総合的学習を支え活かす国語科3
聞き方スキルを鍛える授業づくり

総合的学習を支え活かす国語科3聞き方スキルを鍛える授業づくり

投票受付中

書評掲載中

子どもたちにとって必須のアイテムである聞き方スキルを傾聴態度スキル、要約聴取スキル、情報聴取スキル、批判聴取スキルに分けそれぞれのスキルを鍛える授業づくりを示す


復刊時予価: 3,476円(税込)

送料・代引手数料無料

電子書籍版: なし

ISBN:
4-18-629309-0
ジャンル:
国語
刊行:
4刷
対象:
小・中
仕様:
A5判 288頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

目次

もくじの詳細表示

まえがき
T 「聞くこと」を能動的な行為に変えよう
/堀 裕嗣
一 黙って聞けばよいのか
1 静かにしろ〜!/ 2 「〈静かに聞くこと〉=〈しっかりと聞くこと〉」ではない
二 姿勢よく聞けばよいのか
1 姿勢を正しなさい!/ 2 「〈姿勢よく聞くこと〉=〈しっかりと聞くこと〉」ではない
三 心で聞けばわかるのか
1 お話は「耳」と「目」と「心」で聞きます/ 2 「〈心〉で聞く」は信頼関係に基づく/ 3 〈心〉で聞けばわかるというものではない
四 「聞くこと」にも〈スキル〉がある
1 「聞くこと」は態度ばかりが重視される/ 2 「聞くこと」は責任を伴わない/ 3 「聞くこと」は能動的な行為である/ 4 〈聞き方スキル〉には四段階がある
U 傾聴態度
──「聞くこと」の基礎技術 /中村 貴子
一 よい聞き手は〈傾聴〉する聞き手である
1 耳を傾ければ〈傾聴〉か?/ 2 〈傾聴〉にはトレーニングが必要である
二 〈傾聴〉を構成する三つの動作を知る
1 動作が会話に〈力〉を与える/ 2 嫌な思いをさせる
三 〈自己顕示欲〉を抑える
1〈傾聴態度〉は持続するか/ 2 白紙の状態で聞く
四 「YES」を言わせる質問が会話に〈流れ〉をつくる
1 会話をふくらませるにはコツがある/ 2 主導権を握るのは〈聞き手〉だ!
五 〈傾聴態度〉を鍛える授業づくりの視点
1 〈傾聴〉されているかどうかは態度でわかる/ 2 〈傾聴態度〉を鍛える授業づくりの視点
V 要約聴取
──「聞くこと」の基本技術 /堀 裕嗣
一 よい聞き手は〈要約〉できる聞き手である
1 〈再話〉させることは非現実的である/ 2 〈要約〉させることこそが現実的である/ 3 指定時間内に〈要約〉することは意外に難しい/ 4 「聞くこと」の授業に必ず視聴覚機器を導入しよう/ 5 〈理解〉とは自分なりの〈表現〉ができたことを意味する
二 下手な話を〈要約〉できる聞き手ほど能力が高い
1 世の中には下手な話の方が多い/ 2 話の〈核〉だけを取り出す/ 3 「中心」と「付加」とを聞き分ける/ 4 「事実」と「意見」とを聞き分ける/ 5 世の中には「純然たる事実」や「純然たる意見」などあり得ない/ 6 最終目標は「中心と付加」「事実と意見」の関係をとらえることである
三 〈要約聴取〉の核は「メタ認知能力」である
1 言葉には〈レベルの違い〉がある/ 2 〈レベルの違い〉を体感させる/ 3 文にも〈レベルの違い〉がある/ 4 文の〈レベルの違い〉も単語でとらえるべきである/ 5 〈要約聴取〉の核は「メタ認知能力」である
四 〈要約聴取能力〉を鍛える授業づくりの視点
1 聞き取りメモでは、単語を中心にメモを取る/ 2 フォーマットを提示して〈要約聴取能力〉を鍛える/ 3〈要約聴取〉フォーマットでスピーチ構想を立てる/ 4 構想したスピーチのメモを取り合う/ 5〈要約聴取能力〉を鍛える授業づくりの視点
W 情報聴取
──「聞くこと」の応用技術 /堀 裕嗣
一 よい聞き手は〈必要な情報〉のみを聞く聞き手である
1 日常生活では〈情報聴取能力〉が必要である/ 2 目的がはっきりしていれば、いかなる話も益になる/ 3 話し方の技能を分析することも〈情報聴取〉である
二 〈情報聴取能力〉が「伝え合う力」を高める
