- まえがき(1) 石井庄司国語教育学研究基金による論文集刊行について /湊 吉正
- まえがき(2) 国語科教師教育の進展のために /大槻 和夫
- 序章 国語科教師教育をめぐる問題
- /田近 洵一
- 1 国語科教師教育とは何か
- 2 国語科教師教育の内容と方法
- 3 教科教育学(国語科教育学)と教師教育
- 第一章 国語科教師教育と国語教育学
- 一 国語科教師における国語教育学の目的と体系 /大槻 和夫
- はじめに
- 1 教師教育カリキュラムにおける「国語教育学」の位置と目的―広島大学教育学部教科教育学科国語教育学専修の場合―
- 2 「国語教育学」の目的と体系(試論)
- おわりに
- 二 教師教育の観点から見た国語教育学の研究 /松崎 正治
- 1 問題設定
- 2 教師教育研究への関心の高まり
- 3 教育の捉え直しと教師教育
- 4 教師教育の観点から見た国語教育学研究
- 三 国語教育学における教師教育の困難性 /望月 善次
- 1 はじめに=教師教育を回避した国語科教育学
- 2 日本の大学における教育の位置
- 3 <教師>教育という困難さ--師範教育という亡霊
- 4 個別教科教育学としての国語科教育学
- 5 生成途上にある国語科教育学
- 四 「国語教育学」教育はいかなる教師像の実現をめざすべきか /鶴田 清司
- 1 国語科教師教育をめぐる基本的な問題―教職志望学生と現職教師の両面から―
- 2 国語科教師教育の目標
- 3 大学での私の実践―「国語教育学」教育の事例―
- 五 対話的な授業の構成と教師教育の課題 /佐藤 学
- 1 専門家教育としての教師教育=二つのモデル
- 2 教職の専門性の発達について「実践的思考様式」の五つの特徴
- 3 教師教育における事例研究
- 4 「出来事」としての教室の経験
- 第二章 国語科教師の授業創造―教師教育の視点からの授業論
- 一 国語科教師の授業創造―力量形成の視点から― /藤原 和好
- 1 はじめに
- 2 教育における科学と技術
- 3 トルストイの実践
- 4 子どもと教師の亀裂の要因
- 5 子ども把握の観点
- 6 おわりに
- 二 教師教育のための授業研究 /高木 展郎
- 1 授業研究のスタンスの転換
- 2 教師教育としての授業研究
- 3 教師の経験的な基盤に依拠した授業研究
- 三 「授業」から「学習指導」へ /浜本 純逸
- はじめに(要旨)
- 1 国語科授業論の歩み
- 2 授業から学習指導へ
- 3 これからの学習指導
- 4 学習者中心の学習指導
- おわりに
- 四 国語科教師教育としての授業構想
- ―「指導案」の背後にあるもの― /山端 清英
- はじめに
- 1 国語科の授業の設計と実態調査
- 2 国語科の授業の設計と「授業実践のための観点」
- おわりに
- 五 国語科教師教育としての実践場面の研究 /有沢 俊太郎
- 1 はじめに
- 2 研究カンファレンスの要点
- 3 研究カンファレンスの実際―指導・支援と主体性の問題
- 4 国語料教師教育の一環としての研究カンファレンス
- 六 説明的文章教材の授業研究 /広瀬 節夫
- はじめに
- 1 授業構想のための研究目的の設定
- 2 授業構想・展開による授業研究の経過
- 3 授業評価による研究成果の検討
- おわりに
- 七 国語科教師の教材研究における専門知と実践知
- ―芭蕉の二つの発句をめぐって― /松本 修
- 1 「古池や蛙飛こむ水のをと」の句をめぐって
- 2 「梅若菜まりこの宿のとろゝ汁」の句をめぐって
- おわりに
- 第三章 国語科教師教育の現状と課題
- ―国語科教師の力量形成上の諸問題
- 一 模擬授業を核とする実践的教育力の育成 /益地 憲一
- 1 国語科教師教育の現状と育てるべき実践的教育力
- 2 教育実習の役割
- 3 中等国語科教育の役割と指導内容
- 4 今後の課題
- 二 教師の表現力育成の内容と方法 /中洌 正堯
- 1 「教師の資質としての表現力」の意義
- 2 「教師の資質としての表現力」の規定
- 3 大学のカリキュラムにおける表現の学習指導
- 4 大学における表現の学習指導の内容と方法
- 三 国語科担当者の指導力形成過程
- ―作文教育実践史の記述を手がかりにして― /中谷 雅彦・前田 真証
- はじめに
- 1 作文教育実践史記述例について
- 2 作文指導力形成過程の様相
- 終わりに
- 四 国語科教師教育の充実を図るための実践的研究
- ―学部・附属国語科連絡協議会の取り組みを中心に― /世羅 博昭・橋本 暢夫・余郷 裕次
- はじめに
- 1 学部・附属国語科関係教官による共同研究のねらい
- 2 国語科教育実践力とは何か
- 3 国語科教師教育カリキュラムと指導内容の系統化
- 4 学部・附属共通に指導すべき内容は何か、また、それぞれが個別に指導すべき内容は何か
- おわりに
- 五 教育現場から見た教師教育の問題 /金子 守
- 1 はじめに
- 2 教師教育―教育実習の場合―の問題点とその解決に向けて
- 3 終わりに―教育実習のねらいやあり方について
