総合的学習を支え活かす国語科4
受信型メモ・発信型メモの技術

総合的学習を支え活かす国語科4受信型メモ・発信型メモの技術

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受信型メモを支える10の技術、発信型メモを支える10の技術を事例で解説。さらに受信、発信のメモ技術を高める授業づくり各型ごとに事例で分析解説して新しい方法を示す


復刊時予価: 2,728円(税込)

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電子書籍版: なし

ISBN:
4-18-629403-8
ジャンル:
国語
刊行:
対象:
小・中
仕様:
A5判 184頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

目次

もくじの詳細表示

まえがき
T 〈メモ〉には二つの型がある
一 〈メモ〉は忘れるために取る
1 〈メモ〉は忘れないために取るのか?/ 2 〈メモ〉をすれば忘れられる
二 「総合的学習」には〈メモ〉が不可欠である
1 一見バラバラの活動だが……/ 2 〈メモ〉なくして「総合的学習」は成立しない
三 〈メモ〉を取ってはいるが〈メモ〉が取れてはいない
1 メモしたはずなのに……/ 2 相手は待ってはくれない
四 〈メモ〉には「受信型」と「発信型」がある
1 〈メモ〉を取るにも技術が必要である/ 2 〈メモ〉には二つの型がある
U 〈メモ〉には四つの条件がある
一 野球のスコアブックは〈メモ〉の理想型である
1 アナウンサーは「記憶の達人」なのか?/ 2 スコアブックは〈メモ〉の技術の宝庫である
二 〈メモ〉の目的は「再現」である
1 そもそもメモは何のために取る?/ 2 再現できないメモは「ゴミ」である
三 〈メモ〉は素速く簡潔に組み立てる
1 「素速く」「簡潔に」は死活問題である/ 2 すっきりと視覚に入ればすっきりと伝えられる
V 〈受信型メモ〉を支える十の技術
一 〈聞き取りメモ〉で速記性を鍛える
1 〈聞き取りメモ〉にも二つの種類がある/ 2 どの文字で書くのが速い?/ 3 英語を知ってると、もっとお得?/ 4 他人は読めなくてもよい
二 〈聞き取りメモ〉で簡潔性を高める
1 何年何月何日何時何分何秒?/ 2 自分の感情をメモする/ 3 言葉だけでは通じにくい
三 〈聞き取りメモ〉で構造性を磨く
1 情報にはレベルがある/ 2 いくつの情報がとらえられたか/ 3 断片を結びつける/ 4 時間と順序を記録する
W 〈発信型メモ〉を支える十の技術
一 〈イメージマップ〉で発想を広げる
1 あれ、何の話だったっけ?/ 2 たどってみるとつながっている/ 3 今日しなければならないことは?/ 4 シンプル・イズ・ベスト!
二 〈ポスト・イット〉で材料を整理する
1 〈イメージマップ〉の不備を補う/ 2 材料収集から整理へ/ 3 優先順位を決定する
三 〈マルチプランシート〉で構成を整える
1 〈ポスト・イット〉の限界を知る/ 2 「内容」とともに「構成」も仕上がる/ 3 〈マルチプランシート〉を用いて情報を発信する/ 4 〈発信型メモ〉は保存されてこそ価値がある
X 〈受信型メモの技術〉を高める授業づくり
一 「聞き取りビンゴ」で単語メモに変身 /南山 潤司
1 聞き取りメモはほとんどが文メモになる/ 2 「書き込みビンゴメモ」で低学年でも楽しく取り組める/ 3 「聞き取りビンゴメモ」と「ピラミッドメモ」で単語メモの基礎を作る/ 4 単語メモはスピーチ原稿に発展する
二 要約型聞き取りメモ /大内 哲夫
1 留守番電話にメッセージを吹き込む/ 2 活動の要領を把握させる/ 3 メモの必要性を実感させる/ 4 メモの取り方を学ばせる/ 5 必要な情報のみをメモさせる/ 6 最後は見事パーフェクト!
三 情報型聞き取りメモ /藤原 友和
1 〈情報型聞き取りメモ〉を規定するのは「目的」である/ 2 「係の仕事」で鍛える/ 3 判断を支えるのは「キーワード」だ/ 4 キーワードは「固定的」ではない
四 目指せ! 書記の達人〜議事録メモ /中村 貴子
1 書記は大変!/ 2 書記の仕事って何?/ 3 書記なんてこわくない!
五 マップメモでメタ認知を促す〜論点整理メモ /藤澤 賢治
1 まずはやってみよう/ 2 マップメモの取り方を考えよう/ 3 全員の意見をメタ認知しよう
Y 〈発信型メモの技術〉を高める授業づくり
一 買い物メモをつくろう /太布 智子
1 不十分なメモ/ 2 「買い物リスト」をつくろう/ 3 使いやすい買い物リスト
二 〈樹形図〉メモを活用したスピーチ /堀 裕嗣
1 単語メモが必要だ/ 2 〈樹形図〉フォーマットで単語メモを取る/ 3 〈樹形図〉フォーマットでスピーチ構想を立てる/ 4 構想したスピーチのメモを取り合う
三 〈マルチプランシート〉を活用したスピーチ構想メモ /森  寛
1 「マル秘ビデオ」が手に入りました/ 2 「友人代表のスピーチ」に挑戦!/ 3 スピーチの極意、教えます/ 4 「長所」と「エピソード」をつなぐ/ 5 〈マルチプランシート〉に書き込む/ 6 なぜ〈マルチプランシート〉を使うのか/ 7 スピーチの場は二度、三度設ける
四 〈マルチプランシート〉で様々に発信させる /板橋 友子
1 消える〈ポストイット〉/ 2 集中度アップのビデオ鑑賞/ 3 書けない子どものためにも/ 4 生活体験文や意見文の情報集めとして
五 インタビュー取材コンテ /小木 恵子
1 インタビューの目的を明確にさせる/ 2 インタビューには準備が必要だ!/ 3 相手の反応を予測して「取材コンテ」を書こう/ 4 「メモの技術」を使って〈インタビュー取材コンテ〉をつくる
あとがき