1 新時代の学力──伝え合う力/ 2 「伝え合う力」の要素──五つの言語意識/ 3 よい例と悪い例とを聞き比べる/ 4 語順による違いを実感する/ 5〈情報聴取能力〉は「伝え合う力」の基本である
三 〈情報聴取能力〉を鍛える授業づくりの視点
1 〈必要のない情報〉はただのゴミである/ 2〈情報聴取〉の核は「コンセプト」である/ 3 教材は「具体例」をふんだんに、たっぷりと用意する/ 4〈情報聴取〉の成果を発信して交流する/ 5〈情報聴取能力〉を鍛える授業づくりの視点
X 批判聴取
──「聞くこと」の発展技術 /堀 裕嗣
一 よい聞き手は〈批判的〉に聞いて〈自分の目的〉を達する聞き手である
1 感情的な「批判」が横行している/ 2 いかなる話にも話し手の意図がある/ 3 聞きながらも〈客観視点〉を持つことが重要である
二 〈主材〉と〈主想〉とを聞き分ける
1 話の内容には〈裏〉がある/ 2 話の内容には〈主材〉と〈主想〉がある/ 3 〈主材〉〈主想〉の聞き分けは「対話」で行う
三 〈批判聴取能力〉を鍛える授業づくりの視点
1 データや具体例を疑う/ 2 短い台詞で〈批判聴取〉を訓練する/ 3 数字や誇張表現の効果を知る/ 4 〈批判聴取能力〉は発信させてこそ定着する/ 5 〈批判聴取能力〉を鍛える授業づくりの視点
Y 〈聞き方スキル〉を鍛える授業づくり
A 〈傾聴態度〉を鍛える授業づくり
一 よい聞き手になるために /太布 智子
1 悪い聞き手が話し手を怒らせる/ 2 相槌のレパートリーを増やす/ 3 よい聞き手が会話をはずませる
二 あなたは新聞部員 〜インタビューと編集会議で〈聞く力〉を鍛える〜 /藤原 友和
1 情報を持たせて〈白紙の状態〉にさせない/ 2 さらなる伏線で〈傾聴態度〉を持続させない/ 3 失敗から気づかせる/ 4 「編集会議」で発展的に学習する/ 5 よい〈聞き方〉ができていた?
B 〈要約聴取能力〉を鍛える授業づくり
一 単語メモを活用したスピーチの要約 /南山 潤司
1 読み取りの要約よりも簡単にできるスピーチ要約/ 2 スピーチの要約にはいくつかの手順が必要である/ 3 大切な単語はどのようにして選ばれるのか/ 4 新聞の投書のような意見文を要約して題をつけるのもこうやれば簡単
二 「事実」と「意見」を聞き分ける /森  寛
1 ウォーミングアップから始める/ 2 「事実」と「意見」の定義を伝える/ 3 例題で聞き分けに挑戦する/ 4 応援演説を聞いて「事実」と「意見」を聞き分ける
C 〈情報聴取能力〉を鍛える授業づくり
一 漢和辞典ってどのように使うの? /藤澤 賢治
1 「疎」の訓読みは?/ 2 さあ、どの索引を使おうか/ 3 必要な説明か、不必要な説明か/ 4 さあ、実際に説明しよう
二 緊急事態発生!――何をどう伝える?―― /中村 貴子
1 先生、大変です!/ 2 何をどう伝えるか/ 3 伝えたい〈情報〉は何? 訊きたい〈情報〉は何?/ 4 事件を目撃したら……/ 5 確かな〈情報〉と曖昧な〈情報〉
三 みんなに伝えよう「札幌ドーム」のA・B・C /小木 恵子
1 「カバは何回?」〜集中して聞こう/ 2 〈情報聴取〉とメモ技術は切り離せない/ 3 「札幌ドーム」に行こう! 〜これが最終目標だ/ 4 「札幌ドーム」のA・B・C〜互いに評価しながら報告し合おう
四 連絡事項から自分に必要な情報だけを聞き取ろう /對馬 義幸
1 忘れたら「おやつ抜き」!?/ 2 あなたがしなければならないのは?/ 3 自分の仕事をチェックしよう
D 〈批判聴取能力〉を鍛える授業づくり
一 小学生に〈批判聴取〉を意識させる /大内 哲夫
1 「読む」と気づく/ 2 「ひきつけ言葉」/ 3 文を加工させる
二 批判聴取能力不足に気づく /板橋 友子
1 何でもハイハイと聞かない/ 2 テレビショッピングから学ぶ
三 ニュース原稿を使って批判聴取能力を鍛える /田中 幹也
1 ニュース原稿をつくる/ 2 実際のニュースと比較する/ 3 ニュースは構成されている
四 「朝の会」を改善しよう! /石川 晋
1 〈批判聴取能力〉は二十一世紀を「生きる力」である/ 2 「朝の会」を批判的に聞き取ろう/ 3 〈批判聴取〉を鍛える授業づくりの視点
あとがき

