新授業づくり選書28
中学校数学科発展学習の指導技法

新授業づくり選書28中学校数学科発展学習の指導技法

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個に応じた指導を行うための必要な要素を完全網羅。

個に応じた指導の充実が大切な課題になってきています。その具体的な実践方法として新たに提起された発展学習。その効果的な展開方法を数学科の現実の教材に即して詳細に解説し、新鮮なアイデアで裏打ちしたこれからの指導には欠かせぬ手引。


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ISBN:
4-18-589904-1
ジャンル:
算数・数学
刊行:
対象:
中学校
仕様:
B5判 136頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

目次

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まえがき
1章 数学科・発展学習指導の課題
§1 学力向上の課題
§2 発展学習の意義と課題
§3 発展学習における指導の工夫
2章 領域別形態別発展学習指導の技法と実際
§1 数と式の発展学習の実際
1 正の数と負の数,魔方陣
2 文字と式・文字式の利用
3 "むかし"の教科書を調べてみよう―連立二元一次方程式から連立三元一次方程式へ―
4 条件をかえて,数の性質を見つけよう―式を用いた説明―
5 もとの問題にかえって解を吟味しよう―連立方程式・文章題―
6 包み紙の数学―多項式の展開と因数分解―
7 循環小数 有理数と無理数
8 二次方程式と円―方程式の解を図形で表してみよう―
§2 図形の発展学習の実際
1 平面図形・最短の経路―配達ルートの最短コースを求めよう 一筆がきの考え方の活用―
2 教具を用いた準正多面体づくりとその性質の考察―サッカーボールを調べよう―
3 図形の基本性質・平行 平行線に交わる直線を回転させてみる―「平行線と角」の動的な見方―
4 長方形と同じ面積の四角形―ちょっと気になる等積変形―
5 図形の相似の利用―相似な図形の面積の比・体積の比を考えてみよう―
6 三平方の定理の証明―三平方の定理の証明をいろいろやってみよう―
§3 数量関係の発展学習の実際
1 複比例の考え方―比例・反比例の考え方の活用―
2 一次関数・売上げの最大値―一次関数や方程式の考えを応用した不等式―
3 係長の決め方(場合の数と確率)
4 自動車の加速実験をしよう―関数y=ax2の活用―
§4 課題学習の発展学習の実際
1 指から広がる世界―点字のしくみを探ろう―
2 立方体と正四面体・正八面体
3 リボンのかけ方に挑戦しよう―展開図を使ってリボンの長さを求めよう―
§5 選択数学の発展学習の実際
1 サイコロゲームを極めよう―偶然を科学しよう―
2 折り紙の数学
3 より簡単に,分かりやすく,広く,使える数え方―共通点の発見と三平方の定理への関連付け―
§6 総合的な学習の時間の活用
1 カレンダーづくり
2 美しい図形―直角三角形の斜辺からうかびあがる図形―
3 相関関係を利用しよう―最も遠く跳べる人を予測する―
4 学校をPRするポスターをつくろう―統計によるからくりを見抜く―

まえがき

 中央教育審議会初等中等教育分科会・教育課程部会は,「初等中等教育における当面の教育課程及び指導の充実・改善方策について(審議の中間まとめ)」(2003年8月7日)において,学習指導要領の「基準性」と「はどめ規定」に係る課題について言及しています。

 そのなかで,発展的な学習について,「各学校においては,まずは生徒に学習指導要領の各教科等及び各学年等に示された内容の確実な定着を図ることが求められている。この指導を十分に行った上で,個性を生かす教育を充実する観点から,生徒の実態に応じ,学習指導要領に示されていない内容を加えて指導することも考える必要があり,これにより,共通に指導した内容について,さらに知識を深め,技能を高めたり,思考力・判断力を高め,表現力を豊かにしたり,学習意欲を高めたりすることも期待される。」とまとめています。

