国語教育学の建設2
実験授業による授業改革への提案

国語教育学の建設2実験授業による授業改革への提案

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この企画の最大の特徴は、大学の国語教育研究者が提案授業を行い、小、中の実践者を含む研究者がその授業を検討し、これからの国語科授業の在り方方向を示唆した点にある。


復刊時予価: 3,124円(税込)

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電子書籍版: なし

ISBN:
4-18-608317-7
ジャンル:
国語
刊行:
対象:
小・中
仕様:
A5判 240頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

目次

もくじの詳細表示

まえがき /大槻 和夫
課題研究「授業研究に向けて」の取組みについて /中西 一弘
提案授業その1
小学校二年:リライトを生かした文学の創造的読書活動 /井上 一郎
授業研究
多層的配慮の行き届いた授業 /奥野 忠昭
物語体験の獲得にむけての指導 /甲斐 雄一郎
読むことを通した自己世界の創造 /寺井 正憲
低学年における並行読書・リライト学習の可能性 /高野 保夫
リライト活動で書き換えられるもの /山下 俊幸
授業研究における仮説の鋭さとやわらかさ /田中 瑩一
提案授業その2
小学校三年:自然なイントネーションにもとづく音読指導 /田中 俊弥
授業研究
授業目標に照らして学習者の変容を見よう /高橋 俊三
「伝える」から「伝わる」へ /高梨 敬一郎
音声言語の授業としての受け止め /白石 寿文
これからの授業研究のあり方を求めて /山元 悦子
音読という活動とその目的 /小山 恵美子
授業研究のあり方を求めて /増田 信一
提案授業その3
物語づくりと再読の授業 /上谷 順三郎
授業研究
「一つの花」の再読の授業について /藤原 和好
「紹介」による「物語づくり」 /竹長 吉正
「物語」を作ることの教育的な意義 /府川 源一郎
再読によって創出されたもの /佐藤 明宏
授業における確かな枠組の成立を /昌子 佳広
子どもの事実に即した記述に基づいて /深川 明子
提案授業その4
小学校五年:「さけが大きくなるまで」の説明文を書こう /菅原 稔
授業研究
緻密な思考を促す学習指導過程であった /大内 善一
表現意欲の喚起と活用の場の決定と /大熊 徹
文章観を揺さぶり、進展させる授業 /前田 真証
教材の表現活動触発力を引き出す方法 /村井 万里子
提案授業その5
小学校六年:納得自覚を導く説明文の読みの指導 /植山 俊宏
授業研究
授業の理論構築と授業実践の構築 /澤本 和子
授業研究の立場からの三つの提言 /長崎 伸二
授業研究の一視点 /後藤 惣一
子どもとの擦り合わせによる方法の明確化 /三浦 和尚
授業研究における「目標―内容―方法」の整合性 /吉川 芳則
提案授業その6
中学校一年:「注文の多い料理店」(宮沢賢治)の授業 /鶴田 清司
授業研究
授業の可能性と授業研究のあり方について /有沢 俊太郎
言語技術教育と文学教育 /足立 悦男
学習者を主体とした「教材で教える」授業について /小川 雅子
言語技術の系統的指導と個の主体的な読みの保障 /植西 浩一
「読みの技術」を教科内容にすることについて /浜本 純逸
提案授業その7
中学校二年:生徒加工作品による詩の題名学習 /望月 善次
授業研究
生徒の意識に即して生徒の認識世界を想像すること /塚田 泰彦
選択と結合の可能性 /松崎 正治
「回」「行」の繰り返しの差異性によって詩の形象性を
明らかにする /阿部 昇
授業研究の方法を変えよう /難波 博孝
望月先生の「のぶ子」の授業を振り返って /遠藤 瑛子
国語科演劇的授業論 /中洌 正堯
提案授業その8
中学校三年:共同の読みの成立・「私」の読みの深化 /山元 隆春
授業研究
山元隆春氏の「子供のいる駅」の授業を参観して /世羅 博昭
授業研究の焦点 /加藤 宏文
できれば互いに互いの考えをモニターしあう授業を /田中 美也子
「書き出し・結び・題名」読みの可能性 /中西 一彦
授業研究のあり方を求めて /鳴島 甫

まえがき

   全国大学国語教育学会前理事長 /大槻 和夫


 本書は、一九九七(平成九)年十一月十四日・十五日の両日、大阪教育大学で開かれた第九三回全国大学国語教育学会の第二日、同大学附属平野小学校及び同中学校で行われた提案授業・授業研究を、提案授業者・指定討論者・司会者に改めて原稿化していただき、まとめたものである。

 当日、小学校六(二・三・四・五・六各学年)、中学校三(一・二・三各学年)、都合八つの研究者による提案授業が行われ、その後それぞれの提案授業について、小・中学校の実践者を含む各五名の指定討論者による授業検討が行われた。

 この企画の最大の特色は、大学の国語教育研究者が提案授業を行い、小・中学校の実践者を含む研究者がその授業を検討するという方法をとった点にある。通常は、大学の研究者は、幼・小・中・高校の実践者の行う授業を対象に考察を行い、場合によっては批評を加えるという方法をとることが圧倒的に多い。実践者と研究者の役割分担から考えて、それは当然のことかもしれない。しかし、この企画では、そういう通常の役割分担をあえて逆転させたのである。

 このような方法をとった最大の理由は、国語科授業に関する研究者の提案を、単なる理論としてではなく、研究者自身による授業として提案していただき、その授業を実践者も交えて検討し、研究者の提案の妥当性を検証するという、国語科教育研究の新しい方法を試みたかったからである。

 研究者が飛び入りの形で授業を行うことには問題もあるし、限界もある。実践者の側からは、授業は子どもたちと教師が時間をかけて作り上げていく歴史形成の営みであり、その歴史過程を断ち切って行われる授業は授業ではないという批判もあろうし、授業は研究者が飛び入りでできるほど甘いものではないという批判もあろう。研究者の側からは、ごく限られた時間の授業だけで何が言えるのだという疑問も出されるであろう。それらの批判や疑問はもっともであるが、そういう問題や限界を承知の上で、あえてこのような方法をとったのは、研究者自らが授業を試み、実践者に批評していただくことによって、研究者・実践者共に高まる国語科教育研究のあり方を試みてみたかったからである。とはいえ、それがどこまで実現できているかは、読者諸賢のご判断にまつほかない。読者諸賢に、厳しく暖かいご示教をお願い申し上げたい。

 この企画の立案と運営、本書の企画・編集の一切は、大会運営委員長であった中西一弘氏(当時、大阪教育大学教授。現在、プール学院大学教授)によって進められた。長い時間を要したが、本書を出版にまで漕ぎつけてくださった中西一弘氏のご労苦に心から感謝申し上げる。また、当日の授業記録や討論記録が十分でなかったところもあり、ご執筆いただいた方々には思わぬご労苦をおかけし、結果的には出版の大幅の遅れを招くことにもなった。ご執筆いただいた方々にお詫びと御礼を申し上げる次第である。本書もまた、明治図書出版のご協力により世に送り出すことができた。江部満氏をはじめとする明治図書出版の皆さんに厚く御礼申し上げる。

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      明治図書

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