- はしがき
- T コミュニケーション作文指導の今日的意義
- U コミュニケーション作文指導の原理と方法
- 一 コミュニケーション作文の原理
- 1 言語の機能と文章のジャンル
- 2 コミュニケーション作文と書く場の条件
- 3 コミュニケーション作文の指導過程
- 二 コミュニケーション作文の技術と方法
- 1 コミュニケーション作文とコンポジション技術
- 2 コミュニケーション作文の技術
- 3 コミュニケーション作文技術の指導系統
- 三 コミュニケーション作文指導の方法
- 1 コミュニケーション作文指導の原理
- 2 コミュニケーション作文指導の方法
- 3 コミュニケーション作文指導の評価と活用
- V コミュニケーション作文指導の実際
- 一 小学校における実践
- 1 低学年の事例
- 1年「たのしかったことを いえのひとに つたえよう」
- 1年「わたしのわくわくカレンダーしゅうをつくろう」
- 2年「おもちゃの作り方をおしえるよ」
- 2年「おはなしマップを作ろう」
- 2年「はがきで お礼の気持ちを伝えよう」
- 2年「メッセージボックスをおくろう」
- 2年「『スイミー』の感想を鉛筆対談で話し合おう」
- 2 中学年の事例
- 3年「一の二・三の二 なかよし二組の会を開こう(しょうたいじょう作り)」
- 3年「『ヤドカリのすみかえ』について調べたことをおうちの人に教えてあげよう」4年「わたしのすすめるこの一さつ」
- 4年「『白いぼうし』の松井さんやお母さんになって手紙を書こう」
- 4年「ごんに、はげましの手紙を書こう」
- 3 高学年の事例
- 5年「『五の一を考える会』を開こう(こんな学校ならいいな)」
- 5年「『五年二組 仲間ブック』をつくろう」
- 6年「扶餘のお友だちに『太宰府』を紹介しよう」
- 6年「ひとり暮らしの老人の方と文通をしよう」
- 6年「みんなで考え合おう(日記から一枚文集へ)」
- 二 中学校における実践
- 1 1年生の事例
- 「とっておきの自分を紹介しよう」
- 「一年間の思い出を新聞にしよう」
- 「一人暮らしの年長者へ励ましの手紙を書こう」
- 2 2年生の事例
- 「『中2のための小冒険カタログ』をつくろう」
- 「バーチャル(仮想)旅行を楽しもう」
- 「『生活を科学する』――調べて発表しよう」
- 3 3年生の事例
- 「お笑いはいじめと関係があるのか――私にも言わせてください」
- 「外国の人に日本の言葉や文化を紹介しよう」
- 「クラスの悩み相談室」
- W コミュニケーション作文指導の指針と留意点
- 一 コミュニケーション作文指導の指針
- 二 コミュニケーション作文指導上の留意点と指針――実践例をふまえて
- 1 コミュニケーション作文と年間指導計画の策定
- 2 コミュニケーション作文の場の設定
- 3 単元的展開と年間指導計画の策定
- 4 評価活動(形成的評価)を位置づけた活動過程
- あとがき
はしがき
最近、教育界のみならず一般社会においても、コミュニケーション能力と技術・方法の習得の重要性が話題とされるようになってきている。言語の本質的機能から見ると、言語技術の基本となるものは、コミュニケーション技術である。コミュニケーション作文は、すでに昭和二十年代から実践されてきている。それは、本書の第一章で略述している通りである。
にもかかわらず、今日なぜコミュニケーション作文の必要性が論議されるようになったのか。それは、現代の時代性・社会構造の変化に起因する人間関係、社会関係の複雑化、変動の激化に対応する能力、技術の社会的要求が呼び起こしたものである。高度に発達した科学技術に支えられた情報社会は、ハード面はもちろん、ソフト面についても、その社会に生きる人間に情報活用の知識と技術、能力を身につけることを要求する。ハード面の情報機器操作力については、必ずしも国語科が担当しなければならないというわけのものではない。しかし、ソフト面については、国語科の理解指導、表現指導の両分野の重要な指導内容となる。コミュニケーション活動の観点からは、多様にしかも洪水のように送り出されてくるメッセージを、自己のもつ問題を解決したり、目的を達成したりするために、処理し、活用する方法や技術を習得することが必要となる。
