中学校数学科 新領域「資料の活用」の授業プラン

中学校数学科 新領域「資料の活用」の授業プラン

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新領域「資料の活用」の授業づくりのすべてがわかる1冊!

指導要領の改訂で中学校数学科に新しい領域として加えられた「資料の活用」。必ず押さえたい統計の基本教材の各時間ごとの詳細な授業展開例とともに、新学習指導要領の趣旨を生かした新しい授業事例を取り上げています。指導未経験者はもちろん、経験者も必携の1冊!


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ISBN:
978-4-18-595419-8
ジャンル:
算数・数学
刊行:
4刷
対象:
中学校
仕様:
B5判 112頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

目次

もくじの詳細表示

まえがき
1 新領域「資料の活用」のねらいと指導のポイント
第1節 「資料の活用」のねらい
1 新学習指導要領の受け止め
2 キーワードの受け止め
第2節 「資料の活用」の指導のポイント
1 統計の内容を学習する意味
2 新学習指導要領の具体化に向けて
3 本領域の指導のポイント
4 学年ごとの要約
5 配慮事項
第3節 教師としての心構え
1 学習内容を正しくとらえる
2 学習内容のよさを伝える
2 「資料の活用」各単元の指導のポイントと指導計画
第1節 資料の散らばりと代表値 ―1年―
1 指導のポイント
2 単元の指導計画
第2節 確率 ―2年―
1 指導のポイント
2 単元の指導計画
第3節 標本調査 ―3年―
1 指導のポイント
2 単元の指導計画
3 新学習指導要領の趣旨を生かした授業事例
第1節 資料の散らばりと代表値 ―1年―
1 第1時 「ハンドボール投げの資料の読み取り」
2 第2時 「テスト結果の分析 その1」
3 第3時 「テスト結果の分析 その2」
4 第4時 「テスト結果の分析 その3」
5 第5・6時 「朝のあいさつ運動」
6 第7・8・9時 「上履きの仕入れ」
7 第10時 「ボール投げの記録」
8 第11時 「身長を表す数値」
9 第12時 「中学生の運動能力」
第2節 確率 ―2年―
1 第7時 「コース決めのくじ引き」
2 第8時 「袋の中の玉の数〜確率編〜」
第3節 標本調査 ―3年―
第5・6時 「おみくじ」
第4節 ときにはこんな授業を! 近未来予測 ―2年または3年―
「来年の花粉症対策」

まえがき

 私が中学生だったころ,統計に関する内容として「資料の整理」という学習があり,スポーツテストなどの資料を度数分布表に表したり,ヒストグラムを作成したりしたことを覚えている。整理することの意味や価値を学ぶことも大切な学習内容だったと思われるが,実際には手作業によって整理することを余儀なくされ,文字通り資料の整理の仕方を身につけることによって学習を終えていたように思う。

 自分自身が若手教師として教壇に立ったころは,まだ「資料の整理」が残っていた。自分の中学校時代のことを思い起こしながら資料を度数分布表に整理する授業や,ヒストグラムを作成する授業などを行い,代表値として平均値以外に中央値(メジアン)や最頻値(モード)があることを伝えていた。また,相対度数や度数分布多角形などについても,教科書を参考にしながら授業を行っていた。残念ながら,数値的に都合よく区切られた階級の数や幅に疑問を抱くことはなく,中央値や最頻値にはどのような価値があるのかなどについてもあまり考えることがなかったため,今になって思い返すと,階級の幅を様々に変えて資料の特徴を調べたり,代表値を使い分けて考察したりするような授業を行うことは少なかったと反省している。

 その後の学習指導要領の改訂に伴い,資料の整理,つまり統計に関する内容は基本的に姿を消した。中学生のころに統計に関する内容を学び,教壇に立ってからも当たり前のように授業を行った経験のある一教師として戸惑いもあったが,技能習得や知識偏重の感が否めなかったことや,新聞紙上等でグラフなどを目にする機会が多いという状況から,特別扱わなくてもよいのだろうと思うこともあった。それ以上に,ゆとり教育の名の下に時間数の削減が先に決まった背景を考えれば,最も姿を消しやすい内容であったのかもしれない。

