教師力アップのためのコーチング入門
子どもを伸ばすコツと会話術

教師力アップのためのコーチング入門子どもを伸ばすコツと会話術

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今、注目を集めるコミュニケーション技術を教育の場で実践する。

ビジネス界で注目されているコーチングとは、よりよく生きるための、そして相手の自発的な行動を促すためのコミュニケーション術。対話が不可欠な教育現場で、子どもたちの本来もっている生きる力を引き出すためのノウハウが満載。教師力をアップさせたい教師の必読書。


復刊時予価: 2,332円(税込)

送料・代引手数料無料

電子書籍版: なし

ISBN:
4-18-611016-6
ジャンル:
教師力・仕事術
刊行:
9刷
対象:
小学校
仕様:
A5判 128頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

目次

もくじの詳細表示

はじめに
第1章 今,求められる教師力 リーダーシップ・コーチング
1 学校教育に足りないもの,足したいもの
子どもにとって学校とは?/すべての成長は,好奇心から/優先すべきは,いったい何?
2 これからの教師のかたち
自分の想いやビジョンをプレゼンテーション/集中とリラックス/安心と自由のカルチャー/可能性を引き出す質問力/いつでも,どこでも,何からでも学ぶ/抱え込まない,自分を責めない/自分のここが好き/アプローチのバリエーション
3 なぜ学校教育にコーチングが必要か?
気づきを促すアプローチと押し付けのアプローチ
4 教師力という名のリーダーシップ「支援と指導のバランス力」
支援と指導/21世紀型リーダーシップ・スキル
第2章 コーチングはラーニング・エンジンを育てる
1 視点を変える『コーチング』
コーチングとは?/A先生の体験談
2 アプローチのバリエーションを増やす『コーチング』
授業でのアプローチ:よくあるアプローチ例/OKアプローチ・バリエーション例/授業のまとめ・OKアプローチ・バリエーション例
3 生きる力を「身に付けていく原動力」〜ラーニング・エンジン
勉強と学習のちがい/継続的学習の原動力(ラーニング・エンジン)
4 ラーニング・エンジンを育てる3つの要素
1双方向コミュニケーション/2行動と経験/3深い内省/ラーニング・エンジンとサポートの作用点
第3章 子どものエネルギーを引き出すコーチング
1 教育現場のコーチングの基本姿勢
スタンス/考え方/構え方
2 教師:子ども(1:1)アプローチの視点
1:1のコミュニケーション・フロー:つながる/アクティブ・リスニング/観察・洞察/承認/リピート/問いかけ
3 教師:クラス(1:複数)アプローチの視点
1:複数のコミュニケーション・フロー:出来事/関連性・時間・プロセス/心の中
4 子どもの行動に対する基本アプローチ
(1) トラブル行動の対処法〜フィードバックによる解決ステップ
STEP1.2.3.4/NG・OK会話例
(2) トラブル行動の対処法〜質問(問いかけ)による解決ステップ
NG会話例/STEP1.2.3.4.5.6
(3) 常に成長を促すための予防策
承認:NG・OK会話例/誉める:NG・OK会話例
第4章 子どものココロを開くコミュニケーション実践
シチュエーション別NG・OK会話例
1 挨拶をしないとき
2 遅刻をしたとき
3 忘れ物をしてきたとき
4 お礼を言わないとき
5 誰にでも友達言葉で話すとき
6 失敗したとき
7 口を閉ざしてしまっているとき
8 おしゃべりで授業が成立しそうにないとき
9 女子と男子の対立が起きたとき
10 子どもに質問されたとき
11 子どもに感謝するとき
12 給食を残したいといってきたとき
13 作業スピードの個人差を見極めたとき
14 友達とのトラブルを抱えているとき
15 休み時間も先生にべったりするとき
16 テストを返すとき
第5章 周囲を味方につけるコミュニケーション術
1 コラボレーションが生み出すもの
2 応援団をもとう!〜周囲を味方につける,大人同士の会話術
(1) 教師同士のコミュニケーション例
NG・OK会話例:放任編/お説教編/主任ガンバル編/新任もガンバル編
(2) 教師と保護者のコミュニケーション例
NG・OK会話例:保護者会編
第6章 取り組んでみよう! 先生のためのワークシート
1 先生のためのセルフコーチング
2 セルフコーチング・ワークシート
(1) GOAL(目標の明確化)
(2) REALITY(現実把握)
(3) RESOURCE(資源の発見)
(4) OPTION(選択肢の創造)
(5) WILL(目標達成の意志・アクションプラン)
あとがき