- 六 教師教育としての「初等国語科教育法」の授業 /大田 勝司
- 1 「初等国語科教育法」の位置
- 2 「初等国語科教育法」の授業内容
- 3 「初等国語科教育法」の授業の実際
- 4 「初等国語科教育法」の授業組織
- 5 「初等国語科教育法」の授業の課題
- 七 教師の基礎素養の育成と保持―漢文教育力を中心に /谷川 英則
- はじめに
- 1 漢文教育の現状
- 2 漢文教育の見直し
- 3 漢字文化との繋がり
- おわりに
- あとがき……石井庄司国語教育学研究基金による論文集編集・刊行委員会
まえがき(1)
〜石井庄司国語教育学研究基金による論文集刊行について
全国大学国語教育学会前理事長 /湊 吉正
全国大学国語教育学会は、昭和四九年、「全国大学国語教育学会石井賞規定」を制定したが、それから平成七年まで、その間一部改定、全面改定は経たけれども、この「規定」により「全国大学国語教育学会石井賞」を設定し運用してきた。その間において、多くの学会員の方々が受賞されてきた。このような「石井賞」の設定と運用は、初代理事長石井庄司先生から毎年多額のご寄付をいただいてきたことにもとづくものであるが、「規定」の「1」の前半部「本学会は、顧問石井庄司博士の学業に因み、本学会員の国語教育に関する研究を顕賞し、奨励するために、……」という趣旨は、その間において応募・推薦にかかわった方々、選考委員会の委員となった方々のご努力・ご尽力によって十分に生かされ、「石井賞」の設定と運用は、本学会の発展の上に大いに貢献してきたとみられるのである。
一方、本学会は、昭和二五年の結成以来今日まで、年刊の学会機関誌「国語科教育」をはじめ、数多くの講座やシリーズ、さらには主として大学でのテキスト用に編集された単行本等、学会員の研究成果を反映した企画ものを編集・刊行してきた。学会員から投稿された研究論文を中心に編集されてきた「国語科教育」は、昭和二七年に第一号が出され平成八年には第四三号が出されているが、近年ますます充実の度を高めていることは心強いかぎりである。学会員の要望に応えるべく年二回刊行の方途もこれまで探られてきたが、さまざまな制約もあり、それはまだ実現に至っていない。
企画ものについては、単行本の方は、関係の方々のご尽力により『新国語教育学研究』(平成五年、学芸図書)等が編集・刊行され好評をもって迎えられているが、シリーズの方は、昭和五八年のその第一巻『国語学力論と実践の課題』以後数年にわたって編集・刊行され高く評価された『国語科教育研究』全五巻シリーズ(明治図書)の後は、関係の方々の間で鋭意検討されながらも明確な形としては顕現せずに今日まで経過した。
かくして、私の理事長在任時期(平成五年四月−平成八年三月)を通じて、国語教育学の多様な領域のテーマによる研究成果を発表し公刊する場の拡大充実を要望する学会員からの声が、一段と高まってきた。さらに、本学会が毎年二回夏、秋に開催してきた研究大会における「課題研究」をめぐる研究成果を編集し公刊することは、とりわけ本学会に課せられた緊要な課題とみられてきた。
本学会においても、このような状況に対処し、またこのような課題の解決への方向に歩を進めるための方策について、種々検討を重ねてきた。そしてその検討の過程の中で、「石井賞基金の活用の変更」ということが浮かび上がってきた次第である。すなわち、これまで「石井賞」の設定と運用のためにあてられてきた、石井庄司先生のご寄付による基金を、「石井庄司国語教育学研究助成金」として、全国大学国語教育学会および学会員の研究活動の助成にあてることに変更するという原案がまとめられることになったのである。
これにともない、本学会の活動の中で重要な意義をもち、本学会の発展に貢献するところ大であった伝統ある「石井賞」の設定と運用が行われなくなることは、たいへん心のいたむことであるが、それを超えた事情と理由によることとしてぜひご了解いただきたいところである。
かくして、石井庄司先生のご同意をいただき、常任理事会、理事会での慎重な審議を経て、総会で決定されて以後の経緯は、「あとがき」のところで述べられているとおりである。
本学会の開催してきた研究大会の「課題研究」のテーマの中でも、ほんとうに長い期間にわたる継続的テーマであった「国語科教師教育」が、本書の大テーマとして取り上げられ、そこに多くの学会員の方々の貞越した論文が集中的に配列されている状況は、まさに壮観である。
本書の成立の基盤をつくってくださった石井庄司先生にあつく御礼申しあげたい。「石井基金」の運用委員、本書の編集刊行委員の方々のご尽力に深く感謝申しあげたい。特に編集刊行委員長として本書の企画・編集・刊行をを主導してくださった田近洵一先生、現本学会理事長として本書の編集・刊行を堆進してくださった大槻和夫先生に深く感謝申しあげたい。本書の成立に広くそれぞれのお立場からご尽力・ご協力くださった学会員の方々にあつく御礼申しあげたい。そして、刊行を引き受けてくださった明治図書の江部満氏に深く感謝申しあげたい。
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- 明治図書