情報社会におけるコミュニケーションの方法と技術について、波多野完治氏は、『現代レリック』(大日本図書一九七三)において、アメリカで開発、研究されたレトリカル・コミュニケーションを紹介して、これからの話しことば教育に取り入れるべきことを提唱しておられる。コミュニケーションの方法としてレトリックを導入し、伝えるべき内容を生み出し、それを説得的に伝達する方法と技術とを指導内容に位置づけるということである。これは作文指導においても必要なことである。本書においては、この観点からの実践研究には十分に進むことができず、今後の課題として残しているが、説明文の理解指導の発展的学習として取り組まれた事例には、その一端を見ることができる。波多野氏は、高度に情報化した社会では、受け手に説得的レトリックを用いて伝達するだけでなく、自らの伝達内容を創造、構成する源となった事実についても的確にまとめて伝達し、その上で、説得的コミュニケーションを図ることが大切であると述べておられる。レトリカル・コミュニケーションの指導に示唆するところの大きいことばである。
現代はまた、国際化時代と言われる。異文化理解を前提としたコミュニケーションの技術と方法も、今日、重要な指導内容となっている。これについては、本書に小学校と中学校との一事例ずつを掲げている。この指導内容と方法についても、今後に期さなければならない課題は多い。
現代の重要なコミュニケーション能力として求められるものに、複雑な社会における人間関係の開拓、構築、調節の力がある。これは、小学校や中学校の段階ではまだ不必要なもののように思われがちであるが、今の子どもたちは、友だちをつくることが下手であるとか、すでにできているグループや遊び集団に加わることを求めることばをもたないとか、そのために疎外状態に置かれている子どもが多く見受けられるといったことを聞く。仲間づくり、人間関係づくりの問題が、単にことばのレベルだけで解決できるものではないという意見はもっともなことである。しかし、人間関係づくりの本質的な方法は、ことばによるものが基本であろう。集団づくりの一環に位置づけて、自分をわかってもらうこと、仲間を理解することをことばによって行う方法を学習させることは、人間関係づくりのコミュニケーション技術の習得に重要な位置を占めている。この方法と技術も、実践を通してさらに開発されなければならない課題である。本書も、それに着手したばかりである。
言語の通じ合いの機能を生かしたコミュニケーション作文は、昭和二十年代から一貫して実践されてきている。ただ、それが主流となった時期、傍流となった時期といった時代によって占めた位置に差が生じてきている。学校生活、学級生活、学校と家庭との関連的生活のさまざまな機会と場を生かしたコミュニケーション作文の指導は、今日、その重要性を増してきている。特に、前述の三課題の解決の基礎に培う指導として、今後、ますます力を入れて行くことが求められている。本書においては、この分野の事例がもっとも多く取りあげられている。
本書は、大きく、理論編、実践編、実践上の指針、留意点編の三部によって構成されている。実践事例は、編者の理論的な考え方を提示したうえで、実践家に、これまでの実践を再検討したり、新たに実践を試みたりしてまとめてもらったものである。指針と留意点については、地域のリーダーとして活躍しておられる方々に、実践事例にもとづいて、コミュニケーション作文指導のあり方を述べてもらった。
まだまだ、不十分なところ、実践を重ねて解明すべきこと、精錬しなければならない点が多く課題として残っている。諸賢のご指導をいただくことができれは幸いである。
本書をまとめることをお勧めいただいた江部満氏には、お約束した時期に大幅に遅れたにもかかわらず、心広くあたたかく見守っていただき、感謝に堪えない。本書を世に出してくださったことに心よりお礼を申しあげる。
一九九八年一月三〇 編著者 /大西 道雄
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明治図書