 では,なぜ改めて統計に関する内容が位置づけられたのだろうか。その理由の一つとして,時間数の増加に伴い,物理的に学習時間の確保が可能になったということはあるだろう。しかし,そればかりではないはずである。やはり,現代社会に生きる人間にとって必要な内容だからこそ学習するのだと考えたい。平成20年3月に告示された学習指導要領では,「資料の活用」領域として独立し,統計に関する内容が各学年に配置された。技能を習得することや知識を得ることに偏るのではなく,何を目的として,どのような資料を集め,どのように活用し,どのように結論を得るかという文脈を大切にするべきであることも,『中学校学習指導要領解説 数学編』(平成20年9月)から読み取ることができる。しかし,目的をもって資料を収集することや,階級の幅を変えながらヒストグラムを作成して考察を試みるような学習を手作業に頼って行うとなると,かなり大変であり現実的ではない。このストレスを解消する方法としてコンピュータなどのテクノロジーの活用が有効である。このことは学習指導要領にも「目的に応じて資料を収集し,コンピュータを用いたりするなどして表やグラフに整理し,…」(下線筆者)と明記されているため,むしろコンピュータを使って学習を行うことは義務づけられていると考えるべきであろう。実際,学習指導要領の趣旨を反映するとしたら,コンピュータの活用は教師にとって最大の武器になるはずである。そう考えると,「資料の整理」が学習内容として位置づいていた当時,コンピュータを使って授業を行うような環境はまだ不十分だったため,手作業による整理の仕方を学ぶ学習に留まっていたことは,ある意味致し方なかったのだろうと振り返る。しかし,今は時代が違う。かつての「資料の整理」と「資料の活用」は似て非なるものだということを,まず教師自身が認識しなければならない。

 さて,若手の先生の中には,教えたことがないばかりでなく,自分自身が中学校時代に学んでいない先生もおられるはずである。教えたことも教わったこともなければ,少なからず不安を抱くものだろう。しかし,考えようによっては,指導経験のない先生方は,どのようにすればよいのかわからないが故に学び,趣旨を反映した授業を行うに至る可能性が高いとも考えられる。その一方で,指導経験のある先生方は,かつて行っていた学習の復活と曲解し,手慣れた授業を行うが故に趣旨を反映しない授業を行って終わらせてしまうということも懸念される。経験のあるなしにかかわらず,我々教師がまず学び,情報を交換しながら充実した授業を行いたいものである。

 これらの理由から,本書は,統計に関する内容について指導経験がない(もしくは乏しい)と思われる教職経験10年程度までの先生方に参考にしていただけることを前提としながらも,指導経験がある先生方にも参考にしていただけるような書籍にもしたいと願い,執筆・編集を試みたしたものである。特に,1学年の学習内容は基本的に新たに加えられた内容であるため,授業事例の紹介では重点をおいた。また,学年の枠を超えて,2学年の「確率」や3学年の「標本調査」との関連についても配慮し,可能な範囲で言及した。本書の趣旨をご理解いただき,多くの先生方に広くご活用いただいた上,貴重なご意見をいただければ幸いである。


 なお,本書の執筆・編集に際して,東京学芸大学名誉教授杉山吉茂先生から数学教育全般について,盛岡大学准教授小口祐一先生から統計に関する専門的な内容について,それぞれご指導・ご助言を賜りました。心より感謝申し上げます。また,本書の企画から校正,出版に至るまで,明治図書教育書編集部の矢口郁雄氏には大変お世話になりました。ここに厚く御礼申し上げます。


  平成21年2月   /新井 仁

著者紹介

新井 仁(あらい ひとし)著書を検索»

1965年,長野市生まれ。日本数学教育学会会員。東京学芸大学卒業後,長野県内の公立中学校3校,信州大学教育学部附属長野中学校を経て,現在長野市立柳町中学校勤務。数学教育学に傾倒し,第87回全国算数・数学教育研究(長野)大会にて授業を公開(2005年)。また,「事象を読み取る力を高める関数領域の指導のあり方に関する研究」にて日本数学教育学会より優秀論文賞を受賞(2006年)。数学教育におけるコンピュータやテクノロジーの活用に対する関心が高く,授業実践を通した論文を発表している。写真が趣味で,ホームページに作品を掲載している。

※この情報は、本書が刊行された当時の奥付の記載内容に基づいて作成されています。
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