はじめに

  かつて,私にも大好きな先生がいました。

 その社会科の先生は,自身が世界中を渡って集めてきた研究のスライドを,私たち生徒にも時折見せながら授業をしてくれました。夢や想像をかき立てられ,時には心が痛んだりという現実も見せてくれた先生のおかげで,歴史は教科書上のものだけではないこと,また世界は身近なものなんだと実感できた気がしました。

 先生は好奇心の固まりのような人でした。その好奇心を実行に移し,自分が体験したことを通して,大切にしたいこと,生徒に求めること,意思や人生観などを生徒に伝え続けてくれていました。

 ある日,アフガニスタンの砂漠の中にある,宝石のように輝く湖についての話をしてくれました。先生は,大きな目を更に大きく見開いて,キラキラと輝く瞳で力強く話してくれました。そして,その湖の美しさに思わず吸い込まれるように泳いでしまったと,笑っていたのです。その話しぶりを見て,私はまるで同じ体験をしたかのようなときめきを感じました。

 そんな先生のあり方を通じて,「ああ,大人っていいなあ」と心が揺さぶられるような心地よい感銘を受けたことを,いまでも憶えています。その当時は,漠然とした「気づき」でしたが,大人になって振り返ると,それはしっかり私の中に積み重なっていたことが,ようやく分かってきた気がします。


  『学校の先生たちに向けた本を書いていただけませんか?』

 そう執筆の依頼をいただいたとき,正直言って最初は戸惑いました。あらゆる産業の人材教育に長年携わってきた経験はあれど,学校,まして教師経験のない私になにが伝えられるのか……と。

 しかし,ぜひとも活かしたいことが,ひとつあることに気がついたのです。それは,様々な産業において,「イノベーションの発現に,数多く立ち会ってきた」という体験でした。


 先日もビジネスの現場でイノベーションを創り出す支援をしました。そこでは,経営トップ,管理職,現場スタッフがともに熱い思いで夢を描き,目標に対してベクトルが統一され,一人一人が強い決意をもち,それぞれの役割と強みを意識し,そしてチームとしての誇りと信頼感を共有し,厳しさも,楽しさも分かち合い挑戦していく。その場面は,沢山の感動を創り出していました。私は,そんな幸福感にも似た空気を共に味わうたび,「人はなんて素晴らしいんだろう!」と心から敬意を抱かずにはいられません。


 「イノベーション」とは,本来,技術革新を生む力,資源の開発など,広義な概念をもっていますが,私が本書で伝えたい「イノベーション」は,『変革』であり『形を変え,成長するそのもの』を意味します。この「イノベーション」こそが,いまの学校に求められていると思うのです。


 つまり,人の本来もっている能力や可能性,創造力が引き出され,開放されること,そして,チームや組織が自発的に変革しようとしていく風土づくりが,今,必要なのではないでしょうか?


 本書は,まさにこの「イノベーション」を学校に発現させる支援のひとつだと思っています。折しも,私どもの元に親子や先生を対象としたセミナーや,校長先生へのコーチングなどの依頼が舞い込み始めた時期でもありました。

 不思議な縁を感じます。私自身が子どもの頃に抱いた,先生への憧れや尊敬の念が,糸を紡いでくれたのかもしれません。だからこそ,自分にしか伝えられないものがあるはずだと思い,新しい分野での出版というチャレンジを決めたのでした。