まえがき

 私たちは、日常生活の中で様々な場面でメモを取る。また、私たちは様々な場面で子どもたちにメモを取らせる。

 「メモを取る」という行為は、私たちの生活の中で誰もが行っている行為である。

 しかし、一方で、私たちは、「メモを取る」ことに関わって、次のような失敗を経験している。

 例えば、「聞いているときには念入りにメモを取っていた。しかし、時間をおいてメモを見直したとき、メモをもとに聞き取った内容を思い出すことができない」という経験。

 例えば、「話の内容を一字一句聞き漏らすまいと必死にメモを取った。しかし、メモを見直してみると、大事なことをメモしたはずなのだが、何が大事な事柄だったのかが思い出せない」という経験。

 そして、このような失敗は、目の前の子どもたちも同じように経験している。

 私たちは、子どもたちにしっかりメモを取ってほしいときに、「よーく話を聞いて、しっかりメモを取りなさいよ」などと言う。しかし教師がいくらこのように言っても、子どもたちのメモの取り方が改善されるわけではない。

 なぜか。どういう状況のとき、どのようなメモを、どのように取ればいいのかを教師自身が意識していないからである。仮に意識していたとしても、どういう状況のとき、どのようなメモを、どのように取ればいいのかということについて、これまでほとんど指導されてこなかったからである。現に、指導する立場の私たちでさえ、「メモはこういう風に取るんですよ」ということを指導された経験がないではないか。

 ではなぜ、これまで、メモの取り方の指導がなされてこなかったのか。理由はいろいろと考えられるが、「そんなことは経験で身につくものだ」という発想があったからではないか、と私は考える。

 「総合的学習」の活動では、様々な場面で子どもたちがメモを取る必要に迫られる。地域の人にインタビューするとき、討論会で論点を整理するとき、発表会での発表の仕方をグループ内で検討するとき、などなど。どんな活動を想定しても、「メモを取る」という行為を抜きにして「総合的学習」の活動を行うのは難しい。しかし、活動の主体者である子どもたちの多くは、満足にメモを取る経験をしてはいない。また、「総合的学習」の活動に限らず、「メモを取る」という行為は、「生きる力」の一つとしてきちんと身につけておきたいものの一つでもある。

 以上のことを念頭に置きながら、本書は執筆された。

 本書の構成は、次のようになっている。

 T章からU章では、メモの質の違いによる分類と効果的なメモの条件について述べた。V章からW章では、メモを取るための技術について述べた。X章からY章では、メモの技術を高める授業実践を報告している。

 本書で私が主張しようとするのは、次の二点である。

 一つは、「〈メモ〉は、その目的の違いや質の違いに応じて、次の二つに大別できるのではないか」ということである。

・他者から得た情報を記録するときに取るメモ。情報を「受信」するときに取るメモ。

・知的生産のために取るメモ。情報を「発信」するときに取るメモ。

 本書では、前者を〈受信型メモ〉、後者を〈発信型メモ〉と呼んでいる。

 もう一つは、「効果的にメモを取るためには、メモを取るための技術を身につけることが大切ではないか」ということである。

 本書では、「〈受信型メモ〉を支える技術」と「〈発信型メモ〉を支える技術」をそれぞれ十ずつ提示した。この技術の抽出にあたっては、私たちの経験が大きな基盤となっている。

 どういう経験か。

 私たち自身がうまくメモを取れない、ということである。私たち自身が、前述のような失敗をこれまで数多く経験している。自分自身の失敗を振り返って、「メモを取るときにこういう技術を身につければいいのではないか」という考えのもと、技術を抽出した。そういう意味で、本書で抽出した技術は、現段階で私たちが必要と考えたものでもある。

 まだまだ不十分なところが多いのではないか、とも思うのだが、現段階で出せる精一杯のものをしたためたつもりである。

 読者の皆さんに少しでも役立てていただければ、また、ご批判をいただければ幸いである。


  平成十四年四月十日   研究集団ことのは /對馬 義幸

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