 これによれば,学習指導要領に示されていない内容を加えた学習を発展的な学習とよぶことになります。

 しかし,本書では,発展の意味をやや広くとらえることにしました。共通に指導した内容を,より広げる,より深める場合も含めて,発展学習とよぶことにしました。補充学習と発展学習が平行してなされる場合,補充学習以外はすべて学習指導要領の枠を越えた内容を加えるとは限らないからであります。

 また,発展学習は,共通に指導する内容の延長としてごく自然になされる場合,課題学習の形をとってテーマを設定してなされる場合,選択教科としての数学のなかで取り扱われる場合,さらには,総合的な学習の時間を活用して数学の教師がかかわる場合などの様々な形態が可能であると考えられます。

 このようなことから,発展学習を幅広くとらえる方が,現場の実態にあわせやすいと考えました。

 ところで,最近3回の学習指導要領の改訂について,ふり返ってみることにしましょう。

 現代化の軌道修正を求められた昭和52年(1977)の改訂においては,時間数は1年が4時間から3時間へ削減されただけでしたが,世界的な傾向として進められた「数学教育の現代化」の成果を取り入れることは,ほぼ全面的に否定されました。

 それは,新しく導入された内容のうち,集合,図形の変換の考え,図形の位相的な見方,一般化された関数の概念,論理などが姿を消したことから明白であります。そして,基礎的な知識の習得や基礎的な技能の習熟を重視するとともに,数学的な考え方や処理の仕方を生み出す能力の育成に配慮することになりました。

 基礎に帰ることが強く要請されたということができましょう。

 続いて,平成元年(1989)の改訂においては,国際化,情報化などの社会基盤の変容発展が著しく,そのため多様化への対応が求められました。

 大幅な選択教科を導入するため,時間数に波形表示が用いられましたが,国語と数学は基礎的な教科であるとの理由で波形表示は見送られました。よく,改訂の度毎に時間数が削られているという人がいますが,この回の改訂では時間数は据え置かれ,選択教科としての数学をおくことができるようになりましたので,学校によっては増やすことも可能になったわけです。

 この回の改訂では,物質的な豊かさより心の豊かさへ,量を中心にした要求から質を中心にした要求へ高まってきたことを受けて,多様化,サービス化,ソフト化などが進められました。この間にあって,数学科に求められたのは,論理的思考力,判断力の基礎を培うことでした。「判断力を培うのは数学ではないか」「論理的思考力はユークリッド幾何に没頭するのがよいのではないか」などと教育課程審議会で強く求められました。

 ところで,今回の平成10年(1998)の改訂では,学校5日制への移行,選択教科の拡大,総合的な学習の時間の導入などのため,時間数は,2年も3年も3時間に縮小され,それを上まわる内容の削減がなされました。

 今回の改訂によって,数学科はもはや基礎教科でもなく,それほど学ぶに値しない教科と見られているように早合点する人もいるようですが,決してそうではないのです。

 「数学的活動」の充実を図る,数学の活用能力の一層の伸長を図る,自ら学び自ら考える力の育成を重視する,社会の構成員としての資質を身に付けられるようにするなどの要請がこめられていることから,それを読みとることができましょう。そして,その裏には,とかくこれまでは理工系中心に考えてきたがもっと守備範囲を広げて,人間の「知」の礎として,しっかりしたものを築いてほしい,ことに中等教育では,その願いが強いのです。

 このように考える。ここ3回の改訂は数学科にとっては,まさに試練の場というほかはありません。しかし,これを通した「基礎に帰れ」「論理的思考力の育成を重視せよ」「守備範囲を拡大せよ」の強い要請は,数学教育改革の目的として明確に示されたということができましょう。

 そして,これを実現する第一歩が発展学習であると考えました。

 十分にご検討いただき,ご叱正くださるよう,心からお願い申し上げます。

 最後になりましたが,ご多用のなかを,貴重な実践をおまとめいただいた多くの方々,企画にあたっては安藤征宏氏,校正段階では関沼幸枝氏に,ご心労をおかけしました。あわせて,心からお礼申し上げます。


  平成16年1月   /正田 實

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