 教師という職業は,子どもに忘れられない種をまき,子どもの人生に対して,潜在的な影響力を与える重要な存在なのです。その眠っていた種は,いつの間にか,根を張り,ゆっくり成長し,そしてある日突然,子どもの中に花を咲かせたりもします。

 しかしその一方で,残念ながら,子どもの心に取り返しのつかない傷をつくるなど,悲しみの種をまいてしまうという教師の話も耳にします。頻発する少年事件や,いじめ,学級崩壊,校内暴力,不登校も増加の一途をたどり,深刻さはますますその深さを増していきます。いまの子どもは悪い,それは社会のせいだ,教師がなっていない,学校がダメだ,親が悪い,とにかく手の打ちようがない……しかし,ただ困難な状況を嘆いたり,問題やその責任をなすりあったり,批判をすることは,果たして重要なのでしょうか? 学校には何が必要か? どうありたいのか? という原点に立ち返り,一人一人が当事者意識をもって,もう一度考えてみる必要があると思うのです。そして,教育の軸となる部分を共有・確認していくこと,具体的なビジョンを描いていくことが求められるのではないでしょうか。そして更に,その都度変化に対応していく能力や多様な視点を取り入れていく勇気もぜひとも合わせ持っていってほしいのです。

 生徒も教師も学校も苦しんでいては,なんの発展も望めません。これからは場当たり的な解決ではなく,本質的な問題に手を入れていくことが求められるでしょう。先生は,子どもたちの成長の瞬間を,最も間近で見ることのできる,親以外の一番近い大人です。だからこそ,問題にも直接向き合うわけですが,同時に,先生自身には,そのシチュエーションをもっともっと楽しんでもらいたいとも心から思うのです。


  今,学校は確かに変化しようとしています。

 ひとつひとつの取り組みの是非はありますが,現役教師による改善,改革の心強い取り組みが全国あちらこちらで進められています。点が線となり,面となり,大きな「変革」の山をつくり出している現在進行形です。

 そんな現場で役立つように,本書では,子どもへのアプローチやコミュニケーションのみならず,先生同士,管理職と教師のコミュニケーション,保護者とのコミュニケーション,学校の目指すあり方の再設定や学校運営など,そして教師自身が楽しく,充実した仕事が送れるようにサポートしていくことなど,あらゆる角度からのアプローチを取り入れました。


 本書を手に取られたら,どうぞ興味を引いた箇所から読んでみてください。この本はマニュアル本でもなければ,コーチングやカウンセリング,また理論やスキルだけにフォーカスした本でもありません。学校生活の中で,子どもたちが生きる力(自立&自律)を身につけていく原動力をサポートするためのヒント集とお考えください。


 本書が先生にとっての大きな気づきとなり,そして子どもも,先生自身も,みんなが幸福感と充実感を分かち合えることを願っています。


  2004年7月   /河北 隆子

著者紹介

河北 骼q(かわきた たかこ)著書を検索»

1960年東京生まれ。イノベーションアソシエイツ株式会社 代表取締役CEO

個人,チーム,組織のイノベーションを得意とする人材開発コンサルタント。ビジネスコーチ。コーチングプロジェクトCSC代表を経て,現職。

新ブランド立ち上げや組織改革のための企画,立案はもとより,数多くのコンサルティング,研修実施の経験をもつ。また,あらゆる産業においての研修や経営者層に向けたコーチングの実績も多く,実践コーチングスキルを活用したセミナーや研修の人気も高い。現在では,コンサルティングや経営トップへのエグゼクティブコーチングを始め,講演,執筆,研修,セミナーなども手がけ,一線で活躍中。特に,クライアントのモチベーションとコミットメントを強力に引き出し,ラーニング・エンジンをクライアント自身が作り出すアプローチは,現実的かつ継続的な企業風土を実現する手法として高い評価を得ている。

また,企業向けだけではなく,学校教育や医療機関など,あらゆる産業の中で,自由で多様性のあるビジネスを展開しており,学校ソリューションプロジェクトのメンバーとしても活躍している。

※この情報は、本書が刊行された当時の奥付の記載内容に基づいて作成されています。
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