません。誠意なくしては通じません。”と、若い女性アナウンサーが、学生の質問に対して明確に答えたのを思い出す。1980年2月、今から18年も前のことである。この場合の「内容(なかみ)」とは、国語・音声言語にとって何なのであろうか。

 言語の教育は、言語そのものの教育(知識×体系×研究)と言語活動の教育(言語能力×認識諸能力×認識方法×態度)の二つの側面をもっている。後者の言語活動の教育には、その活動を具現化するための話題・題材が必要である。先の「内容(なかみ)」とは、この話題・題材の質量を言ったものと解される。

 「国語科学習財」というとき、言語そのものの知識や体系、あるいはその研究の仕方、聞くこと・話すこと、読むこと、書くことという言語活動そのもの、その活動を具現化させる話題・題材、それにともなう言語による認識や思考、さらにそれらを体制化する態度や学習などのすべてが、対象となる。

 右の諸事項の中で、私たちも、言語活動を具現化させる話題・題材とその質量に注目し、そこから言語そのものの教育と言語活動の教育の二側面に分け入ろうとしたのである。そのとき、子どもたち(学習者)の肩に後ろから手を置いて、その肩ごしに前を見ようとしたことが、『子どもとひらく国語科学習材』の書名となった。

 言語活動を具現化させる話題・題材とその質量(―国語・音声言語の内容)を追究するために、私たちの選んだ方法は、「歳時記的方法」であり、「風土記的方法」である。これは、日本に暮らす人々の生活を、時間軸と空間軸の座標上にとらえようとするとき、自ずから選ばれる方法でもある。時間軸は時季性、空間軸は地域性と置き換えることも可能である。

 時季性、地域性は、しかし、学習者の日常生活の中では、見過ごされやすいものでもある。私たちは、時季性、地域性にもとづく音声言語学習開発について、学習者を次のように段階を追って導いていくことが必要になる。

 (1)時季性、地域性にもとづく話題・題材が与えられて、自分の学習材とする段階、(2)話題・題材の選択肢が与えられて、自分の学習材とする段階、(3)ヒントが与えられて、自分の学習材とする段階、(4)大枠が導かれて、自分の学習材とする段階、(5)導きなしに自ら学習材を発見する段階、というように。

 個々の実践においては、どの段階を経過しつつあるものかをたえず測定し、次の展開を目ざさなくてはならない。

 本書の序章には「音声言語学習材開発論」を置き、右の「歳時記的方法」「風土記的方法」を中心として、「音声言語学習材の拠点と方法」について論述した。

 第一章を「音声言語の取り立て指導」とし、ここには、「序」と四つの実践を配した。

 また、第二章を「音声言語と理解領域との関連指導」とし、ここには、「序」と五つの実践を配した。

 実践のすべてが、「歳時記的方法」「風土記的方法」を色濃く担っているというものではない。けれども、実践的精神の根底には、その意識がはたらいており、それは、学習者の息づかいともなっている。

 音声言語の学習指導に関するすぐれた実践・研究の集積は、ようやく豊かなものになりつつある。その実践・研究の殿堂構築に、本書も、「黄金の釘一つ打つ」いとなみとなることを念じてやまない。


  1997(平成9)年12月   兵庫教育大学教授 /中洌 正堯

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