まえがき

 「学びの共同体をつくろう」というスローガンをよく聞く。

 自分の意見を表現し合う環境づくりとともに、それを認め合う雰囲気づくりを強調した概念である。

 しかし、いくら他人の間違いを指摘せずに肯定し合う雰囲気をつくったとしても、それは学力向上には結びつかない。毎日を同じ空間で過ごす者同士の「甘え」が許されるからだ。

 実は「学びの共同体」づくりにとって、最も必要なのは次である。


 厳しくも温かい「裁き合い」


 つまり、「お互いに評価し合うこと」である。

 そのためには、〈聞き方スキル〉が子どもたちにとって必須のアイテムとなる。

 本書において、私たち「研究集団ことのは」は、〈聞き方スキル〉として具体的に次の四段階を挙げている。

(1) 傾聴態度スキル

 これは、「聞くこと」においてすべての基礎となる、話し手の意図に即して聞くための「態度」である。「おしゃべりをしないで聞く」「姿勢を正して聞く」「心で聞く」などをはじめとして、「肯定的に聞く」「相手の立場を尊重しながら聞く」などが挙げられる。

(2) 要約聴取スキル

 これは、ごくごく一般的な「聞くこと」を想定して、話の内容をまるごと聞き取ることを意味する。「まるごと聞き取る」といっても、「再話」が目標ではない。話の内容を〈要約〉して、第三者に説明してあげられるような能力を想定している。

(3) 情報聴取スキル

 これは、様々な聞く場面において、聞き手がその話の中から自分に必要な情報のみを取り出して聞き取ることを意味する。つまり、まるごと聞くのではなく、ピンポイント的な聞き方だ。聞き手の目的が先行するので、かなり能動的な聞き方といえる。

(4) 批判聴取スキル

 これは、話を聞く場合に、自分のものの見方や考え方と対比しながら、共通点や相違点を検討したり、データや具体例の信憑性を検討したりしながら、批判的に聞き取ることを指す。いわば、能動的な聞き方の最たるものといえる。情報過多の時代には必ず必要となる能力である。

 こういった〈聞き方スキル〉を、国語科をはじめとするすべての教科において、徹底して鍛える必要がある。〈聞き方スキル〉が、学校では「学力向上」に向けて、社会では「生きる力」として、必ず必要となるからだ。


  二〇〇二年四月十日   「研究集団ことのは」代表 /堀 裕嗣

    • この商品は皆様からのご感想・ご意見を募集中です

      明治図書

ページトップへ